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皆は顔を見合わせて、さすがに知事である寺山を危険な場所に送ることはできないと察する。
それゆえに岩本が寺山を制止すべく口を開いた。
「寺山知事、被災地が心配なのはわかりますが、状況がわからない以上危険なことに変わりはありません。日本政府と連絡がとれない限り、島根の意思決定はあなたにゆだねられてるんです。そんな知事を危ない目に合わせるわけにはいきません。どうかここは各班員に任せて、あなたは県庁で待機していてください」
寺山の身を案じて放たれた言葉。
それは彼が知事という立場であるが故の当然のものであった。
だがそれは寺山自身もよくわかっている。
「…確かに、おっしゃるとおりかもしれません。ですが現場で何が起きているのか、この目で見て判断したいのです」
「…」
「それに、ここまで伝えられた情報によればけが人はほとんど出ていませんし、危険が迫ればすぐに引き返します。だからどうか、私を被災地に行かせてください!」
部屋の中に寺山の声が響き渡る。
それは会話に参加していないほかの職員たちの注目を引き付けるには十分なほどで、間近で話をしていた岩本達にはなおさらだった。
仕事でも私用でも鳥取をよく訪れる寺山。
島根と同様、生活の一部に溶け込んでしまった鳥取を憂うのも無理はなかった。
それは寺山だけでなくほかの職員たちも同じで、だれもが日常の一部が地震によって崩れるさまを恐れていた。
だからこそ皆、寺山がこの目で見たいという気持ちが痛いほどわかる。
何が起きたのか目に焼き付け、そのすべてを受け入れなければならない。
それも知事としての責任だとすら寺山自身思っていたし、一同もまた彼の胸中を推し量っていた。
だが寺山を送り出したい気持ちと、彼の身に何かあったらという不安。
一同は考えあぐねる。
そんな中、文字通り寺山の背中を押すものがいた。
「知事、ここは私が預かるので行ってきても大丈夫ですよ」
肩に掛けられた平松の手、そして彼の発言。
その両方に驚いた寺山は平松のほうを向いた。
そして何を言うか言葉に詰まりつつも、彼の発言の意味を確認する。
「え、いいんですか?」
「はい。気にかけてるんですよね、地震のこと。」
「ま、まあそうですが…」
ここにいる誰もが気に掛けないわけではない。
知事である自ら危険地帯に赴くことなど単なるわがままである、それは寺山もよくわかっていた。
県庁という安全な場所から適切な指示を下す、それが最善の方法だということも。
当然皆わかっていた。
だが寺山の意向を汲んだ平松はこう口を開く。
「もちろん私だって現地のことは心配ですし、知事をそのようなところに行かせるのはなおさら心配です。ですが実際にその場を見て状況を判断したほうが今後、も円滑に行えると思います」
寺山を含めた皆が平松の言葉に注目する。
そのような中平松は続きを口にした。
「…それに、いつまでも状況がわからずやきもきしてたら職務にも差し支えるかもしれません。行くことによっていろいろと踏ん切りがつくなら私はそれでも良いと思うのですが、皆さんどうでしょう?」
平松の問いかけに一同はしばし考え込んだ。
それゆえに岩本が寺山を制止すべく口を開いた。
「寺山知事、被災地が心配なのはわかりますが、状況がわからない以上危険なことに変わりはありません。日本政府と連絡がとれない限り、島根の意思決定はあなたにゆだねられてるんです。そんな知事を危ない目に合わせるわけにはいきません。どうかここは各班員に任せて、あなたは県庁で待機していてください」
寺山の身を案じて放たれた言葉。
それは彼が知事という立場であるが故の当然のものであった。
だがそれは寺山自身もよくわかっている。
「…確かに、おっしゃるとおりかもしれません。ですが現場で何が起きているのか、この目で見て判断したいのです」
「…」
「それに、ここまで伝えられた情報によればけが人はほとんど出ていませんし、危険が迫ればすぐに引き返します。だからどうか、私を被災地に行かせてください!」
部屋の中に寺山の声が響き渡る。
それは会話に参加していないほかの職員たちの注目を引き付けるには十分なほどで、間近で話をしていた岩本達にはなおさらだった。
仕事でも私用でも鳥取をよく訪れる寺山。
島根と同様、生活の一部に溶け込んでしまった鳥取を憂うのも無理はなかった。
それは寺山だけでなくほかの職員たちも同じで、だれもが日常の一部が地震によって崩れるさまを恐れていた。
だからこそ皆、寺山がこの目で見たいという気持ちが痛いほどわかる。
何が起きたのか目に焼き付け、そのすべてを受け入れなければならない。
それも知事としての責任だとすら寺山自身思っていたし、一同もまた彼の胸中を推し量っていた。
だが寺山を送り出したい気持ちと、彼の身に何かあったらという不安。
一同は考えあぐねる。
そんな中、文字通り寺山の背中を押すものがいた。
「知事、ここは私が預かるので行ってきても大丈夫ですよ」
肩に掛けられた平松の手、そして彼の発言。
その両方に驚いた寺山は平松のほうを向いた。
そして何を言うか言葉に詰まりつつも、彼の発言の意味を確認する。
「え、いいんですか?」
「はい。気にかけてるんですよね、地震のこと。」
「ま、まあそうですが…」
ここにいる誰もが気に掛けないわけではない。
知事である自ら危険地帯に赴くことなど単なるわがままである、それは寺山もよくわかっていた。
県庁という安全な場所から適切な指示を下す、それが最善の方法だということも。
当然皆わかっていた。
だが寺山の意向を汲んだ平松はこう口を開く。
「もちろん私だって現地のことは心配ですし、知事をそのようなところに行かせるのはなおさら心配です。ですが実際にその場を見て状況を判断したほうが今後、も円滑に行えると思います」
寺山を含めた皆が平松の言葉に注目する。
そのような中平松は続きを口にした。
「…それに、いつまでも状況がわからずやきもきしてたら職務にも差し支えるかもしれません。行くことによっていろいろと踏ん切りがつくなら私はそれでも良いと思うのですが、皆さんどうでしょう?」
平松の問いかけに一同はしばし考え込んだ。
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