日本一無名な島根が異世界に行ったら世界一有名になった話

マキナ

文字の大きさ
14 / 25

14

しおりを挟む
「いえいえ、こちらこそ。対処に当たっていただきありがとうございます。」

互いに会釈を交わしたのち、これまで起きたことの情報を共有する。
島根の大部分で発生した地震、それに伴う通信障害。
そして今県境で何が起きているのか、一つ一つ確認していく。

「なるほど…。大規模な土砂災害が発生していると?」
「おそらくそうなのではないかと考えていますが…、ちょっと様子が変というか…。うーん…」

地震により、鳥取方面で地形が大きく変わるほどの土砂崩れが起きているとの説明をなされた寺山達。
地盤の脆弱な場所であれば土砂災害は決して珍しくはない事態だ。
だが説明する田中のぎこちなさに一同は違和感を覚える。

「様子が変、とはどういうことですか?」
「え、えーっとですねぇ…。土砂災害だとは思うんですけど、周囲に建物や道路が跡形もなくなるほどの被害が出てるんですよ」
「それはそのくらいひどい土砂崩れということですか?」
「まあ、普通だったらそうなんですけど…。本当に何一つ、元あったものの形跡が無くなってるんですよ。それこそ最初からなかったみたいに…」

田中の要領を得ない発言に一同困惑しつつも、それが過去に類を見ない大規模な災害であるということを皆理解した。
数々の被災地に派遣されてきた自衛隊ですら見たことがないような状態。
自衛隊の精強な通信設備をもってしても県外と連絡が取れないという状況と相まって事態の収拾は一向に見込めない模様だった。

その後自衛隊が設営した仮設のテントに移動した寺山達は、彼らが作成した資料を閲覧するなど、県庁にはなかなか届かなかった現場の情報を集めていった。
地震そのものの情報をはじめ通信状況の経過、県境で起きている土砂災害だと思われるものなどについて、パソコンの画面に文字と数字が示すような資料が次々と出てくる。
寺山を含め職員たちは画面をスクロールしながらそれらをつぶさに見ていく。
そんな中、突如画面に彼らの目を引く写真が現れた。

「あの、すみません。これはなんの写真なんですか?」

写真を指さしながら、寺山は近くにいた隊員に話しかけた。

「ああ、それは県境の近くから鳥取のほうを撮影した写真ですね」
「え!?これが鳥取…ですか?」

隊員の言葉に耳を疑い、二度三度写真を見返す寺山。
何度見たところで写真に写る異様な光景は何一変わらなかった。
だが寺山が驚くのも無理はない。
写真に写るのはとても島根と鳥取の県境とは思えないものだったからだ。
手前の島根側から奥へと続く道路が途中で途切れ、その先にはうっそうと生い茂る森が描かれた写真。
建物も道路も、なに一つなくなっている光景が描写されている。
一見すると合成された写真であると疑われてもしょうがないものだったが、隊員がまじめな顔をして話す以上寺山もそれが現実の写真であると信じるしかなかった。

「まあ、いきなりそんなこと言われてもびっくりしますよね。私だっていまだに信じられません」
「そ、そうですよね…」

突然それまであったものが消えてしまえばだれだって驚く。
寺山だけでない、ここにいる全員が写真の中のことを信じられないと思っているはずだった。
田中の説明によると土砂災害で建物が破壊されたといわれたが、とてもそのようには思えない。
本来なら土砂で覆われているはずの場所はあたかも最初からそこにあったような木々で覆われていたからだ。


しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

ブラック国家を制裁する方法は、性癖全開のハーレムを作ることでした。

タカハシヨウ
ファンタジー
ヴァン・スナキアはたった一人で世界を圧倒できる強さを誇り、母国ウィルクトリアを守る使命を背負っていた。 しかし国民たちはヴァンの威を借りて他国から財産を搾取し、その金でろくに働かずに暮らしている害悪ばかり。さらにはその歪んだ体制を維持するためにヴァンの魔力を受け継ぐ後継を求め、ヴァンに一夫多妻制まで用意する始末。 ヴァンは国を叩き直すため、あえてヴァンとは子どもを作れない異種族とばかり八人と結婚した。もし後継が生まれなければウィルクトリアは世界中から報復を受けて滅亡するだろう。生き残りたければ心を入れ替えてまともな国になるしかない。 激しく抵抗する国民を圧倒的な力でギャフンと言わせながら、ヴァンは愛する妻たちと甘々イチャイチャ暮らしていく。

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

「キヅイセ。」 ~気づいたら異世界にいた。おまけに目の前にはATMがあった。異世界転移、通算一万人目の冒険者~

あめの みかな
ファンタジー
秋月レンジ。高校2年生。 彼は気づいたら異世界にいた。 その世界は、彼が元いた世界とのゲート開通から100周年を迎え、彼は通算一万人目の冒険者だった。 科学ではなく魔法が発達した、もうひとつの地球を舞台に、秋月レンジとふたりの巫女ステラ・リヴァイアサンとピノア・カーバンクルの冒険が今始まる。

クラス転移したら種族が変化してたけどとりあえず生きる

アルカス
ファンタジー
16歳になったばかりの高校2年の主人公。 でも、主人公は昔から体が弱くなかなか学校に通えなかった。 でも学校には、行っても俺に声をかけてくれる親友はいた。 その日も体の調子が良くなり、親友と久しぶりの学校に行きHRが終わり先生が出ていったとき、クラスが眩しい光に包まれた。 そして僕は一人、違う場所に飛ばされいた。

やさしい異世界転移

みなと
ファンタジー
妹の誕生日ケーキを買いに行く最中 謎の声に導かれて異世界へと転移してしまった主人公 神洞 優斗。 彼が転移した世界は魔法が発達しているファンタジーの世界だった! 元の世界に帰るまでの間優斗は学園に通い平穏に過ごす事にしたのだが……? この時の優斗は気付いていなかったのだ。 己の……いや"ユウト"としての逃れられない定めがすぐ近くまで来ている事に。 この物語は 優斗がこの世界で仲間と出会い、共に様々な困難に立ち向かい希望 絶望 別れ 後悔しながらも進み続けて、英雄になって誰かに希望を託すストーリーである。

【完結】スーパーの店長・結城偉介 〜異世界でスーパーの売れ残りを在庫処分〜

かの
ファンタジー
 世界一周旅行を夢見てコツコツ貯金してきたスーパーの店長、結城偉介32歳。  スーパーのバックヤードで、うたた寝をしていた偉介は、何故か異世界に転移してしまう。  偉介が転移したのは、スーパーでバイトするハル君こと、青柳ハル26歳が書いたファンタジー小説の世界の中。  スーパーの過剰商品(売れ残り)を捌きながら、微妙にズレた世界線で、偉介の異世界一周旅行が始まる!  冒険者じゃない! 勇者じゃない! 俺は商人だーーー! だからハル君、お願い! 俺を戦わせないでください!

異世界に転生した俺は英雄の身体強化魔法を使って無双する。~無詠唱の身体強化魔法と無詠唱のマジックドレインは異世界最強~

北条氏成
ファンタジー
宮本 英二(みやもと えいじ)高校生3年生。 実家は江戸時代から続く剣道の道場をしている。そこの次男に生まれ、優秀な兄に道場の跡取りを任せて英二は剣術、槍術、柔道、空手など様々な武道をやってきた。 そんなある日、トラックに轢かれて死んだ英二は異世界へと転生させられる。 グランベルン王国のエイデル公爵の長男として生まれた英二はリオン・エイデルとして生きる事に・・・ しかし、リオンは貴族でありながらまさかの魔力が200しかなかった。貴族であれば魔力が1000はあるのが普通の世界でリオンは初期魔法すら使えないレベル。だが、リオンには神話で邪悪なドラゴンを倒した魔剣士リュウジと同じ身体強化魔法を持っていたのだ。 これは魔法が殆ど使えない代わりに、最強の英雄の魔法である身体強化魔法を使いながら無双する物語りである。

異世界に転移したらぼっちでした〜観察者ぼっちーの日常〜

キノア9g
ファンタジー
「異世界に転移したら、ぼっちでした!?」 20歳の普通の会社員、ぼっちーが目を覚ましたら、そこは見知らぬ異世界の草原。手元には謎のスマホと簡単な日用品だけ。サバイバル知識ゼロでお金もないけど、せっかくの異世界生活、ブログで記録を残していくことに。 一風変わったブログ形式で、異世界の日常や驚き、見知らぬ土地での発見を綴る異世界サバイバル記録です!地道に生き抜くぼっちーの冒険を、どうぞご覧ください。 毎日19時更新予定。

処理中です...