日本一無名な島根が異世界に行ったら世界一有名になった話

マキナ

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現地でいったい何が起こっているのか、フレームの中の情景だけでは測りしれない。
寺山達は協議を重ねた結果、万全の態勢で県境間際のところまで実際に行ってみることとなった。
寺山たち一同は仮設テントの隣に集合し、ともに現地に向かう自衛官たちと合流する。

「それではみなさん、これから歩いて島根と鳥取の県境まで向かいます。装備や服装など準備はできてますか?」

今回視察隊を護衛することになった田中が、集まった全員に出発前の最終確認を促す。
頭にはヘルメットをかぶり、胴体にはライフジャケット。
靴は物が落ちてきても耐えられる丈夫な安全靴を着用し、被災地でも安全に活動できるように備える。
普段から非常時に備えている自衛官たちは手際よく準備を終え、寺山や職員たちの作業を手伝っていた。

「皆さん準備が整ったようですね。それでは出発します」

こうして各々準備が終わると田中の号令とともに、自衛官たちに護衛された視察隊は県境に向かって歩き出した。
自衛隊が駐屯している道の駅から県境まで約700メートルの道のり。
歩けば十分ほどで着くこの距離が、寺山達にとってはやけに長く感じられた。

言葉と写真によって伝えられた被災地の惨状。
あらかじめ身構えていたとしても緊張は収まらない。
県境にたどり着くまでに見える風景が何一つ災害を思わせない日常を表している点も、彼らにとっては安心だけではなく奇妙という不気味さを与える要因になっていた。

そのように不安と緊張が頭の中で入り混じりながらも、一歩一歩前進していく。
事前の説明によると、この辺りはすでに警察と自衛隊によって交通規制がされており、必要に応じて民間人も避難しているという。
また昼前の地震以降余震などその他の揺れは観測されておらず、万が一の時も救急医療チームが現場に派遣されているとのことで、知事自ら赴いても大丈夫だろうとの判断があった。
視察隊の周囲で護衛する10人ほどの自衛官。
何かあったときには守ってくれるという安心感が寺山達には救いだった。

そのように不安に駆られながらも県境に向かって行った一同。
しばらくすると、遠くに自衛隊のトラックと数台の自衛官たちが見えるようになる。
おそらく救助活動や災害の情報収集をしているんだろうと考え、寺山たちは近づいていく。

だが近づくごとに、徐々に異変に気付くことになる。
それまで平然と続いていた道路と建物。
もともと周囲に木々が多い場所ではあったが、視界の前方は不自然なほど木が存在していた。

「…え!?」

皆が思わず声を漏らす。
そして鳥取まであと100メートルほどというところで、彼らの足が止まった。
もともと現場で活動していた自衛官たちの背後、道路が続いているはずの場所。
そこにはうっそうと生い茂った森が見渡す限り続いている。
写真で見たものと全く同じ、それどころか予想を大きく超えるその光景に一同は立ち尽くすことしかできなかった。




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