9 / 15
人の類
しおりを挟む
「おお、ウィリアム・ムーア大将、ご無沙汰しております」
二階堂は振り返り笑顔を見せる。ウィリアムは二階堂と同じく、地球防衛軍において大将を務めており、配属先の違いはあれど地球から宇宙まで幅広い職務をこなしている。
それゆえに先ほどの会議にも防衛軍の上層部として参加していた。
「…先ほどの決議、どう思いました?私はどうも、もやもやするというか、本当にこれでよいのかどうかと考え込んでしまって…」
ウィリアムの言葉に二階堂も少しだけ笑顔を曇らせる。そしておもむろに口を開く。
「…あれが本当に正しいのかは俺にもわからん。ただ、人類にはこの課題を解決するという責務がある、ただそれだけだ。それに国民の決めた政治家たちの決断だ。俺たちの口出すことじゃねぇ」
「だけど、いまだに国民には何も伝えられてないじゃないですか!それでもいいと?」
ウィリアムの返答にうつむく二階堂。だがすぐに顔を上げた。
「ウィリアム、俺たちは軍人だ。政治家の決めたことに対してああだこうだ言うのはみっともない。俺らは任務を粛々とこなすだけだ」
「それがたとえ間違っていてもですか?」
「ああ、そうだ」
どうも納得のいかない表情のウィリアムだったが、二階堂は話を続ける。
「お互いがお互いの専門分野をきちんとまっとうする、それだけの話。第一、国民が選んだ政治家の決定だ、それを疑うなんて間接的に国民を疑うのと一緒だ。守るべき対象を疑うのか?」
「…そう、ですね」
「俺たちが守る国民、いや、人類のためにも、さらに会議を進めて計画を完璧なものにしないとな。なに、大丈夫だ。俺達には優秀な部下がたくさんいるだろ?」
二階堂は笑顔でウィリアムを見つめる。するとウィリアムも少しだけ表情がほぐれた。
「じゃあ、この後も仕事あるだろ?お互いがんばろうぜ!人類のためにな!」
二階堂はそう言い残してその場を去ろうとする。だがウィリアムは最後に一つだけ質問をした。
「…その人類ってのは地球人のことですか?」
核心を突くその一言に動き出した右足が止まる。そしてにやりと口元が緩み、一言だけ言い放った。
「いいや、人の類と書いて人類だ」
一瞬の沈黙が二人の間に流れる。
「ですよ、ね…」
少しだけ理解に時間を要した返答。
ウィリアムは緊張がほぐれたような気がした。
二階堂も自身と同じ感覚でいるのだと確信したからだ。
同業者として、使命に臨む心意気は同じなほうがいい。
そしてたった一言で二階堂の思いをくみ取ったウィリアム。
「じゃあな、ウィリアム」
再び二階堂は廊下を歩き始める。次の仕事に向かうために。
「ええ、また」
そういってウィリアムは彼と別の方向へ歩き出す。次の会議室に向かうために。
そして人類も新たな一歩を歩み始める。次の時代に向かうために。
二階堂は振り返り笑顔を見せる。ウィリアムは二階堂と同じく、地球防衛軍において大将を務めており、配属先の違いはあれど地球から宇宙まで幅広い職務をこなしている。
それゆえに先ほどの会議にも防衛軍の上層部として参加していた。
「…先ほどの決議、どう思いました?私はどうも、もやもやするというか、本当にこれでよいのかどうかと考え込んでしまって…」
ウィリアムの言葉に二階堂も少しだけ笑顔を曇らせる。そしておもむろに口を開く。
「…あれが本当に正しいのかは俺にもわからん。ただ、人類にはこの課題を解決するという責務がある、ただそれだけだ。それに国民の決めた政治家たちの決断だ。俺たちの口出すことじゃねぇ」
「だけど、いまだに国民には何も伝えられてないじゃないですか!それでもいいと?」
ウィリアムの返答にうつむく二階堂。だがすぐに顔を上げた。
「ウィリアム、俺たちは軍人だ。政治家の決めたことに対してああだこうだ言うのはみっともない。俺らは任務を粛々とこなすだけだ」
「それがたとえ間違っていてもですか?」
「ああ、そうだ」
どうも納得のいかない表情のウィリアムだったが、二階堂は話を続ける。
「お互いがお互いの専門分野をきちんとまっとうする、それだけの話。第一、国民が選んだ政治家の決定だ、それを疑うなんて間接的に国民を疑うのと一緒だ。守るべき対象を疑うのか?」
「…そう、ですね」
「俺たちが守る国民、いや、人類のためにも、さらに会議を進めて計画を完璧なものにしないとな。なに、大丈夫だ。俺達には優秀な部下がたくさんいるだろ?」
二階堂は笑顔でウィリアムを見つめる。するとウィリアムも少しだけ表情がほぐれた。
「じゃあ、この後も仕事あるだろ?お互いがんばろうぜ!人類のためにな!」
二階堂はそう言い残してその場を去ろうとする。だがウィリアムは最後に一つだけ質問をした。
「…その人類ってのは地球人のことですか?」
核心を突くその一言に動き出した右足が止まる。そしてにやりと口元が緩み、一言だけ言い放った。
「いいや、人の類と書いて人類だ」
一瞬の沈黙が二人の間に流れる。
「ですよ、ね…」
少しだけ理解に時間を要した返答。
ウィリアムは緊張がほぐれたような気がした。
二階堂も自身と同じ感覚でいるのだと確信したからだ。
同業者として、使命に臨む心意気は同じなほうがいい。
そしてたった一言で二階堂の思いをくみ取ったウィリアム。
「じゃあな、ウィリアム」
再び二階堂は廊下を歩き始める。次の仕事に向かうために。
「ええ、また」
そういってウィリアムは彼と別の方向へ歩き出す。次の会議室に向かうために。
そして人類も新たな一歩を歩み始める。次の時代に向かうために。
0
あなたにおすすめの小説
百合ランジェリーカフェにようこそ!
楠富 つかさ
青春
主人公、下条藍はバイトを探すちょっと胸が大きい普通の女子大生。ある日、同じサークルの先輩からバイト先を紹介してもらうのだが、そこは男子禁制のカフェ併設ランジェリーショップで!?
ちょっとハレンチなお仕事カフェライフ、始まります!!
※この物語はフィクションであり実在の人物・団体・法律とは一切関係ありません。
表紙画像はAIイラストです。下着が生成できないのでビキニで代用しています。
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
サイレント・サブマリン ―虚構の海―
来栖とむ
SF
彼女が追った真実は、国家が仕組んだ最大の嘘だった。
科学技術雑誌の記者・前田香里奈は、謎の科学者失踪事件を追っていた。
電磁推進システムの研究者・水嶋総。彼の技術は、完全無音で航行できる革命的な潜水艦を可能にする。
小与島の秘密施設、広島の地下工事、呉の巨大な格納庫—— 断片的な情報を繋ぎ合わせ、前田は確信する。
「日本政府は、秘密裏に新型潜水艦を開発している」
しかし、その真実を暴こうとする前田に、次々と圧力がかかる。
謎の男・安藤。突然現れた協力者・森川。 彼らは敵か、味方か——
そして8月の夜、前田は目撃する。 海に下ろされる巨大な「何か」を。
記者が追った真実は、国家が仕組んだ壮大な虚構だった。 疑念こそが武器となり、嘘が現実を変える——
これは、情報戦の時代に問う、現代SF政治サスペンス。
【全17話完結】
わたしの下着 母の私をBBA~と呼ぶことのある息子がまさか...
MisakiNonagase
青春
39才の母・真知子は息子が私の下着を持ち出していることに気づいた。
ネットで同様の事象がないか調べると、案外多いようだ。
さて、真知子は息子を問い詰める? それとも気づかないふりを続けてあげるか?
そのほかに外伝も綴りました。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる