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ヴァンパイアの謎
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一同が顔を見合わせる。
聞きなれたようで、全く聞きなれない単語が出てきた。
ヴァンパイア。
空想上の生き物で、だれもが現実にはいないと思っていた。
だがここにいる全員、いや、人類のほとんどがその名前を聞いたことはある。
「ヴァンパイア、別名『吸血鬼』と呼ばれる存在は誰もが一度は聞いたことがあるはずです。古くから童話などで語られてきましたが、一番有名なのはやはり『赤い霧伝説』でしょう」
赤い霧伝説。
それもまた誰もが聞いたことのある話であった。
しかしたかが伝説、だれも本気にしてなどいなかった。
そんな空想の産物だと思っていたヴァンパイアがここで語られている。その現実に一同は困惑した。
「では、赤い霧伝説というものがどういうものなのか、現状連邦政府および参謀本部が認識している範囲内で説明します。皆さまが知っているものとはかなり違うのでその点はご理解ください」
そこまでいうと宮内は、壇上の機器を操作して会議室前方にある大画面に映像を出力して話をつづけた。
「赤い霧伝説というのは、だれもが一度は聞いたことがあるでしょう。それがヴァンパイアと密接にかかわっているということも含めて。今から約六百年前、当時まだ地球連邦という一つの連邦国家が存在しなかった時代、各地で小国が林立し、共存と対立を繰り返していました。…具体的にいつなのかは今でもわかっていませんが、突如として彼らはやってきたのです」
画面に当時の状況を絵としてあらわした画像が表示される。
赤く霧がかかった空、海は激しくうなり、大地が揺らぐ。
そして何よりもっとも印象的に描かれているのが、銀色の宇宙船のようなもの、さらには戦車に似た影までかかれている。
その近くでは銃を持って戦う複数の人々。
絵ではあったものの、写真に負けず劣らずの臨場感をもって当時の混沌とした様子が描かれている。
「ヴァンパイアがやってくる数年前から嵐や地震、火山の噴火などの大災害が頻発していました。一説にそれが前兆だという見方もありますが、当時の多くの国々がそれら災害で疲弊していたのです。そんなさなか空から無数の宇宙船のようなものが降下してきて、地上にいる人々を攻撃し始めたのです。記録が残っているものだけでも、強力な重火器を有しており、戦車や飛行機などの近代兵器を駆使して攻撃してきたとのことです。当時の地球ではようやく初期の銃が生産できるようになった程度の技術力しかなかったため、ヴァンパイアの軍隊にまったくもって歯が立ちませんでした。ヴァンパイアの襲撃は世界中で確認されており、圧倒的な戦力の前にいくつもの国々が消滅していきました」
ヴァンパイアの襲撃。
これは赤い霧伝説の一幕としてよく語られる内容だ。
しかしヴァンパイアが戦車や飛行機などを使うという話は誰も聞いたことがない。
長い牙をもち、日の光が苦手で生き物の生き血を吸い、霧に紛れて夜を生きるという、多くの人が知る有名な特徴からはかけ離れている。
「のちの調査などによって、ヴァンパイアは最大で地球上の陸地の九割近くを占領していたとされています」
地球上のほとんどを支配したヴァンパイア。空から降ってきた侵略者たちが地球を占領する話。
どこか荒唐無稽で突拍子もない印象を受けた一同ではあったが、目の前の参謀が現に話しているという事実の前に混乱する様子を隠せない。
すると暁たちの前に座っていた将官の一人が手を上げ、宮内に質問した。
「では、その時人類はどうしたのですか?ヴァンパイアが地球を支配したとしたら、今ここにいる私たちはいないはずです。つまり、人類はヴァンパイアを倒すことが出来たのですか?」
宮内は質問の内容に少し感心したようにうなずき、口を開いた。
「そう、実はそこが本題にかかわってくるのです。いい目の付け所ですね」
「あ、ありがとうございます…」
質問した将官が少し照れ臭そうにしているのをよそに、宮内は画像に新たな映像を映し出す。そこには青い地球を描いた旗が映っていた。
「ヴァンパイアの攻撃を前に人類は団結することを決めました。同じ人類同志争っている場合ではないですからね。そこで誕生したのが『多国籍連合』という、残存する人類国家同士の同盟です。今画面に映っているのがその同盟の旗です」
皆の視線が同盟の旗に集中する。
「当初は各国家同士の争いなどでなかなか団結することができなかったようですが、すぐそこまでヴァンパイアという脅威が迫っていた以上最終的にはほとんどの国が条約を締結し加盟国になりました。それにより各国家間にける物資、兵力、情報の伝達が速やかに行われるようになり、人類としてよりヴァンパイアたちの進撃に抵抗できるようになったのです。しかし…」
強力な敵を前に団結する人類。そこまでの流れはよかったものの、宮内が含みのある言い方で雲行きが怪しくなる。
「残念ながらヴァンパイアの軍事力は圧倒的なものであり、人類同志の団結などあってないようなものでした。
原始的な銃器しか持たなかった人類はヴァンパイア軍の侵攻を食い止めることはできず、山岳などに立てこもっての遊撃戦を行うなどの限られた抵抗しかできませんでした。
人類の滅亡はすぐそこまで迫ってきており、当時の人々はそれが最後の審判であるとか、神の裁きであるとかいっていたようです。それほどまでに、当時の状況は凄惨を極め、絶望的だったのです」
ではそんな絶望的な状況からどうやって人類は生き残ったのか、一同の脳裏に疑問符が浮かぶ。そしてその答えを宮内は口にした。
「ではそれほどまでに強大なヴァンパイアを前にどうやって人類は生き延びたのか。それは彼らが地球環境に適応できなかったからです」
聞きなれたようで、全く聞きなれない単語が出てきた。
ヴァンパイア。
空想上の生き物で、だれもが現実にはいないと思っていた。
だがここにいる全員、いや、人類のほとんどがその名前を聞いたことはある。
「ヴァンパイア、別名『吸血鬼』と呼ばれる存在は誰もが一度は聞いたことがあるはずです。古くから童話などで語られてきましたが、一番有名なのはやはり『赤い霧伝説』でしょう」
赤い霧伝説。
それもまた誰もが聞いたことのある話であった。
しかしたかが伝説、だれも本気にしてなどいなかった。
そんな空想の産物だと思っていたヴァンパイアがここで語られている。その現実に一同は困惑した。
「では、赤い霧伝説というものがどういうものなのか、現状連邦政府および参謀本部が認識している範囲内で説明します。皆さまが知っているものとはかなり違うのでその点はご理解ください」
そこまでいうと宮内は、壇上の機器を操作して会議室前方にある大画面に映像を出力して話をつづけた。
「赤い霧伝説というのは、だれもが一度は聞いたことがあるでしょう。それがヴァンパイアと密接にかかわっているということも含めて。今から約六百年前、当時まだ地球連邦という一つの連邦国家が存在しなかった時代、各地で小国が林立し、共存と対立を繰り返していました。…具体的にいつなのかは今でもわかっていませんが、突如として彼らはやってきたのです」
画面に当時の状況を絵としてあらわした画像が表示される。
赤く霧がかかった空、海は激しくうなり、大地が揺らぐ。
そして何よりもっとも印象的に描かれているのが、銀色の宇宙船のようなもの、さらには戦車に似た影までかかれている。
その近くでは銃を持って戦う複数の人々。
絵ではあったものの、写真に負けず劣らずの臨場感をもって当時の混沌とした様子が描かれている。
「ヴァンパイアがやってくる数年前から嵐や地震、火山の噴火などの大災害が頻発していました。一説にそれが前兆だという見方もありますが、当時の多くの国々がそれら災害で疲弊していたのです。そんなさなか空から無数の宇宙船のようなものが降下してきて、地上にいる人々を攻撃し始めたのです。記録が残っているものだけでも、強力な重火器を有しており、戦車や飛行機などの近代兵器を駆使して攻撃してきたとのことです。当時の地球ではようやく初期の銃が生産できるようになった程度の技術力しかなかったため、ヴァンパイアの軍隊にまったくもって歯が立ちませんでした。ヴァンパイアの襲撃は世界中で確認されており、圧倒的な戦力の前にいくつもの国々が消滅していきました」
ヴァンパイアの襲撃。
これは赤い霧伝説の一幕としてよく語られる内容だ。
しかしヴァンパイアが戦車や飛行機などを使うという話は誰も聞いたことがない。
長い牙をもち、日の光が苦手で生き物の生き血を吸い、霧に紛れて夜を生きるという、多くの人が知る有名な特徴からはかけ離れている。
「のちの調査などによって、ヴァンパイアは最大で地球上の陸地の九割近くを占領していたとされています」
地球上のほとんどを支配したヴァンパイア。空から降ってきた侵略者たちが地球を占領する話。
どこか荒唐無稽で突拍子もない印象を受けた一同ではあったが、目の前の参謀が現に話しているという事実の前に混乱する様子を隠せない。
すると暁たちの前に座っていた将官の一人が手を上げ、宮内に質問した。
「では、その時人類はどうしたのですか?ヴァンパイアが地球を支配したとしたら、今ここにいる私たちはいないはずです。つまり、人類はヴァンパイアを倒すことが出来たのですか?」
宮内は質問の内容に少し感心したようにうなずき、口を開いた。
「そう、実はそこが本題にかかわってくるのです。いい目の付け所ですね」
「あ、ありがとうございます…」
質問した将官が少し照れ臭そうにしているのをよそに、宮内は画像に新たな映像を映し出す。そこには青い地球を描いた旗が映っていた。
「ヴァンパイアの攻撃を前に人類は団結することを決めました。同じ人類同志争っている場合ではないですからね。そこで誕生したのが『多国籍連合』という、残存する人類国家同士の同盟です。今画面に映っているのがその同盟の旗です」
皆の視線が同盟の旗に集中する。
「当初は各国家同士の争いなどでなかなか団結することができなかったようですが、すぐそこまでヴァンパイアという脅威が迫っていた以上最終的にはほとんどの国が条約を締結し加盟国になりました。それにより各国家間にける物資、兵力、情報の伝達が速やかに行われるようになり、人類としてよりヴァンパイアたちの進撃に抵抗できるようになったのです。しかし…」
強力な敵を前に団結する人類。そこまでの流れはよかったものの、宮内が含みのある言い方で雲行きが怪しくなる。
「残念ながらヴァンパイアの軍事力は圧倒的なものであり、人類同志の団結などあってないようなものでした。
原始的な銃器しか持たなかった人類はヴァンパイア軍の侵攻を食い止めることはできず、山岳などに立てこもっての遊撃戦を行うなどの限られた抵抗しかできませんでした。
人類の滅亡はすぐそこまで迫ってきており、当時の人々はそれが最後の審判であるとか、神の裁きであるとかいっていたようです。それほどまでに、当時の状況は凄惨を極め、絶望的だったのです」
ではそんな絶望的な状況からどうやって人類は生き残ったのか、一同の脳裏に疑問符が浮かぶ。そしてその答えを宮内は口にした。
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