見習いサキュバス学院の転入生【R18】

悠々天使

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2章 粛清と祭

第34話 愛するサキュバスへの贈り物

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 ここからは物語の都合上、生田目アカリのモノローグでお送りします。


 ⭐︎


 なんで私が……っ!



 ……っと、セイシまりんには言ってみたものの、ちゆちゃんの一大事なんだったら私もひと肌脱ぐかと思った。


 何があったんだろ?


 今日のショッピングで、ちゆちゃんはもうマブダチって言ってもいいくらい仲良くなっている。

 ほんと天使って感じだ。


 ……悪魔だけどね。


 ちゆちゃんは、私が成体サキュバスになってから初めてできた友達だと思う。

 セイシも友達っちゃ友達かもだけど、正直何を考えてるのか全く読めないからちょい怖いところがある。

 私の事も、実はそんなに好きじゃない気がする。

 女好きな男ではあるから、ちょっと近付いたらすぐ興奮しちゃってバカなんだけどね。

 性欲的な点では私のこと好きなんだろうなぁ。ほら、私って可愛いし、仕方ないよね。

 それに、なんか絶倫?らしいし……。

 セイシって、サキュバスに搾精されても死なないのかな?

 そんなわけ無い、……よね?

 ゆかは天使だったわけだし、ちゆちゃんは低級悪魔でアレだし、……吸えないし。


 どうなんだろ?


 成体にならないと本格的に吸えないはずだから、吸われたことないはずだけど、どうなんだろう。

 ……私だったら吸える。

 前みたいにお口で吸うか、おまん……こか。

 そういえば、サキュバスになってから夢の中でしか生気を吸わせてもらっていない。


 現実で一回吸ってみよっかなぁ……。


 べつに大丈夫だよね、味見くらい。

 でもにバレたら怒られるんだろうなぁと思う。

 でもセイシが黙ってればバレないはずだ。

 そもそも私らって、夢魔のくせに実体持ってるのがおかしいんだよね。

 なんでリアルでも吸えるのかほんと謎だ。

 ……ぶっちゃけリアルで吸いたい。

 どうしよ、なんか股がむずむずしてきた。

 今触ったら気持ちいいかも。

 ヤバ、オナニーしたくなってきた。

 がまん!

 我慢しなきゃ!いまはちゆちゃんの夢の中なんだから。

 がー、まー、んー。

 そもそも、ちゆちゃんがいなかったら、サキュバス化抑制のために、私のしっぽ吸わせる予定だったし、ちょっとくらいならいいはずだ。

 でも私とちゆちゃんだったら、やっぱりちゆちゃん選ぶのかなぁ……

 って、何を選ばれたがってるんだ。


 冷静になれ私っ!


 ……で、それはおいといて、今の状況だけど、私はついさっきちゆちゃんの夢の中に入ってきたところで、今はちゆちゃんの意識の深層に潜ってる最中なわけね。

 これはサキュバスになったら分かるんだけど、意識には階層みたいなものがあって、薄い部分は現実に近くて、深層に入ればどんどん混沌としてくる。

 普段の夢に近付くって感じかな。

 ここで意識をしっかり保ってないと、飲まれてその人の夢空間から出られなくなるの。

 実は初めて入るのって、夢魔にとってはけっこう冒険なのよね。

 まぁちゆちゃんだから大丈夫なはず。

 ちなみに、倉庫の空間はそのまま残してある。

 というのも、空間の連結をした方が、2人をちゆちゃんが呼びやすいと思うからだ。

 夢空間に関しては、一応マリンも生成できるけど、あの子、細かい作業が下手だから危険なのよね。

 私より先輩なのに先輩感ゼロで困るわ。

 人見知りだし、明るさを履き違えてるし、でもセイシと仲良くなってたな。

 ……なんでだろ?

 私なんて、この仕事が無かったら絶対仲良くなれなかったのに。

 やっぱり男だから?

 いやいや、そんな単純な子じゃない。

 マリンと相性がいい男なんているわけない。

 ……ってのは言い過ぎだけど、セイシ絶対なんかやったよねぇ。

 搾精許可を出したとか?……ないないない、そんな許可なんてされたら逆にキレる。

 なんかカラクリがあるはず。

 ま、あとで聞いてみよ。

 それより今は階層降りるのに集中しなきゃ。

 私は実のところ他人の夢に入り慣れているわけではない。

 夢魔としての活動は、セイシが転入したあの日からだから、ほんとに短い。

 階層の降り方はもうマスターしたけど、取り込まれた時の対策方法は数パターンしか知らないし、実践経験が足りない。

 できれば、マブダチに取り込まれるのは避けたいな。

 とか何とか思っていると、どうも深層に近付いてきたみたいだ。


 さて、ここは?


 星空のような空間を抜けて、霧の中のように視界が遮られる。


 見えてきたのは、教室だ。


 ちゆちゃんが、何かの教科のテストを受けている。

 私は教室の隅っこに降りて来て、皆んなの背中を眺めているような状況だ。


 生徒の中には私もいる。


 ちゆちゃんのイメージの私なので、何だか全然実物とは違って見えるが、席の位置とか、黒髪ポニーテールとか、使ってる筆箱とか、鞄のミニマスコットホルダーとか見ると明らかに私だ。

 何故か大きな赤いツノが2つ生えていて、手足が長くてやたらグラマーだった。

 絶対身長180くらいあるぞ、あの私。

 肩に最強って漢字でタトゥーが彫られている。

 ちゆちゃんの夢の私は随分と強そうだ。

 他にも、ゆかやよもぎ、あやかさん、アゲハもいる。

 セイシもいるが、なぜかちゆちゃんの席の隣で机の上に座って腕を組みながらちゆちゃんの答案用紙を眺めている。

 いやいや、テスト中だよ。

 セイシそれは無いだろう。自分の席に座れよ。てかお前の座ってる机の子もテストやってるんだけど。

 用紙をずらして上手く解いている。

 なんか文句言えし……。

 良く見ると、セイシがやたら美化されていて、髪型がロン毛という程ではないものの、長めでホスト風のツンツンになっている。

 金色のピアスを耳に開けているし、メイクも上手い。

 てか現実ではメイクなんてしてない。

 目が切れ長で、本人の面影がもうほぼ無くなっている。

 でも確かにセイシではある。

 ちゆちゃんの見える世界というか、単なる妄想を見せつけられているようで恥ずかしくなってきた。

 すると、セイシがやたら低音で語尾を伸ばした甘い声で話し出した。


「わおっ!さすが僕らのアイドルちゆ、キミのテストに向かう真剣な姿は、まるで、朝日を浴びる丘一面の中に咲く、可憐な白いヒヤシンスのようだ」


 なんて事いってんだアイツは。


「そうかなー!ちゆ、ヒヤシンスかなぁ!」

 ちゆちゃんが喜んでいる。

「もちろんそうさ、をっと、ヒヤシンスはただの比喩。キミの美しさを表現しただけに過ぎないさ。現実のキミは、その1000倍、いや、1億千兆倍は素敵さ」

「そっかなー、あ、お兄ちゃん、この問題の答え、合ってる?見てみて」

「おや、大正解だっ!こんな難しい問題も難なく解けるなんて、これは世界ウルトラ大平和賞を受賞する日も近いかもね」

 テスト中にテストの答え合わせをする奴があるか?

 世界ウルトラ大平和賞についてはもうどうでもいいわ。

「えへへー、ちゆがどうしてこんなに100点取れる様になったか気になる?」

 もう100点取ってるんだ。問題まだ残ってるのに。

「なんだって?僕にそんな世界の企業秘密を話してしまって、闇の組織に狙われないかい?」

「ぬふふふ、だいじょうだよ。ちゆ、今お兄ちゃんの部屋に住んでるから」

 セイシが笑顔になる。

「そっか。なら平気だね」

 なんで!?

「ちゆねー、右利きでしょ?」

 ちゆちゃんがセイシに右手の平を見せる。

 良く見ると、左手にシャーペンを握っている。

「そうだね。ちゆの右手から生まれる数々のレシピを僕は見てきたから、右利きだということは知っているさ」

「そうでしょ?今はね、左手で答案を書いてるんだ」

「なんだって!?」

「「「「「えぇえええ!」」」」」

 セイシもクラスのみんな、ちなみにグラマーな方の私も含めて驚いている。

「ふふふー、だから、100点になっちゃったんだ」

「なるほど、それなら納得だね」

「でしょー?」

 訳がわからない。

「全く、ちゆはいつもそうやって僕らを喜ばせてくれる。僕は不安だよ」

「どうして?」

「いつかキミが、僕のそばを離れてしまうかもしれないと思うと、うぅ」

「「「「「「「うぇーん、かなしいよー」」」」」」」

 セイシが泣くと、クラスも一斉に泣き始める。

 打ち合わせでもしてるのか?

「大丈夫、ちゆ、皆んなといっしょだよ!だから泣かないで、ほら踊ってあげるから!」

 ちゆちゃんが席から立つと、クルクル回って足でリズムを取って歌い出した。

「みんな~♫ ちゆはー、みんなといっしょー♬ みんな大好きー、たのしい学院せいかつをー、送りたいぃいー、ふんふんふーん、あいらぶゆー、ふふーん♫」

 リズムが合ってるのか合ってないのか分からないダンスを10秒くらいして、急に止まると、拍手喝采が起こった。

「「「「すごいちゆちゃん、ダンスできるんだ」」」」

「隠しててごめんね」

 ちゆがお辞儀をしてまた座る。

「ありがとうちゆちゃん、僕らのために、隠していたダンスまで披露してくれて」

「ふふふー、特別だよー?」

 特別なんだ。なんで隠してたんだろう。

「ちゆ、キミの愛らしさは、全世界で2番目の幸せを掴むのにふさわしいだろうね」

「ぇえー!世界で2番目なんだー!?じゃあ、1番はだれー?ゆかさん?」

 セイシが、目を閉じて口を尖らせ、「ちっちっち」と、人差し指を左右に振る。

 動きがゆっくりで優雅に見える。

「世界で1番の幸せを掴むのは僕さ」

「ふーん?なんで?世界で1番のヒヤシンスのちゆに、おーしーえーてっ」

 世界で1番ヒヤシンスって何ぞ?

 セイシが少し顔を上げ、やたらと艶っぽい仕草でちゆの顎に触れると、囁く様にちゆに答えを告げる。

「フッフッ、それはね?全宇宙で、1番素敵なちゆのことを、1番近くで愛することができる僕が、1番幸せに決まっているじゃないか」


「「「「「「「きゃああぁー!」」」」」」」


 と、周りの生徒と、ついでに教壇に立っていた辻先生も嬉しそうに叫んだ。


 全世界から、全宇宙にランクアップしていて結構なことだ。

 色々と突っ込みたいけど、特に問題もないのに他人の夢に出しゃばっていくのは、いくら夢魔とは言え行儀が良くないだろう。

 ちゆちゃんがそれに対して意外な反応をする。

 顎に触れる手を振り払って、セイシに背を向けるちゆちゃん。

「やめて!こんな人がいっぱいいるところで」

「ちゆ、どうかしたかい?」

「そういうのは、ちゃんと結婚してから言って!」


 ちゆちゃんがそういうと、急にシーンが切り替わる。


 気付くと外にいて、白いチャペルで、白いウエディングドレスを着たちゆと、タキシード姿のセイシが向き合っている。


 大きな鐘が2人の背景に吊られていて、リンゴーンと、音を立てている。

 クラスの皆んながそのまま参列していて、2人を祝福している。

 花びらが散り、陽の光に照らされるちゆちゃん達。

「おめでとう」「お似合いね」「綺麗」「カッコいい!」「こうなるって知ってたんだー」「幸せになりなよー」

 その中には、やはりツノが立派な私も混ざっている。


 すると、司式者らしきお爺さんが口を開く。

「では、誓いのキスを」


 ちゆちゃんがセイシを抱きしめる。

「お兄ちゃん!幸せになろうね!」


 強く抱きしめ合い、舌を絡め合う深いキスをする2人。


 見惚れていると、キスをする2人の間から急にブーケが飛んできて私の顔に当たる。



「痛てっ!」



 私がブーケを顔から引き離すと、室内で窓の外は夜になっている。



 たぶん、ラブホテルの一室で、室内の3分の2くらいがダブルベッドで埋まっている。

 枕元に明かりを調節できるコントロールパネルが付いていた。

 薄っすら枕元にあるライトがオレンジ色に光っていて、何となく状況が見えた。


 外の夜景が綺麗に見える。


 ベッドの上には裸でセイシが寝ていて、ちゆちゃんが彼のペニスを丁寧に舐めていた。


 これは、結婚初夜だろうか?

 さっきの夢の流れであれば、そんな感じはするが、教室から一気に式まで飛んだので、わりと経っているのかもしれない。

 それにしても淫美だ。


 羽根は綺麗に畳まれているが、悪魔の尻尾がピンピンに立ってビクビクしている。

 興奮しているようだ。

 ちゅぷちゅぷ、れろれろ、と、静かな空間にちゆちゃんのフェラチオの音が鳴り響く。

 セイシは身悶えながら、ちゆちゃんの頭を撫でていた。


「おにいひゃん、きもちー?」

「あぁ、すごいよちゆちゃん、僕の全てがキミの温かい口の中で爆発してしまいそうだ」

「んふふ、ばくはつさせちゃっていいよー、んちゅ、んむっ、んむ、れろれろー」

 セイシの話し方に違和感があって仕方ないが、これはあくまでちゆちゃんの想像上のセイシなのだから、仕方ない。

 それにしても、良く見ると、セイシのペニスの先、亀頭部分がハートの形になっていて、竿の部分も極端にツルツルでリアリティが無かった。

 夢の中だとちんぽも美化されているんだなーと思った。

 ……いやこれは美化じゃなくて単なるイメージにされてるのか。

 セイシの反応も女の子っぽい喘ぎで、リアルとは違っている。

 こういうところを見ると、やっぱり夢だと再認識される。


「ちゆちゃん、気持ちいいよ、イっても良いかい?キミに僕の愛を放出してしまっても構わないかい?」


「だーめっ!このまま、ちゆのおまんこに入れちゃうんだからねっ」

 ちゆちゃんが「よいしょっと」と、セイシに跨ると、腰を前後に動かして素股している。

「はぁ、はぁ、はぁ、きもちーよ、お兄ちゃんのおちんぽ、きもちー」

 ちゆちゃんが吐息を漏らして感じながら、ペニスの裏筋に自分の膣口を当て、くちゅくちゅと前後する。

 私はその光景に耐えられず、自分の股間に右手で触れてしまう。

 ヤバっ、触っちゃった。


 一度触ると歯止めが効かない。


 私は自分のショーツの中へ手を入れて、クリトリスに刺激を与える。

「あんっ」

 ヤバっ、と思い、左手で口を塞ぐ。

 バレなかったかなと、ちゆちゃんの様子を見る。

「あんっ、あんっ、お兄ちゃん、クリ、きもちー、ちゆのクリちゃん、すっごい気持ちいいよぉー」

 ホッとする。

 バレてなかったようだ。

 私は安心して右手の指で、クリトリスをいじり続けた。

 ちょうどちゆちゃんとシンクロするようにクリトリスに刺激を与えている。

 こうすると本当に感情移入が出来て気持ちいい。

 けど、自分のを刺激しながら思う。



 べつに、……バレても良くね?



 私はちゆちゃんを起こしに来たのであって、ちゆちゃんのセックスを見ながらオナニーをしに来たのではない。


 そんなことは分かっている。



 ……分かってはいるが……。




 


「お兄ちゃん、ちゆのお股もくちゅくちゅって、あったまってきたから、そろそろ入れちゃうね。ふふっ、お兄ちゃんのおちんぽくん、頭がハートになってて興奮してるって言ってるみたい。可愛いね」

 ハートになってることはちゆちゃん本人も気付いている。

 夢だから違和感には気付かないみたいだ。

 ちゆちゃんがおまんこにペニスを挿入する。

「ぁん、あーっ、んっ、はい、って、くる、……んふぅ、おっきい、すごい、ううんっ」

 私も、その声を聞きながら、右手の中指と薬指を膣口に入れる。

「んっ、……入って、くる」

 呟くように吐息混じりで指を挿入した。

 ちゆちゃんを見ると、腰を上下に動かしている。

「んっ、んっ、あっ、んんっ、あっ」

 私もその上下に合わせて指を出し入れした。

「んっ、あっ、んっ、あ、やばっ、あっ」

 私は履いているズボンと下着が邪魔で、膝まで下ろした。

 下半身を立ったままで露出している。

 そして私の指はまんこを抜き差ししている。

 親友のちゆちゃんのセックスを見ながら興奮してオナニーする私。


 ……変態じゃん。


 早く起こさないといけないのに、コレ、もしかしてヤバくない?


「はぁっ、んっ、あっ、やば、やめられない、だめ、ゆび、抜くのやだ。もう、あんっ、はぁ、気持ちいい、気持ちいいんだけど……はぁん」


 私はオナニーを早くやめて、ちゆちゃんを起こしに行きたいのだが、自分の性欲に全然勝てる気がしなかった。


 ちゆちゃんが腰を上下に振るたびに、私の指も抜き差しされる。


 もはや、まるで自分の意思では無いかのようにそのシンクロをやめられない。

 私は壁にもたれ掛かっていたが、ゆっくりずり落ちるようにその場に座り込む。

 まさにM字開脚でまんこを弄っている。


 気持ち良過ぎて指の動きを止められない。

 くちゅくちゅくちゅ、ちゅぷちゅぷ、くちゅくちゅ、ちゅぷちゅぷ、くちゅくちゅ。

 ……止めなきゃ。


 とまれ!


 私の指!


 こらっ!


 動くな、私の指、苦しい、切ない、止められない。

 ちゆちゃんの喘ぎ声が聞こえる。

「ぁあんっ!すごいよぉー、おちんぽ、あーぁん、あんっ、あんっ、あんっ」

 ちゆちゃんの腰に合わせて自動的に動く指と化してしまった。


 私は自分の指を曲げてGスポットを刺激する。


 ちゆちゃんの動きで強制的に抜き差しする指。


 もうイク寸前で、気持ち良さで全身がポカポカ暖かい。



 私はこのまま、ちゆちゃんの夢の中に囚われてしまうのだろうか?


 私の思考が、夢魔の夢の中に溶け込んでいくのを感じる。

 もしかして、こんな風に夢魔は消えていくのだろうか?

 気持ち良さにあらがえず、ただ欲望のままに、最期を迎える。


 ……夢魔って、……なんだろう。




「お兄ちゃん!あっ!もう、イク、イク、いくうううううっ」


 私も、そのちゆちゃんの声に合わせて絶頂した。


 腰を突き出し、中指を膣奥でクリクリと動かす。




 あー、……気持ちいい。






 すっごい……気持ちいいよ。






 夢見心地って、ほんとのヤツはコレのことだよね。




 夢魔じゃないとこんな気持ちいいオナニーは体験できなかった。



 でも、これって何オナニー?



 ちゆちゃんに興奮してたってこと?



 なんでもいいや、気持ち良かったし。


 身体がぽかぽか。


 くちゅくちゅ気持ちいい。





 このまま眠っちゃおうかなぁ……。









 私、どうなっちゃうんだろう……。








「お兄ちゃん!!?」





 ちゆちゃんがセイシに叫んだ。


 びっくりして飛び起きる。


 なに?なに?今の叫びはかなりヤバ気だった。



「お兄ちゃん、ごめんなさい!ちゆが、生気吸っちゃったから、ねぇ、起きて、お兄ちゃん、起きて!」


 ちゆちゃんがめちゃくちゃ焦っている。


 さっきまでの楽しそうなちゆちゃんとは一変して、鬼気迫る雰囲気だ。


 おかげで私も完全に覚醒した。


 頭の中は完全にデーモンハンターのモードだ。



 ……下半身は丸出しだけど。



 私は自分のねっとりとした愛液の付いた指を眺める。


 くちっくちっ、と、いやらしい音が鳴る。

 ティッシュが見当たらない。

 夢の中だし、何で拭いてもいいかなとは思ったが、何となく愛液を舐めてみた。


「ちゅぷっ、んっ、んーっ、れろれろ、んっ」


 ちゅぽんっと、指から口を外す。


 あんまり味はしない。ちょい塩気があるような、苦いような感じ。

 現実では自分の愛液を舐めるなんて考えられなかったが、これも夢魔の夢の影響なのだろうか?


 私は綺麗に愛液が取れた、唾液でキラキラしてる指を握ったり開いたりして眺める。

 明るい青のマグネットネイルが、角度を変えるとオレンジ色に光る。

 ネイルを見ると、何となく気分が落ち着く。


 うん、可愛い!



 よしっ!



 起こすぞっ!




 私はショーツとズボンを履くと、しくしく泣いているちゆちゃんに近付いた。



「ちーゆちゃんっ!」



 できるだけ明るく声を掛けてみる。


 ビクッ、と、ちゆちゃんの肩が震える。


 泣いている裸の少女が私の方を見る。


 あまりに悲壮感のある表情なので、一緒に泣きそうになった。


 こんな泣き顔を見せられたら、軽い気持ちにはなれそうもない。


「あかりちゃん!お兄ちゃんが、お兄ちゃんが!!」

「……大丈夫、その人はセイシじゃない」

 私はゆっくり優しく教えてあげた。

 すると、今更驚いたのか、キョトンとした表情になるちゆちゃん。

「へ?どういうこと?……てか、アカリちゃん何でここに?」

「ちゆちゃん、私が夢に招待したんだけど、覚えてない?」


「え?夢?どういうこと?」


「ここ、ちゆちゃんの夢の中だよ?」


「うそーっ!」


「ほんとほんと、わざわざ起こすために入ってきたんだから」

「ここ、現実じゃないの?」

「ちがうって、夢だよ夢!ほらっ、気を確かに持って」

「うぅ、そう言えば、今、話してるあかりちゃん、さっきの教室のあかりちゃんより小さいし、怖くない気がする」

 あぁ、あの私はたしかにヤバい。

 デカいしツノあるし、タトゥー入ってるし。

「そうそ、現実の私の見た目してるでしょ?」

「うん、ほんとだ!あかりちゃんだ!わーい」

 抱きついてくるちゆちゃん。

 ドスっと、身体に勢いよく当たる。

 ちゆちゃんって誰にでもこうなのかな?

 裸の美少女と抱き合うことは、さすがの私と言えどもそんなに経験はないので、何となくドキドキした。

 つい腰を抱き寄せてしまったけど、この右手、さっきまで私の愛液でベットベトだったんだよねぇ……。

 ちょい罪悪感。

 ま、ちゆちゃんだし許してくれるかな?


「ちゆちゃん、もう大丈夫?」


「うん、夢って分かったから、平気。よくみたら、お兄ちゃんじゃなかったし、そもそもちゆ、生気吸えなかった!」

「だよね、でも、夢の中のセイシ、現実よりかなりイケメンっていうか、違うよね」

「えへへー、そっかなぁ。お兄ちゃん、こんなのよりもっとイケメンだし、カッコいいよ。なんか、夢の中だといつも変なんだよねー、お兄ちゃん」

「でも結婚してたよね」

「うん、アレは結婚ごっこだよ」

「ごっこ……」

 さっきの叫びは本物だったと思うけど、それに、最初は夢を現実だと思ってたし。

「でもあかりちゃんって、本物の方が100倍可愛いね!」


「なっ!?」


 胸がきゅーんとなった。


 ヤバい嬉しい。


 何コレ、私、ちゆちゃんに恋してる?


 え?私って女の子相手でもいけたっけ?

 むりでしょ?

 ちゆちゃんならイケるの?嘘でしょ?

 自分が信じられない。


 私はちゆちゃんを強く抱きしめる。


「あかりちゃん。くるしい」

「ご、ごめん、嬉しくてつい」

 緩める私。

「ねぇ、お兄ちゃんどこにいるの?」

「私の夢にいるよ、ここに呼ぶことも出来るけど、一回私の夢に戻ろっか。連結してるから」

「うん!そうする!」

 ちゆちゃんがチラッと、横になっている夢のセイシを見る。

 不安そうな顔だ。


 ……たぶん、自分が生気を吸って動かなくなったという恐怖心が消えてないんだろう。



 そりゃあ怖いと、私も思う。



 だって、自分の愛する人が、自分が愛したことで動かなくなるなんて、そんな事、不幸でしかない。




 そのことを、私は知っている。





 だって、私のお母さんが、それを現実で経験していたのだから……。




 そう、セイシ達に話した、私のお母さんの話は、本当のことだ。



 お母さんが、お父さんと出会ってから、でセックスをした相手はお父さんだけだ。


 母さんは、生気が足りなくなっても、父さんだけを愛し続けた。

 サキュバスにとって、1人の男のみで生気を全てまかなうのはほぼ不可能だ。

 毎日3~4人は吸精きゅうせいが必要だった。

 ちなみにこの数は、生気を吸い切らないという前提の人数だ。

 吸い切るのであれば、2~3日に1人でも何とか持ち堪えられる。

 でも、それは持ち堪えられるというだけで、そのスパンでは、常に欠乏感と闘うことになる。

 だから、普通の人間の男では、サキュバスと同棲、もしくは結婚なんて有り得ないわけだ。

 だけど、ママ、お母さんは、それをやろうとした。

 父への愛情ゆえに、サキュバスの本質へ命懸けの挑戦をしたのだ。


 そして一度、母さんは、……死にかけた。

 母さんは病気がちになり、寝込むことが増え、日に日に身体が衰えていった。

 見てられず、父さんは母さんに言った。


 から、男とセックスをしてくれと……。



 初めは拒否していたが、寝ていたところに、両手を握られ懇願され、ついに母さんは折れてその要望を受けた。



 生きて欲しいと願う、父さんのために。



 母さんは、禍根かこんを残さないために、過去に会ったことのある、1番人気のあるホストに声を掛けて、夢の中で抱いて貰ったらしい。


 せめて夢の中でならと、母さんは一線を引く事にしたのだ。


 母さんが、彼を選んだ理由はこうだ。

 そのホストは、毎日複数人の女の子を抱いていた。

 だから、彼が自分の事を好きになって追いかけてくる心配は無かったのだ。


 実際に、彼に抱かれたとしても、その後に彼から連絡がくる事は無かった。


 母さんは美人だが、彼にとっては取るに足らない女だったということだ。


 父さんは泣いて喜んでくれた。


 生きていてくれて、ありがとうと……。

 母さんは、そんな父さんを、とても複雑な思いで見ていたそうだ。

 私が9歳の頃、母さんが初めて私に本心を話した。


『パパのことが、分からない』


 私には、父さんが分からない母さんの気持ちの方が不思議だった。

 私は母さんにこう言った。

『そんなの、パパの愛に決まってるじゃん、ママのことを愛しているから、他の男としても許してるんでしょ?』

 それに、夢の中だったら、言わなきゃ分かんないし。

 ……と、私は何も疑問に持たなかった。

 当時は、お父さんのことが好き過ぎて、母さんの気持ちを軽く考えていたと思う。

 それほど母さんの心の傷は深かった。



 人間の男にとって、夢魔が夢の中でセックスすることは、浮気としてはカウントしにくいのかも知れないが、夢魔に取っては話しは違う。

 夢魔は夢の住人。

 実体でセックスをしようとも、夢でセックスしようとも、ほとんど同じ意味の性交渉なのだ。

 その証拠に、夢魔は夢の中のセックスでも妊娠できる。

 実体を持たない夢魔も存在するのだから、それは当たり前だ。

 ある意味で悲劇と言えるのが、夢魔にとっては夢も、現実の一部なのに対し、人間にとっては全く別物だということだ。


 母さんはそれ以来、父さんに少しよそよそしくなり、罪悪感を持ってしまった。


 父さんは、あまり近付いてこない母さんの態度に寂しさがあったのか、声を掛けることが増えた。

 今までは、母さんから父さんに相談することが常だったのに、それ以来、父さんから母さんに相談することの方が遥かに多くなった。

 ちなみに私はパパ大好きっ子なので、暇があればベタベタくっ付いてたけどね。

 父さんの膝の上に座って学校の宿題をしていたのを覚えている。

 何ヶ月か経って、父さんが、母さんに2人の温泉旅行を計画した。

 母さんは複雑そうな顔をしていた。

『2泊3日って……あかりも連れていくよね?』

 と、聞いた母さんに対し、父さんは言った。

『旅行の間、うちの実家で、あかりを預かってくれることになったんだ。だから、久しぶりに2人だけで楽しもう』

 その時の父さんの嬉しそうな顔は、今でも忘れられない。

 あんなに幸せそうな顔を見たのは、いつ以来だろうと、9歳の私は思った。


 子どもの私には、その時の母さんの顔は、あまり楽しそうには見えなかった。



 そして、遂にあの日が来た。



 旅行から戻ったのは、母さん1人。


 その日の母さんは、今までで一番だった。

 キラキラしてて、肌艶が良くて、凄く若々しくて、別人のように見えた。


 だけど、表情は暗かった。


 なぜこんなに身体は元気そうなのにツラそうなんだろう?

 私は疑問だった。


『あれ?パパは?』


 無邪気に聞いたその言葉は、母さんにとってどれほどキツイひと言だっただろうと、今思うと胸が痛む。


『父さんね、旅行先で、出張のお仕事が決まってね、しばらく帰って来ないのよ』

『そーなんだ、じゃあ、帰ってくるまでに、パパに買ってもらった光るジグソーパズル完成させるね』

 そんな会話をしたことを覚えている。

『母さん、旅行、楽しかった?』

 そう聞くと、母さんは、私を抱きしめて号泣した。

『どうしたの?ママ、楽しくなかったの?』

 母さんは首を横に振る。

 だけど、号泣は収まらない。

『ううん、ママね、すっごい楽しかったの』

『ほんとに?』

『うん、今まででね、1番幸せだった』

『そっか、……良かったね!』

『ママね、パパのこと、大好きなの』

『へぇー!あかりも、パパ大好きだよ!……そうだっ、一緒に光るジグソーパズルやろうよ、パパが、コレを完成させたら、頭が良くなるって言ってたんだぁ』

『そうなの?……じゃあ、ママと一緒に頭良くなろうね』

『うん!!』



 その日は、母さんがずっと泣いていたので、当時子どもだった私は、パズルで集中すれば泣き止むと思ったのかも知れない。


 後から聞いた話では、旅行の初日、旅館で父さんと2人で露天風呂に入ったようで、私の産まれた時の話をしながら抱き合っていたら、そのまま始まってしまったらしい。

 2人だけの空間というのが久しぶりで、お風呂で一度射精した後、部屋に戻って更に一発。

 そこから、何度も射精し、気付いたら朝になっていたそうだ。

 母さんはあまりにも興奮していて、父さんの状態を確認することなく、ただただ騎乗位で腰を振り続けたそうだ。

 そして、その日の夕方。

 母さんが最後の絶頂を迎えた時、満足してハッとしたそうだ。

 しかし、その時にはもう遅かった。

 下を見ると、父さんが幸せそうに眠っていた。

 生気を吸い尽くしてしまったのだ。

 あんなに気をつけていたのに、しばらく避けていた事もあって、興奮し過ぎていたそうだ。


 母さんは絶望した。


 なんて事をしてしまったんだと、後悔が波のように訪れる。


 だが、その父さんの寝顔があまりにも美しく、しばらく腰を振り続けてしまったそうだ。


 母さんは、サキュバスの本質に対抗したが、敗北したのだ。




 もちろん、子どもの私に、そんなことが分かるはずもなく、そこから3年間は、真相を知る事はなく過ごした。



 それが、私の10歳の誕生日の出来事だ。





 ちなみに、光るジグソーパズルはママと一緒にやっても完成しなかった。







 だから私は未だに、頭は良くない。
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