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ダイエットサプリ2

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[ファット@かた 20XX年6月14日 21:34]
 管理人かんりにんさまがた、優しいお言葉ありがとうございます。続きを語らせていただきます。

 Kと会った日から、数日経ち、年が明けました。私はしばし、学業から解放され、お正月だからとお決まりの言い訳をとなえつつ、餅におせちに、みかん、お菓子などをこたつでぬくぬくしながら、食べるという怠惰たいだな休みを過ごしました。
 そうなると気になるのは体重です。毎年毎年、またやってしまったと体重計の上で後悔するのですが、この年は違いました。なんとあんなにっちゃしたと言うのに、体重が増えていなかったのです。
 むしろ2、3キロ減っている気さえします。

 一体、どういうことなのか?
 おどろく私の脳裏のうりに、Kにもらったカプセルじょうのことがひらめきます。Kが説明した通り、そのサプリは飲むだけでせる、奇跡のダイエットサプリだったのです。私はあわてて、Kに連絡しました。

「あのサプリ、効果あったでしょ?」
「お正月に食っちゃ寝してたのに、体重増えなかった! すごい! どこで買えるの?」
「購入サイトのURL送るね!」

 Kはすぐに購入サイトを教えてくれました。

『飲むだけで痩せる!』『飲み始めた翌日から効果を実感!』『あの有名人も飲んでいるダイエットサプリ!』などなど、サイトには怪しい文言もんごんが並んでいました。すでに効果を知っている私は、躊躇ちゅうちょすることなく、早速、サプリを購入しました。
 思っていたよりも安い値段で販売されていて、学生の私でも買いやすいのにも好感が持てました。まずはと思って頼んだ3ヶ月分のサプリは、すぐに家に届きました。

 その日から、食後にダイエットサプリを1錠飲むという生活が始まりました。そこから、私はみるみる痩せていきました。
 最初の頃は1ヶ月に10キロ痩せました。急激に痩せたせいで、周りから病気を疑われたくらいです。

 それでも以前と変わらない食事をして、活発に動いている私を見て、病気の疑いは晴れ、一体、どんなダイエットしてるのと訊かれることが多くなりました。
 私はKのように気軽にダイエットサプリの存在を教える気にはなれませんでした。私にダイエット方法を訊いてくる人は、みんな痩せていて、可愛い子ばかりだったからです。

 このサプリは太っている子にこそ必要なものなのです。周りに広まって、品薄しなうすになったりして、私が買えなくなっても困りますし。

 これまで、運動や食事制限をしても痩せなかった体重が、サプリを飲むだけでスルスルと落ちていく。
 何か、体に悪いものでも入っているのかと不安になったりもしましたが、食欲はそれまでと変わらなかったし、体に異常もありません。少しだけ不安はありましたが、楽をして痩せられる。それだけで、不安には目をつぶれました。

 3ヶ月分のサプリを飲み終わり、私は迷わず、次の3ヶ月分を頼みました。
 サプリを飲み始めて。5ヶ月経った頃には私はすっかり、痩せた女の子になっていました。でも、でもなく、です。

 それだけ痩せると、周りの私を見る目も変わってきます。男の子たちは明らかに優しくなったし、おしゃれな女の子から話しかけられることも増えました。大学生活をこんなに楽しく過ごせて、私はKに感謝のメール送りました。

 けれど、Kから返事がくることはありませんでした。

[ゆいちゃん 20XX年6月14日 21:55]
 ますます、ゆいちゃんは痩せるサプリのことが気になりますっ!ゆいちゃんにも販売サイト教えてほしいな♪

れたサボテン 20XX年5月14日 21:57]
 痩せたら態度変わる男子もある意味ホラーだよね

[ファット@語り部 20XX年6月14日 22:07]
 Kから返事がないまま、1ヶ月経った頃、地元にKが戻ってきたらしいとうわさを聞きました。
 Kを目撃した人の話によると、高校の頃からは考えられないくらい痩せて、別人みたいだったと言うことです。Kが痩せていることはすでに知っていたので、それには何も思わなかったのですが、噂では、Kは精神病になって戻ってきたというのです。

 そんな話を聞いて、私はいてもたってもいられず、Kの家に行ってみることにしました。

 Kの家には高校生の頃に何度かお邪魔じゃましたことがあります。洒落しゃれた一軒家で、一人っ子のKは広い部屋を1人で自由に使っていました。当時の私はそれをうらやましく思ったものです。(私には妹がおり、当時は妹と2人で部屋を使っていました。)

 手土産にシュークリームを買って、Kの家に向かいます。つい1年ほど前のことなのに、Kの家へ向かう道は懐かしく感じました。
 噂なんて嘘で、インターホンを押したら元気なKが出てくるかもしれない。そもそも、Kだと思われた人はKじゃないかもしれない。私でさえ、痩せたKに気づかなかったのに、他の人が痩せた彼女を見て、すぐにKと気づくとは思えなかったのです。けれど、Kからの連絡が途絶とだえていることも事実です。

 インターホンを押すと、Kの母親が出てきました。高校の頃と比べると別人のように痩せてしまった私に、Kの母親は気がつきませんでした。
 私が名乗ると、「全然気づかなかったわ!」と言って、家に上げてくれました。

「Kのお見舞いに来てくれたの?」と母親は言いました。私は半信半疑だっただけに、その言葉を聞いて、噂は本当のことだったんだとショックを受けました。

「Kに会えますか?」と聞くと、母親はKの部屋に案内してくれました。
 Kの部屋の前にくると母親はドアをノックして、Kに声をかけます。

「Kちゃん、お友達がお見舞いに来てくれたわよ。開けていい?」

 扉の向こうから、がさっと音がしました。私は思わず声を上げていました。

「K! 私だよ、顔を見せてよ」

 私の言葉で、ドアが開かれました。ほんの数センチ開いた扉の隙間すきまからはやみが見え、何かすえたような臭いがただよってきます。私は思わず、顔をしかめてしまいました。

 すみません、途中ですが、ここで休憩します。ごめんなさい。

[トイレの華子@管理人 20XX年6月14日 22:14]
 大丈夫ですよ、ゆっくり休んでください。前にも言いましたが、ここはファットさんのスレッドです。あなたのペースで語ってください。

[ミイラおとこ透明人間とうめいにんげん@管理人 20XX年6月14日 22:22]
 華子も言ってますが、あなたのペースで大丈夫です。

[ファット@語り部 20XX年6月14日 22:24]
 ありがとうございます。今日は休んで、また明日、語りに来ます。
 おやすみなさい。

[夕暮れ 20XX年6月14日 22:34]
 明日も楽しみにしています。ゆっくり休んでください。
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