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3 おれ
カミヲモトメヨ
しおりを挟むかみさまが戻られた
かみさまが地に降りられた
御使いを決められた
それを夢に見た巫は心の底から嬉しくて、共に生きてきた祭司たちへ告げた
けれど問題もあった
ヒトがかみさまを狙っている
化獣になることを恐れるあまり、ケモノとしての在り方すら忘れた劣等どもがかみさまを手に入れようとしている
かみさまに愛されていたケモノは数を減らしてしまった
世界に散り散りになってしまった
悪いものを受け入れることを恐れるあまり、化獣になることを恐れるヒトになってしまった
ヒトにかみさまを奪われる訳にはいかない
けれどヒトは数が多い
夢で見たかみさまの側にいる御使いは、武闘祭司ではなかった
おそらく儀典祭司の血筋であり、かみさまを守りきれないだろう
かみさまの器を再び壊されてしまえば、二度と戻ってきてくださることはないだろう
ただひとつ星がそう告げた
世界中を探せ
かみさまを、御使いを探せ
間に合うようにかみさまを見つけるのだ
こんどこそ、我々はかみさまを守らねばならぬのだから
かみさまが我々を愛して慈しんで下さるように、我々もかみさまを愛して慈しもうではないか
どうかかみさま、我らに見つけられてください
どうかかみさま、我らに愛されてください
どうかかみさま、我らをもう一度だけ受け入れてください
悪いものを我らは受け入れてしまった
けれど、化獣であっても我らはかみさまを愛している
かみさまに愛されたい
腹の奥で蠢く悪いものを燃料に、祭司たちは世界を求め歩き
いずれの日にか、かみさまに出会うその時を心待ちに、歩みを止めはしない
巫はまどろみながら夢を見る
目覚めた時には、かみさまが御使いを慈しんで下さる喜びの日々を語る
御使いがかみさまのために日々を過ごすことのできる誉を語る
御使いが世界から引き受けた悪いものをかみさまが浄化して、かみさまの姿が変わっていくことは良いことなのか悪いことなのか
そればかりは巫にも分からぬけれど
暗く澱んで霞んでいた世界は、かみさまが歩んだ部分だけ真っ白で真っ新な美しい姿を取り戻していくのだ
どうか、我々に見つけられてください
どうか、我々に守らせてください
いつかその時のために化獣になることを受け入れた武闘祭司は、巫の喜びと嘆きを心に刻みこみながら歩む
神の麗しい艶姿を聞いた耳には、甘い声が聞こえるようで
神が己に甘えてくれたら、といつかを望む意思は巌のように強固になった
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