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悶々として鬱々たる日々に暗澹たる先々しか見えない
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はじめまして、お久しぶりです
毎度、前書きが長くて申し訳ないですが、短縮できない木です( ;∀;)
樹木系人外(触手じい様は生物系)を書いてない、と唐突に気がつきました
せっかくだから、世界一おっきくてすごそうな木(頭わるい)にしてみます
木に倫理観は必要ない!、と放り出す_(⌒(_´-ω-`)_ ・・・
というわけで、木×人=とりあえず殺戮?になりました
樹木には性器が無いのに、樹木姦で良いのか疑問が残りつつ、年齢(樹齢)差と体格(樹高)差はすごい
男性妊娠、出産可能の設定はありませんが、木が試したりします(痛いのはありません)
受的にはスローライフ、攻は楽しいスローター(slaughter・殺戮)ライフなので、匂わせの残酷表現がございます、描写はありませんが、一応ご注意ください
各話タイトルは〝木〟視点ですが、本文は〝少年〟視点です
ご来訪に感謝を捧げます
◆
当たる。
ぐ、と歯をかみしめた直後。
いつも以上の衝撃と音に襲われて、座り込んだ。
「あんたなんか、死ねば良いのよ!!」
「……」
「身代わりのくせに、あたくしの男に色目を使うなんて、なんて浅ましいの!」
「……っ」
言い返したいことは多いけれど、目の前をちかちかする光の残像と、叩かれた痛みでうまく声が出なかった。
といで染めた爪が当たって切れたのか、ほほがぴりぴりと痛む。
口の中や首を痛めないように、自分から後ろに向かって座り込んで正解だった。
さすが、成人お披露目の夜会のたった一晩で、淑女失格の烙印を押された義姉と感心するべきかな。
自分が淑女らしくふるまえないのを棚に上げ、すぐに手が出る気性の荒さと性格の悪さを隠せないと気づいたから、ぼくを身代わりにしたくせに。
どうしてうまくいくと思ったんだ。
初めに「無理だ」と言った。
容姿が似てないだけでなく、性別すら違う。
淑女教育を受けたことがないから、身代わりなんてできっこないと訴えただろ。
女装させられて義姉の身代わりをさせられていた、お披露目前の十四歳の子爵家嫡男。
それがぼくだ。
三年前に、義姉は初めての夜会で醜態をさらした、らしい。
その後、招待状もないのに恥ずかしげもなく参加したお茶会で、嫌味の嵐に遭遇して暴力沙汰を起こした。
自分が悪いのに反省せず、淑女教育も受けず、十一歳のぼくに義姉の名前を名乗らせるなんて暴挙にでた。
つまり、誤魔化せているはずがない。
ぼくと義姉の入れ替わりに気がつかなかった者は、直近の二年しか社交の場に出てなくて、他の貴族とつながりを持たない。
もしくは、目が見えなくて耳も聞こえない。
あとは、貴族社会の醜聞や政争に興味がない人。
そんな貴族はいない。
実際のところ、似ていない姉の名を名乗り、女性の格好をさせられていたぼくに向けられていた視線は、憐れみと好奇心がほとんどだった、と感じている。
誰も助けてくれなかったのは、低俗な見世物扱いだったからだろう。
ずっと耐えてきたけど、もう限界だ。
もう、こんな生活、うんざりだ。
「出ていけ、この泥棒猫!!」
「わかりました」
「いやなら下水の、え、なに?」
「失礼いたします」
貧しくても汚れても心は気高くあれ。
おかあさまからの教えを、ずっと胸に秘めて支えにしてきた。
でも、それだって限界がある。
ぼくは、男だ!
男に色目なんか使うわけないだろ。
酔っ払いの変態に抱きつかれたからつきとばしたのに、どうしてぼくが襲ったことになるんだ。
本当にそんな男を狙ってるとしたら、義姉の機嫌はこれからずっと悪化の一途で、破滅にも一直線ってことだ。
関わりたくない。
もう、嫌だ。
こんな家、出てく。
独学で学んだ女性礼ではなく、男性礼をとって、靴を脱ぎすてて走った。
踵の高い女性用舞踊靴を履くことは、拷問でしかなかった。
強要されてきた、ずきずきと終わらない痛みから解放された足は、驚くほど軽くて、どこまでも走っていける気がした。
全てを失っても構わないと思ってしまえば、なにもかもから解放された気分になれた。
おかあさまの喪が明けないうちに父が連れ込んだ義母、義姉との険悪になっていくばかりの関係も。
家を捨てたら、自分の価値が失われてしまう恐れも。
もう、いらない。
ぼくには、いらない。
なにもかも全てを必要ない、と決めるまでは、思い切るまではとても苦しかったけれど。
捨てられることを恐れるのに疲れ、終わらない痛みに耐え続けるより、自分から捨ててしまえ、と吹っ切れてしまえば。
なにも、怖くなくなった。
〝やけのやんぱち〟ってやつだ。
〝飲んだくれ〟の馬丁のおじさんが言ってた。
おかあさま亡き後に追いやられた屋根裏に飛び込んで、少ない下着と寝巻きと二着しかない着替えの片方を寝台の敷布の上に並べる。
他にも、使えそうなものを放り込んで、敷布の四隅を結べば、準備は万端だ。
外出が許されないから、鞄なんて持ってない。
本来なら一人で着脱するものではない拘束具の紐をほどいて、夜会用の服飾品、装飾品を全て脱ぎ捨てる。
誰も手伝ってくれないのに着ておかないと叩かれるから、自己流で覚えた甲斐があった、と初めて思った。
脱いだ諸々を売り飛ばして生活費にしたいけれど、義姉の服を盗んだと言われそうな予感がするから置いていく。
編み込んだ髪の毛はあとでなんとかするとして、顔に塗りたくった化粧を、濡らした布で擦って落とす。
二着のうちの一着、下女が捨てたものを拾って洗って繕った服を着て。
敷布の包みを背負って〝とんずらこく〟ことにした。
靴を手に、足音を忍ばせて裏口へ向かう。
まだ、屋敷の奥できーきーと叫ぶ声が聞こえるから、逃走の発覚まで時間が稼げるはずだ。
父がぼくを探す手間をかけない、に賭けたい。
裏口で馬丁のおじさんにもらった大きすぎる靴を履いて、裏門から抜け出すことに成功した。
あとは見つからないように、できる限り遠くに逃げるだけだ。
自分の足で歩けば良い。
女装もやめたい。
なんにせよ、外だ、外。
ぺかぺかとまたたく星が手提げ角灯の代わり。
新月の真っ暗な夜は、きっとぼくを隠してくれる。
こうしてぼくは、自分の人生を始めることに成功した。
万が一を考えて、夜明けまで歩き続けることに決めた。
襲われるかもという考えはなかった。
夜に、明かりも持たずに一人で歩く不審者に近づく夜盗はいないだろう。
いないと思う。
襲って儲けが出せる獲物は、しっかりした服装としっかりした荷物を持っているはずだ。
ぼくは色褪せた敷布の包みを背負って、ぼろ服を着てるだけ。
裕福には見えないはず。
おなか、すいたな。
夜会がある日は、義姉の代わりに拘束具で胴体をぎっちぎちに締め上げたまま、何曲も踊らないといけないから、吐かないように食事抜きだ。
夜会がない日だって、たいしたものは食べられないけど。
最後だと思えば、調理室でなにか拝借してくるべきだったかも。
ぐるぐると恨みがましい音をあげる腹をなでて、息をついた。
自由って、おなかがすくものらしい。
歩いて歩いて、街の壁に突き当たった。
夜間は門が閉じられていると聞いている。
朝の開門を待っていたら、逃げられなくなるかもしれない。
良くも悪くも義母と義姉の行動は一直線だ。
たぶん、機会は一度きりだ。
ここで逃げ出さないと、次は鎖にでも繋がれて飼い殺しにされそうだ。
嫌な予感は、たいていが当たるんだ。
壁の高さは、人を縦に二人積んだくらいかな。
男性の服を着ていても、ぼくの力で登って乗り越えるのは無理だろう。
見上げながら門があると思われる方向へ向かう。
歩いて家の敷地を出たことがないから、生まれてからずっと住んでいる街なのに土地勘がない。
門を見つけたので、急いでいる風を装って駆け込む。
「こんばんは、こんな時間にどうしたんだい、おじょうちゃん?」
門兵さんだと思う人は、明らかにぼくを警戒しているけれど、優しく声をかけてくれた。
夜に外に出たがる子供、もしくは女性がいないと反応で分かった。
どうしよう。
本当のことを言っても、通してもらえないだろうな。
「外に出たいの」
「緊急時以外、夜は門を開けられられないのさ」
「おねがいします、外に出たいの」
「そのお願いは聞けないな、詰所に、あっ」
門兵さんらしい人が背を向けた瞬間に、門の脇に見えていた、小さな通用扉らしき場所へ走った。
鍵が閉まっていたら、扉の向こうに人がいたら、逃避行は終わりだ。
捕まったら、どこの誰なのかを知られたら、ぼくの人生が終わる。
追い詰められている獣というのは、思いもしない反撃をする、と数日前に読んだ本に書いてあった。
きっと、今のぼくと同じように。
毎度、前書きが長くて申し訳ないですが、短縮できない木です( ;∀;)
樹木系人外(触手じい様は生物系)を書いてない、と唐突に気がつきました
せっかくだから、世界一おっきくてすごそうな木(頭わるい)にしてみます
木に倫理観は必要ない!、と放り出す_(⌒(_´-ω-`)_ ・・・
というわけで、木×人=とりあえず殺戮?になりました
樹木には性器が無いのに、樹木姦で良いのか疑問が残りつつ、年齢(樹齢)差と体格(樹高)差はすごい
男性妊娠、出産可能の設定はありませんが、木が試したりします(痛いのはありません)
受的にはスローライフ、攻は楽しいスローター(slaughter・殺戮)ライフなので、匂わせの残酷表現がございます、描写はありませんが、一応ご注意ください
各話タイトルは〝木〟視点ですが、本文は〝少年〟視点です
ご来訪に感謝を捧げます
◆
当たる。
ぐ、と歯をかみしめた直後。
いつも以上の衝撃と音に襲われて、座り込んだ。
「あんたなんか、死ねば良いのよ!!」
「……」
「身代わりのくせに、あたくしの男に色目を使うなんて、なんて浅ましいの!」
「……っ」
言い返したいことは多いけれど、目の前をちかちかする光の残像と、叩かれた痛みでうまく声が出なかった。
といで染めた爪が当たって切れたのか、ほほがぴりぴりと痛む。
口の中や首を痛めないように、自分から後ろに向かって座り込んで正解だった。
さすが、成人お披露目の夜会のたった一晩で、淑女失格の烙印を押された義姉と感心するべきかな。
自分が淑女らしくふるまえないのを棚に上げ、すぐに手が出る気性の荒さと性格の悪さを隠せないと気づいたから、ぼくを身代わりにしたくせに。
どうしてうまくいくと思ったんだ。
初めに「無理だ」と言った。
容姿が似てないだけでなく、性別すら違う。
淑女教育を受けたことがないから、身代わりなんてできっこないと訴えただろ。
女装させられて義姉の身代わりをさせられていた、お披露目前の十四歳の子爵家嫡男。
それがぼくだ。
三年前に、義姉は初めての夜会で醜態をさらした、らしい。
その後、招待状もないのに恥ずかしげもなく参加したお茶会で、嫌味の嵐に遭遇して暴力沙汰を起こした。
自分が悪いのに反省せず、淑女教育も受けず、十一歳のぼくに義姉の名前を名乗らせるなんて暴挙にでた。
つまり、誤魔化せているはずがない。
ぼくと義姉の入れ替わりに気がつかなかった者は、直近の二年しか社交の場に出てなくて、他の貴族とつながりを持たない。
もしくは、目が見えなくて耳も聞こえない。
あとは、貴族社会の醜聞や政争に興味がない人。
そんな貴族はいない。
実際のところ、似ていない姉の名を名乗り、女性の格好をさせられていたぼくに向けられていた視線は、憐れみと好奇心がほとんどだった、と感じている。
誰も助けてくれなかったのは、低俗な見世物扱いだったからだろう。
ずっと耐えてきたけど、もう限界だ。
もう、こんな生活、うんざりだ。
「出ていけ、この泥棒猫!!」
「わかりました」
「いやなら下水の、え、なに?」
「失礼いたします」
貧しくても汚れても心は気高くあれ。
おかあさまからの教えを、ずっと胸に秘めて支えにしてきた。
でも、それだって限界がある。
ぼくは、男だ!
男に色目なんか使うわけないだろ。
酔っ払いの変態に抱きつかれたからつきとばしたのに、どうしてぼくが襲ったことになるんだ。
本当にそんな男を狙ってるとしたら、義姉の機嫌はこれからずっと悪化の一途で、破滅にも一直線ってことだ。
関わりたくない。
もう、嫌だ。
こんな家、出てく。
独学で学んだ女性礼ではなく、男性礼をとって、靴を脱ぎすてて走った。
踵の高い女性用舞踊靴を履くことは、拷問でしかなかった。
強要されてきた、ずきずきと終わらない痛みから解放された足は、驚くほど軽くて、どこまでも走っていける気がした。
全てを失っても構わないと思ってしまえば、なにもかもから解放された気分になれた。
おかあさまの喪が明けないうちに父が連れ込んだ義母、義姉との険悪になっていくばかりの関係も。
家を捨てたら、自分の価値が失われてしまう恐れも。
もう、いらない。
ぼくには、いらない。
なにもかも全てを必要ない、と決めるまでは、思い切るまではとても苦しかったけれど。
捨てられることを恐れるのに疲れ、終わらない痛みに耐え続けるより、自分から捨ててしまえ、と吹っ切れてしまえば。
なにも、怖くなくなった。
〝やけのやんぱち〟ってやつだ。
〝飲んだくれ〟の馬丁のおじさんが言ってた。
おかあさま亡き後に追いやられた屋根裏に飛び込んで、少ない下着と寝巻きと二着しかない着替えの片方を寝台の敷布の上に並べる。
他にも、使えそうなものを放り込んで、敷布の四隅を結べば、準備は万端だ。
外出が許されないから、鞄なんて持ってない。
本来なら一人で着脱するものではない拘束具の紐をほどいて、夜会用の服飾品、装飾品を全て脱ぎ捨てる。
誰も手伝ってくれないのに着ておかないと叩かれるから、自己流で覚えた甲斐があった、と初めて思った。
脱いだ諸々を売り飛ばして生活費にしたいけれど、義姉の服を盗んだと言われそうな予感がするから置いていく。
編み込んだ髪の毛はあとでなんとかするとして、顔に塗りたくった化粧を、濡らした布で擦って落とす。
二着のうちの一着、下女が捨てたものを拾って洗って繕った服を着て。
敷布の包みを背負って〝とんずらこく〟ことにした。
靴を手に、足音を忍ばせて裏口へ向かう。
まだ、屋敷の奥できーきーと叫ぶ声が聞こえるから、逃走の発覚まで時間が稼げるはずだ。
父がぼくを探す手間をかけない、に賭けたい。
裏口で馬丁のおじさんにもらった大きすぎる靴を履いて、裏門から抜け出すことに成功した。
あとは見つからないように、できる限り遠くに逃げるだけだ。
自分の足で歩けば良い。
女装もやめたい。
なんにせよ、外だ、外。
ぺかぺかとまたたく星が手提げ角灯の代わり。
新月の真っ暗な夜は、きっとぼくを隠してくれる。
こうしてぼくは、自分の人生を始めることに成功した。
万が一を考えて、夜明けまで歩き続けることに決めた。
襲われるかもという考えはなかった。
夜に、明かりも持たずに一人で歩く不審者に近づく夜盗はいないだろう。
いないと思う。
襲って儲けが出せる獲物は、しっかりした服装としっかりした荷物を持っているはずだ。
ぼくは色褪せた敷布の包みを背負って、ぼろ服を着てるだけ。
裕福には見えないはず。
おなか、すいたな。
夜会がある日は、義姉の代わりに拘束具で胴体をぎっちぎちに締め上げたまま、何曲も踊らないといけないから、吐かないように食事抜きだ。
夜会がない日だって、たいしたものは食べられないけど。
最後だと思えば、調理室でなにか拝借してくるべきだったかも。
ぐるぐると恨みがましい音をあげる腹をなでて、息をついた。
自由って、おなかがすくものらしい。
歩いて歩いて、街の壁に突き当たった。
夜間は門が閉じられていると聞いている。
朝の開門を待っていたら、逃げられなくなるかもしれない。
良くも悪くも義母と義姉の行動は一直線だ。
たぶん、機会は一度きりだ。
ここで逃げ出さないと、次は鎖にでも繋がれて飼い殺しにされそうだ。
嫌な予感は、たいていが当たるんだ。
壁の高さは、人を縦に二人積んだくらいかな。
男性の服を着ていても、ぼくの力で登って乗り越えるのは無理だろう。
見上げながら門があると思われる方向へ向かう。
歩いて家の敷地を出たことがないから、生まれてからずっと住んでいる街なのに土地勘がない。
門を見つけたので、急いでいる風を装って駆け込む。
「こんばんは、こんな時間にどうしたんだい、おじょうちゃん?」
門兵さんだと思う人は、明らかにぼくを警戒しているけれど、優しく声をかけてくれた。
夜に外に出たがる子供、もしくは女性がいないと反応で分かった。
どうしよう。
本当のことを言っても、通してもらえないだろうな。
「外に出たいの」
「緊急時以外、夜は門を開けられられないのさ」
「おねがいします、外に出たいの」
「そのお願いは聞けないな、詰所に、あっ」
門兵さんらしい人が背を向けた瞬間に、門の脇に見えていた、小さな通用扉らしき場所へ走った。
鍵が閉まっていたら、扉の向こうに人がいたら、逃避行は終わりだ。
捕まったら、どこの誰なのかを知られたら、ぼくの人生が終わる。
追い詰められている獣というのは、思いもしない反撃をする、と数日前に読んだ本に書いてあった。
きっと、今のぼくと同じように。
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