33 / 36
おまけ
SS 先生がおかしくなった!
しおりを挟む職場の先生が、おかしくなった。
先生、つまり医者の卵であって、直接話すような関係ではないけれど、困っている。
つい最近まで、その先生に対する周囲の評価は、いつも淡々としていて、でも穏やかな人、だった。
いつでも淡々として穏やかだった先生が、今では目の色を変えて、新しく入ってきた職員の男性を追いかけ回している。
僕が働いているのは、超能力研究を医療に役立てるために色々している某大学と、大学院の医学部付属病院、のおまけみたいな研究所のさらに一角。
そこの木っ端職員。
研究機関としての規模は大きくないけれど、病院にくっついてるから情報が新鮮!という売りがある。
らしいよ。
先生はそこの院に所属する学生兼研修医で、現役の能力者。
能力の使用許可資格は取得済みで、さらに普通の医者としての資格も持っているのに、その上で能力者としての特殊専門分野の資格を取得するための勉強を続けている人だ。
勉強が好きな人なのかな。
とにかく、頭が良いのは間違いない。
先生の研究してる分野は、能力者の能力分類の発信と受信における精神分析とほにゃらら……ってすっごい長いやつ。
僕は能力を持たない一般職員。
研究者でもないから、あんまり詳しくない。
施設の維持管理系の職員だから、そこまで頭は良くない。
優秀な先生だから、きっと普通に研修をこなして資格を取得して、専門医になって……って思ってた。
あと数年したら、付属病院の医者かな、って。
高等級の能力者なのに、珍しいくらい普通の人だな、って思ってた。
つい最近までは。
能力者、それも高等級の人は変人が多い、って説は間違ってなかった。
今の先生は、ちょっと狂犬じみてる。
あの男の人が来てから。
先生が追いかけ回している男性に、他の研修医や看護師が、声をかけるのすら気に入らないみたいだ。
言葉には出さないけど、他の人と話してると、すっごい凝視してるもんな。
なんだろあれ、嫉妬ではなさそうなんだけど。
無表情になってる先生が、怖い。
そんなことを思いながら、僕は男の人、もとい新人同僚の館鼻さんに声をかける。
もちろん仕事で。
先生からの熱視線(本当に燃えそう)を背中に感じながら、伝達事項をボイスレコーダーに吹き込みつつ、伝えた。
館鼻さんは、会話の内容を忘れることがあるからって、いつもボイスレコーダーを持ち歩いてる。
ちょっと変な人。
話してると普通だけど。
高等級の能力所持者でありながら、能力制御に難があるという館鼻さんは、能力使用許可資格を持っていない。
さらに文字が認識できないという症状を抱えている。
それなのに、先生と共鳴だったかなんだかを起こしていて、能力が上限突破してるらしい。
超能力って上限突破するもの?
能力が上限突破しても、制御能力に難があるままじゃ、かわいそうだなと思ってた。
でも、実際は全然かわいそうじゃなかった。
「弘さんありがとうございます、ご馳走になります」
「どういたしまして」
男が男に手作り弁当を渡す、ってどういう関係だ。
と、僕は満面の笑みの先生と、照れ臭そうな館鼻さんを見て思うわけだ。
まあ、完璧に恋愛関係とか、あとは弱みを握られてるとか、貢いでる?
二人が視線を交わす様子を見てると、恋愛しか残らない。
早く、一緒に暮らせよ。
それが、僕たちの総意だ。
先生が早く落ち着いてくれないと、僕たちは居心地が悪い。
0
あなたにおすすめの小説
上司、快楽に沈むまで
赤林檎
BL
完璧な男――それが、営業部課長・**榊(さかき)**の社内での評判だった。
冷静沈着、部下にも厳しい。私生活の噂すら立たないほどの隙のなさ。
だが、その“完璧”が崩れる日がくるとは、誰も想像していなかった。
入社三年目の篠原は、榊の直属の部下。
真面目だが強気で、どこか挑発的な笑みを浮かべる青年。
ある夜、取引先とのトラブル対応で二人だけが残ったオフィスで、
篠原は上司に向かって、いつもの穏やかな口調を崩した。「……そんな顔、部下には見せないんですね」
疲労で僅かに緩んだ榊の表情。
その弱さを見逃さず、篠原はデスク越しに距離を詰める。
「強がらなくていいですよ。俺の前では、もう」
指先が榊のネクタイを掴む。
引き寄せられた瞬間、榊の理性は音を立てて崩れた。
拒むことも、許すこともできないまま、
彼は“部下”の手によって、ひとつずつ乱されていく。
言葉で支配され、触れられるたびに、自分の知らなかった感情と快楽を知る。それは、上司としての誇りを壊すほどに甘く、逃れられないほどに深い。
だが、篠原の視線の奥に宿るのは、ただの欲望ではなかった。
そこには、ずっと榊だけを見つめ続けてきた、静かな執着がある。
「俺、前から思ってたんです。
あなたが誰かに“支配される”ところ、きっと綺麗だろうなって」
支配する側だったはずの男が、
支配されることで初めて“生きている”と感じてしまう――。
上司と部下、立場も理性も、すべてが絡み合うオフィスの夜。
秘密の扉を開けた榊は、もう戻れない。
快楽に溺れるその瞬間まで、彼を待つのは破滅か、それとも救いか。
――これは、ひとりの上司が“愛”という名の支配に沈んでいく物語。
目覚めたら隣に副官がいた。隊長として、あれは事故だと思いたい
そよら
BL
少佐として部隊を率いる桐生蓮は、
ある朝、目覚めたベッドの隣で副官・冴木響が眠っていることに気づく。
昨夜の記憶は曖昧で、そこに至る経緯を思い出せない。
「事故だった」
そう割り切らなければ、隊長としての立場も、部隊の秩序も揺らいでしまう。
しかし冴木は何も語らず、何事もなかったかのように副官として振る舞い続ける。
二年前、戦場で出会ったあの日から、
冴木は桐生にとって、理解できない忠誠を向ける危うい存在だった。
あれは本当に事故だったのか、それとも。
従僕に溺愛されて逃げられない
大の字だい
BL
〈従僕攻め×強気受け〉のラブコメ主従BL!
俺様気質で傲慢、まるで王様のような大学生・煌。
その傍らには、当然のようにリンがいる。
荷物を持ち、帰り道を誘導し、誰より自然に世話を焼く姿は、周囲から「犬みたい」と呼ばれるほど。
高校卒業間近に受けた突然の告白を、煌は「犬として立派になれば考える」とはぐらかした。
けれど大学に進学しても、リンは変わらず隣にいる。
当たり前の存在だったはずなのに、最近どうも心臓がおかしい。
居なくなると落ち着かない自分が、どうしても許せない。
さらに現れた上級生の熱烈なアプローチに、リンの嫉妬は抑えきれず――。
主従なのか、恋人なのか。
境界を越えたその先で、煌は思い知らされる。
従僕の溺愛からは、絶対に逃げられない。
鎖に繋がれた騎士は、敵国で皇帝の愛に囚われる
結衣可
BL
戦場で捕らえられた若き騎士エリアスは、牢に繋がれながらも誇りを折らず、帝国の皇帝オルフェンの瞳を惹きつける。
冷酷と畏怖で人を遠ざけてきた皇帝は、彼を望み、夜ごと逢瀬を重ねていく。
憎しみと抗いのはずが、いつしか芽生える心の揺らぎ。
誇り高き騎士が囚われたのは、冷徹な皇帝の愛。
鎖に繋がれた誇りと、独占欲に満ちた溺愛の行方は――。
平凡ワンコ系が憧れの幼なじみにめちゃくちゃにされちゃう話(小説版)
優狗レエス
BL
Ultra∞maniacの続きです。短編連作になっています。
本編とちがってキャラクターそれぞれ一人称の小説です。
強制悪役劣等生、レベル99の超人達の激重愛に逃げられない
砂糖犬
BL
悪名高い乙女ゲームの悪役令息に生まれ変わった主人公。
自分の未来は自分で変えると強制力に抗う事に。
ただ平穏に暮らしたい、それだけだった。
とあるきっかけフラグのせいで、友情ルートは崩れ去っていく。
恋愛ルートを認めない弱々キャラにわからせ愛を仕掛ける攻略キャラクター達。
ヒロインは?悪役令嬢は?それどころではない。
落第が掛かっている大事な時に、主人公は及第点を取れるのか!?
最強の力を内に憑依する時、その力は目覚める。
12人の攻略キャラクター×強制力に苦しむ悪役劣等生
人族は一人で生きられないらしい――獣人公爵に拾われ、溺愛されて家族になりました
よっちゃん
BL
人族がほとんど存在しない世界に、
前世の記憶を持ったまま転生した少年・レオン。
獣人が支配する貴族社会。
魔力こそが価値とされ、
「弱い人族」は守られるべき存在として扱われる世界で、
レオンは常識の違いに戸惑いながらも必死に生きようとする。
そんな彼を拾ったのは、
辺境を治める獣人公爵アルト。
寡黙で冷静、しかし一度守ると決めたものは決して手放さない男だった。
溺愛され、守られ、育てられる日々。
だが、レオンはただ守られるだけの存在で終わることを選ばない。
学院での出会い。
貴族社会に潜む差別と陰謀。
そして「番」という、深く重い絆。
レオンは学び、考え、
自分にしかできない魔法理論を武器に、
少しずつ“並び立つ覚悟”を身につけていく。
獣人と人族。
価値観も、立場も、すべてが違う二人が、
それでも選び合い、家族になるまでの物語。
溺愛×成長×異世界BL。
読後に残るのは、
「ここに居場所があっていい」と思える、あたたかな幸福。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる