異世界帰りの僕が100人斬りの勇者だなんてまだ誰にも知られていない ~帰還した元勇者の爛れたラブコメディ~

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ランペイジ!

違います。デートです。

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間宮まみや 晴風はるか


 昨日から憂鬱な気分が少しも晴れない。デートに行く気も起きない。でも行かなきゃ。

 母からお昼ご飯を聞かれる。

 食べる気しない…


「はるかー、お昼はー?」

「要らなーい…ちょっと出てくる~…」


「あなた昨日の夜も食べてないじゃない…暗くなる前に帰ってきなさいよ~!」

「はーい…いってきま~す…」


 昨日は仕方なかったんです…だってだってだって浮気されたんですよ~私。しくしく。

 京介さん…

 いつものルーティンに従って、京介さんのお家近くのコンビニに行く。このコンビニの駐車場から京介さんのお家の玄関が双眼鏡から見える。ここがいつもの待ち合わせ場所。

 昨日は怒りでどうにかなりそうだったんですから。今日こそ言ってやるんです!





 昨日はいつものように最寄駅で京介さんを待っていました。いつもの放課後制服デートです。

 しかし、待っていたのは残酷な事実でした。

 なぜならそこに私服姿の京介さんとあの成瀬愛香が改札口に一緒にいたのです。

 しかもフェイズ1状態の京介さん。

 約束してたのにぃ……しかも私服にドタキャンに浮気…酷いよ~…

 成瀬愛香。私達魔女からは毛嫌いされている悪女。いつも京介さんの気をひく素振りしているけど、京介さんは苦笑いで躱していた。うける。

 え、でも待って。いまお家のほうから来た? 私服…学校には行ってない?

 待って待って待って待って待って待って…なんで、ですか?

 ハッと意識を取り戻した私は、電車に飛び乗り二人の後をつけました。

 まるで見せつけるかのようなイチャイチャぶりに気付けば持っていたコンデジを血を滲ませながら握り締めつつ…

 京介さんとの出会いを思い出していました。


 私と京介さんの出会いは小学6年生。夏休みの最中、訪れた図書館で落としたお気に入りのクロネコピンバッジを拾ってくれたのが運命の始まりでした。

 落とした事を人見知りの私は周りに聞けないからと1人で探していました。見つからず涙が溢れ、途方にくれてた私に、彼は何かあった? と笑顔で聞いてくれました。

 人見知りが本領発揮して慌てふためく私に、ゆっくりね、なんて言って横並びに立って何も言わずに待ってくれました。

 多分、待つ、なんて言ったら私が余計慌てるかもなんて気を遣って…

 その視線の配慮とゆったりとした空気をもつ京介さんのおかげで、ゆっくりピンバッジの特徴を伝えることが出来ました。

 私の小さな小さな声でも伝わったことに感動していたら、ものの数分で見つけて来てくれました。これ、可愛いね、なんて言って頭を撫で撫でしてくれました。

(((可愛いね、可愛いね、可愛いね…)))

 頭にラッパの音が鳴り響き、世界が二人を祝福した瞬間でした。

 のに……

 つけた先の喫茶店でイチャつく二人に打ちのめされてから、私は青の魔女、音野宇御おとの うみに連絡しました。


「うみうみ~京介さんにまた浮気された~」

「あーはいはーい。今回は何? コンビニの女店員さんの手が触れたの?
パン屋さんのお姉さんとの会話?
ファミレスの女の子店員に注文したの? さーどれ?」


「…ぐすっ、成瀬愛香」

「………あ"? …写真、あるんでしょう? 送って」


「…やめた方が良い、ぐすっ」

「…なんででしょうか?」


「うみうみが、荒れる。つまり嵐になる。ぐすっ、わたしがとばっちりで難破しちゃう。だからいや、ぐすっ」

「良いからはよ送れや」


すると、恫喝が待っていたんです。





 この神社は京介さんの過去を知るために何度か来ていたことがありました。だから配置も把握は出来ています。画面に二人でバエるにはここ。

 あ、またこの人! はー…今日は良いか。


「あ、きぬきぬ」

「…はるはる。乙」


 知人に出会いました。2個上の高校生、首藤絹子しゅとう きぬこさん。京介さんを狙う円卓一期生の一人。円卓の中のボッチ担当、きぬきぬ。

 少しだけ茶髪のふんわりショートカットの根暗系ストーカー美少女…まあ、私もあと二年経てば色気も増すでしょう。だから今はいいです。
 足元はいつもの音が鳴らないためのラバーソール。ストーカーの定番ですね。…まあ胸は大勝ちですけど。中2に負けてら。ざまあ。

 きぬきぬとは私が小学生の時に出会った。私と違って、彼女は京介さんのストーカーでした。

 京介さんとの思い出の品を探している時が、最初の出会い。

 それからは行く先々で待ち伏せしているこの変態さんには困っていました。私と場所取りが被ることが多くて…はー。

 いつものように大きめのクローバーのピンバッジを帽子に付けていました。は。クロニャンの方が可愛いから。


「きぬきぬはお勤め?」

「違う。デート」


はー…、思い込みって怖いですね。まあ毎度のやりとりだからもう諦めてますけど。


「はるはるは覗き?」

「違います。デートです」


 なんて事を言うんですか! 人を変態扱いしないでください! いっつも京介さんとの仲を邪魔してくるくせして…彼女でもないのに京介さんのお家の前まで着いてきますし!


「…」

「…」


「デート」

「デートです」


「…まあ、いい」

「…ええ、ではいつものようにダブルデートと、行きたい、ところ、ですが……」


 シュンとなる。私、やっぱり落ち込んでいます。ダブルデートなんて自虐すらしてしまいますし。

 ……この先輩にも情報流すか? こいつら丸テーブルの結束は昔から厄介だし。きぬきぬを焚き付けたら燃える? 燃やそうかな? 木だし燃えるか。燃やそう。


「本当は見たくないし、データ消したいし、記憶も消したいし、」


 そう、今でも手が震えてきます……

 コンデジで撮った写真、きぬきぬに見せてみようか……あ! もっと燃えやすいようにスマホ画像も一緒に見せてやりましょう!


「森でもまだ、うみうみにしか見せてないんです。荒れそうで。これ…どう思います?」


 きぬきぬのリアクションは滑稽で、私と同じ気持ちになったようです。はっ、ざまあ。

 はー…同じ気持ちか…魔女たち苛烈だから本当の清楚系の私はついていけないんですよね…。まさか丸テーブルの椅子、しかも、初期ロットさんと共感するとは、トホホ。


「…うわき」

「きぬきぬ付き合ってないじゃないですか…」


 付き合ってないでしょ~! 付き合っているのはわ・た・し! 丸テーブル椅子の分際で何言ってんです?


「…いつ?」

「昨日の放課後ですよ…わたしが待ち合わせていた喫茶店で浮気を……ショックで何も言わず先に帰ってやりましたよっ!」


 昨日の放課後は本当にショックでした。待ち合わせていた喫茶店で浮気を……しくしく。


「はるはる、待ち合わせてないし、付き合ってないから」


 は~。…だから量産品が何言ってるんだって。あーん? 不良品だから工場に戻れば良いのに…どっからどう見てもラブラブだったでしょ!


「何してるの?」

「ッ!?」


 急に声をかけるもんだからびっくりして根暗丸テーブル椅子と抱き合ってしまった!

 あ、あ、あ、だめだめ、京介さん近いですぅ! まだ早いですぅ、私たちにはまだ早いと思いますよぉ~!

 えっちなのはいけないと思います!

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