異世界帰りの僕が100人斬りの勇者だなんてまだ誰にも知られていない ~帰還した元勇者の爛れたラブコメディ~

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| 藤堂 京介


 僕は校舎の屋上に来ていた。ここからなら駅まで見渡せる。

 夏が近いからかまだ空は明るく、淡く透き通った空に薄い雲が、沈みゆくまん丸とした太陽の光を受け、拡散した色を作り出す。

 その色の混じり合いがとても綺麗だった。

 美月と真綾の二人はもう帰った。ここから二人で駅に向かって仲良く歩いているのがわかる。

 あ、なんか肩パンしてる。やり返した。

 何してるんだ…


「藤堂…その気をつけるし」

「あーあ~藤堂くんと同中だったらな~わたしも助けてもらえたのにな~」


 そう言いながら手を振って先に帰ってくれた。仲良さそうだったけど…





 三人のイジメ先輩女子は、吸着を解き、とりあえず御手洗さんに処遇を任せた。

「あの、ほんとにありがとうございました」

「ああ、良いんだ。まったく偶然だったしね。この人達がまた言ってこないように、男達潰してくるよ。先輩方、いいね?」

「あひゃい…」
「はい…もっと…」
「ほんとくせになる…」


 イジメ先輩女子達は、アヘ顔を晒し、イキ潮のせいで、パンツとスカートをグジョグジョに湿らせていた。
 彼女達は御手洗さんの希望通り、便座にM字で腰掛けて、おっぱい丸出しのダブルピースでそう答えていた。


「うんうん。一応写真撮っておいたから。好きなんでしょ? でももうやめようね」

 御手洗さんには自身のスマホでこの三人の痴態を撮らせていた。これで、彼女をイジメる事は無いだろう。


「「「はあい…」」」

「……本当にありがとう…ございました」

「うん。良かった良かった」


 こうして、女子トイレに平和が訪れた。

 僕が平和を乱す一番の異物だったけど、そこは許して欲しい。





 さあ、平和の次は戦争だ。

 男どもの居場所は多分この辺りと言われたが正直分からない。
 彼女達はいつもバイクで迎えに来てもらっていたそうで、具体的な場所はわかっていなかった。

 バイクか…召喚前はあまり興味も無かったけど、免許取るのもありかな。なんか、こう可愛いやつが良いな。
 異世界の乗り物ってイカつい動物のばっかだったし。カブとか。そういうレトロっぽい丸目なやつなんてのんびり走らせても良いかもしれない。

 あ、まだスーパー銭湯行ってない。

 違う違う。

 人探しとか場所探しの時はおかしらだけど、おかしらはもう使えなかった。何せもうすぐ檻の中だ。一緒にはいないで欲しいとエリカに頼まれていた。

 おかしらや葛川達には身辺整理をさせていた。あと逃げ出しても構わないとも。
 だけど、僕はどうやっても見つけることができてしまう。そう伝えてあった。

 そう、解決方法はある。

 人探しの方法はあるんだ。

 昔から思っていたが、彼女が満足する地点がわからないからいつもギリギリまで使わなかった。しかもこの間まであんなに話したことなんてなかった。

 だから、もしかしたら。

 もしかしたらこの世界ならヨイショが効くかも知れない。ベタ褒めしたら効くかも知れない。

 僕のほんのささやかな思いも伝わるかも知れない。

 ……やってみるか。


 ふ────。


「女の子がさ…泣いてたんだ。力を貸してくれないかな? そして………出来ればマイルドにして欲しい。具体的にはイキらせないで欲しい。そんな僕の小さな願いも叶えて欲しい。あと出来れば派手な倒し方とか登場シーンとかこの世界だと相当不味いからやめて欲しい………示せ、超絶可愛い僕の"シュピィ"」


 ……ギュィィイイァァハ──────ン!!


「…なんか…いつもと音が…違うような…」


 これは…どっちだ? 嘘では無いから通じたはずだが…まあ、そんなことはいいか。さあ、どこだ、シュピリアータ。

 ここからは悪即斬だ。


「きゃぁあ! …な、なんの…エレキギター…? ぁ、あの!」


 ふいに屋上の扉が開き、御手洗さんが飛び出してきた。
 追いかけてきたのか。


「なんだ?」

「い、いまから…行くんですか…?…」


「ああ。お前の未来、取り返してやる」

「…え…?…さっきと…あ、あの、わ、私も連れて行ってくれませんか! その…あなたに…任せるだけだなんて…それにまだ名前だって!」


 こちらからの一方的な宣言だったから、あまり気にしなくても良いが…まあ見せてあげるか。

 怖いだろうに、勇気のある女の子だ。


「なら…多言は無用だ」

「ぁ、あ、はい! あひゃあ!」


 彼女を風の魔法で引き寄せ、左腕で腰抱きにする。そのまま少しだけ浮かび上がり、ゆっくりと左旋回する。


「え! 離してくださ……う、浮いてる?!」

「ああ、口閉じとけ。行くぞ」


 屋上から上空30メートルほどの高さまで一気に移動する。
 ここがこの地点でのシュピリアータの好きな高さなのだろう。遠くに海も見える。


「あひゃぁぁぁああああんむぅ?!」

「少しだけ許せ」


 思ったとおり、彼女は叫んでしまった。彼女のマスクの下から指を二本口に突っ込み、黙らせる。
 鼻マスクみたいになってしまったが舌を噛むからな。許せよ。


「あと俺は藤堂京介だ」

 名前を告げると、彼女は目を見開き何かを言おうとしたが、ぐっと抱き寄せる。

 まあ、言いたいことは後だ。


「さあ、"シュピィ" 、復讐はいつも通り明るくキメる、だ────"詠え"!」


 キュャァァァハ────ン!


 やっぱり何か……音が違うな…それになんだ、この今までなかった嫌な予感は…でも…立ち昇ってもすぐに掻き消されて均される…

 何かしてるな、シュピリアータ…


 まあいいか。そういうのは後だ、後。

 俺の嘆きは全部終わってだいたい一人になってからだ。

 暗い部屋で一人になってからだ。まあまあ落ち込むな。


 俺は彼女とともに、その場所に向かって大きく転移した。
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