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5話 検証にかける熱意

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 【Raid Battle!】

 【兎月舞う新緑の主】

 【荒れ狂う魚尾砲】

 【レイドバトル同時発生につき難易度が上昇します】

 「いや~、検証班の方に会いに行くだけなのになんでログインし直してレイドボスに挑まないといけないんですか!?」

 「うるさいぞ、爆弾魔。
 ボマードちゃんのいた草原エリアからだと検証班のいるエリアには遠いからな。
 死に戻りでワープした方が早い!」

 「いや~、移動のためだけに死に戻りを使う人なんて今まで見たことないでs」

 レイドボスの前で無防備に雑談をしていた俺たちはミンチにされながら死に戻りをした。

 








 「いや~、ここどこです?」

 ボマードちゃんと俺が死に戻りをしてきたのはいつもの草原ではなく、岩山エリアだ。
 死に戻りをした場合、基本的には草原エリアに放り投げられるのだが、死の間際フレンドのことを強く思うとそのプレイヤーのところに戻ることができる。
 ただ、他の死に戻りプレイヤーも巻き込んで連れていってしまうことになる謎仕様だ。


 「ここは【岩山(仮)】にある検証班の集まっている洞穴だ。
 最近はこのエリアで採取できる鉱石を使って何か出来ないか検証するために草原本部とは別に岩山支部を作ったんだ」

 ボマードちゃんの問いに応えたのは俺ではなく、眼鏡をかけた長身の痩せ型体型の男だ。


 「前に会ったときと比べて、ちゃっかり白衣とか着たりしてるのな。
 研究員っぽい感じになってて雰囲気出てるのいいな!」

 「ありがとう。
 前に会ったのはかなり前だからね、生産プレイヤーに頼み込んで何とか作ってもらったんだ。
 眼鏡に白衣だと他から見ても分かりやすいしね」


 見た目から感じる真面目そうな雰囲気はそのままだが、話してみると案外柔らかめな口調なのがプレイヤーの中で好感度が高いポイントだろう。


 「ボマードちゃん、紹介するわ。
 この白衣の男が【検証班長】だ!
 全エリアにいる検証班を総まとめしてる……らしいぞ!」

 「ひぇっ、そんな凄い人紹介してもらったんですか私!?
 流石【包丁戦士】さん!」

 なんか最近やけに持ち上げてくるなこの娘。
 
 「あはは……そんなに大したことはしてないつもりだけどね。
 このドン底ゲームでどこまでプレイヤーの可能性があるか知りたいだけだよ」

 「かっ、格好いいですね!!」


 この娘チョロくない?
 いや、確かに班長の言動は変にロールプレイしてるよりも一貫していて俺からしてみても格好いいと思うが……


 「ありがとう。
 それで、【槌鍛治士】に首ったけの君が久しぶりにボクを訪ねて来たんだ。
 何か変わった用事でもあるんだろう?」

 「だ~~~れが【槌鍛治士】に首ったけだ!
 あのガチムチおっさんの腕は間違いなく信用してるが、別に首ったけってわけでもない……つもりなんだがな。
 まあそれはいいとして、今回はこのボマードの【名称公開】についての検証バックアップを頼みたくてな」

 「【名称公開】の検証ですか、確実に闇が深そうだと思い検証の対象から外していましたが興味はありますね。
 それでどのような検証を予定してますか?」

 「いや~、このデバフどこまでかけられるんだろうかな~って気になってきて!」

 「なるほど、つまりより知名度を上げたいわけですね?
 今まで検証班の中に人柱をやりたがる人が居なかったので全く進められていなかった検証を進められるのはとっても食指が伸びますね!!
 これは是非とも協力させてください!」


 おっ、口調も強めになってきてるしかなり前のめりだな。
 これはちょっとふっかけてみるか!

 「オッケー、それなら検証に関してはボマードちゃんの知名度アップのための広報活動、ボマードちゃんの状況報告で問題無さそうだな。
 さて、紹介手数料として俺も頼みがあるんだが」

 「ちゃっかり自分も利益を得ようとする【包丁戦士】さんのその狡い感じ、ボクは好きですよ。
 それで頼みとは?」

 こいつさらっと毒吐いてきたな。


 「レイドボス攻略のための人員募集だ。
 【槌鍛治士】と攻略の糸口を探っているが、流石に糸口が掴めたとしても仮にもレイドボスだ。
 最後には人海戦術が必要になることを想定している!
 もし攻略の兆しが見えたら情報を提供する代わりに、検証班で人を集めて欲しい。
 絶対にお前の力が必要だ!」

 「ボ、ボクの力……」

 おい、ちょっと赤面しないで欲しい。
 

 「分かりました、情報を都度いただけるならレイドボス検証を手伝ってもらうようなものですし。
 それにレイドボス攻略はプレイヤー全体の目標ですからね!
 人員に関しては大船に乗ったつもりでいてください、検証班だけではなく腕に自信があるプレイヤーにもそれとなく頼んでおきます」

 こいつ、やっぱり検証のためなら物凄く頭が回るし、熱意もあるから大人数を纏められるんだろうな。
 さっきも言ったが、言動が一貫してて格好いい。
 
 ふっかけたつもりだったが、普通にWin-Winの交渉になってしまっているので俺も甘いかもしれない。


 「それで【どこの】レイドボスの攻略を目指しているのですか?」

 「俺が攻略しようとしているのは初志貫徹、新緑都市アネイブルのジェーだ。
 プレイヤーがログインするたびにアイツと遭遇するのは生産プレイヤーからするとたまったものじゃないだろ」

 「いや、戦闘プレイヤーからしてもたまったものじゃないと思いますが……
 それにしてもずっとジェーと戦っていたのですね」


 班長が【どこの】と聞いてきたのにはもちろん理由がある。
 はじめこそはプレイヤー皆が新緑都市の主であるとされているジェーを倒そうとしていたが、全く歯が立たないため他のエリアの散策をするようになっていた。
 そうしたプレイヤーたちによって【草原(仮)】を中心として、四方のエリア全てにレイドボスがいるということが判明した。
 この岩山エリアにもレイドボスがいるらしい、俺はジェーしか戦ったことがないけど。


 「せっかくですし、ここのレイドボスと戦ってきたらどうですか?
 毎度のように【槌鍛治士】のところに戻るためログインし直して、死に戻りをするつもりでしょう。
 それならたまには気分を変えて違うレイドボスに挑むのもいいとは思いませんか?
 何か攻略の糸口をつかめるかもしれませんよ」

 班長はニヤニヤしながら眼鏡を光らせている。
 こ、こいつ俺を手のひらの上で踊らそうとしているな!
 ちゃっかり情報集めの人員として活用しようとしているのが露骨すぎる!
 だが……
 

 「まあ、ジェーを倒すためならお前の口車に乗るのも悪くはないな。
 いいだろう、今回はここのレイドボスで死に戻りをする!
 ついてこいボマードちゃん!」










 何故か巻き込まれて岩山登山に付き合わされる少女が居たとか居なかったとか

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