3 / 11
第3話 勇者軍団、無双するはずが……(なお、ワシが全部やる)
しおりを挟む「いやぁ~実に良い戦じゃった!」
ワシは満足げに腕を組み、戦場を見渡した。
辺りには、かつて魔王軍の残党だったオークやゴブリン、低級デーモンたちがいた……はずなのじゃが、
ワシの一撃で更地になっておる。
「…………」
「…………」
クラス全員が沈黙。
天野拓斗も、真っ白になった顔で呟いた。
「……いやいや、俺たち何しに来たの!?」
「勇者軍団、何もしてなくね!? ていうか、国王一人で全部終わったじゃん!!」
「いやぁ、これでも手加減したんじゃがな」
ワシは少し残念そうに言うた。
本来なら勇者たちの見せ場を作ってやるつもりだったのじゃが、気づいたら戦闘が終わっておった。
「よし! これでここら辺の魔王軍は片付いたな! 勇者たちよ、お主らの初陣、大成功じゃ!!」
「何もしてねぇよ!!!!」
勇者軍団の総ツッコミが入る。
「くっそおおおおお!! 俺たちの異世界無双はどこに行ったんだよおおおお!!!」
「異世界転生したら、まさかの引率付きだった件について」
「勇者とは……」
クラスの皆が、がっくりと肩を落とす。
……まぁ、気持ちは分かる。
「ふむ。ならば、次はお主らだけで何かやってみるといい!」
「ほ、本当ですか!?」
「うむ、次こそお主らの見せ場を作るのじゃ!」
勇者たちは、やる気を取り戻す。
「よし! 俺たちで冒険しよう!」
「ダンジョン攻略とかしたい!」
「モンスター倒して経験値稼ごうぜ!」
そうして、クラス全員で冒険することが決まった。
……が。
そこへ、ワシの側近であり宮廷魔術師長のアザレイン・アルヴェルトが近づいてくる。
「王様、勇者軍団を帰らせた方が良いのでは?」
「え?」
「いや、王様が強すぎて、勇者たちがいても意味がありませんし……このままだと彼らの存在意義が……」
「むう……」
アザレインの言うことはもっともじゃ。
ワシがいれば、この国は安泰。
むしろ、勇者たちがいなくても問題ない。
「まあ、せっかく異世界から来てくれたんだし、もう少し楽しんで貰ってから帰せばいいじゃろ」
「……そうですね」
アザレインは渋い顔をしたが、結局、ワシの意見には逆らえなかった。
勇者軍団の冒険が始まった。
クラスの皆が、ようやく異世界の冒険を楽しめる時が来たんじゃ!
ワシも心の底から応援しておるぞ!!
……というわけで、ワシもついて行く。
「いやいや、なんで国王陛下がついてくるんですか!!?」
天野拓斗が叫んだ。
「お主らの安全を確保するためじゃ!」
「安全確保のレベルが違うんですよ!!!」
周りのクラスメイトたちも、大混乱しておる。
「王様がいるってことは……また俺らの見せ場なくなるんじゃね?」
「異世界冒険、先生同伴の社会科見学みたいなもんじゃん!」
「ていうか、どうせまた王様が全部倒しちゃうんでしょ?」
「むう……そんなことはない!!」
ワシは拳を握りしめ、声を張った。
「今回はお主らがメインじゃ! ワシは見守るだけ!」
「本当に!?」
「うむ!!」
勇者たちはようやく安心した様子で、ダンジョンへと歩みを進めた。
さあ、ついに彼らの冒険が始まるのじゃ……!!
1
あなたにおすすめの小説
ユーヤのお気楽異世界転移
暇野無学
ファンタジー
死因は神様の当て逃げです! 地震による事故で死亡したのだが、原因は神社の扁額が当たっての即死。問題の神様は気まずさから俺を輪廻の輪から外し、異世界の神に俺をゆだねた。異世界への移住を渋る俺に、神様特典付きで異世界へ招待されたが・・・ この神様が超適当な健忘症タイプときた。
スーパーの店長・結城偉介 〜異世界でスーパーの売れ残りを在庫処分〜
かの
ファンタジー
世界一周旅行を夢見てコツコツ貯金してきたスーパーの店長、結城偉介32歳。
スーパーのバックヤードで、うたた寝をしていた偉介は、何故か異世界に転移してしまう。
偉介が転移したのは、スーパーでバイトするハル君こと、青柳ハル26歳が書いたファンタジー小説の世界の中。
スーパーの過剰商品(売れ残り)を捌きながら、微妙にズレた世界線で、偉介の異世界一周旅行が始まる!
冒険者じゃない! 勇者じゃない! 俺は商人だーーー! だからハル君、お願い! 俺を戦わせないでください!
猫好きのぼっちおじさん、招かれた異世界で気ままに【亜空間倉庫】で移動販売を始める
遥風 かずら
ファンタジー
【HOTランキング1位作品(9月2週目)】
猫好きを公言する独身おじさん麦山湯治(49)は商売で使っているキッチンカーを車検に出し、常連カードの更新も兼ねていつもの猫カフェに来ていた。猫カフェの一番人気かつ美人トラ猫のコムギに特に好かれており、湯治が声をかけなくても、自発的に膝に乗ってきては抱っこを要求されるほどの猫好き上級者でもあった。
そんないつものもふもふタイム中、スタッフに信頼されている湯治は他の客がいないこともあって、数分ほど猫たちの見守りを頼まれる。二つ返事で猫たちに温かい眼差しを向ける湯治。そんな時、コムギに手招きをされた湯治は細長い廊下をついて歩く。おかしいと感じながら延々と続く長い廊下を進んだ湯治だったが、コムギが突然湯治の顔をめがけて引き返してくる。怒ることのない湯治がコムギを顔から離して目を開けると、そこは猫カフェではなくのどかな厩舎の中。
まるで招かれるように異世界に降り立った湯治は、好きな猫と一緒に生きることを目指して外に向かうのだった。
【完結】487222760年間女神様に仕えてきた俺は、そろそろ普通の異世界転生をしてもいいと思う
こすもすさんど(元:ムメイザクラ)
ファンタジー
異世界転生の女神様に四億年近くも仕えてきた、名も無きオリ主。
億千の異世界転生を繰り返してきた彼は、女神様に"休暇"と称して『普通の異世界転生がしたい』とお願いする。
彼の願いを聞き入れた女神様は、彼を無難な異世界へと送り出す。
四億年の経験知識と共に異世界へ降り立ったオリ主――『アヤト』は、自由気ままな転生者生活を満喫しようとするのだが、そんなぶっ壊れチートを持ったなろう系オリ主が平穏無事な"普通の異世界転生"など出来るはずもなく……?
道行く美少女ヒロイン達をスパルタ特訓で徹底的に鍛え上げ、邪魔する奴はただのパンチで滅殺抹殺一撃必殺、それも全ては"普通の異世界転生"をするために!
気が付けばヒロインが増え、気が付けば厄介事に巻き込まれる、テメーの頭はハッピーセットな、なろう系最強チーレム無双オリ主の明日はどっちだ!?
※小説家になろう、エブリスタ、ノベルアップ+にも掲載しております。
悪役令息、前世の記憶により悪評が嵩んで死ぬことを悟り教会に出家しに行った結果、最強の聖騎士になり伝説になる
竜頭蛇
ファンタジー
ある日、前世の記憶を思い出したシド・カマッセイはこの世界がギャルゲー「ヒロイックキングダム」の世界であり、自分がギャルゲの悪役令息であると理解する。
評判が悪すぎて破滅する運命にあるが父親が毒親でシドの悪評を広げたり、関係を作ったものには危害を加えるので現状では何をやっても悪評に繋がるを悟り、家との関係を断って出家をすることを決意する。
身を寄せた教会で働くうちに評判が上がりすぎて、聖女や信者から崇められたり、女神から一目置かれ、やがて最強の聖騎士となり、伝説となる物語。
俺たちYOEEEEEEE?のに異世界転移したっぽい?
くまの香
ファンタジー
いつもの朝、だったはずが突然地球を襲う謎の現象。27歳引きニートと27歳サラリーマンが貰ったスキル。これ、チートじゃないよね?頑張りたくないニートとどうでもいいサラリーマンが流されながら生きていく話。現実って厳しいね。
異世界転移からふざけた事情により転生へ。日本の常識は意外と非常識。
久遠 れんり
ファンタジー
普段の、何気ない日常。
事故は、予想外に起こる。
そして、異世界転移? 転生も。
気がつけば、見たことのない森。
「おーい」
と呼べば、「グギャ」とゴブリンが答える。
その時どう行動するのか。
また、その先は……。
初期は、サバイバル。
その後人里発見と、自身の立ち位置。生活基盤を確保。
有名になって、王都へ。
日本人の常識で突き進む。
そんな感じで、進みます。
ただ主人公は、ちょっと凝り性で、行きすぎる感じの日本人。そんな傾向が少しある。
異世界側では、少し非常識かもしれない。
面白がってつけた能力、超振動が意外と無敵だったりする。
高校生の俺、異世界転移していきなり追放されるが、じつは最強魔法使い。可愛い看板娘がいる宿屋に拾われたのでもう戻りません
下昴しん
ファンタジー
高校生のタクトは部活帰りに突然異世界へ転移してしまう。
横柄な態度の王から、魔法使いはいらんわ、城から出ていけと言われ、いきなり無職になったタクト。
偶然会った宿屋の店長トロに仕事をもらい、看板娘のマロンと一緒に宿と食堂を手伝うことに。
すると突然、客の兵士が暴れだし宿はメチャクチャになる。
兵士に殴り飛ばされるトロとマロン。
この世界の魔法は、生活で利用する程度の威力しかなく、とても弱い。
しかし──タクトの魔法は人並み外れて、無法者も脳筋男もひれ伏すほど強かった。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる