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第4話 勇者たちの冒険開始!(なお、ワシは給仕係)」
しおりを挟むキャンプ地にて
勇者軍団は初の冒険に向けて、森の中でキャンプを張ることにした。
「よし、テントの設営完了!」
「火もつけたし、あとは食料の準備だな!」
勇者たちは慣れないながらも協力しながら、なんとか野営の準備を整えている。
それを、ワシはにこやかに見守っておった。
「うむ、よきかな、よきかな……」
――が。
(……いや、ちょっと待てよ?)
(ワシ、このまま黙って見てるだけでええんか?)
(若者たちが頑張っているのに、ワシが何もしないのはむしろ不親切では……?)
(いやいや、指導者とはサポートしてこそ真の指導者!!)
(せっかくなら、ワシの経験を活かした最高のアドバイスをしてやるべきじゃろう!!)
ワシの老害ムーブ、発動。
「おい、そこのお主。火の起こし方が甘いわい。もっと枯れた木を使え」
「え、あ、は、はい……」
「お主、剣を研ぐときは刃をそっちに向けたらいかんぞ! こっちじゃ、こうやってやるんじゃ!」
「わ、わかりました……」
「おぉ、料理を作るのか? ではワシがやろう!」
「え、でも、俺たちでやりますから――」
「何を言うか! このワシ、料理の腕も一流じゃ!! さあ、最高の飯を作ってやろう!!」
ワシは颯爽とエプロンを取り出し、袖をまくる。
「エプロン!? なんで持ってんの!??」
「当たり前じゃ! 王たる者、料理の一つもできねばならん!!」
「いや、王様が料理してる時点でおかしいんですよ!!」
「ふふふ……見ておれ、ワシが作る料理は最高じゃぞ!」
――かくして、ワシは給仕係に落ち着いた。
料理を作り、火の管理をし、テントの張り方を指導し、危険察知をし……
気づけばワシ、完全に「旅をサポートするおじいちゃん」ポジションになっとるではないか!?
「王様、料理美味すぎる……」
「ていうか、こんな豪華な食事、俺たちが作れたはずないんだけど……?」
「ま、まぁいいじゃん! せっかく王様がやってくれてるんだし!」
「……いや、これ勇者の冒険だよね? 俺たち何もしなくていいの?」
勇者軍団が複雑な顔をしながら、ワシの料理をもりもり食べる。
ふぉっふぉっふぉ……やはり、ワシの料理の腕は健在じゃな!
(む? まさかワシの料理に感動して「王様すげぇ!!」と褒める流れでは!?)
ワクワクしながら勇者たちを見つめると――
「……王様、なんか旅館の大将みたいになってない?」
「ていうか、俺らの出番、また消えてない?」
「勇者の冒険って、こういうのじゃないよな!?」
「あと、アドバイスがいちいち鬱陶しい!!」
「王様、老害ムーブ控えてください!!!」
「むう……」
ワシはしょんぼりと腕を組む。
(ふむ……良かれと思ってやっておったのじゃが、どうやら過保護すぎたかの?)
ワシは静かにエプロンを外し、そっと後ろに下がった。
「……よし、ワシはもう口を出さぬ! これからはお主らの力で成長するのじゃ!!!」
「おおお!! やっとか!!」
勇者たちは歓喜し、ようやく自分たちの力で冒険をする流れになった。
ワシは静かに頷きながら、遠くから彼らを見守る。
(……うむ、やはり若者の成長を見るのは気持ちが良いのう……)
――だが。
「……おい、あれ見ろ」
「え?」
「王様が……何か言いたそうな顔してる」
勇者軍団がキャンプ地で戦闘訓練を始めたその時、ワシは目を細めながら、ちらちらと彼らの方を見ていた。
(む……違う……そうではない……)
(剣の構えが……甘い……もっとこう……腰を入れて……)
(ああああああ!! 言いたい!! アドバイスしたい!!)
(だが、耐えるのじゃ……! 今回こそワシは口を出さぬと決めたのじゃ!!)
(しかし!!! 正しい剣の構えを教えねば、戦場で命を落とす可能性がある!!!)
ワシは握りしめた拳をプルプルと震わせながら、なんとか耐えておる。
「……王様、めっちゃ歯を食いしばってるけど、大丈夫?」
「めっちゃアドバイスしたそうな顔してる」
「絶対すぐに口出しするわ」
――そして、十秒後。
「やっぱりワシが教えるわ!!!」
「耐えられなかったーーー!!!」
結局、ワシの老害ムーブは止まらず、勇者軍団の旅は「国王の給仕&指導役つき」という前代未聞の冒険へと突入するのであった。
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