異世界帰りのハーレム王

ぬんまる兄貴

文字の大きさ
8 / 110

第8話 ハーレム王への道

しおりを挟む



【教室】



 2限目になって教室に戻ってきた伊集院麗華。
 その瞬間、俺の視界に飛び込んできたのは――



 麗華のすさまじい睨み!



 目つきがまるで、「今すぐお前を消し炭にしてやる」とでも言わんばかり。
 いや、冗談抜きで教室が数度下がったんじゃないかってくらい寒気がするぞ!?
 

 教室中が静まり返り、麗華の殺気に誰も近寄れない。
 そして、その視線の矛先は――完全に俺だ!


 そんな中、隣から聞こえたのは、石井のあの独特の声だった。


 
「飯田殿!伊集院殿がすごいにらんでいるでござるが、大丈夫でござるかぁ!?」



 おいおい、お前のそのテンション、大丈夫か!?
 俺は必死に平常心を保ちながら、石井に小声で答えた。


 
「黙れ、石井!これ以上刺激すんな!俺はもう崖っぷちなんだよ!!」

「でも、飯田殿!拙者、聞いたでござるよ!伊集院殿を保健室まで運んだとか!抱っこしたでござるな!?どうだったでござるか!?柔らかかったでござるか!?」

「ぐふっ!?」



 お前、そんな質問するな!思い出すと顔が赤くなるだろ!!
 

 確かに、気絶した麗華を保健室まで運んだのは俺だ。
 お姫様抱っこで、彼女の髪からふわっといい匂いがして――いやいや、冷静になれ俺!

 
 その瞬間、俺の方にズカズカと歩み寄る麗華。
 背後に黒いオーラが漂ってるんですけど!?


 
「飯田君――」



 麗華が低い声で話しかけてきた。


 
「……何か、言いたいことはあるかしら?」



 俺の頭の中で「終わった」という文字がぐるぐる回る。
 でも、ここで怯んだら俺力が廃る!勇気を振り絞り、俺は言った。


 
「あ、えっと……その、柔らかかったっす……じゃなくて!保健室まで運んだのは俺なりの誠意です!」



 教室中がざわつき始めた瞬間――


 
「……覚悟、しておいてね。」



 麗華は冷たい声を残して席に着いた。

 俺はその場で崩れ落ちそうになりながら、石井の方を振り返る。


 
「石井……俺、多分今日が人生の最終日だわ……」



 石井は無駄にキラキラした目で俺を見つめて言った。


 
「飯田殿、拙者、貴殿の勇姿を忘れぬでござる!」



 おい、勝手に俺を殉職扱いするな!!!





 ――――――――――――――

 

【自宅】


 
「今週末、京都に行くぞ!雪華!」



 俺はリビングで雑誌を見ていた雪華に向かって、バシッと宣言した。
 一瞬、ページをめくる手が止まり――


 
「えっ……えぇっ……!?」



 雪華の目が驚きに見開かれたかと思うと、次の瞬間、視線が泳ぎ始めた。
 顔が真っ赤になっていくのがわかる。

 

「きょ、京都……!?そそそそ、それはひょっとして……!」



 まるで蒸気機関車のように息を荒げる雪華。
 おい、どうした?京都って言っただけでそんなに動揺するか!?


 
「新婚旅行というものですか!!?」



 ガタン!と立ち上がる雪華。
 彼女の顔はもう茹で上がったタコみたいだ。


 
「し、新婚……?」



 俺も一瞬、言葉を失う。
 いやいや、待て待て!なんでそうなる!?


 
「違ぇよ!!ただの旅行だよ!!!」



 俺が慌てて全力で否定する。
 だが雪華は信じていない様子で、手で顔を覆いながらさらに深紅になる。


 
「で、でも……京都って言ったら……新婚旅行の定番って聞いたことが……!」



 おい、どこでそんな情報仕入れてきた!?
 俺は頭を抱えながら、冷静に説明することにした。


 
「いやいや、普通に観光だって!寺とか神社とか!ほら、歴史ある町並みとか!」

「……で、でも、それはカモフラージュで本当は新婚旅行なのでは……?」



 まだ疑ってる!!!
 しかも、ちょっと照れた笑顔が混じってるのがまた困る。

 

「ちげぇって!!雪華、落ち着けって!!!」

「……で、でも……その……私、ちゃんと白無垢を着て行った方がいいのでしょうか……?」

「白無垢いらねぇぇぇぇ!!!!!」



 俺の全力ツッコミがリビングに響き渡った。
 だが雪華の表情には、まだどこか期待するような輝きが……。

 ――いや待て、これ以上否定すると、逆に俺が悪者みたいになるじゃねぇか!?
どうすりゃいいんだよ、この空気!!!


 下手に否定し続けたら俺が悪者みたいだし、適当に流したら「やっぱり!」とか言われそうだし……!
 くそっ、このままじゃ埒があかねぇ!


 
 仕方ねぇ、本題に入るか――。


 
「……呪術師の連中に動きがあったんだよ!」




 話題を切り替える俺。すると、雪華はその一言で目をパチクリさせた。


 
「呪術師に動き?なんで分かるんですか?」



 よし、食いついた!俺は得意げに胸を張り、ポケットからあるモノを取り出した。

 

「盗聴器だ!!!」



 バァン!と堂々と机に置く俺の手のひらサイズの盗聴器。雪華は「えぇ……?」という顔をしているが、気にしない。


 
「実はな――伊集院麗華が気絶してる間に、こっそりこれを仕掛けておいたんだよ!」

「え、ええええ!?そ、それって犯罪じゃ……!?」

「バカヤロウ!正義のためだ!」



 俺は正論風な言葉で雪華の不安を強引に捻じ伏せる。
 まぁ、悪いのは麗華が俺を襲ってきたことだろ?
 多少の仕返しは許されるに決まってる!


 
「それで、何が分かったんですか……?」



 興味津々な雪華に向けて、俺は満面の笑みを浮かべながら伝えた。


 
「なんでも京都で女の子の狐の妖怪が見つかったらしい!」

「き、狐の妖怪……?」

「そう!それも、めちゃくちゃ可愛い女の子らしい!」



 俺は勢いに乗り、さらに畳みかける。

 

「だから京都に旅行がてら行って、その狐の妖怪を俺のハーレムメンバーに入れたいと思って!」

「……え?」



 雪華の表情が固まった。


 
「あ、もちろん雪華も大事なハーレムメンバーだぜ?だから安心し――」

「私、帰ります。」

「あっ待って待って待って待って!!!」



 俺は慌てて雪華を引き止める。だが、彼女の目は氷点下の冷たさを宿していた――。


 
 ……やべぇ、このままだと京都に行く前に俺が凍らされる!
 何とか言い訳を考えねぇと……!!

 
 凍てつく雪華の視線を前に、俺は全身から冷や汗をかいていた。
 このままだと本当に俺、文字通り氷漬けにされるぞ……!


 ――でも、諦めるわけにはいかねぇ!!
 俺の夢、俺の野望、それは「ハーレム王になること」なんだから!!


 俺は深呼吸をして、自信満々な顔を作り、雪華に向き直った。


 
「雪華、聞いてくれ!」

「……何ですか?」



 冷たい声。いや、この冷気は物理的に寒い。
 でも、ここで引いたら男が廃る!!

 

「俺のハーレムは、ただの女好きな集団じゃねぇ!」

「……どういうことですか?」



 雪華は少しだけ目を細めた。おっ、聞く気になったか?
 俺はここぞとばかりに言葉を続けた。

 

「俺のハーレムは――絆の集団なんだ!!」

「……絆?」



 雪華が首を傾げる。よし、悪くない反応だ!


 
「そうだ!俺のハーレムは、ただの好き好きクラブじゃねぇ。お互い助け合い、支え合い、そして笑顔を共有する集団なんだ!」

「…………」



 雪華の表情が微妙に緩んだ気がした。俺はさらに畳みかける!

 

「だって考えてみろよ!雪華、お前は俺に助けられただろ?」

「はい……助けてもらいました。」

「次は俺がお前に助けてもらう番だ。そして、お前が困ったときは、ハーレムの他のメンバーも助けてくれる。そうやってお互いを支え合うんだ!」

「……そ、それは、少し素敵かもしれません……」



 ――行けるぞ、このまま押し切る!!

 

「そう!そして俺たちが力を合わせれば、呪術師だろうが妖怪だろうが、どんな困難だって乗り越えられるんだ!」

「……でも、他の女の人と仲良くするのは、ちょっと嫌です……」



 うっ、急ブレーキか!?
 でも、ここで引き下がるわけにはいかねぇ!!


 
「雪華、だからこそ言うんだ。お前は俺の一番のハーレムメンバーだ!」

「……え?」

「お前が俺の右腕だ!いや、左腕でもいい!お前がいなきゃ俺のハーレムは成り立たないんだよ!!」



 雪華は驚いた顔で俺を見つめ、少しだけ頬を赤らめた。


 
「そ、そういうことなら……私も……頑張ります!」



 よし、決まった!!!
 俺は心の中でガッツポーズを決めた。

 こうして、雪華も俺のハーレムという名の絆の集団を認めてくれることになったのだった――。

 次は京都で狐っ子を探すぞ!!!



 
 
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

異世界翻訳者の想定外な日々 ~静かに読書生活を送る筈が何故か家がハーレム化し金持ちになったあげく黒覆面の最強怪傑となってしまった~

於田縫紀
ファンタジー
 図書館の奥である本に出合った時、俺は思い出す。『そうだ、俺はかつて日本人だった』と。  その本をつい翻訳してしまった事がきっかけで俺の人生設計は狂い始める。気がつけば美少女3人に囲まれつつ仕事に追われる毎日。そして時々俺は悩む。本当に俺はこんな暮らしをしてていいのだろうかと。ハーレム状態なのだろうか。単に便利に使われているだけなのだろうかと。

クラスの陰キャボッチは現代最強の陰陽師!?~長らく継承者のいなかった神器を継承出来た僕はお姉ちゃんを治すために陰陽師界の頂点を目指していたら

リヒト
ファンタジー
 現代日本。人々が平和な日常を享受するその世界の裏側では、常に陰陽師と人類の敵である妖魔による激しい戦いが繰り広げられていた。  そんな世界において、クラスで友達のいない冴えない陰キャの少年である有馬優斗は、その陰陽師としての絶大な才能を持っていた。陰陽師としてのセンスはもちろん。特別な神具を振るう適性まであり、彼は現代最強の陰陽師に成れるだけの才能を有していた。  その少年が願うのはただ一つ。病気で寝たきりのお姉ちゃんを回復させること。  お姉ちゃんを病気から救うのに必要なのは陰陽師の中でも本当にトップにならなくては扱えない特別な道具を使うこと。    ならば、有馬優斗は望む。己が最強になることを。    お姉ちゃんの為に最強を目指す有馬優斗の周りには気づけば、何故か各名門の陰陽師家のご令嬢の姿があって……っ!?

サバイバル能力に全振りした男の半端仙人道

コアラ太
ファンタジー
年齢(3000歳)特技(逃げ足)趣味(採取)。半仙人やってます。  主人公は都会の生活に疲れて脱サラし、山暮らしを始めた。  こじんまりとした生活の中で、自然に触れていくと、瞑想にハマり始める。  そんなある日、森の中で見知らぬ老人から声をかけられたことがきっかけとなり、その老人に弟子入りすることになった。  修行する中で、仙人の道へ足を踏み入れるが、師匠から仙人にはなれないと言われてしまった。それでも良いやと気楽に修行を続け、正式な仙人にはなれずとも。足掛け程度は認められることになる。    それから何年も何年も何年も過ぎ、いつものように没頭していた瞑想を終えて目開けると、視界に映るのは密林。仕方なく周辺を探索していると、二足歩行の獣に捕まってしまう。言葉の通じないモフモフ達の言語から覚えなければ……。  不死になれなかった半端な仙人が起こす珍道中。  記憶力の無い男が、日記を探して旅をする。     メサメサメサ   メサ      メサ メサ          メサ メサ          メサ   メサメサメサメサメサ  メ サ  メ  サ  サ  メ サ  メ  サ  サ  サ メ  サ  メ   サ  ササ  他サイトにも掲載しています。

魔法使いが無双する異世界に転移した魔法の使えない俺ですが、陰陽術とか武術とか魔法以外のことは大抵できるのでなんとか死なずにやっていけそうです

忠行
ファンタジー
魔法使いが無双するファンタジー世界に転移した魔法の使えない俺ですが、陰陽術とか武術とか忍術とか魔法以外のことは大抵できるのでなんとか死なずにやっていけそうです。むしろ前の世界よりもイケてる感じ?

距離を置きたい女子たちを助けてしまった結果、正体バレして迫られる

歩く魚
恋愛
 かつて、命を懸けて誰かを助けた日があった。  だがその記憶は、頭を打った衝撃とともに、綺麗さっぱり失われていた。  それは気にしてない。俺は深入りする気はない。  人間は好きだ。けれど、近づきすぎると嫌いになる。  だがそんな俺に、思いもよらぬ刺客が現れる。  ――あの日、俺が助けたのは、できれば関わりたくなかった――距離を置きたい女子たちだったらしい。

ある日、俺の部屋にダンジョンの入り口が!? こうなったら配信者で天下を取ってやろう!

さかいおさむ
ファンタジー
ダンジョンが出現し【冒険者】という職業が出来た日本。 冒険者は探索だけではなく、【配信者】としてダンジョンでの冒険を配信するようになる。 底辺サラリーマンのアキラもダンジョン配信者の大ファンだ。 そんなある日、彼の部屋にダンジョンの入り口が現れた。  部屋にダンジョンの入り口が出来るという奇跡のおかげで、アキラも配信者になる。 ダンジョン配信オタクの美人がプロデューサーになり、アキラのダンジョン配信は人気が出てくる。 『アキラちゃんねる』は配信収益で一攫千金を狙う!

男女比1:15の貞操逆転世界で高校生活(婚活)

大寒波
恋愛
日本で生活していた前世の記憶を持つ主人公、七瀬達也が日本によく似た貞操逆転世界に転生し、高校生活を楽しみながら婚活を頑張るお話。 この世界の法律では、男性は二十歳までに5人と結婚をしなければならない。(高校卒業時点は3人) そんな法律があるなら、もういっそのこと高校在学中に5人と結婚しよう!となるのが今作の主人公である達也だ! この世界の経済は基本的に女性のみで回っており、男性に求められることといえば子種、遺伝子だ。 前世の影響かはわからないが、日本屈指のHENTAIである達也は運よく遺伝子も最高ランクになった。 顔もイケメン!遺伝子も優秀!貴重な男!…と、驕らずに自分と関わった女性には少しでも幸せな気持ちを分かち合えるように努力しようと決意する。 どうせなら、WIN-WINの関係でありたいよね! そうして、別居婚が主流なこの世界では珍しいみんなと同居することを、いや。ハーレムを目標に個性豊かなヒロイン達と織り成す学園ラブコメディがいま始まる! 主人公の通う学校では、少し貞操逆転の要素薄いかもです。男女比に寄っています。 外はその限りではありません。 カクヨムでも投稿しております。

異世界転生おじさんは最強とハーレムを極める

自ら
ファンタジー
定年を半年後に控えた凡庸なサラリーマン、佐藤健一(50歳)は、不慮の交通事故で人生を終える。目覚めた先で出会ったのは、自分の魂をトラックの前に落としたというミスをした女神リナリア。 その「お詫び」として、健一は剣と魔法の異世界へと30代後半の肉体で転生することになる。チート能力の選択を迫られ、彼はあらゆる経験から無限に成長できる**【無限成長(アンリミテッド・グロース)】**を選び取る。 異世界で早速遭遇したゴブリンを一撃で倒し、チート能力を実感した健一は、くたびれた人生を捨て、最強のセカンドライフを謳歌することを決意する。 定年間際のおじさんが、女神の気まぐれチートで異世界最強への道を歩み始める、転生ファンタジーの開幕。

処理中です...