異世界帰りのハーレム王

ぬんまる兄貴

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第33話 ハーレム神輿

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 【麗華視点】


 その夜、私は自室に向かって廊下を歩いていた。
 静かな夜、風が庭を吹き抜け、伊集院家の家屋には普段と変わらない静寂が漂っていた――はずだった。



「あれ?」



 ふと、通りすがりに聞こえてきた妙な音。
 それは、飯田雷丸の部屋の方から漏れてきたものだった。



「なに、今の音……?」




 私は不審に思い、そっと襖に近づいてみた。
 その瞬間、耳に飛び込んできたのは――



「あっ……!すごい……雷丸様……!」
「もっと……もっと……!」



 ――嬌声!?



 私は思わずその場で硬直した。
 い、今のは……?いや、聞き間違いじゃない。今、確かに女性の声だった!

 さらに、耳をすませると――



「雷丸様、あなたは本当に……最高です……」
「もっと強く……!」



 何かが襖の向こうでゴソゴソ動いている気配がする。
 私は、完全に顔が赤くなっているのを感じながら、そっと襖の隙間を覗いてみた。



「――――ッ!?」



 そこに見えたのは――

 
 雷丸と、雪華と、焔華と、貴音が……!!
 まさにハッスルしている最中ではないか!



「な、な、なにやってんのよーーー!?」



 私は心の中で叫んだ。
 襖の向こうには、雷丸が得意げな顔で何かをしており、雪華、焔華、そして貴音が一緒になって動いている。

 
 もう何が起こっているのか、頭が真っ白だ。
 しかし、そのシーンをじっくり見ると……えっ、ちょっと待って?
 

 彼らが四つん這いで動かしているのは……布団?
 そして、その上に雷丸がふんぞり返って座っているように見える……。



「もっとしっかり!お前たち、俺をちゃんと持ち上げろ!これがハーレム王の特訓だ!」



 雷丸が威風堂々とした声で指示を出すと、3人が一斉に声を合わせて布団を持ち上げる。



「よいしょ……よいしょ……!」



 どうやら、雷丸の「ハーレム御輿」のようだ。
 彼が布団の上に座っていて、雪華、焔華、そして貴音が彼を担ぎ上げていたのだ。

 私は完全に唖然とした。



「……ひとんちでなにやってんのよーー!?」



 思わず声が漏れたが、部屋の中にいる彼らには聞こえていないようだ。
 雷丸はさらに得意満面の表情で、宙に浮かんだ布団の上から指示を出していた。



「よーし!お前たち、もっとハッスルだ!俺を空まで飛ばす勢いでやれ!」

「はい、雷丸様!」



 雪華が冷静に布団を支え、焔華は笑顔で力を込め、貴音は「お兄ちゃん重いよ……」と小声でつぶやきながら必死に持ち上げている。

 私は頭を抱えた。



 ――どんな状況よ……!なにが『ハーレム王の特訓』よ!



「はぁ……もう、どうしてこんなことになってるのかしら……」



 襖の向こうでは、雷丸の「ハーレム御輿」が夜の静寂を引き裂く勢いで揺れている。


 深いため息をつきながら、私は自室へ向かう足を再び動かした。
 


 ――飯田雷丸、どうしてこの男、毎回私の常識をぶっ壊してくれるのかしら……?


 
 廊下を歩く私の背後では、まだ聞こえる雷丸の声。


 
「ハーレム王国の始まりだ!もっと高く!もっと強く!俺を讃えろぉぉぉ!」



 ……もう、知らない。



 ――――――――――――



 【静香視点】



 夜夜も更け、私は書斎で伊集院家の管理業務を進めていた。
 モニターには邸内の各所を映す監視カメラが映し出されている。
 家族の安全を守るために、毎晩欠かさずチェックするのが私の日課だ。


 今夜も特に異変はない……そう思っていた矢先のことだった。

 

「ん?」



 ふと、飯田雷丸の部屋を映すカメラに目が留まる。
 妙な動きが画面越しに見える。

 

「……何をしているのかしら?」



 私はモニターに顔を近づけて確認した。

 
 ――そこで目にした光景に、私は目を疑った。

 
 
「……は?」



 画面には、布団の上にふんぞり返る雷丸の姿。
 その布団を雪華、焔華、そして貴音が四つん這いになって必死に持ち上げているではないか。

 

「……な、なにこれ……!?」



 私は反射的に声を漏らしそうになり、慌てて口を押さえた。

 
 しかし事態はそれだけでは終わらなかった。
 カメラ越しに、雷丸の自信満々な声が響いてくる。


 
「もっとハッスルしろ!俺を高く!空まで飛ばす勢いで行け!」



 ――ハッスル!?


 頭が追いつかない。
 なぜこの家の一室で、布団が御輿として担がれているのか?
 なぜ彼が王様気取りでふんぞり返っているのか?


 さらに、雪華と焔華、貴音までもが本気で力を振り絞り――掛け声を合わせている。


 
「よいしょー!」
「雷丸様、もう少しで空へ……!」
「お兄ちゃん、重いよ!」



 私はその光景を見て、ついにモニターの前で頭を抱えた。



 ――これが異世界帰りの英雄のハーレムだというの?



 もはや突っ込む気力すら湧かない。
 彼らが本気で何を目指しているのか、理解が追いつかないのだ。


 
「……一体、何なの、この人たち……」



 さらに雷丸の声が響く。


 
「もっとだ!俺を崇めろ!ハーレム王の威厳を感じさせてやる!」



 ――もうダメだ。この男、救いようがない。


 
 私は呆然とモニターを見つめながら、深い溜息をついた。


 雷丸が「ハーレム御輿」とやらで高らかに指揮をとる姿を眺めつつ、私はそっとモニターの電源スイッチを押した。


 


 ――これ以上、見ていたら正気を保てそうにない。



 静かな書斎に訪れる真の静寂。
 しかし、その後ろでは、まだハッスルする雷丸たちの声が薄っすら聞こえている。


 
「もっとだ!空へ!宇宙まで運べぇぇぇ!」

「雷丸様、それは物理的に無理です!」



 ……私はさらに深いため息をつき、書斎を後にした。


 その夜、私はいつもより早く就寝することを決意した。
明日、この家をどうしていくべきか――本気で考えなければならない気がする。

 
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