異世界帰りのハーレム王

ぬんまる兄貴

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第47話 修学旅行7

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 オーシャンブルーでご飯を食べ終えた俺たちは、美ら海を眺めながら一息ついていた。カレーもコーヒーも最高だったし、ここまで完璧な時間を過ごせたと思ってた、その時――。


 
「そういえば、貴方に聞きたいことがあるんだけど。」

「ん?なんだよ?」

 

 俺が気軽に聞き返すと、麗華が少し首をかしげながら真剣な顔で言った。


 
「ずっと気になってたんだけど……ハーレム王って、何?」



 ――――は?



 一瞬、俺の頭がフリーズした。まさかそんな直球な質問をされるとは思ってなかったから、思わず箸が落ちそうになった。

 

「ハーレム王……?」



 とりあえずオウム返ししてみるが、麗華の目は真剣そのものだった。


 
「そう。貴方、いつも『俺はハーレム王だ』って言ってるけど、具体的にはどういうものを指してるの?」



 ――いやいや、そんな真剣な顔で聞くもんじゃねぇだろ!?


 
「えっと……それは……あれだ、美少女に囲まれてる奴の……こと?」



 俺は妙に弱々しい声で答えると、麗華が眉を少し上げてさらに追及してきた。


 
「それで?囲まれてどうするの?目的は?」



 ――目的!?ハーレム王にそんな深い意味を求められても困るんだけど!?
 そもそもハーレム王の目的ってなんだよ!?普通、ハーレムができたらそれで十分じゃねぇのか!?


 
「いや、特に目的とかは……その……みんなで楽しく過ごせればいいっていうか……?」



 俺の答えに麗華はじっと考え込むように黙り込む。


 
「じゃあ質問を変えるわ。ハーレム王になった後、貴方はどういう生活を送りたいの?」


 ――また来たよ、具体的な質問!
 俺は焦りながら答えた。


 
「えっと、そりゃあ……毎日みんなで楽しく過ごして……朝起きたら美少女たちが『おはよう、雷丸様!』とか言ってくれて……」



 麗華の顔がますます険しくなる。


 
「それだけ?」
 
「え、えっと……あと、みんなで旅行に行ったり、美味しいもの食べたり……」



 麗華は今度こそ完全に呆れた顔をして俺を見つめた。


 
「……つまり、ハーレム王って、ただの楽しいおじさんになるってこと?」

「いやいや、ただの楽しいおじさんって!それはちょっと違うだろ!」



 俺が必死に弁明しようとするけど、麗華はもう完全に納得してない様子だ。



「貴方の掲げるハーレム王って、なんか浅くない?」



 ――うっ、グサッ!
 麗華の冷静な一言が俺の心に突き刺さる。


 
「いいだろ別に!俺の理想だし!ってかなんで今さらそんな事聞くんだよ!?」



 俺は反論しながらも、どこかしどろもどろになってしまう。すると、麗華は眉を少し上げながら、冷静に反論を返してきた。


 
「私が、貴方と結婚したら、私も貴方のハーレムに入る訳でしょう?だったら、自分が入るグループの実態や目標ぐらい知っておきたいじゃない?」



 ――た、確かにその通りだ……!



 一瞬、俺は言葉を失った。冷静かつ合理的な麗華の指摘に、完全に言い負かされた感がある。考えてみれば、結婚相手が入る“ハーレム”のビジョンが不透明だなんて、確かに不安だろう。


 
「え、えっと……その、俺のハーレムは……その……楽しくて、安心できて、みんなが幸せになれる場所だ!」



 なんとかひねり出した答えに、麗華はじっと考え込むような顔をする。そして、静かに問いかけてきた。


 
「それは具体的にどうやって実現するの?」



 ――うわぁぁぁ!さらに深掘り!?


 
「いや、えっと、例えば……えーっと……朝はみんなで美味しい朝ご飯を食べて、昼は楽しく過ごして、夜は……その……仲良くお喋りする、みたいな?」



 俺が必死に絞り出した答えに、麗華は軽くため息をついた。そして、少しだけ呆れたような笑みを浮かべる。


 
「つまり、貴方の理想は“家族みたいな関係”ってことかしら?」

「そ、そうだ!まさにそれだ!俺のハーレムは、家族みたいな安心感がある場所なんだ!」



 ――おぉ、なんかそれっぽいこと言えたぞ!

 自信満々で答える俺に対して、麗華は少し考え込んだ後、静かに口を開いた。

 

「それなら……まぁ、悪くはないかもしれないわね。」



 その言葉に、俺は思わず安堵の息を漏らした。



 
「よっしゃ!麗華に納得してもらえたなら、俺のハーレム王としての目標も間違ってねぇな!」

「でも、まだ完全に納得したわけじゃないわよ。」



 麗華はそう付け加えると、少しだけ笑みを浮かべた。その表情に、俺はまたドキッとしてしまう。



 ――この冷静で合理的な麗華を完全に納得させるのは、まだまだ遠そうだな。でも、俺は絶対にハーレム王として認めてもらうぞ!


 
 今度こそ、俺はハーレム王としてみんなを幸せにするんだ!!!!



 …………………………。

 ……………………。

 ………………。



 "今度こそ?"



 その言葉が頭をよぎった瞬間、何かが胸の奥で引っかかるような感覚がした。


 
 今度こそ――


 
 わからない。なぜこの言葉が浮かんできたのか。何か重要なことを忘れているような気がする。でも、何を?



 ――ザザ……ザザザ……



 どこからともなく、耳元で微かに波の音のような響きが聞こえてくる。けれど、それはさっきまで聞いていた美ら海の波の音とは違った。何かもっと深い、遠い記憶を呼び起こそうとするような……そんな音だった。


 
「これで雷丸様もいつでも王になれますわね。優しい王様に。」



 突然、誰かの声が頭の中で響いた。優しく、暖かい声。



 ――誰だ?誰がそんなことを俺に言ったんだ?



 思い出せない。だけど、その言葉を聞いた瞬間、胸がぎゅっと締め付けられるような感覚に襲われた。息が詰まるような、忘れたくない何かを無理やり思い出させようとするような、そんな痛みだった。


 俺は無意識に胸に手を当てた。麗華が不思議そうに俺を見上げる。

 

「どうしたの?飯田君、急に黙り込んで。」

「いや……なんでもない。ただ、ちょっと……」



 言葉が出てこない。思考の奥底で何かがうごめいている。でも、それが何なのか、俺にはまだ掴めない。



 ――何だ?この気持ちは。



 波の音とともに、記憶の断片が少しずつ浮かび上がろうとしていた。けれど、それはまだ霧の中。手を伸ばそうとしても届かない、曖昧なものだった。
 

 

 ――――――――――――――

 

 

 美ら海水族館を満喫した後、俺たちが次に訪れたのは「イルカ体験学習」のプログラムだった。専用エリアの大きなプールにクラス全員が集まり、目の前には悠々と泳ぐイルカたちが見える。


 
「うおぉぉ!イルカだ!めっちゃ可愛いじゃねぇか!」



 俺が興奮して叫ぶと、クラスメイトたちも一斉にテンションを爆発させた。


 
「見ろよ!あのジャンプ!やべぇ!」
「イルカって笑ってるみたいに見えるよな!可愛すぎ!」
「やっぱりイルカって知性あるんだよ!お前らより頭良さそうだな!」


 
 ――最後のやつ、余計な一言だったぞ!



 プールサイドではスタッフがマイクを持ちながら説明を始めた。


 
「皆さん、今日はイルカたちと一緒に遊びながら学べる体験をしていただきます!まずはこちらに並んでください!」



 その声に従い、俺たちは列を作ってプログラムに参加する準備をする。隣にいる小野寺が、早くイルカに触れたいと腕を振り回している。


 
「飯田!俺、絶対イルカにタッチするぜ!いや、イルカにタックルされてもいい!」
 
「いや、それはダメだろ!イルカに何するつもりだよ!」


 
 そんな小野寺の騒ぎを横目に、麗華は冷静に説明を聞いている。

 

「イルカの背びれに触れるだけでなく、ジャンプの合図を送ることもできるそうよ。」
 
「ジャンプの合図!?やべぇ、俺がイルカの指揮官になる日が来るとは!」


 
 俺が勢いよく叫ぶと、麗華が小さくため息をつきながらも微笑む。


 
「本当に、どんなことでも全力で楽しむのね。」

 

 そんなやりとりをしている間に、いよいよイルカとの触れ合いタイムがスタートした。

 スタッフの指示に従ってプールサイドに立つ俺。目の前を通り過ぎるイルカに手を伸ばしてみると――

 

「うおぉ!ツルツルしてる!なんだこれ!マジですげぇ!」



 思わず大声を上げると、イルカがこちらを見てニヤッとしたような気がした。いや、錯覚かもしれないけど、イルカに笑われた気がしてならない。


 ふと隣を見ると、麗華がプールサイドにしゃがみこんで、そっとイルカに手を伸ばしていた。その仕草が妙に優雅で、俺は思わず目を奪われる。


 
「イルカって、こうして触れるとわかるけど、本当に温厚な生き物なのね。」



 麗華が柔らかい声でつぶやく。


 彼女の手がイルカの背びれに触れ、優しく撫でる。その動きはまるで、ガラス細工を扱うかのように繊細で、でもどこかあたたかい。イルカもその心地よさを感じたのか、目を細めるようにして、さらに麗華の手に近づいてきた。


 
 ――や、やばい。なんだ、この光景。



 普段の冷静で強気な麗華とは違う、柔らかで優しい一面を見た俺の心臓は、なぜかドキドキと騒ぎ出した。


 
「ほら、こんなに大きいのに、とても穏やかな目をしているわ。」


 
 麗華がイルカの顔を軽く撫でながら微笑む。
 その微笑みは、まるで絵画みたいに美しい。


 
 ――おいおい、何だこれ。俺、完全にやられてるじゃねぇか。

 

「飯田君も、撫でてみたら?」



 麗華が俺を見上げて声をかけてくる。その瞳には、いつものツンとした雰囲気はなく、どこか柔らかい光が宿っていた。


 
「お、おう!そうだな!」



 俺は無理やりテンションを上げながら、イルカに手を伸ばしたけど――正直、手が震えてるのが自分でもわかった。
 

 イルカの滑らかな感触を確かめながらも、俺の意識は完全に隣の麗華に向いていた。
 その優しい仕草、その穏やかな表情……まるで別人みたいな彼女の姿に、俺の心は完全にノックアウトされていた。

 

 ――ヤバい。俺、これから麗華を直視できる気がしねぇ……。


 
「どうしたの?急に静かになったわね。」


 
 麗華が不思議そうに俺を見上げる。


 
「い、いや!イルカ、めっちゃ気持ちいいな!ほんとすげぇ!」



 俺は必死に動揺を隠そうと声を張り上げたけど、麗華にはすでにバレてるような気がした――その小さな笑みを見る限りでは。


 次に待っていたのは給餌体験。バケツいっぱいの魚を手渡されて、イルカたちに投げ込む。

 
 
「よーし、食べてくれよ!」



 俺が勢いよく魚を投げると、イルカが見事なジャンプでキャッチする。水しぶきがキラキラと輝いて、まるで映画のワンシーンみたいだ。


 
「飯田、なんかお前が一番楽しそうだな!」


 
 小野寺がニヤニヤしながら言ってくるが、そんなの気にしない。だって、イルカって最高に楽しいじゃねぇか!

 隣では麗華が少し慎重に魚を投げていた。


 
「こう……かな?」



 彼女の手から飛んだ魚も、イルカがきれいにキャッチする。その瞬間、麗華の顔に一瞬だけ驚きと喜びが混ざったような表情が浮かぶ。


 ――おいおい、そんな可愛い顔見せられたら、こっちがドキドキするだろ!



 最後の記念撮影タイム。クラス全員がイルカとのツーショットを狙って盛り上がる中、俺は迷うことなく麗華を誘った。


 
「麗華、イルカの隣に行こうぜ!せっかくだから、一緒に写真撮ろう!」



 俺がそう言うと、麗華は一瞬目を丸くしてから、少し考え込むような表情を見せた。

 

「……仕方ないわね。」



 その言葉とともに、彼女は俺の隣でイルカに近づき、立ち位置を整えた。俺は意を決して麗華の肩に手を回し、そっと彼女を寄せた。




 ――次の瞬間。

 

「えっ……?」



 麗華が驚いた顔で俺を見上げる。その目には、普段の冷静さとは違う、素直な動揺が浮かんでいた。

 
  
「な、何よ急に……。」



 頬がほんのり赤く染まる彼女の顔に、俺の胸は一気に高鳴る。

 

「いや、これくらいしないと写真映えしないだろ?」


 
 俺は動揺を隠すために強がった笑顔を浮かべたけど、麗華は少し目をそらしながらポツリとつぶやいた。


 
「……こういうの、慣れてないのよ。」



 その言葉に、俺は思わずギュッと肩を寄せる力を強めた。


 
「じゃあ、これを機に慣れてくれ。俺がたくさん教えてやるからさ。」



 俺の冗談交じりの言葉に、麗華は小さく息をついて、それ以上は何も言わなかった。ただ、その頬の赤みは消えないままだった。


 
「はい、撮りますよー!3、2、1!」


 カメラのシャッター音が響き、俺たちとイルカの記念写真が撮影された。その瞬間、麗華の肩に触れた俺の手の感触は、忘れられないものになった気がする。


 ――この写真、俺の一生の宝物になるかもな。

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