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第74話 プロリーグ1
しおりを挟む朝、目覚ましが鳴るよりも早く、俺は目を覚ました。いや、ただ目を覚ましたんじゃない――俺は勝利の男として、新たな一日を迎えたんだ。
今日は特別な日。そう、俺の人生に名を刻む日だ。プロサッカー選手としてのデビュー戦!
「よし、今日がその日だ――俺の初プロ戦だ!」
そう、俺はハーレム王として女心を射止める男でもあるが、実はプロサッカー選手でもある。
華麗なドリブルと精密なシュートで敵を翻弄し、スタジアムを熱狂の渦に巻き込む――そう、それが俺、飯田雷丸の使命だ。
俺は鏡の前に立ち、自分をじっくりと観察する。今日は特別な日だ。だから髪型にも気合を入れた。オールバック、完璧にキマってる!鏡に映る自分を見て、思わずにやりと笑ってしまう。
「俺、やっぱ最高にカッコいいな……いや、これぞプロ選手の顔だ。テレビ映えも間違いない!」
拳を握りしめ、気合を入れる。
「今日の試合、絶対に決めてやる!」
力強く拳を握りしめ、カバンを準備していると、背後から弾けるような声が聞こえた。
「雷丸様、朝ごはんできてますよー!」
雪華だ。いつものテンションMAXのモーニングコール。俺はその声に苦笑いしながら、スーツの袖を通した。
「おう、今行くよ!でも今日はあんま食べねぇぞ。試合前だからな!」
今日はプロデビュー戦だ。食事にも気を使わなきゃならない。試合中に走り回れるよう、胃に負担をかけない軽いものが理想だ。
そう思いながらリビングに向かうと――
「……こ、これは……!?」
テーブルの上に鎮座しているのは、一見して圧倒的な存在感を放つ巨大なミートパイだった。
表面は黄金色に焼き上がり、サクサクとした層が幾重にも重なっている。その中心には美しい放射状の模様が刻まれ、明らかに雪華が全力を尽くして作ったのが一目でわかる。
パイ生地の縁には、緻密な編み込み模様が施され、全体からほんのりと漂うバターの香りが食欲を刺激する。そして、切れ目から覗く具材――ひき肉、玉ねぎ、マッシュルームが絶妙なバランスで詰め込まれているのが見える。
肉汁がじわっと染み出し、湯気が立ち上る様子は、まるで「食べてみろ」と挑発されているかのようだ。さらにその横には、彩りを添えるためか、新鮮なパセリがさりげなく散らされていた。
そしてその上には、小さな旗が立てられていた。旗には、手書きで「雷丸様専用ミートパイ」と書かれている。
俺がその圧に押されていると、リビングには雪華のほか、貴音、焔華、麗華、そして静香さんまで揃っていた。全員が俺を見つめる中、雪華がキラキラと輝く瞳でミートパイを差し出してきた。
「雷丸様、今日はデビュー戦ですからね!私、腕によりをかけて朝食を作りました!」
俺はその迫力と熱意に圧倒されながら、なんとか声を絞り出した。
「お、おぉ……ありがとう雪華。でもこれ、みんなで食べるんだよな?」
しかし、雪華は即座に首を振り、力強い笑顔で断言する。
「いいえ!これ、雷丸様のためだけに作ったんです!みなさんの分は別に用意してますからご安心を!」
その言葉に、隣の貴音が微笑みながら嬉しそうに口を挟んだ。
「お兄ちゃん、よかったね~!雪華にこんなに愛されてて!」
「ほほう、豪勢な朝飯じゃのう!雷丸、これ全部平らげて勝ってくるんじゃ!」
焔華は腕を組みながら豪快に笑い、まるで大宴会の主役を送り出すかのようだ。
一方、麗華は冷静そのもの。
「いや……これ、運動前にはさすがにキツくない?」
的確すぎる麗華のツッコミに、俺は目の前のミートパイと、期待に満ちた雪華のキラキラした笑顔を交互に見やり、完全に言葉を失った。
「遠慮しなくていいですよ!たくさん食べて、頑張ってください!」
えぇ!?これ全部食ったら、試合中に動けなくなるだろうが!
そう心の中で叫ぶが、雪華の「食べてほしい」光線が強すぎる。視線に込められた純粋な期待と愛情が、断る隙を与えない。
その場を見かねた静香さんが、落ち着いた声でフォローを入れる。
「無理しない方がいいわよ。せっかくの試合なんだから、体に負担がかからないようにしないと。」
――そうだよ!静香さん、まさに正論だ!これで俺も堂々と……
しかし、静香さんの言葉を聞いた瞬間、雪華の顔がみるみる曇る。
うっすらと涙を浮かべ、肩を落とすその姿が、あまりにも切ない。
――いや、ここで食わなきゃハーレム王失格だろ!?
自問自答の末、俺は意を決したようにテーブルに向き直る。そしてスプーンを手に取り、雪華の期待を受け止めるように笑顔を作った。
「よし!このミートパイ、全部いただくぜ!」
その一言で雪華の顔が一瞬で明るくなった。
「本当ですか!?ありがとうございます、雷丸様!」
周りの女性陣が呆れ混じりに笑う中、俺は目の前の巨大なミートパイに挑むことになった。
「雷丸様、どうぞ!熱いうちに召し上がってください!」
雪華の輝く笑顔を見て、俺の士気は最高潮。
一口、また一口……バターの香りが口の中に広がり、サクサクのパイ生地が絶妙なハーモニーを奏でる。
「……うまい……!」
気づけば俺は本音を漏らしていた。
「飯田君、無理はしないでね……試合前に倒れたら、元も子もないんだから。」
麗華の冷静な声が飛ぶが、俺は拳を握りしめて答えた。
「心配すんな!俺の胃袋はハーレム王仕様だからな!」
その一言に焔華が豪快に笑い、「よし、さすがわしらの雷丸じゃ!」と拍手する。貴音は「お兄ちゃん、かっこいい~!」とキラキラした目で俺を見つめ、雪華は手を合わせて「さすがです、雷丸様!」と感激している。
――ここまで来たらやるしかねぇだろ!
俺は残り半分になったミートパイを見つめ、深呼吸を一つ。心の中で闘志を燃やす。
「よし、ハーレム王・飯田雷丸、本気モード発動だ!」
俺は椅子から腰を浮かせ、思い切り顎を外れるんじゃないかってくらい大口を開けた。そして、そのままミートパイを丸ごと持ち上げ――
「いっけええええええ!!!」
――丸呑み!!
周りのリアクションはまさに劇的だった。
「お兄ちゃん!?え、今、パイ丸ごと食べたの!?すごーい!」
貴音が驚きと感動で拍手しながら騒ぎ出す。
「なんじゃその食い方は!?わしでもやらんぞ、そんな無茶!」
焔華は目を丸くしながら、けれどその表情には笑みが浮かんでいる。
「……飯田君、無理しないでって言ったのに……」
麗華は呆れたようにため息をつきながらも、どこか楽しそうだ。
そして、雪華のリアクションは――
「雷丸様、なんて素晴らしいんでしょう……!私のミートパイをこんなにも美味しそうに食べてくださって……!」
目にうっすらと涙を浮かべながら、まるで自分の人生が報われたかのような表情で俺を見ている。
「雷丸様、本当にありがとうございます……!これで私の一日も完璧です!」
「ふぅ……これでミートパイ、完食だぜ!」
俺はドヤ顔で周りを見渡しながら、ガッツポーズを決めた。
最後に静香さんが口元に手を当てて、ふっと微笑んだ。
「……これで動けなくなったら、どうするのかしらね?」
その言葉に俺はハッとして――
「そ、それは……大丈夫です!俺、消化もハーレム王仕様なんで!」
こうして、ハーレムファミリーの歓声と笑顔を背に、俺のプロデビュー戦の一日は始まった。胃袋は満たされ、気合は十分。――俺、絶対に勝つ!
気を取り直し、カバンを肩にかけて玄関へ向かう。
「よし!試合もこの勢いで決めてくるぜ!」
周りの全員が笑顔で送り出してくれる中、俺はプロデビュー戦に向けて玄関を飛び出した。
「これがハーレム王・飯田雷丸の、最高に熱い一日の始まりだ!」
そう意気込んだ俺だったが――運命はそんなに甘くなかった。
スタジアム行きのバス停で待っていると、目の前に広がるのは絶望的な光景。
「おいおい……なんだ、この渋滞!?」
道が完全に詰まってるじゃねぇか!試合開始まであと1時間しかないのに、このままじゃ間に合わねぇ!
乗客たちも不安そうに時計を見ている。だが、俺は違う。
――俺には異世界で培った力があるんだ。
そうだ、俺はただのサッカー選手じゃない。俺はハーレム王だ!!
俺は心の中で自分を鼓舞する。
「俺はイケメン……俺は最強……俺は雪華の特大ミートパイも完食した男……」
自分を信じろ。俺力(オレリョク)を最大限に高めるんだ!
「俺はなんでもできる!俺は空も飛べる…………!!」
そう、俺は飛べる!
「飛べるんだぁぁぁぁぁぁ!!!!」
俺はカバンを背負ったまま、両腕を広げ、思いっきりジャンプ!
バサッ!――宙を舞う俺の姿。
眼下には、渋滞で困り果てている車列。運転手たちは窓から顔を出して、目を丸くしてこっちを見ている。
「ははっ、悪いな!俺にはこの手があるんだよ!」
車内の子供が「ママ、あの人飛んでる!」と叫んでいる声が聞こえた。俺は得意げに手を振りながら、さらに高度を上げる。
遠くに見えるのは、巨大なスタジアム――俺の戦場だ!
心臓が高鳴る。ここでプロサッカー選手としてのデビューを果たすんだ。
「待ってろよ、スタジアム!そして、俺のゴールを待ってるファンたちよ!」
風を切りながら、俺は一直線にスタジアムへ向かう。
スタジアム近くに差し掛かり、俺は軽やかに着地。周囲の観客たちが驚きの声を上げる。
「えっ、今の人、空から降りてきた!?」
「もしかして、あれ飯田雷丸選手……?」
視線が一気に俺に集まる中、俺はスタジアムの入り口を目指して堂々と歩き出す。
「さぁ、ショーの始まりだ!」
俺はでそう叫びながら、胸を張ってスタジアムの中へと消えていった――。
これが、ハーレム王・飯田雷丸のプロデビュー戦の幕開けだ!
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