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第77話 プロリーグ4
しおりを挟む国内のライバルチーム「ヴィクトリア・ジャイアント」の監督、北条英二がVIP席で冷静にスタジアムの騒ぎを見つめていた。その鋭い目は、ゴールを決めてチームメイトに胴上げされる雷丸に釘付けだ。隣に座るアシスタントコーチは、その光景に興奮気味に声を上げかけたが、北条は軽く手を振って制止した。
「待て、まだ騒ぐな。」
アシスタントはすぐに口を閉ざし、再びフィールドに目を戻す。雷丸は笑顔で拳を突き上げ、スタジアム全体が彼の勝利を祝うかのように揺れている。
「どうしますか?彼、やっぱりただの高校上がりじゃありませんよ……まさかあんなに軽々とディフェンスを抜いてゴールするなんて。しかもあの余裕……」
アシスタントが焦りを隠せず言うと、北条は眉一つ動かさず、冷静な口調で答える。
「確かにあの動きは見事だ。しかし、まだ若い。プロの世界はそんなに甘くない。」
その言葉には、長年プロの荒波を乗り越えてきた者だけが持つ独特の威圧感があった。北条は目を細め、フィールド上の雷丸をじっと見据える。その視線はまるで獲物を狙う猛禽類のように鋭く、冷たい。
「だが……面白いな。」
北条の唇がゆっくりと歪んだ。その笑みは、雷丸への興味と、彼を叩きのめす計画の始まりを意味していた。
「楽しみにしておけ、飯田雷丸……プロの厳しさを思い知る日が来る。」
次の試合――「ヴィクトリア・ジャイアント」対「サンダーフォース」。これが北条と雷丸の因縁の対決となるはずだった。
キックオフ直後から、ヴィクトリア・ジャイアントは雷丸のチームに圧倒された。雷丸はまるでフィールドを縦横無尽に駆け回り、北条のチームのディフェンスは彼の足元に全くついていけない。
「お、おい!何が起きてるんだ!?あいつ、まるで光の速さじゃないか!」
アシスタントコーチが恐怖すら感じるほどのスピードで雷丸がゴールに迫る。
「……落ち着け。」
北条は一度は冷静にコーチに言い聞かせたものの、試合が進むにつれて、顔がどんどん蒼白になっていく。なぜなら――雷丸がまた、信じられない技で得点を決めたからだ。
「う、嘘だろ……あれが高校上がりの選手だって?何かの間違いだ……。」
隣のアシスタントコーチが顔を引きつらせて震える声で言う。
「お、驚きですよ……まるでプロをも超える動きだ!あのスピード、技術……一体何者なんだ、彼は!?」
北条はその言葉に反応する余裕もない。試合は進むごとに、雷丸の圧倒的なプレーが繰り広げられ、ヴィクトリア・ジャイアントの選手たちは成す術なく翻弄されていた。北条の目は、次第に恐怖と焦燥に染まっていく。
「お、おい……なんだこれは……こんなはずじゃ……。」
試合が進むにつれ、北条の顔は蒼白になり、足がガクガクと震え始めた。まるで自分が試合に出ているかのように、その場で立つことすらおぼつかない。
「お、俺のチームが……こんな……。」
雷丸が再び相手ディフェンスを鮮やかにかわし、ゴールへ向かう。ボールがネットに吸い込まれると同時に、スタジアム全体が爆発的な歓声に包まれた。
その瞬間――北条の体は限界に達した。
「うっ……!」
膝がガクッと折れ、ベンチ席の椅子に力なく崩れ落ちた。足は震えが止まらず、顔面蒼白で額から汗が滴り落ちる。次の瞬間、彼は声を押し殺し、必死に耐えていたものが……破れた。
「う……うわあぁ……。」
北条のズボンの裾から、信じられないほどの温かい感覚が広がっていく。失禁だ。プロの監督として数々の修羅場をくぐってきた彼が、若き選手の前に屈し、情けなくも己を抑えきれなくなってしまった。
「し、失禁だ……」
隣にいたアシスタントコーチは驚愕し、目を逸らしながらも、北条がガクガクと震えながら座っている姿を見守るしかなかった。
「な、なぜ……俺が……。」
北条は自分の膝の上に流れ落ちた水たまりを見つめ、震える手でそれを隠そうとしたが、もはや取り繕うことはできなかった。
――――――――――――――
プロサッカーの世界に飛び込んだ雷丸は、その瞬間からまさに嵐のごとく注目を集めた。
試合ごとにゴールを量産し、まるでサッカーのために生まれたかのような圧倒的なプレイを見せつける。その存在感は試合だけに留まらず、「ハーレム王」という謎の肩書きさえもフィールド上で絶対的なオーラとして放っていた。
どの試合でも、スタジアムには彼のファンが溢れている。女性ファンたちは声を張り上げて「雷丸様~!」と叫び、スタンドには無数のプラカードや横断幕が掲げられる。
「雷丸様、結婚してください!」
「私もハーレムメンバーにしてください!」
観客席から飛び交う熱狂的な声援に、他の選手たちも思わず目を丸くする。試合後には雷丸を応援する女性ファンたちが、「雷丸応援団」と称するグループを結成し、ピンクのペンライトを振ってスタジアムの外でもエールを送り続ける。
サッカー界だけで収まらないのが雷丸の魅力だ。その名声は瞬く間にメディア業界にまで広がり、バラエティ番組やトークショーに引っ張りだこになる。
ある日、人気トーク番組でのこと。司会者が雷丸に質問を投げかけた。
「飯田選手、プロデビューからすごい勢いですが、この成功の秘訣は?」
雷丸は少しも動じることなく、自信満々の笑みを浮かべて答える。
「俺は異世界帰りだからな!サッカーだろうが、ハーレム作りだろうが、何でも完璧にこなせるんだよ!」
スタジオは爆笑に包まれ、観客たちからは拍手と歓声が湧き起こる。雷丸のそのぶっ飛んだ発言と圧倒的なカリスマ性に、司会者も感嘆するばかりだった。
サッカー雑誌のインタビューでも、雷丸の自信は揺るがない。記者が次の試合について尋ねると、彼はあっけらかんとこう言い放つ。
「次の試合?ゴールは当たり前だよ。ハーレムメンバーの応援があれば、負けるわけがないだろ?ま、俺が世界一になる日もそう遠くないぜ!」
その言葉通り、雷丸の勢いは誰にも止められなかった。
試合中、彼のプレイはまさに別次元だった。ドリブルで相手ディフェンダーを軽々とかわし、スピードとテクニックを駆使して敵陣を突破する姿は、観客の目に魔法のように映る。
「なんだあの動き!?」「ボールが生きてるみたいだ!」
観客たちが息を呑む中、雷丸の足元でボールはまるで意思を持ったかのように滑らかに動き、相手ゴールへ向かって加速していく。そして、シュートの瞬間――スタジアム全体が静まり返り、次の瞬間にはゴールネットを揺らす音とともに爆発的な歓声が湧き上がる。
ゴールを決めた雷丸は、拳を突き上げて全速力でフィールドを駆け抜ける。その姿は、カリスマそのもの。歓声を浴びながらも彼の目には、次の挑戦を見据える強い意志が宿っていた。
観客たちはその瞬間を見逃すまいと立ち上がり、声援を送り続ける。
「雷丸ーーー!!!」
「お前が世界一だ!!!」
スタジアムが熱狂に包まれる中、雷丸の名はさらに広がり、サッカー界に新たな伝説が刻まれていくのだった。
――これがハーレム王・飯田雷丸。彼の活躍は、まだ始まったばかりだ。
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