94 / 189
第94話 職場体験8
しおりを挟むマッサージが終わり、俺たちは完全にリラックスしきっていた。鳥丸天道が再び現れて、俺たちの前に立った。
「さぁ、雷丸君。リラックスしてもらったところで、今度は我々崇拝派がどんな活動をしているか、見てもらおうかな?」
俺はベッドから起き上がり、まだ体に残る余韻を感じつつ、鳥丸に視線を向けた。焔華も雪華も貴音も、少し疲れた顔をしながらも興味津々だ。
「活動って……どんなことをやってるんだ?」
俺は少し警戒しながら尋ねた。
鳥丸は笑顔を浮かべながら手を広げた。
「我々崇拝派は、妖怪を神とし、そのご加護を受けながら人間界に平和をもたらす活動をしているんだ。さぁ、ついてきて!」
俺たちは鳥丸に案内されて、寺院のさらに奥へと進んだ。やけに広い廊下を抜け、立派な扉を開けると、そこには――
「これは……?」
広い部屋の中央には大きな祭壇があり、その周りを多くの信者たちが囲んでいた。彼らは深く頭を垂れ、まるで神に祈りを捧げているようだった。祭壇には奇妙な模様が刻まれ、そこには何かの像が置かれている。
「おぉ……神聖な儀式の最中だな。これは毎日欠かさず行われている祈祷だ。我々はこの儀式を通して妖怪の加護を得て、世界に平和をもたらそうとしているんだよ。」
「妖怪の加護……?」
俺はちょっと戸惑いながら祭壇を見つめた。像はどう見ても人間のものじゃない。鳥丸が崇める妖怪ってのは、こういう感じなんだな……。
「見た目はちょっと怖いけど、この妖怪、空亡様はとても優しい存在なんだ。ほら、信者たちもみんな平和を願っている。雷丸君も、もし興味があれば、この儀式に参加してみないか?」
「え、俺も?」
突然の勧誘に、俺は一瞬後ずさりした。いくらハーレム王でも、いきなりこんな儀式に巻き込まれるのはちょっと……。
貴音が俺の袖を引っ張りながら、小声で「お兄ちゃん、これ……なんだか怪しくない?」と不安そうに囁いた。確かに、何か怪しい雰囲気はある。でも、ハーレム王たるもの、ここで怯むわけにはいかない。
「ま、まぁ、ちょっとだけ見学って感じで……」と俺は言葉を濁しながら鳥丸に答えた。
鳥丸はニヤリと笑って「そうかそうか、無理にとは言わないさ。」
その後、鳥丸天道は、まるでこの瞬間を待っていたかのように、得意げに声を張り上げた。
「やーみんな!!一旦お祈りは中断して!!今日は特別ゲストを連れてきたよ!」
突然の大声に俺たち全員がビクッと反応した。部屋の中にいた信者たちも、いっせいに鳥丸の方を振り返り、俺たちを見てから、ざわめきが起こる。
――ちょ、ちょっと待て!これってまさか、俺たちが今から全員の前に出るとか、そんな展開じゃないよな……?
「異世界帰りのハーレム王、飯田雷丸!そしてその頼れる仲間たち!みんな、拍手ー!!」
天道が誇らしげに俺を紹介するやいなや、信者たちは大げさに手を叩き始めた。――ちょ、ちょっと待てよ!なんで俺が紹介されてんだよ!?こんな壮大な寺院の中央で、しかも『ハーレム王』って肩書きでだぞ!?
貴音は目を見開いて、明らかに驚いている。「お、お兄ちゃん……これって一体……?」雪華と焔華も、信者たちの拍手の中で微妙な表情を浮かべている。いや、俺だって同じ気持ちだ!
そして、天道が手を広げて宣言する。
「まずは妖怪の雪華ちゃん、焔華ちゃんだ!」
雪華と焔華が前に出ると、信者たちの間から感動のため息が漏れた。「はぁぁ……」なんだそのリアクション!まるで聖女が降臨したかのように見てんじゃねぇよ!そして、なぜか次の瞬間、彼らの目からツーッと涙が流れ始めた。
「なんと……尊い……」
「これは……奇跡だ……」
「生きててよかった……」
いやいや、待て待て待て!お前ら、そこまで感動するか!?ただの紹介だぞ!俺はその異様な光景に動揺しつつ、信者たちの号泣っぷりに唖然としていた。
「雪華様!焔華様!生きててよかった!」
「私の人生、これで救われました!」
「もう何もいらない……この瞬間だけで、すべてが報われました!」
なんと信者たちは全員地面に頭をこすりつけ、ガチ泣きしながら崇拝モード全開。え、ちょっと待て。これって俺のハーレムメンバーだぞ?こんな崇拝対象になるなんて、予想外すぎんだが?
雪華は困惑しつつも微笑みを浮かべ、焔華は――おい!何でバッド振り回してんだよ!?完全に戦闘モードじゃねぇか!こっちは崇拝されてんだぞ!戦いじゃない!
俺は状況が飲み込めず、ただ立ち尽くすしかなかった。信者たちの崇拝の声が響く中、天道はさらに満足そうに腕を組んで言った。
「さぁ、みんな!これが本物の奇跡だ!妖怪たちが降臨したこの瞬間を、永遠に忘れるんじゃないぞ!」
信者たちはその言葉に再び大歓声を上げ、まるで映画のクライマックスかのような盛り上がりを見せていた。
俺の心の声は、ただ一つだった。
――何だこの宗教みたいなノリは……。
「さぁ、次は君だ雷丸君!前に出て!!」
天道が得意げに手招きする。
俺は「俺はいいって!!」と手を振って遠慮しようとしたけど、もう遅い。信者たちの期待の目線が、まるでスポットライトみたいに俺に集中してる。
――マジかよ、なんで俺がこんな場でハーレム王として前に立たなきゃならないんだ……。
天道は容赦なく俺の肩をガシッと掴み、強引に前へ押し出す。まるで何かのセレモニーみたいに誇らしげな笑みを浮かべてる。いやいや、俺、そんな特別な存在じゃねぇから!
「さぁ、みんな!この男こそ我らが尊敬すべきハーレム王、飯田雷丸だ!」
その瞬間、信者たちのざわめきが一気に沸き上がる。
――いや、待て。俺、ハーレム王だって公言する場面、ここで必要なのか!?と思ったが、天道はさらに俺を持ち上げる。
「なんと彼は妖怪を二人も娶っている!!」と言った途端、信者たちの反応が一変。会場中が一瞬静まり返り、その後――
「おぉぉぉぉぉぉぉぉぉ!!!」という感動の叫び声が湧き上がり、まるでアーティストのライブで感極まったファンのように、信者たちは歓喜しながら泣き始めた。……ちょっと待て、これ泣く場面なのか!?
「我らが理想とする妖怪崇拝!彼はまさにその象徴となる存在だ!!」と天道が声を張り上げた瞬間、信者たちは次々に涙を流し、まるで信仰の対象が目の前に現れたかのような騒ぎになってる。
「おぉ、ハーレム王様……!」
「妖怪を二人も娶るなんて……なんて偉大なお方なんだ……!!」
「まさに我々の目指す理想だ……!」
――ちょ、ちょっと待って!そこまで崇められるつもりはないんだけど!?
信者たちが次々に感動の涙を流し、手を合わせるその光景を見ながら、俺は背中に冷や汗をかいていた。――いや、これ完全におかしい展開だろ!
「そして、その妹君の貴音ちゃん!!」と天道が突然貴音にスポットライトを当てた瞬間、信者たちの視線が一斉に貴音に向いた。
「おぉ、美しい……!!」
信者たちの感嘆の声が会場中に響き渡る。貴音は完全に戸惑っていて、目をパチクリさせたまま立ち尽くしている。いやいや、そりゃ俺の妹が可愛いのは分かるけど、なんでそんなに感動するんだよ!?と、俺も思わず突っ込みたくなる。
「雷丸様と貴音様……まるで神話の兄弟……!」
いやいや、待て待て。俺たちそんな神話レベルの兄妹じゃねぇから! 神話って、もっと壮大な物語が絡むもんだろ?なんでただの兄妹が神話扱いされてんだよ!
信者たちはまるでスターを見るかのように、感激して涙ぐむ者まで現れる。貴音は「え、え……?お兄ちゃん、これどういうこと……?」と小声で俺に助けを求めてくるが、俺もどう答えればいいのか分からず、肩をすくめるしかなかった。
――いや、俺もどうすりゃいいんだよ、この異常な状況!
0
あなたにおすすめの小説
最弱無双は【スキルを創るスキル】だった⁈~レベルを犠牲に【スキルクリエイター】起動!!レベルが低くて使えないってどういうこと⁈~
華音 楓
ファンタジー
『ハロ~~~~~~~~!!地球の諸君!!僕は~~~~~~~~~~!!神…………デス!!』
たったこの一言から、すべてが始まった。
ある日突然、自称神の手によって世界に配られたスキルという名の才能。
そして自称神は、さらにダンジョンという名の迷宮を世界各地に出現させた。
それを期に、世界各国で作物は不作が発生し、地下資源などが枯渇。
ついにはダンジョンから齎される資源に依存せざるを得ない状況となってしまったのだった。
スキルとは祝福か、呪いか……
ダンジョン探索に命を懸ける人々の物語が今始まる!!
主人公【中村 剣斗】はそんな大災害に巻き込まれた一人であった。
ダンジョンはケントが勤めていた会社を飲み込み、その日のうちに無職となってしまう。
ケントは就職を諦め、【探索者】と呼ばれるダンジョンの資源回収を生業とする職業に就くことを決心する。
しかしケントに授けられたスキルは、【スキルクリエイター】という謎のスキル。
一応戦えはするものの、戦闘では役に立たづ、ついには訓練の際に組んだパーティーからも追い出されてしまう。
途方に暮れるケントは一人でも【探索者】としてやっていくことにした。
その後明かされる【スキルクリエイター】の秘密。
そして、世界存亡の危機。
全てがケントへと帰結するとき、物語が動き出した……
※登場する人物・団体・名称はすべて現実世界とは全く関係がありません。この物語はフィクションでありファンタジーです。
【コミカライズ決定】勇者学園の西園寺オスカー~実力を隠して勇者学園を満喫する俺、美人生徒会長に目をつけられたので最強ムーブをかましたい~
エース皇命
ファンタジー
【HOTランキング2位獲得作品】
【第5回一二三書房Web小説大賞コミカライズ賞】
~ポルカコミックスでの漫画化(コミカライズ)決定!~
ゼルトル勇者学園に通う少年、西園寺オスカーはかなり変わっている。
学園で、教師をも上回るほどの実力を持っておきながらも、その実力を隠し、他の生徒と同様の、平均的な目立たない存在として振る舞うのだ。
何か実力を隠す特別な理由があるのか。
いや、彼はただ、「かっこよさそう」だから実力を隠す。
そんな中、隣の席の美少女セレナや、生徒会長のアリア、剣術教師であるレイヴンなどは、「西園寺オスカーは何かを隠している」というような疑念を抱き始めるのだった。
貴族出身の傲慢なクラスメイトに、彼と対峙することを選ぶ生徒会〈ガーディアンズ・オブ・ゼルトル〉、さらには魔王まで、西園寺オスカーの前に立ちはだかる。
オスカーはどうやって最強の力を手にしたのか。授業や試験ではどんなムーブをかますのか。彼の実力を知る者は現れるのか。
世界を揺るがす、最強中二病主人公の爆誕を見逃すな!
※小説家になろう、カクヨム、pixivにも投稿中。
学年一可愛いS級の美少女の令嬢三姉妹が、何故かやたらと俺の部屋に入り浸ってくる件について
沢田美
恋愛
名門・雄幸高校で目立たず生きる一年生、神谷悠真。
クラスでは影が薄く、青春とは無縁の平凡な日々を送っていた。だがある放課後、街で不良に絡まれていた女子生徒を助けたことで、その日常は一変する。救った相手は、学年一の美少女三姉妹として知られる西園寺家の次女・優里だった。さらに家に帰れば、三姉妹の長女・龍華がなぜか当然のように悠真の部屋に入り浸っている。名門令嬢三姉妹に振り回されながら、静かだったはずの悠真の青春は少しずつ騒がしく揺れ始める。
~最弱のスキルコレクター~ スキルを無限に獲得できるようになった元落ちこぼれは、レベル1のまま世界最強まで成り上がる
僧侶A
ファンタジー
沢山のスキルさえあれば、レベルが無くても最強になれる。
スキルは5つしか獲得できないのに、どのスキルも補正値は5%以下。
だからレベルを上げる以外に強くなる方法はない。
それなのにレベルが1から上がらない如月飛鳥は当然のように落ちこぼれた。
色々と試行錯誤をしたものの、強くなれる見込みがないため、探索者になるという目標を諦め一般人として生きる道を歩んでいた。
しかしある日、5つしか獲得できないはずのスキルをいくらでも獲得できることに気づく。
ここで如月飛鳥は考えた。いくらスキルの一つ一つが大したことが無くても、100個、200個と大量に集めたのならレベルを上げるのと同様に強くなれるのではないかと。
一つの光明を見出した主人公は、最強への道を一直線に突き進む。
土曜日以外は毎日投稿してます。
スキル【幸運】無双~そのシーフ、ユニークスキルを信じて微妙ステータス幸運に一点張りする~
榊与一
ファンタジー
幼い頃の鑑定によって、覚醒とユニークスキルが約束された少年——王道光(おうどうひかる)。
彼はその日から探索者――シーカーを目指した。
そして遂に訪れた覚醒の日。
「ユニークスキル【幸運】?聞いた事のないスキルだな?どんな効果だ?」
スキル効果を確認すると、それは幸運ステータスの効果を強化する物だと判明する。
「幸運の強化って……」
幸運ステータスは、シーカーにとって最も微妙と呼ばれているステータスである。
そのため、進んで幸運にステータスポイントを割く者はいなかった。
そんな効果を強化したからと、王道光はあからさまにがっかりする。
だが彼は知らない。
ユニークスキル【幸運】の効果が想像以上である事を。
しかもスキルレベルを上げる事で、更に効果が追加されることを。
これはハズレと思われたユニークスキル【幸運】で、王道光がシーカー界の頂点へと駆け上がる物語。
悪徳貴族の、イメージ改善、慈善事業
ウィリアム・ブロック
ファンタジー
現代日本から死亡したラスティは貴族に転生する。しかしその世界では貴族はあんまり良く思われていなかった。なのでノブリス・オブリージュを徹底させて、貴族のイメージ改善を目指すのだった。
第2の人生は、『男』が希少種の世界で
赤金武蔵
ファンタジー
日本の高校生、久我一颯(くがいぶき)は、気が付くと見知らぬ土地で、女山賊たちから貞操を奪われる危機に直面していた。
あと一歩で襲われかけた、その時。白銀の鎧を纏った女騎士・ミューレンに救われる。
ミューレンの話から、この世界は地球ではなく、別の世界だということを知る。
しかも──『男』という存在が、超希少な世界だった。
ダンジョン冒険者にラブコメはいらない(多分)~正体を隠して普通の生活を送る男子高生、実は最近注目の高ランク冒険者だった~
エース皇命
ファンタジー
学校では正体を隠し、普通の男子高校生を演じている黒瀬才斗。実は仕事でダンジョンに潜っている、最近話題のAランク冒険者だった。
そんな黒瀬の通う高校に突如転校してきた白桃楓香。初対面なのにも関わらず、なぜかいきなり黒瀬に抱きつくという奇行に出る。
「才斗くん、これからよろしくお願いしますねっ」
なんと白桃は黒瀬の直属の部下として派遣された冒険者であり、以後、同じ家で生活を共にし、ダンジョンでの仕事も一緒にすることになるという。
これは、上級冒険者の黒瀬と、美少女転校生の純愛ラブコメディ――ではなく、ちゃんとしたダンジョン・ファンタジー(多分)。
※小説家になろう、カクヨムでも連載しています。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる