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第99話 ターニングポイント2
しおりを挟む俺が向かった先は、こってりした家系ラーメンの店。脂たっぷり、背脂どっさり、まさに男の戦場って感じの場所だ。
店の前で待っていると、目当ての人物が、ウキウキした様子でやって来た。
「――――やぁ、雷丸君!」
鳥丸天道が、いつもの爽やかな笑顔を浮かべて、軽快な足取りで近づいてくる。
「連絡してくれて嬉しいよ、雷丸君!こうして呼び出してくれたってことは、僕の提案に乗る気になったのかな?」
俺は彼の期待に満ちた瞳を見つめながら、一言だけ返した。
「それについては、店の中で話す」
すると、鳥丸はまるで遠足前の小学生みたいにウキウキしながら、「いやぁ、こういう店、初めてなんだよね!家系ラーメンってどんな味なんだろう?」なんて言いながらついてきた。
だが――店に入った瞬間、彼は固まった。
「伊集院静香……!!黒瀬禍月……!!何故ここに……!!」
そこには、既にカウンターに座っている静香と黒瀬が、ラーメンを前にして俺たちを待っていた。店内はラーメンの匂いと緊張感が交差する、まるで戦場だ。
鳥丸は、冷や汗をかきながら俺に向かって叫んだ。
「雷丸君、下がるんだ!君が私を選んだから、二人とも強硬手段を選んだんだろう!」
しかし、俺はその場で手を挙げて、彼を制止した。
「――いや、違う」
そしてゆっくりと鳥丸の方を振り返り、ニヤリと笑った。
「俺が呼んだんだよ」
その瞬間、鳥丸の目が丸くなり、驚きで顔が真っ青になった。
「なん……だって……!?」
静香は冷静な表情でラーメンのスープを一口すすり、黒瀬は湯気に包まれたラーメンを黙々と食べていた。ラーメン屋のカウンターは、まるで異世界の重要な会談が開かれるような緊迫感に満ちていた。
俺はハーレム王として、覚悟を決めた瞬間だった。
「今日は、三人にちゃんと伝えようと思って」
――――――――――――
「まぁ、とりあえず座れよ。食いながら話そうぜ」
俺はそう言って、渋々ながらも警戒心を隠せない鳥丸に席を促した。ラーメン屋の雰囲気は、どう見ても彼の「高貴な寺院生活」とは程遠い。脂っこい湯気が立ち込める中、カウンター越しに店主がメニューを聞いてくる。
「何にします?」
鳥丸は慣れない店に圧倒されつつ、戸惑いながらメニューを開いて、「あ、じゃあ……ブタ丸ラーメンで」と頼んだ。
「にんにくは?」と店主がすかさず聞いてくる。
「いや、いいかな。この後信者の前で話す予定があるし……」鳥丸は控えめに返事をする。
しかし、店主はすかさず「にんにくは?」と再び詰め寄る。
「え、いや、だから、いいかなって言いましたよね?」
「にんにくは?」再び同じ問い。店主の無言の圧がさらに強まる。
鳥丸は困惑した表情で俺を見たが、俺はニヤリと笑って、勢いよくこう言った。
「この人の全部マシマシで!」
店主はすぐに「あいよ!」と返事し、ラーメンの準備に取りかかる。鳥丸の顔色が一気に青ざめた。
「え、な、何あの人!!怖いんだけど!?」
普段冷静な鳥丸天道が、ラーメン屋の店主相手にビビってる姿が、なんとも滑稽で笑いそうになる。俺はそんな彼の様子を見ながら、心の中で勝利のガッツポーズを決めた。
「にんにくは?っていうのは、トッピングどうしますかって意味なんだよ」と、俺は当たり前のことを鳥丸に教える。
「あ、そうなんだ……ってか全部マシマシって言ったよな!?雷丸君!?なんて事してくれたんだ!!」と、鳥丸は絶望の表情を浮かべながら俺に詰め寄る。
俺は肩をすくめて、軽く笑いながら「大丈夫、大丈夫。これ食わなきゃラーメン屋の真髄はわかんねぇからさ!ハーレム王の信念だよ、しっかり全部マシマシでいこうぜ!」と返す。
鳥丸は明らかに嫌そうな顔をしながら、観念したように大きなため息をついた。その姿はまるで、運命を受け入れるかのようだった。
「……君、私を何だと思ってるんだ……」
「崇拝派のリーダーでも、ラーメンくらいガッツリ食わねぇとカリスマ出ないぞ?俺はいつもそうしてる!」
俺が冗談交じりに言うと、鳥丸は渋い顔をしながらも「仕方ない」と呟き、次に来る巨大なラーメンを待つことにした。
そして、目の前にドカンと登場したラーメンの山を見た鳥丸は、再び固まった。
「……こ、これは……」
「さぁ、崇拝派のリーダーとして、そのカリスマで山を攻略してみせろよ!」
俺はニヤニヤしながら、彼の反応を楽しむ。

「ふん、滑稽だな、鳥丸天道。」と、冷ややかな声で言い放ったのは――黒瀬禍月。
だが、ちょっと待て。あんた、何言ってんだ?口の周りが脂でギトギトになってるじゃねぇか!ラーメンのスープが飛び散って、まるで子供みたいな食べ方してるぞ!?
「いやいや、禍月さん……あんたも相当滑稽っすよ?」
俺は心の中でツッコミを入れつつ、彼のギラついた目を見る。いや、真剣に威圧感出そうとしてるけど、顔が脂まみれで台無しだって。
一方、鳥丸天道はと言うと――
「ぐぬぬ……この油の塊が……まるで私の喉を塞いで……」と、完全にラーメンと格闘している。顔中が汗だらけで、もう戦闘モードはどこへやら。鳥丸がこれほど苦戦するのを見るのは初めてだ。
その横で、静香さんがゆっくりと箸を置いて、「うぅ……苦しい……」と息も絶え絶えになっている。ラーメンの前で苦しむ姿は、まるで静香さんじゃないみたいだ。普段の優雅さはどこへ消えたんだよ……!
「静香さん、無理しなくていいんですよ!ほら、スープ全部飲まなくていいから!」
俺が心配して声をかけるが、静香さんは顔を真っ赤にしながら「でも……完食しないと、ラーメンの流儀に反するでしょう……」と、意地を張る。
いや、そんなルールどこにもないって!俺は静香さんの謎のこだわりに再度ツッコミを入れながら、少しだけほっとした。なんだかんだで、みんなそれぞれキャラ崩壊してるけど、こういうところが俺の周りの面白い奴らだよな、なんて思ってしまった。
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