104 / 110
第104話 ターニングポイント7
しおりを挟む朝食を食べ終わった後、俺たちは各々まったりしていた。焔華が少ししょんぼりした顔で、ポツリと呟いた。
「正しい判断とは分かっておる……しかし、10兆円……あの財宝は欲しかったのぅ……」
俺はそんな焔華の様子に、軽く肩をすくめながら冗談を返した。
「まぁ、10兆円はゲットできなかったけど、牛角くらいならいけるぜ?」
「本当か!!??」
突然、焔華が飛び跳ねる。さっきまでのテンションはどこへやら、まるで大当たりのガチャを引いたかのような喜びっぷり。
その瞬間、静香さんがニッコリと微笑んで口を開いた。
「今回は伊集院家で出すわ。雷丸君が伊集院家を選んでくれた記念に、私がご馳走するわよ。」
「おおっ!さすが静香さん!豪華な牛角パーティーかよ!」
俺もテンションを上げて拳を握りしめる。牛角がこんなに嬉しいと思った日は、これが初めてだ。
すると、焔華は目を輝かせながら一瞬でテンションを切り替えた。
「おおっ!?さすが静香!ならば、わしは牛角カルビをたらふく食うぞ!」
「わ、私は……霜降り牛タンがいいです!」
雪華も少し控えめに手を挙げるが、その期待に満ちた表情からは、彼女の肉欲(?)が溢れ出していた。
一方、貴音は可愛らしく両手を合わせながら、俺に微笑んで「お兄ちゃんが伊集院家を選んでくれて、本当に嬉しい!」と言ってきた。俺はその可愛さに、思わず頬が赤くなってしまう。
「牛角でもハーレム王的には最高だな!よし、みんな、今夜は焼肉パーティーだ!」と俺は胸を張って堂々と宣言する。これがハーレム王の特権ってやつだぜ!
みんなが一気に盛り上がり、さっきまでの緊張感なんてどこへやら。麗華もそんな俺たちを静かに見守りながら、「まったく、雷丸君ったら……」と呆れながら微笑んでいた。
――さて、10兆円は手に入らなかったが、俺たちのハーレム王生活は、牛角カルビと共に新たな一歩を踏み出すのだ!
――――――――――
夜になり、俺たちはついに牛角へと向かった。車での移動中、みんなのテンションはすでにマックス。まるで子供がテーマパークに行く前夜のようなワクワク感が、車内に溢れ出している。
「おお、わしは焼き肉を食べに行くのじゃ!!肉だ!肉がわしを呼んでおる!」
焔華は窓の外に向かって腕を振り回しながら、まるで戦いに向かうかのような気合いを入れている。肉を食べる気満々だ。
「雷丸様、今日は特別に食べ放題コースを予約してますから、何でも好きなだけ頼んでくださいね」
雪華がにっこりと微笑みながら、既に焼き肉のシミュレーションでもしているのか、タブレットでメニューを眺めている。
貴音は少し控えめに座りながら、「お兄ちゃんとみんなで焼き肉、すっごく楽しみ!」と瞳をキラキラさせて、可愛らしく微笑んでいる。貴音が楽しみにしているなら、俺もやる気が出るってもんだ。
そして、麗華と静香さんは、相変わらず落ち着いた様子で運転席と助手席に座っているが、どことなく期待しているような雰囲気が漂っている。
――そんなこんなで、俺たちは牛角に到着した。
店内に入ると、俺たちは特別な個室に案内された。焼き肉屋なのに個室。これがハーレム王とそのメンバーの特権ってやつだ。
「さぁ、みんな、注文は好きなだけ頼めよ!」
俺が言うと、全員が一斉にタブレットに手を伸ばした。まるで肉戦争の始まりだ。
「カルビ、ロース、ハラミ、全部頼むぞ!」と焔華がすぐに大盛りのメニューを選び始める。
「じゃあ、私はサラダもお願いしようかな……でも、やっぱり霜降り牛タンも欠かせません!」
雪華が落ち着いた声で注文しながらも、その目は肉に対する情熱で輝いている。
貴音は「私は……じゃあ、柔らか牛ヒレをお願い……!」と、可愛らしくメニューを選んでいる。やっぱり貴音はこういう場でもおしとやかだなぁ。
「飯田君、今日はお母さんの奢りだから、好きなだけ頼むといいわよ」と麗華がにっこりと微笑む。
そして、静香さんは微笑みながら、俺に優しく声をかけてくる。
「雷丸君、何か特別に食べたいものはあるかしら?」
俺はしばらく考えた後、にやりと笑って「じゃあ、全部マシマシで頼んでくれ!」と答えた。全員が爆笑しながら、テーブルにどんどん肉が運ばれてくる。
こうして、牛角の夜は始まった。肉を焼きながら、俺たちは笑い合い、肉の香りが店中に漂う。誰が一番食べるかっていうのは言うまでもなく――
「もっと食わせろ!まだまだ食うぞ!!」
焔華がカルビを掴んで叫び続けるのだった。
肉を焼き、どんどん注文が運ばれてくる中、俺たちはまるで戦場のように肉を消費していった。特に焔華はもう止まらない。まるで肉の猛者みたいにカルビやロースを次々と平らげていく。
「うぉぉぉ!!肉の神よ、我に力を!!」
焔華は勢い余って、牛角の個室で大声を上げている。店員さんに「ちょっとお静かに……」と注意される始末だが、そんなこと気にするはずもなく、さらに肉を焼き続けている。
雪華はというと、落ち着いた表情で、じっくりと霜降り牛タンを焼いている。
「焼き加減が一番大事なんです……これくらいがちょうどいいですね」と、じっくりと育てた牛タンを丁寧に食べる姿はまるで焼き肉マスター。見てるだけでプロフェッショナル感が漂ってる。
貴音はというと、控えめながらも楽しそうに「お兄ちゃん、一緒に食べよう?」と俺にお肉を渡してくる。そんな優しい妹の一言に、俺はついつい感動してしまいながらも「おぉ、ありがとな!」とカルビを一緒に頬張る。
麗華は上品にサラダを食べながらも、ちらりと俺の方を見て、「飯田君、食べすぎてお腹壊さないでね?」と微笑む。おいおい、麗華に心配されるなんて、俺もまだまだハーレム王として守られてる感じだな。
「さぁ、みんな、もっと食えよ!今日の夜はハーレム焼き肉パーティーだ!」と俺が声をかけると、全員が「おぉー!」と元気よく返事をして、さらに注文が増えていく。
「いやぁ、牛角最高だな。伊集院家のご飯もいいけど、やっぱり焼き肉ってのはこういう賑やかな場所が一番だよな!」
俺がそう言うと、静香さんも優雅に微笑んで、「そうね、雷丸君が楽しんでくれて嬉しいわ」と穏やかに答えてくれた。
気づけば、俺たちは次々に焼いては食べ、焼いては食べ、テーブルがどんどん空っぽになっていく。店員さんが少し困った顔をしながらも、追加注文を続けてくれる。
「もうお腹いっぱいだ……」
貴音が小さく呟くと、雪華も「私ももう限界です……」と少し笑いながら答えた。焔華もついに「……さすがにもう動けん……」と倒れそうになっている。
俺はそんな彼女たちを見て、満足感で胸がいっぱいになった。
「みんな、今日はよく食ったな!これがハーレム王の力だぜ!」
こうして、俺たちの牛角パーティーは大成功に終わった。満腹で幸せな気分になりながら、俺たちは家に帰る準備を始めるのだった。
――――――――――
牛角パーティーを満喫し、いよいよお会計の時間がやってきた。俺は自信満々にレジの前に立ち、財布を取り出した――が、そこで目の前の数字を見た瞬間、目が飛び出しそうになった。
「えっ……合計、え、えぇぇぇぇっ!?」
――なんだこの額!?牛角ってこんな高級店だったっけ!?
目を疑いながら見返すけど、額は変わらない。店員さんも申し訳なさそうに「こちらでお間違いないかと……」と頷いている。もう一度明細を見直すと、やらかしたのがすぐにわかった。
「……あれ?食べ放題以外のメニュー、めっちゃ頼んでるじゃねぇか!」
思わず声が裏返る。どうやら、焔華がカルビだのホルモンだの、サイドメニューまで頼みまくってたらしい。しかも、あの野郎、しれっとビールまで頼んでやがる。
「おい、焔華!焼き肉ならともかく、なんで酒までいってんだよ!?」
焔華は悪びれることなくケラケラ笑いながら、「いやぁ、せっかくだし食べ放題だけじゃ味気ないじゃろ?」って。
俺の頭の中はパニック寸前。焔華が暴走した結果、俺のハーレム王としての懐具合も大ピンチになりそうな気配が漂っていた。内心、「やべぇ……このままじゃ俺の財布が……!」と冷や汗をかいていたその時。
「雷丸君、任せて」と、横から静香さんがスッと現れ、クレジットカードをスマートに差し出した。
「こちらでお支払いしますね」
その瞬間、店員さんが「ありがとうございます」と丁寧に対応し、俺は何もせずに見守るしかなかった。静香さん、さすがハーレムの大黒柱……!
焔華が「いやぁ、静香はほんに頼りになるのぅ」としれっと言ってるけど、やらかした張本人だろお前!
みんなが店を出る中、俺はほっと一息ついて外に出た――その時、誰も見ていないところで、静香さんが俺の肩にそっと手を添え、目を見つめてきた。
「本当に私を選んでくれてありがとう、旦那様♡」
そう言って、静香さんが俺の頬に軽くキスをしてくれた。
――えっ!?今、何が起こった!?俺は一瞬で真っ赤になり、そのまま固まってしまった。
静香さんは、そんな俺を見てニコリと微笑んだだけで、何事もなかったかのようにみんなのところへ戻っていった。俺はその場で、ただただ立ち尽くすしかなかった。
――ハーレム王、まさかの夜のサプライズ!これも、ハーレムの宿命ってやつか……!?
0
あなたにおすすめの小説
異世界翻訳者の想定外な日々 ~静かに読書生活を送る筈が何故か家がハーレム化し金持ちになったあげく黒覆面の最強怪傑となってしまった~
於田縫紀
ファンタジー
図書館の奥である本に出合った時、俺は思い出す。『そうだ、俺はかつて日本人だった』と。
その本をつい翻訳してしまった事がきっかけで俺の人生設計は狂い始める。気がつけば美少女3人に囲まれつつ仕事に追われる毎日。そして時々俺は悩む。本当に俺はこんな暮らしをしてていいのだろうかと。ハーレム状態なのだろうか。単に便利に使われているだけなのだろうかと。
クラスの陰キャボッチは現代最強の陰陽師!?~長らく継承者のいなかった神器を継承出来た僕はお姉ちゃんを治すために陰陽師界の頂点を目指していたら
リヒト
ファンタジー
現代日本。人々が平和な日常を享受するその世界の裏側では、常に陰陽師と人類の敵である妖魔による激しい戦いが繰り広げられていた。
そんな世界において、クラスで友達のいない冴えない陰キャの少年である有馬優斗は、その陰陽師としての絶大な才能を持っていた。陰陽師としてのセンスはもちろん。特別な神具を振るう適性まであり、彼は現代最強の陰陽師に成れるだけの才能を有していた。
その少年が願うのはただ一つ。病気で寝たきりのお姉ちゃんを回復させること。
お姉ちゃんを病気から救うのに必要なのは陰陽師の中でも本当にトップにならなくては扱えない特別な道具を使うこと。
ならば、有馬優斗は望む。己が最強になることを。
お姉ちゃんの為に最強を目指す有馬優斗の周りには気づけば、何故か各名門の陰陽師家のご令嬢の姿があって……っ!?
距離を置きたい女子たちを助けてしまった結果、正体バレして迫られる
歩く魚
恋愛
かつて、命を懸けて誰かを助けた日があった。
だがその記憶は、頭を打った衝撃とともに、綺麗さっぱり失われていた。
それは気にしてない。俺は深入りする気はない。
人間は好きだ。けれど、近づきすぎると嫌いになる。
だがそんな俺に、思いもよらぬ刺客が現れる。
――あの日、俺が助けたのは、できれば関わりたくなかった――距離を置きたい女子たちだったらしい。
魔法使いが無双する異世界に転移した魔法の使えない俺ですが、陰陽術とか武術とか魔法以外のことは大抵できるのでなんとか死なずにやっていけそうです
忠行
ファンタジー
魔法使いが無双するファンタジー世界に転移した魔法の使えない俺ですが、陰陽術とか武術とか忍術とか魔法以外のことは大抵できるのでなんとか死なずにやっていけそうです。むしろ前の世界よりもイケてる感じ?
サバイバル能力に全振りした男の半端仙人道
コアラ太
ファンタジー
年齢(3000歳)特技(逃げ足)趣味(採取)。半仙人やってます。
主人公は都会の生活に疲れて脱サラし、山暮らしを始めた。
こじんまりとした生活の中で、自然に触れていくと、瞑想にハマり始める。
そんなある日、森の中で見知らぬ老人から声をかけられたことがきっかけとなり、その老人に弟子入りすることになった。
修行する中で、仙人の道へ足を踏み入れるが、師匠から仙人にはなれないと言われてしまった。それでも良いやと気楽に修行を続け、正式な仙人にはなれずとも。足掛け程度は認められることになる。
それから何年も何年も何年も過ぎ、いつものように没頭していた瞑想を終えて目開けると、視界に映るのは密林。仕方なく周辺を探索していると、二足歩行の獣に捕まってしまう。言葉の通じないモフモフ達の言語から覚えなければ……。
不死になれなかった半端な仙人が起こす珍道中。
記憶力の無い男が、日記を探して旅をする。
メサメサメサ
メサ メサ
メサ メサ
メサ メサ
メサメサメサメサメサ
メ サ メ サ サ
メ サ メ サ サ サ
メ サ メ サ ササ
他サイトにも掲載しています。
男女比1:15の貞操逆転世界で高校生活(婚活)
大寒波
恋愛
日本で生活していた前世の記憶を持つ主人公、七瀬達也が日本によく似た貞操逆転世界に転生し、高校生活を楽しみながら婚活を頑張るお話。
この世界の法律では、男性は二十歳までに5人と結婚をしなければならない。(高校卒業時点は3人)
そんな法律があるなら、もういっそのこと高校在学中に5人と結婚しよう!となるのが今作の主人公である達也だ!
この世界の経済は基本的に女性のみで回っており、男性に求められることといえば子種、遺伝子だ。
前世の影響かはわからないが、日本屈指のHENTAIである達也は運よく遺伝子も最高ランクになった。
顔もイケメン!遺伝子も優秀!貴重な男!…と、驕らずに自分と関わった女性には少しでも幸せな気持ちを分かち合えるように努力しようと決意する。
どうせなら、WIN-WINの関係でありたいよね!
そうして、別居婚が主流なこの世界では珍しいみんなと同居することを、いや。ハーレムを目標に個性豊かなヒロイン達と織り成す学園ラブコメディがいま始まる!
主人公の通う学校では、少し貞操逆転の要素薄いかもです。男女比に寄っています。
外はその限りではありません。
カクヨムでも投稿しております。
男:女=1:10000の世界に来た記憶が無いけど生きる俺
マオセン
ファンタジー
突然公園で目覚めた青年「優心」は身辺状況の記憶をすべて忘れていた。分かるのは自分の名前と剣道の経験、常識くらいだった。
その公園を通りすがった「七瀬 椿」に話しかけてからこの物語は幕を開ける。
彼は何も記憶が無い状態で男女比が圧倒的な世界を生き抜けることができるのか。
そして....彼の身体は大丈夫なのか!?
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる