異世界帰りのハーレム王

ぬんまる兄貴

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第104話 ターニングポイント7

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 朝食を食べ終わった後、俺たちは各々まったりしていた。焔華が少ししょんぼりした顔で、ポツリと呟いた。



「正しい判断とは分かっておる……しかし、10兆円……あの財宝は欲しかったのぅ……」



 俺はそんな焔華の様子に、軽く肩をすくめながら冗談を返した。



「まぁ、10兆円はゲットできなかったけど、牛角くらいならいけるぜ?」

「本当か!!??」



 突然、焔華が飛び跳ねる。さっきまでのテンションはどこへやら、まるで大当たりのガチャを引いたかのような喜びっぷり。

 その瞬間、静香さんがニッコリと微笑んで口を開いた。



「今回は伊集院家で出すわ。雷丸君が伊集院家を選んでくれた記念に、私がご馳走するわよ。」

「おおっ!さすが静香さん!豪華な牛角パーティーかよ!」



 俺もテンションを上げて拳を握りしめる。牛角がこんなに嬉しいと思った日は、これが初めてだ。

 すると、焔華は目を輝かせながら一瞬でテンションを切り替えた。



「おおっ!?さすが静香!ならば、わしは牛角カルビをたらふく食うぞ!」

「わ、私は……霜降り牛タンがいいです!」



 雪華も少し控えめに手を挙げるが、その期待に満ちた表情からは、彼女の肉欲(?)が溢れ出していた。

 一方、貴音は可愛らしく両手を合わせながら、俺に微笑んで「お兄ちゃんが伊集院家を選んでくれて、本当に嬉しい!」と言ってきた。俺はその可愛さに、思わず頬が赤くなってしまう。

 
「牛角でもハーレム王的には最高だな!よし、みんな、今夜は焼肉パーティーだ!」と俺は胸を張って堂々と宣言する。これがハーレム王の特権ってやつだぜ!

 
 みんなが一気に盛り上がり、さっきまでの緊張感なんてどこへやら。麗華もそんな俺たちを静かに見守りながら、「まったく、雷丸君ったら……」と呆れながら微笑んでいた。
 

 ――さて、10兆円は手に入らなかったが、俺たちのハーレム王生活は、牛角カルビと共に新たな一歩を踏み出すのだ!



 ――――――――――



 
 夜になり、俺たちはついに牛角へと向かった。車での移動中、みんなのテンションはすでにマックス。まるで子供がテーマパークに行く前夜のようなワクワク感が、車内に溢れ出している。



「おお、わしは焼き肉を食べに行くのじゃ!!肉だ!肉がわしを呼んでおる!」



 焔華は窓の外に向かって腕を振り回しながら、まるで戦いに向かうかのような気合いを入れている。肉を食べる気満々だ。



「雷丸様、今日は特別に食べ放題コースを予約してますから、何でも好きなだけ頼んでくださいね」


 
 雪華がにっこりと微笑みながら、既に焼き肉のシミュレーションでもしているのか、タブレットでメニューを眺めている。

 貴音は少し控えめに座りながら、「お兄ちゃんとみんなで焼き肉、すっごく楽しみ!」と瞳をキラキラさせて、可愛らしく微笑んでいる。貴音が楽しみにしているなら、俺もやる気が出るってもんだ。

 そして、麗華と静香さんは、相変わらず落ち着いた様子で運転席と助手席に座っているが、どことなく期待しているような雰囲気が漂っている。

 ――そんなこんなで、俺たちは牛角に到着した。

 店内に入ると、俺たちは特別な個室に案内された。焼き肉屋なのに個室。これがハーレム王とそのメンバーの特権ってやつだ。



「さぁ、みんな、注文は好きなだけ頼めよ!」



 俺が言うと、全員が一斉にタブレットに手を伸ばした。まるで肉戦争の始まりだ。

「カルビ、ロース、ハラミ、全部頼むぞ!」と焔華がすぐに大盛りのメニューを選び始める。



「じゃあ、私はサラダもお願いしようかな……でも、やっぱり霜降り牛タンも欠かせません!」



 雪華が落ち着いた声で注文しながらも、その目は肉に対する情熱で輝いている。

 貴音は「私は……じゃあ、柔らか牛ヒレをお願い……!」と、可愛らしくメニューを選んでいる。やっぱり貴音はこういう場でもおしとやかだなぁ。

「飯田君、今日はお母さんの奢りだから、好きなだけ頼むといいわよ」と麗華がにっこりと微笑む。

 そして、静香さんは微笑みながら、俺に優しく声をかけてくる。



「雷丸君、何か特別に食べたいものはあるかしら?」



 俺はしばらく考えた後、にやりと笑って「じゃあ、全部マシマシで頼んでくれ!」と答えた。全員が爆笑しながら、テーブルにどんどん肉が運ばれてくる。

 こうして、牛角の夜は始まった。肉を焼きながら、俺たちは笑い合い、肉の香りが店中に漂う。誰が一番食べるかっていうのは言うまでもなく――



「もっと食わせろ!まだまだ食うぞ!!」



 焔華がカルビを掴んで叫び続けるのだった。


 肉を焼き、どんどん注文が運ばれてくる中、俺たちはまるで戦場のように肉を消費していった。特に焔華はもう止まらない。まるで肉の猛者みたいにカルビやロースを次々と平らげていく。



「うぉぉぉ!!肉の神よ、我に力を!!」



 焔華は勢い余って、牛角の個室で大声を上げている。店員さんに「ちょっとお静かに……」と注意される始末だが、そんなこと気にするはずもなく、さらに肉を焼き続けている。

 
 雪華はというと、落ち着いた表情で、じっくりと霜降り牛タンを焼いている。

 
「焼き加減が一番大事なんです……これくらいがちょうどいいですね」と、じっくりと育てた牛タンを丁寧に食べる姿はまるで焼き肉マスター。見てるだけでプロフェッショナル感が漂ってる。

 
  貴音はというと、控えめながらも楽しそうに「お兄ちゃん、一緒に食べよう?」と俺にお肉を渡してくる。そんな優しい妹の一言に、俺はついつい感動してしまいながらも「おぉ、ありがとな!」とカルビを一緒に頬張る。

 
 麗華は上品にサラダを食べながらも、ちらりと俺の方を見て、「飯田君、食べすぎてお腹壊さないでね?」と微笑む。おいおい、麗華に心配されるなんて、俺もまだまだハーレム王として守られてる感じだな。

 
「さぁ、みんな、もっと食えよ!今日の夜はハーレム焼き肉パーティーだ!」と俺が声をかけると、全員が「おぉー!」と元気よく返事をして、さらに注文が増えていく。



「いやぁ、牛角最高だな。伊集院家のご飯もいいけど、やっぱり焼き肉ってのはこういう賑やかな場所が一番だよな!」



 俺がそう言うと、静香さんも優雅に微笑んで、「そうね、雷丸君が楽しんでくれて嬉しいわ」と穏やかに答えてくれた。

 気づけば、俺たちは次々に焼いては食べ、焼いては食べ、テーブルがどんどん空っぽになっていく。店員さんが少し困った顔をしながらも、追加注文を続けてくれる。



「もうお腹いっぱいだ……」



 貴音が小さく呟くと、雪華も「私ももう限界です……」と少し笑いながら答えた。焔華もついに「……さすがにもう動けん……」と倒れそうになっている。

 俺はそんな彼女たちを見て、満足感で胸がいっぱいになった。



「みんな、今日はよく食ったな!これがハーレム王の力だぜ!」



 こうして、俺たちの牛角パーティーは大成功に終わった。満腹で幸せな気分になりながら、俺たちは家に帰る準備を始めるのだった。


 ――――――――――



 牛角パーティーを満喫し、いよいよお会計の時間がやってきた。俺は自信満々にレジの前に立ち、財布を取り出した――が、そこで目の前の数字を見た瞬間、目が飛び出しそうになった。



「えっ……合計、え、えぇぇぇぇっ!?」



 ――なんだこの額!?牛角ってこんな高級店だったっけ!?



 目を疑いながら見返すけど、額は変わらない。店員さんも申し訳なさそうに「こちらでお間違いないかと……」と頷いている。もう一度明細を見直すと、やらかしたのがすぐにわかった。



「……あれ?食べ放題以外のメニュー、めっちゃ頼んでるじゃねぇか!」



 思わず声が裏返る。どうやら、焔華がカルビだのホルモンだの、サイドメニューまで頼みまくってたらしい。しかも、あの野郎、しれっとビールまで頼んでやがる。



「おい、焔華!焼き肉ならともかく、なんで酒までいってんだよ!?」



 焔華は悪びれることなくケラケラ笑いながら、「いやぁ、せっかくだし食べ放題だけじゃ味気ないじゃろ?」って。

 俺の頭の中はパニック寸前。焔華が暴走した結果、俺のハーレム王としての懐具合も大ピンチになりそうな気配が漂っていた。内心、「やべぇ……このままじゃ俺の財布が……!」と冷や汗をかいていたその時。

「雷丸君、任せて」と、横から静香さんがスッと現れ、クレジットカードをスマートに差し出した。



「こちらでお支払いしますね」



 その瞬間、店員さんが「ありがとうございます」と丁寧に対応し、俺は何もせずに見守るしかなかった。静香さん、さすがハーレムの大黒柱……!

 焔華が「いやぁ、静香はほんに頼りになるのぅ」としれっと言ってるけど、やらかした張本人だろお前!


 みんなが店を出る中、俺はほっと一息ついて外に出た――その時、誰も見ていないところで、静香さんが俺の肩にそっと手を添え、目を見つめてきた。



「本当に私を選んでくれてありがとう、旦那様♡」



 そう言って、静香さんが俺の頬に軽くキスをしてくれた。

 ――えっ!?今、何が起こった!?俺は一瞬で真っ赤になり、そのまま固まってしまった。

 静香さんは、そんな俺を見てニコリと微笑んだだけで、何事もなかったかのようにみんなのところへ戻っていった。俺はその場で、ただただ立ち尽くすしかなかった。

 ――ハーレム王、まさかの夜のサプライズ!これも、ハーレムの宿命ってやつか……!?
 
 

 
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