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第106話 ワールドカップ1
しおりを挟む日本サッカー界の異端児、飯田雷丸。ついに彼が日本代表に選ばれた。
このニュースが発表された瞬間、全世界のサッカーファンに衝撃が走る。
ファンたちは歓喜し、SNSでは――
「ハーレム王、ワールドカップに降臨!」
――とトレンド入りするほどの話題となった。
「飯田雷丸が日本代表!?これはもはや革命だ!」
「ハーレム王、ワールドカップで世界を席巻するのか?」
世間は大騒ぎだった。
ファンはもちろん、マスコミも雷丸のワールドカップ参戦に興奮を隠せない。日本代表の歴史に、新たな時代が到来したかのようにさえ思えた。
そんな中、代表入りした雷丸は、いつもの自信満々の様子で記者会見に臨む。
会場には数十人の記者とカメラマンが詰めかけ、日本代表の新戦力として選ばれた飯田雷丸の登場を待ち構えていた。
背後のボードには、日本代表のロゴとスポンサー企業のロゴが並ぶ。そして、会場の雰囲気は――どこか異様だった。
彼はただの新代表選手ではない。異世界帰りの男。魔王を倒した男。そして、「ハーレム王」を自称する男。
この会見は、普通のサッカー選手の発表とはわけが違う。誰もが期待と不安を抱えながら、雷丸の登場を待っていた。
「それでは、本日、日本代表入りを発表された飯田雷丸選手の登場です!」
司会のアナウンスが響くと、会場の入り口から黒のスーツをビシッと着こなした飯田雷丸が姿を現した。
通常のサッカー選手とは違う、堂々とした歩き方。まるで王が玉座につくかのような余裕を持ち、中央の席に座る。
カメラのフラッシュが一斉に焚かれ、記者たちのペンが一斉に走り始めた。
司会者の合図とともに、記者の一人が立ち上がり、最初の質問を投げかけた。
「飯田選手、日本代表入りおめでとうございます。まず率直に、代表に選ばれた感想をお聞かせください。」
その瞬間、雷丸の表情が一気にパッと明るくなった。
「めっちゃ嬉しいよ!!」
雷丸は満面の笑みを浮かべ、会場全体に響くような声で答えた。
目を輝かせながら、彼は熱く語り始める。
「ワールドカップに出るのは、サッカーを始めたときからずっと夢見てたんだ!小さい頃、テレビで世界のトップ選手たちが戦う姿を見て、俺もいつかここに立ちたいって思ってたんだよ!」
その言葉には一点の曇りもない。
雷丸の声には、ただのプロサッカー選手ではなく、夢を追い続けた男の純粋な情熱が込められていた。彼の言葉に引き込まれ、会場の空気が少しずつ和らいでいく。記者たちの表情にも、自然と笑みがこぼれ始める。
続いて、別の記者が立ち上がり、慎重な口調でマイクを握った。会場の空気がわずかに張り詰める。
サッカーの実力だけでなく、飯田雷丸という男には“異色”の経歴がある。彼が異世界から帰還した男であり、さらには「ハーレム王」を自称する存在であることを、誰もが知っていた。
ワールドカップの日本代表に選ばれたことで、彼の異色の肩書きはさらなる注目を浴びている。
その点について、記者は慎重に言葉を選びながら質問を投げかけた。
「飯田選手は“ハーレム王”や“異世界帰り”といった異名で広く知られていますが、それについてご自身はどうお考えですか? また、それが代表チームでのプレーに影響を与えることはあるのでしょうか?」
質問が投げられた瞬間、会場の記者たちは微妙に身を乗り出した。
これまでのサッカー選手の会見とは違う雰囲気。異世界帰りという前代未聞の経歴を持ち、さらに堂々とハーレム王を名乗る男が、どのように答えるのか――誰もが興味を持っていた。
そんな中、雷丸は――
「お、いい質問じゃねぇか!」
と、まるで記者を褒めるかのように満足げに頷いた。
少し腕を組み、軽く笑みを浮かべながら、ゆったりとした口調で話し始める。
「まず、異世界帰りってのは事実だ。俺は異世界で戦い、魔王を倒し、こっちに戻ってきた。で、その後、普通にサッカーをやってたら、日本代表になっちまったってわけだ。」
さらっと言い放ったが、その内容はとんでもないものだった。記者たちは一瞬言葉を失い、会場に驚きとざわめきが広がる。
異世界帰り、魔王討伐――そんな言葉が、サッカーの記者会見で飛び出すことなど、誰が想像できただろうか?
だが、雷丸はまったく動じることなく、さらなる爆弾を投下する。
「で、ハーレム王についてだけどな――」
会場の空気が一気に緊張する。
ここが問題の核心だ。代表チームとしての品格、サッカー選手としてのあり方――そういったものを記者たちは気にしている。
だが、雷丸はニヤリと笑い、まるで誇るように言い放った。
「俺はハーレム王になると決めた男だ。」
バシッと自信満々に宣言する。
「だから、世界中のサッカーファンにも、日本代表のファンにも、はっきり言っておくぜ。」
雷丸はゆっくりと記者たちを見渡しながら、堂々と続ける。
「俺はサッカー選手である前に、俺だ。異世界帰りも、ハーレム王も、それが俺のアイデンティティだ。それを曲げるつもりはねぇ。」
どよめく記者たち。しかし、雷丸の言葉には迷いが一切なかった。
「そして――」
ここで彼は一転して真剣な表情を見せる。
「それがプレーに影響を与えるかどうかって? そりゃあもちろん、めちゃくちゃ影響を与えるに決まってるだろ。」
記者たちは思わず息を呑む。
だが、雷丸は自信満々に言葉を続けた。
「俺はハーレム王として、応援してくれる女の子たちのためにも、最高のプレーを見せる。それこそが俺のモチベーションだ。俺には、俺を信じてついてきてくれる仲間がいる。そいつらを笑顔にするために、俺はゴールを決める。世界を驚かせる。」
その言葉には、単なる冗談ではない、雷丸なりの信念が込められていた。
彼にとって、「ハーレム王」というのは、単なるふざけた称号ではない。
それは、彼を応援し、愛してくれる人々への誓いなのだ。
「俺は、俺のやり方で、ワールドカップで世界を驚かせる。」
そう締めくくると、会場は一瞬の沈黙の後――
「……すごいな。」
と、記者の一人が思わず漏らした。
その後、会場には拍手が広がった。
「まさか、こんな堂々と宣言するとは……」
「いや、逆に清々しいな……」
「飯田雷丸、恐るべし……」
そんな囁きが飛び交う中、雷丸は余裕たっぷりの笑みを浮かべていた。
この男――本気で世界をひっくり返すつもりらしい。
「じゃ、次の質問、どうぞ!」
そう言って、堂々とした態度で記者を指差す雷丸。
「世界には強豪国が数多く存在しますが、具体的にどのように戦うつもりですか?」
別の記者が興味津々に尋ねると、雷丸は腕を組みながら答えた。
「シンプルな話だ。俺がゴールを決めまくって勝たせる。」
再び、会場が静まり返る。
「……それだけ?」
「それだけだ。」
雷丸は堂々と頷いた。
だが、その言葉には確固たる自信が満ちていた。
「戦術とか難しいことは監督やチームが考えればいい。俺の役目は一つ――ゴールを決めること。点を取れば勝てる。だったら、俺が世界で一番ゴールを決めれば、日本は世界一になれるってわけよ。」
理論としては単純明快。しかし、それを実現するのは至難の業だ。
だが、この男なら本当にやってしまうかもしれない――そんな期待が、会場の空気を支配し始めていた。
「ワールドカップでの目標は?」
雷丸は迷うことなく、きっぱりと言い切った。
「優勝。それ以外は興味ねぇ。」
会場にいた記者たちの間に、どよめきが広がる。
“優勝”――それは、日本代表の誰もが目指してはいるが、口にすることすらためらう言葉。
だが、この男は、何の迷いもなく、堂々と言い切った。
その発言に会場は一瞬静まり返ったが、雷丸の真剣な表情を見た瞬間、記者たちも何故か納得してしまう。
――いや、納得するしかないのだ。
異世界帰りであり、魔王すら倒したというこの男。サッカーに関しては信じられないほどの実力を持つ。何を言っても、結局彼はその通りにしてしまうだろうという空気が漂っていた。
――――――――――――――
【日本代表チームミーティング室】
部屋のドアを開けた瞬間、全員の視線が俺に向いた。ピリッとした空気が肌に突き刺さるような感覚――さすがは日本代表、ここにいるのは全員が一流の選手だ。
目の前には、俺がこれまでテレビや試合で見てきた選手たちばかり。プレミアリーグ、ブンデスリーガ、セリエA……海外のトップクラブで活躍してる連中もゴロゴロいる。そういう奴らが今、一斉に俺を見てるわけだ。
ピリピリした緊張感が部屋中に充満していた。ワールドカップは世界最高峰の舞台、みんなこの戦いに命を懸けている。全員が本気で優勝を狙い、誰もが「絶対に負けられない」という覚悟を持ってるのが、空気を通して伝わってくる。
けど――そんなの関係ねぇ。
俺はニヤリと笑いながら、堂々と部屋の中央に歩みを進めた。
この場にいる誰よりもでかく、堂々としてるのが俺・飯田雷丸ってもんよ。
壁際に立っていた佐々木が、腕を組んだまま「ほぉ……」と興味深そうに俺を見ていた。こいつ、スペインの名門クラブでプレーしてるくせに、どこか挑戦的な目をしてやがる。
その隣では、村岡がニヤニヤしながら俺を見ていた。こいつは、俺をプロの世界へ導いてくれた恩人だ。
俺の才能を見抜き、推薦してくれた男――だからこそ、こうして日本代表の舞台で再び肩を並べることができた。
キャプテンの長谷部は、俺をじっくりと観察していた。目が鋭い。さすがは守備の要、戦場を見極める目を持ってるってわけか。
他の選手たちも、それぞれの視線を俺に向けながら何かを考えているようだった。疑問?期待?警戒?――まあ、どれでもいい。どうせすぐに俺が全部ぶち壊す。
だが、その静寂を破るかのように、村岡が口を開いた。
「よう雷丸、ついに代表入りかよ。お前、ほんとに何でもありだな」
その言葉に、何人かの選手がクスッと笑う。緊張していた空気が、少しだけほぐれた気がした。
「当たり前だろ。ハーレム王が世界で活躍しないわけねぇだろ?」
俺がニヤリと笑いながら言うと、周りの連中が一瞬ポカンとした顔をした。
――よし、掴みはバッチリだな。
村岡が苦笑しながら「お前、本当に変わらないな」と呟く。
「まあな。俺はどこに行っても俺のままだ。代表だからって遠慮するつもりはねぇよ」
その言葉を聞いた瞬間、佐々木がニヤリと笑った。
「なら、実力で証明してもらおうか。ここは日本代表――実力が全てだ」
「望むところだ」
俺は堂々と応えた。ピリピリした空気?そんなもん関係ねぇ。
俺がここにいる理由はただ一つ。
――世界一のハーレム王として、日本を優勝させることだ!
――――――――――――――
日本代表ミーティング会場には、独特の緊張感が漂っていた。ワールドカップを目前に控えたこの場には、国内トップクラスの選手たちが集まり、全員が真剣な表情を浮かべている。
俺たちは監督の前に整列し、彼の言葉を待っていた。
すると、監督が静かに前に歩み出る。そして、鋭い視線で俺たちを見渡しながら、ゆっくりと口を開いた。
「初めましての選手もいるだろう。俺がこのチームを率いる、日本代表監督の藤堂 剛(とうどう ごう)だ。」
低く落ち着いた声が、ミーティングルームに響く。藤堂監督の存在感は圧倒的だった。スーツの上からでもわかる鍛え上げられた体、短く整えられた黒髪、鋭い眼光。まるで軍隊の指揮官のような雰囲気を纏っている。
「ワールドカップは甘い舞台じゃない。お前たちには、全力を尽くしてもらう。」
簡潔でありながら、重みのある言葉。さすがは日本代表の指揮を執る男、言葉のひとつひとつに説得力がある。
「ここにいるメンバーは、日本サッカーの最高峰だ。そしてお前たちは、これから世界最高の舞台で戦うことになる。その覚悟を持って、このチームに臨め。」
その言葉に、誰もが背筋を伸ばす。空気が一層引き締まるのを感じる。
藤堂監督は一瞬間を置き、俺たちを見渡した後、ふっと口元を緩めた。
「とはいえ、緊張しすぎてもいいプレーはできない。チームの結束が何よりも重要だ。だから、遠慮なくぶつかり合え。そして、お互いを知ることから始めろ。」
その言葉に、場の雰囲気が少し和らぐ。それでも、ワールドカップという舞台が持つ重圧は、全員の心にのしかかっていた。
その言葉に、場の雰囲気が少し和らぐ。それでも、ワールドカップという舞台が持つ重圧は、全員の心にのしかかっていた。
――いよいよ始まるんだな、日本代表としての戦いが。
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