異世界帰りのハーレム王

ぬんまる兄貴

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第107話 ワールドカップ2

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 ワールドカップ代表メンバーとして初めて集まった俺たち。藤堂監督の話が終わると、チームの雰囲気をほぐすためにキャプテンの長谷川が立ち上がった。

 
 
「よし、まずは飯でも食いながら、お互いを知る時間にしようぜ!」

 
 
 そう言って長谷川が場を仕切る。さすがキャプテン、こういう場の空気を読んで動けるのが頼もしい。チームメンバーもそれに賛同し、俺たちは専用の食堂へと移動することになった。

 
 食堂に着くと、ワールドカップ仕様の特別メニューがずらりと並んでいる。肉、魚、炭水化物、野菜――栄養バランスを考えた食事が用意されていた。

 
 
「うお、うまそうじゃねぇか!」


 
 俺はさっそくステーキにナイフを入れながら、周りの選手たちの様子を伺う。みんな、思い思いに料理を選びながら、自然と輪になって座り始めた。

 
 
「じゃあ、せっかくだし自己紹介でもしていこうか。」

 
 
 長谷川がそう提案すると、全員が頷いた。


 
「まずは俺からな。長谷川 俊(はせがわ しゅん)、キャプテンでセンターバックをやってる。ディフェンスの要だから、俺の指示にはしっかり従えよ。」

 
 そう言って堂々と語る長谷川に、チームメンバーが頷く。頼れる男だ。



「次、俺な。村岡 隼人(むらおか はやと)、ポジションはミッドフィルダー。普段は雷丸の世話係……じゃなくて、チームを支える縁の下の力持ちってとこだな!」


 
 そう言って、俺の方をチラッと見る村岡。

 
 
「おいおい、世話係ってなんだよ!」

 
 
 俺がすかさずツッコむと、周りの選手たちがクスクスと笑い始める。


 
「はは、まぁそれくらい仲がいいってことだろ?」

 
 
 そう言って、村岡が肩をすくめる。

 
 
 
「次、俺行くわ。大久保 亮(おおくぼ りょう)、ゴールキーパーやってる。どんなシュートも俺が止めるから、安心して攻めてくれ!」


 
 落ち着いた雰囲気の大久保が自信たっぷりに宣言する。


 
「伊藤 悠真(いとう ゆうま)、サイドバックだ。スピードなら誰にも負けねぇ。どんな相手でもぶち抜くからな!」


 
 細身ながら俊敏な動きが想像できる伊藤が続く。


 
「田中 一馬(たなか かずま)、ミッドフィルダー。パスの精度には自信がある。攻撃の起点は任せとけ。」


 
 テクニカルなプレースタイルの田中がそう言うと、周囲も納得したように頷いた。


 
「坂本 圭吾(さかもと けいご)、センターフォワード。俺はゴールしか狙わねぇ。点取り屋として、バンバン決めるからよろしく!」

 
「本田 雅也(ほんだ まさや)、ボランチ。中盤で試合を支配するのが俺の役目だ。」

 
「藤井 直人(ふじい なおと)、ウイング。突破力は任せろ、ドリブルでどんどん仕掛けるぜ!」

 
「柴田 健(しばた けん)、ディフェンダー。相手を潰すのが俺の仕事。絶対に抜かせねぇ。」


 
 次々と自己紹介が続いていく。みんな実力者ばかりで、ワールドカップの舞台にふさわしいメンバーが揃っていることが分かる。


 
 そして、次は――俺の番だった。

 
 長谷川が俺をじっと見つめる。


 
「んじゃ、次はお前だな、飯田。」

 

 俺はニヤリと笑い、フォークを置いて堂々と宣言する。

 
「俺は飯田 雷丸(いいだ らいまる)、フォワードだ。まぁ、異世界帰りで魔王を倒したりもしたけど、サッカーでも天下を取るつもりだから、よろしくな!」

 

 俺が堂々と自己紹介を終えた瞬間、場に一瞬の沈黙が流れる。

 
 ――やっちまったか?いや、今さら取り繕うつもりもねぇけどな。

 
 だが、その静寂を最初に破ったのは、ベテランのセンターバック・柴田 健だった。


 
「出たな、有名人!」


 
 柴田はニヤリと笑いながら腕を組み、俺をじっと見つめる。彼は長年日本代表を支えてきた守備の要。経験豊富な男で、迫力が違う。

 
 続けて、坂本が笑いながら茶化してくる。

 
 
「言うじゃねぇか、最年少!異世界帰りってのは意味わかんねぇけど、少なくとも自信はハンパねぇな!」


 
 その言葉に、チーム内からもクスクスと笑いが漏れる。異世界とか魔王とか、普通のサッカー選手ならまず出てこねぇ単語だしな。

 
 すると、突然、隣に座っていた大久保がガシッと俺の肩を掴んだ。ゴールキーパーの貫禄たっぷりのデカい手が、俺の肩にずしりと乗る。


 
「飯田、お前のこと、俺の息子がめちゃくちゃ応援してんだよ!」

「え?」


 
 思わず目を瞬かせる俺。すると、大久保は満面の笑みを浮かべながら、スマホを取り出した。画面には、少年が雷丸のユニフォームを着てボールを蹴る姿が映っている。


 
「なぁ、こいつ、俺のガキなんだけどよ。お前のプレーを見て、サッカー始めたんだぜ!俺のプレーには全然興味持たなかったのに!」

「マジかよ!?」

 
 
 俺は驚きつつも、胸の奥がじんわりと熱くなるのを感じた。俺のプレーを見て、サッカーを始めた子供がいる?それって、俺にとって最高の褒め言葉じゃねぇか。

 
 柴田も肩を揺らして笑いながら、俺に向かって親指を立てる。


 
「お前の影響力、ハンパねぇな!まさに今のサッカー界の異端児って感じだぜ!」


 
 長谷川も腕を組みながら、ニヤリと笑って頷く。


 
「まぁ、お前がどれだけ凄いのかは、実際のプレーを見りゃわかるってことだな。期待してるぜ、雷丸!」

 
 
 ――なんだよ、コイツら。


 
 最初は異世界帰りだの魔王討伐だの、ドン引きされるかと思ったけど、意外とみんなノリがいいじゃねぇか。俺の話をちゃんと聞いてくれて、冗談も交えながら受け入れてくれてる。


 
「ははっ、なんかいいチームだな!」

 
 
 俺は素直に笑い、テーブルに手をついた。


 
「よっしゃ!任せろ!俺のプレーを見れば、みんな俺についてくるようになるぜ!」


 
 その言葉に、大久保が大笑いしながら俺の背中をバンバン叩いた。

 
「おう!頼むぞ、ハーレム王!」


 
 俺はニヤッと笑い、食堂の熱気と共に、改めて日本代表としての覚悟を決めた。


 
 ――このチーム、悪くねぇ。むしろ、最高だ!
 
 
 


 ――――――――――
 

 

【日本代表チームミーティング室】



 次の日、再び俺たちはミーティングルームに集まった。

 
 壁には日本代表のエンブレムが堂々と掲げられ、ホワイトボードの前には監督が腕を組んで立っている。部屋の空気は昨日とは違い、より引き締まっていた。チームの士気が高まるのを肌で感じる。

 
 選手たちは静かに席につき、監督の言葉を待つ。


 
「ワールドカップは予選と本戦に分かれている。まず俺たちはアジア予選を突破しなければならない。予選はトーナメント形式だ。」

 
 
 監督の言葉に、ホワイトボードを見やると、そこには予選の試合日程と開催地が書かれていた。


 
「アジア予選は日本国内で行われる。会場は――埼玉スタジアム2002。」


 
 埼玉スタジアム2002。日本最大のサッカースタジアムであり、かつてワールドカップでも使用された由緒ある場所だ。ここで戦うのは、日本代表としての誇りを懸けるにふさわしい舞台ってわけだ。

 
 俺たち日本代表の面々が頷く中、監督はさらに続けた。



「そして、本戦は――ブラジルで行われることが決定した。」
 
「おおっ!!!」

 
 
 その瞬間、俺のテンションが一気に跳ね上がった。


 
「ブラジル!?最高じゃねぇか!!」


 
 サッカー王国、ブラジル。ワールドカップを何度も制した世界最強の国。そこが本戦の舞台とか、こんなにワクワクすることがあるか!?

 
 
「雷丸、はしゃぐのはいいけど、まずは予選を突破してからだぞ?」


 
 隣の村岡が苦笑しながら肩を叩いてくるが、俺は満面の笑みで答えた。


 
「当たり前だろ?俺たちがブラジルに行くのは決定事項みてぇなもんだ!」


 
 チームメイトたちも「おいおい、雷丸、フラグ立てんなよ!」と笑いながらツッコんでくるが、俺は自信たっぷりに拳を握る。

 
 ブラジルで戦う――ワールドカップという最高の舞台で、俺がどこまで通用するのかを試せる。


 


 ――――――――――――



 

【日本代表 初練習】

 

 
 埼玉スタジアムのトレーニンググラウンド。

 
 日本代表としての初練習が始まった。プロばかりが集うこの場所で、俺はどれだけやれるのか――いや、俺がどれだけの衝撃を与えられるか、それを確かめる時だ。

 
 練習メニューは基本的なパス回し、ポゼッション、そしてシュート練習。だが、俺は最初から全力で飛ばした。


 
「おいおい……なんだ、アイツ……」

 
「スピードが桁違いじゃねぇか!?」

 
 
 ピッチの端から端までを駆け抜ける俺を見て、チームメイトたちがざわめく。

 
 まずはスプリント。監督の合図でダッシュを開始すると、一瞬でトップスピードに乗る。普通ならじわじわ加速するところだが、俺の場合、最初の一歩でギアが一段上がる。


 
「は、速ぇ……!」

 
 
 後方からの驚愕の声。俺はそのままゴール前へと駆け込み、鋭いクロスに合わせる。

 
 
「雷丸、センター!」

 
 
 長谷川キャプテンからの指示が飛ぶ。

 
 
「任せとけ!」

 
 
 俺はジャンプと同時に身体をひねり、華麗なダイレクトボレーでシュートを放つ。

 
 ――ドンッ!!

 
 ボールはゴールネットに突き刺さった。


 
「……マジかよ。あんな速さで……」

 
「普通ならミートすらできねぇだろ……」

 
 
 俺の動きに目を奪われたチームメイトたちが、思わず足を止める。

 
 
「おいおい、日本代表ってこんなもんか?」

 
 
 俺は軽く肩をすくめ、ニヤリと笑った。


 
「な、なんだと?」


 
 煽りに反応したのはセンターバックの 井上隼人。Jリーグでも屈指のフィジカルを誇る屈強なディフェンダーだ。

 
 
「よし、次の攻撃、俺が相手してやるよ。」


 
 井上が俺の前に立ち塞がる。俺は軽くボールをトラップし、ドリブルを開始した。

 
 
「本気で来いよ?」

 
「お前こそな!」

 
 
 井上が一気に距離を詰める。圧倒的なフィジカルで体をぶつけてこようとするが――


 
「遅ぇよ。」


 
 俺はボールを左足で軽く浮かし、ヒールで背後へとパス。


 
「なっ――」

 
 
 井上の足が空を切る。

 
 そのままターンして背後を取ると、パスを受けた村岡とワンツー。目の前に現れたゴールキーパーに対し、俺は冷静にループシュートを放つ。

 
 ――ボールは、優雅な弧を描いてネットへ吸い込まれた。

 
 静まり返るピッチ。


 
「……おいおい、化け物かよ……」


 
 井上が呆然と立ち尽くし、他の選手たちも言葉を失っていた。

 
 俺は軽くユニフォームの裾を直しながら、全員を見渡す。


 
「日本代表って、こんなもんか?」



 挑発するような笑みを浮かべると、チームメイトたちの目つきが変わった。


 
「――面白ぇ。」

 
 
 長谷川キャプテンがニヤリと笑い、周囲の空気が一変する。


 
「おい、飯田!もう一回勝負だ!」
 
「俺もやらせろ!」

 
 
 チームメイトたちが次々と俺に向かってくる。いいねぇ――これくらい熱くなってくれなきゃつまらねぇよ。


 
「上等だ。かかってこい、日本代表!!」


 
 こうして、俺の日本代表初練習は、俺の圧倒的な実力を見せつける場となった――。

 
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