異世界帰りのハーレム王

ぬんまる兄貴

文字の大きさ
114 / 189

第114話 ワールドカップ9

しおりを挟む



「やべぇぇぇっ!!」


 
 俺の叫びが、リオの夜空に吸い込まれていく。

 すでに日本代表チームのミーティングが始まっている時間。俺はキャビンアテンダントの綾乃とのブラジル観光が長引いたせいで、ちょっと遅れてしまった……いや、かなり遅れてしまった。

 
 ホテルのロビーに飛び込むように入る。

 
 すると――

 
 エントランスには、日本代表の選手たちが全員揃っていた。


 
「……え?」


 
 開けた瞬間、全員の視線が俺に集中する。


 
「え、なんでみんなここにいんの?」


 
 すると、長谷川キャプテンが腕を組んで、ため息混じりに言った。


 
「いや、全員揃ってねぇのにミーティングに行くわけねぇだろ。」

「……は?」


 
 俺は思わず硬直する。


「お前が来るまで、全員で待ってたんだよ。」

「……え、マジで? いや、みんな先行っててよかったのに!」

「バカかお前。」


 
 村岡が苦笑しながら肩をすくめる。


 
「俺たちはチームなんだよ。代表のミーティングに一人だけ遅刻なんてありえねぇだろ? だから、お前が来るまで待ってたんだよ。」

「……!」


 
 俺の胸が、じわっと熱くなる。


 
「ご、ごめん……みんな……」



 俺がしおしおと頭を下げると、藤井がニヤリと笑った。


 
「いいって、みんなで監督に怒られようぜ。」

「監督、怒るとめちゃくちゃ怖いんだぜ?だったらみんなで怒られた方がマシだろ?」


 
 柴田が俺の肩をポンポンと叩く。


 
「マジかよ……みんな優しすぎるだろ……」


 
 なんて思っていたその時、大久保がふと真剣な表情で俺を見てきた。


 
「それより雷丸。なんで遅れてきたんだよ? なんか事故とかあったのか?」


 
 ――あ、やべぇ。


 
 心配そうな大久保の顔を見ると、俺はちょっと罪悪感が湧いてくる。


 
「え? いや、ちょっと……その……」


 
 俺は言いづらそうに目を泳がせた。


 
「ほら、飛行機で俺がアタックしてたキャビンアテンダントいただろ……?」

「うん?」

「……あの子と、その……デートしてました。」

「………………」


 
 数秒の沈黙のあと――


 
「ぶははははははっ!!!」


 
 日本代表チームの面々が、一斉に爆笑した。


 
「お前、マジでかよ!!」
 
「ワールドカップの直前で、何やってんだよ!!」

「いやいやいや、どんだけブレねぇんだ、お前!!」


 
 村岡が腹を抱えて笑い転げ、藤井は椅子に崩れ落ちそうになりながらツッコむ。


 
「てっきり何かトラブルかと思ったら、デートかよ!?」

「ほんと、ある意味すげぇわ……」


 
 柴田が呆れながらも笑い、井上は「まぁ……お前ならやりかねん」と冷静に分析する。


 
「……いや、悪いと思ってるよ!? でもな!? せっかくのチャンスを逃すわけにはいかねぇだろ!?」


 
 俺が必死に言い訳をするが、笑い転げるチームメイトたちはもう止まらない。


 
「さすが雷丸、お前がワールドカップ優勝宣言したのも、なんか説得力出てきたわ……」


 
 藤井が肩を震わせながら言う。


 
「いや、そこ関係なくね!?」



 こうして、俺の「デート遅刻事件」は、ワールドカップ前の日本代表チーム内での伝説となったのだった。





 
 ――――――――――――――

 



 監督がホワイトボードに世界地図をペタペタと貼りながら、各国のエースの顔を次々に指していく。



「ワールドカップ本戦に駒を進めたのは、我々日本を含めて10カ国。その中でも、優勝候補と目されるのは4カ国だ。」

 

 部屋の空気が一気に引き締まる。

 全員が前のめりになり、監督の言葉に集中する
 

 
 まず最初に出てきたのは――


 
 サッカー王国ブラジルのエース――アントニオ・ソルダードの写真だった。

 
 鮮やかなオレンジ色の髪が、まるで燃える太陽のように輝いている。健康的な褐色の肌に、キラキラとした眩しい笑顔。その姿はまさに「太陽の王子」という異名にふさわしい。
 

「アントニオ・ソルダード。彼は現在、世界一のサッカー選手と名高い男だ。」


 
 監督の声が低く響く。


 
「ブラジル代表の10番を背負い、『サッカーの神』、『ミスターサッカー』とも呼ばれている。彼のプレースタイルはまさに芸術――ボールが足に吸い付くようなドリブル、観客すら騙されるフェイント、そしてゴール前では絶対に外さない決定力を持つ。」


 
 映像が再生される。

 画面の中のアントニオは、まるで踊るようにピッチを駆け抜ける。

 相手ディフェンダーが二人、三人と囲みにかかるが、彼はスムーズにボールをさばき、あっという間にすり抜けてしまう。


 
「うわっ、すげぇ……!」


 
 思わず誰かが声を漏らした。

 だが、驚きはまだ終わらない。

 アントニオがエリア内でボールを受けると、軽くボールを浮かせ、相手の足の間を抜き――そのまま、ノールックでシュートを決めた。

 
 ゴールネットが揺れ、スタジアム中が熱狂の渦に包まれる。


 監督がさらに説明を続ける。


 
「アントニオの最大の武器は、“すべてのプレーがゴールに直結すること”だ。彼がドリブルすればシュートにつながる。彼がパスを出せば、完璧なアシストになる。そして、彼がシュートを打てば、ほとんど決まる。」

 



 次に監督が指したのは、イタリア代表の守護神――ガブリエーレ・ヴォルカーノ。


 
 スクリーンに映し出されたのは、まるで巨大な壁のようにゴール前にそびえ立つ男。


 
「ヴォルカーノは、"動く壁”と呼ばれるゴールキーパーだ。セーブ率98%。シュートが枠に飛んでも、ほとんど止められてしまう。」


 
 映像の中では、相手選手が強烈なシュートを放っているが――

 ヴォルカーノは微動だにせず、そのまま片手でキャッチ。


 
「なっ……!?」


 
 村岡が思わず驚愕する。


 
「この男、止めるだけじゃない。セービングした後、すぐに正確なロングパスを出し、カウンターの起点になる。まさに鉄壁の門番だ。」

 

 次に監督が指したのは――



 アルゼンチン代表の司令塔――エンリケ・マルティネス。

 
 映像に映し出されたのは、まるでマジシャンのようにボールを自在に操る男だった。


 
「エンリケは、一人で試合を決められる天才だ。彼のドリブルはまるで魔法のように相手を惑わし、ディフェンダーが次々と倒れていく。」

 

 映像では、エンリケが軽やかにボールを操りながら、相手ディフェンダーを翻弄し、華麗なパスでゴールを演出している。


「この男にボールを持たせるな。それが試合の鍵だ。」


 
 そして最後に出てきたのは――



 スペイン代表のエースストライカー――カルロス・トーレス。


 
 映像に映し出されたのは、まるで闘牛のように突進する巨漢の選手だった。


 
「トーレスはフィジカルの怪物だ。ディフェンダーを正面から吹き飛ばしながらゴールへ突進する。」


 
 映像では、3人がかりで止めようとしたディフェンダーを次々と吹っ飛ばし、ゴールネットを突き破るような強烈なシュートを叩き込んでいた。


「……こいつ、人間か?」


 
 誰かが思わず漏らす。


 
「トーレスはトラックを牽引したことでギネス記録を持っている。」

「は!?トラックって、あの何トンもあるやつだろ!?」


 
 俺は思わず叫ぶ。


 
「そりゃあ、ディフェンダーが吹っ飛ばされるわけだ……」



 監督はホワイトボードの前に立ち、改めて俺たちを見渡した。部屋の空気が一瞬で引き締まる。

 
 
「今説明した4カ国――ブラジル、イタリア、アルゼンチン、スペイン。この4つが優勝候補と目されている。そして、彼らのエースたちは、それぞれが世界最高峰の実力を持つモンスター揃いだ。」


 
 映像が止まり、ホワイトボードに貼られた世界地図と選手たちの写真が静かに俺たちを見つめる。


 
「いいか、日本代表。ワールドカップはただの戦いじゃない。世界最高の戦場だ。お前たちは、ここで名を刻むか、それとも名もなき敗者となるか――すべてはお前たち次第だ。」

 

 その言葉に、俺たちは誰もが真剣な顔つきになった。優勝候補たちの実力は映像を見ただけでも理解できた。こいつらが相手となれば、生半可なプレーでは勝てない。


 
「だが、俺たちには雷丸がいる。」


 
 監督がそう言うと、部屋の視線が一気に俺に集中する。


 
「お、おう……」


 
 突然の指名に、一瞬戸惑いながらも、俺は堂々と胸を張った。


 
「雷丸、お前は異世界帰りの男であり、日本サッカーの異端児だ。お前のプレースタイルは、どの国の選手とも違う。いや、世界の誰とも違うと言っていい。」


 
 監督は俺を指さしながら続ける。


 
「お前が勝負を決める鍵になる。」


 
 そう言われると、俺の胸に熱いものがこみ上げる。


 
「そりゃあ当然だろ。」


 
 俺は拳を握りしめ、ニヤリと笑った。


 
「このワールドカップ、日本の、いや、俺のための舞台にしてやるよ。」


 
 その瞬間、チームメイトたちが笑いながらも力強く頷いた。


 
「こいつがいる限り、俺たちはやれる気がするな。」

「ま、雷丸なら何かしでかしてくれるだろうしな!」

「そうそう、異世界帰りのバケモンがいるなら、なんか勝てそうだよな。」


 
 監督も小さく笑い、腕を組んで俺たちを見渡した。


 
「よし。お前たちの気合は伝わった。だが、実際に勝てるかどうかは、これからの準備にかかっている。明日からは本戦に向けた戦術練習だ。覚悟しておけよ。」


 
 その言葉に、俺たちは一斉に「おう!!」と気合のこもった声を上げた。

 
 ワールドカップ本戦まで、あとわずか。ここからが、俺たちの本当の戦いの始まりだ――!


 
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

最弱無双は【スキルを創るスキル】だった⁈~レベルを犠牲に【スキルクリエイター】起動!!レベルが低くて使えないってどういうこと⁈~

華音 楓
ファンタジー
『ハロ~~~~~~~~!!地球の諸君!!僕は~~~~~~~~~~!!神…………デス!!』 たったこの一言から、すべてが始まった。 ある日突然、自称神の手によって世界に配られたスキルという名の才能。 そして自称神は、さらにダンジョンという名の迷宮を世界各地に出現させた。 それを期に、世界各国で作物は不作が発生し、地下資源などが枯渇。 ついにはダンジョンから齎される資源に依存せざるを得ない状況となってしまったのだった。 スキルとは祝福か、呪いか…… ダンジョン探索に命を懸ける人々の物語が今始まる!! 主人公【中村 剣斗】はそんな大災害に巻き込まれた一人であった。 ダンジョンはケントが勤めていた会社を飲み込み、その日のうちに無職となってしまう。 ケントは就職を諦め、【探索者】と呼ばれるダンジョンの資源回収を生業とする職業に就くことを決心する。 しかしケントに授けられたスキルは、【スキルクリエイター】という謎のスキル。 一応戦えはするものの、戦闘では役に立たづ、ついには訓練の際に組んだパーティーからも追い出されてしまう。 途方に暮れるケントは一人でも【探索者】としてやっていくことにした。 その後明かされる【スキルクリエイター】の秘密。 そして、世界存亡の危機。 全てがケントへと帰結するとき、物語が動き出した…… ※登場する人物・団体・名称はすべて現実世界とは全く関係がありません。この物語はフィクションでありファンタジーです。

【コミカライズ決定】勇者学園の西園寺オスカー~実力を隠して勇者学園を満喫する俺、美人生徒会長に目をつけられたので最強ムーブをかましたい~

エース皇命
ファンタジー
【HOTランキング2位獲得作品】 【第5回一二三書房Web小説大賞コミカライズ賞】 ~ポルカコミックスでの漫画化(コミカライズ)決定!~  ゼルトル勇者学園に通う少年、西園寺オスカーはかなり変わっている。  学園で、教師をも上回るほどの実力を持っておきながらも、その実力を隠し、他の生徒と同様の、平均的な目立たない存在として振る舞うのだ。  何か実力を隠す特別な理由があるのか。  いや、彼はただ、「かっこよさそう」だから実力を隠す。  そんな中、隣の席の美少女セレナや、生徒会長のアリア、剣術教師であるレイヴンなどは、「西園寺オスカーは何かを隠している」というような疑念を抱き始めるのだった。  貴族出身の傲慢なクラスメイトに、彼と対峙することを選ぶ生徒会〈ガーディアンズ・オブ・ゼルトル〉、さらには魔王まで、西園寺オスカーの前に立ちはだかる。  オスカーはどうやって最強の力を手にしたのか。授業や試験ではどんなムーブをかますのか。彼の実力を知る者は現れるのか。    世界を揺るがす、最強中二病主人公の爆誕を見逃すな! ※小説家になろう、カクヨム、pixivにも投稿中。

学年一可愛いS級の美少女の令嬢三姉妹が、何故かやたらと俺の部屋に入り浸ってくる件について

沢田美
恋愛
名門・雄幸高校で目立たず生きる一年生、神谷悠真。 クラスでは影が薄く、青春とは無縁の平凡な日々を送っていた。だがある放課後、街で不良に絡まれていた女子生徒を助けたことで、その日常は一変する。救った相手は、学年一の美少女三姉妹として知られる西園寺家の次女・優里だった。さらに家に帰れば、三姉妹の長女・龍華がなぜか当然のように悠真の部屋に入り浸っている。名門令嬢三姉妹に振り回されながら、静かだったはずの悠真の青春は少しずつ騒がしく揺れ始める。

~最弱のスキルコレクター~ スキルを無限に獲得できるようになった元落ちこぼれは、レベル1のまま世界最強まで成り上がる

僧侶A
ファンタジー
沢山のスキルさえあれば、レベルが無くても最強になれる。 スキルは5つしか獲得できないのに、どのスキルも補正値は5%以下。 だからレベルを上げる以外に強くなる方法はない。 それなのにレベルが1から上がらない如月飛鳥は当然のように落ちこぼれた。 色々と試行錯誤をしたものの、強くなれる見込みがないため、探索者になるという目標を諦め一般人として生きる道を歩んでいた。 しかしある日、5つしか獲得できないはずのスキルをいくらでも獲得できることに気づく。 ここで如月飛鳥は考えた。いくらスキルの一つ一つが大したことが無くても、100個、200個と大量に集めたのならレベルを上げるのと同様に強くなれるのではないかと。 一つの光明を見出した主人公は、最強への道を一直線に突き進む。 土曜日以外は毎日投稿してます。

スキル【幸運】無双~そのシーフ、ユニークスキルを信じて微妙ステータス幸運に一点張りする~

榊与一
ファンタジー
幼い頃の鑑定によって、覚醒とユニークスキルが約束された少年——王道光(おうどうひかる)。 彼はその日から探索者――シーカーを目指した。 そして遂に訪れた覚醒の日。 「ユニークスキル【幸運】?聞いた事のないスキルだな?どんな効果だ?」 スキル効果を確認すると、それは幸運ステータスの効果を強化する物だと判明する。 「幸運の強化って……」 幸運ステータスは、シーカーにとって最も微妙と呼ばれているステータスである。 そのため、進んで幸運にステータスポイントを割く者はいなかった。 そんな効果を強化したからと、王道光はあからさまにがっかりする。 だが彼は知らない。 ユニークスキル【幸運】の効果が想像以上である事を。 しかもスキルレベルを上げる事で、更に効果が追加されることを。 これはハズレと思われたユニークスキル【幸運】で、王道光がシーカー界の頂点へと駆け上がる物語。

悪徳貴族の、イメージ改善、慈善事業

ウィリアム・ブロック
ファンタジー
現代日本から死亡したラスティは貴族に転生する。しかしその世界では貴族はあんまり良く思われていなかった。なのでノブリス・オブリージュを徹底させて、貴族のイメージ改善を目指すのだった。

第2の人生は、『男』が希少種の世界で

赤金武蔵
ファンタジー
 日本の高校生、久我一颯(くがいぶき)は、気が付くと見知らぬ土地で、女山賊たちから貞操を奪われる危機に直面していた。  あと一歩で襲われかけた、その時。白銀の鎧を纏った女騎士・ミューレンに救われる。  ミューレンの話から、この世界は地球ではなく、別の世界だということを知る。  しかも──『男』という存在が、超希少な世界だった。

ダンジョン冒険者にラブコメはいらない(多分)~正体を隠して普通の生活を送る男子高生、実は最近注目の高ランク冒険者だった~

エース皇命
ファンタジー
 学校では正体を隠し、普通の男子高校生を演じている黒瀬才斗。実は仕事でダンジョンに潜っている、最近話題のAランク冒険者だった。  そんな黒瀬の通う高校に突如転校してきた白桃楓香。初対面なのにも関わらず、なぜかいきなり黒瀬に抱きつくという奇行に出る。 「才斗くん、これからよろしくお願いしますねっ」  なんと白桃は黒瀬の直属の部下として派遣された冒険者であり、以後、同じ家で生活を共にし、ダンジョンでの仕事も一緒にすることになるという。  これは、上級冒険者の黒瀬と、美少女転校生の純愛ラブコメディ――ではなく、ちゃんとしたダンジョン・ファンタジー(多分)。 ※小説家になろう、カクヨムでも連載しています。

処理中です...