異世界帰りのハーレム王

ぬんまる兄貴

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第125話 ワールドカップ20

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 日本代表が1点をリードしたまま、後半戦に突入。


 俺たち日本代表はセンターサークルでホイッスルを待っていた。
 1点リード。だが、安心なんてできる状況じゃねぇ。
 試合はまだ終わっていない。勝利は、これから掴むものだ。



 ――そのはずだった。



 突然、ベルギーの空気が一変する。


 静かに、けれど確実に――凍りつくような寒気が俺の背筋を這い上がった。

 
 ベルギーのエース、ジャック・ドゥルヴァーニュ。
 奴が不気味に口角を吊り上げ、低く唸る。


 
「――――ガルルル……おい、お前ら、そろそろ本気を出すぞ」



 その瞬間、ベルギーの選手たちがニタリと笑った。
 まるで「待ってました」と言わんばかりに。


 目つきが一気に変わる。
 まるで、理性の枷が外れたかのように――。

 次の瞬間――


 
「野生!! 解放!!」



 ドゥルヴァーニュの唸り声と共に、ベルギーの選手たちの身体がぐにゃりと歪み始める。


 筋肉が膨れ上がり、肌がざらつき、牙がむき出しに。
 骨が軋み、皮膚が裂け、瞬く間に“人”から“獣”へと変貌していく。


 さっきまで一応ギリギリサッカー選手だった奴らが、一瞬にして野獣のような姿に変わり果てていく。


 もう、そこにいたのは――



 ――化け物だ。
 


「キャキャキャ!!!噛みちぎってやる!!」



 一人が狂ったように笑いながら、鋭い牙を剥き出す。
声は高く、耳障りで、まるで獣の甲高い鳴き声のよう。

 
 しかもそいつ、牙を剥き出しにして、完全にサッカーそっちのけの様子。
 


「食い殺すぞおぉぉぉお!!」



 別の一人はヨダレを垂らしながら、俺たちに牙を向けて威嚇してくる。

 
 その目は真っ赤に充血し、理性のカケラもない。目つきも狂ったように充血していて、完全にサッカーどころじゃない。



「腹ぁ、減った……ニク、食わせろぉ……」



 最後の一人は、まるで餓狼。
 獲物を狩る瞬間を待つように、舐め回すような視線をこちらに投げかけてくる。


 俺は身体が震えて止まらなかった。

 

「な、なんだよこれ……!」
「こんなの、サッカーじゃねぇだろ……!!」



 日本代表のチームメイトたちも、まるでホラー映画を見ているように顔を真っ青にしていた。


 その異様な光景に、実況席も声を失う。
 マイク越しに、絶望と戦慄が伝わってくる。


 
「…………え、ええ……!? な、なんですかこれは……!? ベルギー代表が……い、いや、変わった!? 変わってしまった!!」

「ま、まさか……こんなことが……!!こ、これは……スポーツの範疇を……いや、人間の枠を超えている……!!!」



 震える声。
 言葉が追いつかない。

 
 そんな俺たちを見て、ドゥルヴァーニュはゆっくりと歩み寄ってくる。
 牙をギラつかせ、ニヤリと笑って。


 
「ガルルル……これが俺たちの真の姿だ。サッカーは力だ。肉を食い、相手を蹂躙する――それが俺たちのサッカーだ……!」



 あまりの恐怖に、思わず口元が震えた。


 
「な、なんだよ、それ……"サッカー"ってなんだっけ……!?」



 声は掠れ、膝はわずかに震える。

 実況の声も、緊張で震えを隠せない。


 
「に、日本代表は……これから……何と戦うんでしょうか!? もはやサッカーではない、命懸けの戦いが始まろうとしています……!!」
 


 ドゥルヴァーニュは、俺達を“獲物”として見つめながら、さらに低く唸り声を上げた。


 
「さて、どうする? 獲物ども――」



 その声は、まるで“狩りの始まり”を告げる鐘のようだった。





 ――――――――――

 



〈ピィィィィィィ!!〉



 後半開始のホイッスルが響き渡る。
 だが、そこから始まったのは――サッカーなんかじゃなかった。



「と、とりあえず、ボール蹴ろうぜ! サッカーなんだから! ほら、そっちボールだぞ!?」



 俺は叫びながら、ベルギー代表に向けて当たり前のことを促す。
 そう、これはワールドカップの試合だ。サッカーだ。戦うのは、ボールを交えてのはず――だった。

 
 でも、ベルギー代表は違った。



「ニク! ニク! ニク!! クワセロォォォォォ!!!」

「アタマカラ、クウ! マルカジリィィィィ!!!」



 奴らはボールなんて見ていない。
 真っ直ぐに、俺たち――“人間”だけを狙っていた。


 牙を剥き、涎を垂らしながら、まるで獲物を追い詰める獣の群れのように。


 
「や、やべぇぇぇ!! もうボールじゃなくて俺たちを狙ってんじゃねぇか!!」



 ベルギー代表が突進してくる。
 走りながら、獲物を追い詰めるように。


 逃げなきゃ――
 捕まったら、“本当に”喰われる。

 

「みんな、走れ!! 奴らに捕まったら最後だ!!!」



 俺は叫びながら、必死でピッチを走り出す。
 その声に反応し、日本代表の仲間たちも悲鳴を上げながら走り出す。


 
「ニク、クワセロォォォォ!!!」

「ウオオォォォオオオオオ!!!!」


 
 振り向けば、そこには牙を剥き出しにしたベルギー代表たち。
 11匹の獣が、牙を鳴らして追いかけてくる。


 この状況はもはや――



 “地獄の鬼ごっこ”。


 
「おいおいおいおい! なんだよこれ!? これってワールドカップだよな!?」
「ルール違反だよ!! 死ぬ!! 本当に死ぬ!!!」



 必死に逃げながら、俺たちは叫び声を上げる。
 サッカーの試合中に、命の危険を感じるなんて――そんなのおかしいだろ!?


 
 実況席も、あまりの光景に言葉を失っていた。


 
「い、い、い、一体どうしたんでしょうか!? ベルギー代表、ボールには目もくれず、日本代表を”直接”狙っています!!」

「これはもう完全に……デスゲームです!!!食うか食われるかのデスゲームが始まっています!」

 

 しかし、そんな混乱の中でも、ベルギーの選手たちはただ獲物を狙うだけ。


 
「クウゥゥゥ……ッ! 逃げるなぁ……!」
「ナマニクエエエエエェェェェェェ!!」

「逃げろぉぉぉ!!」



 俺は叫びながら、全速力でピッチを駆けた。
 振り返れば、ベルギーの狂犬たちが牙を剥いて追いかけてくる。
 一瞬でも足が止まれば――本当に喰われる。


 
 こんな地獄が、サッカー場で起きてるなんて誰が想像した!?


 いや、これはもう試合じゃない。命の戦場だ。

 

「審判!!こんなの試合じゃない!!止めろ!!」

 

 長谷川キャプテンが必死に叫ぶ。
 だが、審判は顔を紅潮させて、むしろ興奮している様子だった。

 

「もっとやれぇ!!もっと盛り上げろぉぉ!!!」

 

 こいつ……まさか、ベルギー側の人間だってことを隠そうともしねぇのか!?
 その異常さに、俺たちは一気に絶望の淵へ突き落とされた。

 

「だ、誰も助けてくれねぇ……!」
「終わった……マジで終わった……」

 

 仲間たちの顔が青ざめ、今にも膝から崩れ落ちそうになっていた。
 何もかもが無理だと――皆の顔が、そう語っていた。

 

 だが、俺は必死に冷静を保っていた。
 いや、無理やりにでも、冷静でいなきゃならなかった。

 

 ――どうする?
 ――どうすりゃ、この地獄を突破できる?
 ――逃げても意味はない。
 ――戦っても、まともに勝てる相手じゃない。

 

 混乱する思考を無理やりに押し止め、俺は必死に答えを探した。

 

 ――どうすれば、この試合を終わらせられる?

 
 そうだ。ルール。
 どんな理不尽でも、試合にはルールがある。
 そのルールを、逆に利用するんだ。

 

「……これしかねぇな。」

 

 俺は深く息を吸い込んで、覚悟を決めた。
 命を懸けるときが来た。



 
「コールド勝ちだ。」

 

 俺は低く呟いた。
 仲間たちが一斉にこちらを見て、言葉を失う。

 

「10点差だ。ルール上、それだけ差がつけば試合は強制終了される。だから――それしかない。」

「でも……無理だろ!?あいつらのプレッシャーの中で、9点も取るなんて――!」

 

 藤井が、苦しげに声を漏らす。

 

「だから、俺が囮になる。」

 

 俺は静かに、だが力強く言い切った。
 その瞬間、空気がピリリと張り詰めた。

 

「俺があいつらを挑発して、全員の注意を引く。獣だって、獲物を目の前にすれば飛びつくだろ?あいつらを引きつけてる間にお前らが9点取れ。」

 

 仲間たちの表情が一気に凍りつく。

 

「ま、マジかよ……それ、命がけじゃねぇか……」

 

 村岡が青ざめながら呟いた。
 だが、俺は笑って言い返す。

 

「そりゃ命懸けだよ。でもな――俺が餌になることで、日本代表が勝利するなら、安いもんだろ。」

「でも、雷丸……!」

「大丈夫だ。」

 

 俺はニヤリと笑った。
 怖さはある。だけど、これしか道はねぇ。

 

「俺が獣どもを引きつけて、逃げ回る。そしたら、お前らはゴールに集中しろ。それだけだ。」

 

 俺の言葉に、仲間たちの表情が揺れる。
 だけど、やがて――

 

「……分かった。俺たちも命懸けでゴールを狙う!」

 

 チームメイトたちは、全員拳を握りしめた。
 そして俺の覚悟に、全力で応えてくれることを誓った。

 

「雷丸――死ぬなよ。」

 

 長谷川キャプテンが、まっすぐに俺を見つめた。

 

「死ぬつもりはねぇ。ちゃんと、お前らが点を取って試合を終わらせろ。」

 

 俺は親指を立てて返した。

 
 

 俺はベルギー代表たちを見据え、息を深く吸い込んだ。
 そして――叫んだ。

 

「おい、獣ども!! ここだよ、獲物は――こっちだ!!」

 


 その瞬間――奴らの目がギラリと光る。

 

「グルルルルル!!!」
「クウウウウウゥゥゥゥ!!!!」

 

 11匹の猛獣が、一斉に俺に飛びかかってくる。
 唸り声を上げながら、牙を剥き出しにして。

 

「来いよ、化け物共!! 全員、俺が引き受けてやる!!」

 

 俺は振り向いて、全力でピッチを駆け出した。
 地獄の鬼ごっこ――再開。

 

 だが、今度は逃げるだけじゃねぇ。



 その隙に――
 仲間たちが、ゴールを奪うんだ。
 




「ウオォォォォォォ!!!!!」
「クワセロォォォォォォ!!!!!」

 

 ベルギーの獣たちが一斉に咆哮を上げ、牙を剥いて俺に飛びかかってくる。
 奴らの目は、完全に俺にロックオン。
 獲物と認識されてしまった俺は、まさに命懸けの逃走劇を演じるハメになった。

 

「ははっ……これぞ究極の“肉”体戦だな!!」

 

 俺は叫びながら、ピッチの端から端までを駆け巡る。
 全身の筋肉を限界まで使い、心臓が爆発しそうなほどのスピードで走る。
 その背後には、まるで地獄から這い出た獣たちの群れ。



 仲間たちは反対サイドで自由に動き出す。
 ベルギーの“守備”は、俺に釘付けで崩壊状態。

 

「今のうちだ!決めるぞ!!」

 

〈ズドォォォォォォンッ!!〉

 

 ボールはネットを揺らし、綺麗なゴールが決まった。

 

「決まったぁぁぁぁ!!!」
「2点目だ!!!」

 

 実況席が歓声に包まれる。
 仲間たちが拳を突き上げて叫び、次々に点を狙っていく。

 

 その背後では――

 

「こっちだよ、獣共!! 俺はここだぁぁぁ!!!」

 

 俺がフィールドの端っこで、必死にベルギーの獣たちを挑発していた。
 奴らは完全に俺に釘付けで、狂気の咆哮を上げながら追いかけてくる。

 

「オオオオオォォォォ!!!!」
「クウゥゥゥゥゥ……ッ!!!」

 

 牙を剥き、爪を剥き出しにして襲いかかってくる。
 だが、俺は絶対に捕まらねぇ!!

 

「遅いぞ、獣共!!その程度かよ!!」

 

 全力でスライディングしながら体勢を崩し、ギリギリで逃げる。
 その度に奴らは地面に転び、怒りに満ちた唸り声を上げる。

 

 だが、俺は止まらない。
 命を賭けたこの作戦――俺は最後まで逃げ切ってみせる。


 


「いけぇぇぇぇぇ!!!」
「もう1点!!決めろ!!!」

 

 日本代表は勢いそのままに、立て続けにゴールを奪っていく。
 ベルギーの守備は完全に崩壊し、試合は日本代表の攻撃一色だ。

 

 3点目!!
 4点目――5点目!!

 

「止まらない!止まらないぞ、日本代表!!!」
「まさに“命懸けの逃走”が生んだ奇跡のラッシュ!!!」

 

 実況席が絶叫し、スタジアムの熱狂は頂点に達していた。

 

 その裏で、俺は死に物狂いで逃げ回っていた。
 もはや限界なんて超えている。

 

 足はガクガク。
 肺は焼けるように痛い。
 でも、止まった瞬間に俺は“肉”として喰われる。

 

「くっ……はぁ、はぁ……まだだ、まだ逃げる……!!」

 

 後ろを振り返れば、ドゥルヴァーニュの赤い目が光っていた。
 そして、唸り声を上げながら俺を追い詰めてくる。

 

「食わせろォォォォォ!!!」

 

  ――だが、俺は叫ぶ。

 

「9点だ!あと1点!!頼む……決めてくれぇぇぇ!!!」

 

 その時――


 
「いけぇぇぇぇぇ!!!」

 

 長谷川キャプテンが渾身のクロスを上げ、村岡がダイビングヘッドでゴールに突き刺す。

 

〈ズドォォォォォォンッ!!〉

 

 その瞬間、スタジアムが揺れた。

 

「決まった!!10点目!!!」
「コールド条件、達成だぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!」



〈ピィィィィィィィ!!〉

 

 試合終了のホイッスル。
 地獄のような戦いが、ようやく終わりを迎えた。




 けれど――そこで終わりじゃなかった。

 

 審判が、静かに、だが悔しそうな表情でポケットから"鈴"を取り出した。
 重々しい手つきで、その鈴を振る。

 

〈リィィィィィィィィ……ン!!〉

 

 甲高く、不気味な音が響き渡る。
 その瞬間、フィールドに異様な気配が走った。

 

 
 ベルギー代表の選手たちの身体が、ゆっくりと変化を始める。
 筋肉は縮み、牙は収まり、血走った目が徐々に正常に戻っていく。
 まるで狂気の呪いが解けたかのように、徐々に“人間”の姿に戻っていった。

 

 だが、そこに残ったのは、敗北の絶望だった。

 

「……俺たちの負け、だ。」

 

 審判が静かにベルギーの選手たちに言い放つ。
 その言葉は、まるで儀式のように響き渡った。

 

「や、やられた……」

「一口も、齧れなかった……」

 

 ドゥルヴァーニュはガクリと膝をつく。
 その瞳は虚ろで、獣のような狂気はもう消えていた。
 
 

 そして――

 

「試合終了!! 日本代表、コールド勝ち!! ベルギーの獣を撃破しました!!!」

 

 実況の声が、ようやく試合の終わりを告げる。


 
「……はぁ、はぁ、はぁ……」

 

 俺はその場に膝をつき、荒い息を吐き出した。
 何度も死ぬかと思った。
 でも――

 

「……生きて、勝った。」

 

 それだけで十分だ。

 

「雷丸!!生きてた!!」
「おい、無事か!?噛まれてねぇか!?」

 

 仲間たちが駆け寄ってきて、俺の身体を心配そうに触る。
 その温かさに、俺はようやく勝利を実感した。

 

「……あぁ、大丈夫だ。全部、無事だ。」




 
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