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第130話 ワールドカップ25
しおりを挟む次に向かったのは、リオ屈指の老舗カフェ 「Confeitaria Colombo」。
店の扉を開けた瞬間、俺の目は一気に見開かれた。
「……うおっ、すげぇ……!」
目の前に広がっていたのは、まるで貴族のサロンのような光景だった。
高い天井には優美なシャンデリアがぶら下がり、大理石の床が足元に心地よい重厚感を与えてくれる。
壁一面には巨大な鏡がはめ込まれ、煌びやかなアンティーク調の装飾が空間を華やかに彩っている。
「なんだここ……映画のセットみてぇじゃねぇか!」
思わず周囲をぐるりと見渡しながら、テンションが上がってくる。
こんな場所、日本じゃなかなかお目にかかれねぇぞ。
そんな俺の様子を見て、隣にいた綾乃が微笑んだ。
「ふふっ、気に入ってもらえたみたいで嬉しいです。ここ、私が一番好きなカフェなんです。」
そう言って、綾乃はどこか誇らしげな表情を浮かべた。
確かに、これは“お気に入り”になるのも納得の空間だ。
「いや、これはすげぇわ……さすが綾乃、良い店知ってるな!」
俺は素直に感嘆しながら席に着き、意気揚々とメニューを手に取った。
どれどれ、せっかくだしブラジルの美味いもんを――
「…………」
……読めない。
完全に読めない。
メニューに並んでいるのは、ポルトガル料理やブラジルの郷土料理の名前らしき単語の数々。
“Bacalhau à Brás”、“Feijoada”、“Pastel de nata”……。
いや、なんとなく響きはオシャレだけど、どんな料理なのか全然想像がつかねぇ。
英語ならまだしも、ポルトガル語は完全に未知の領域だ。
「…………綾乃」
俺はゆっくりと顔を上げ、目で助けを求めた。
「……?」
綾乃が不思議そうに俺を見つめる。
「なぁ……これ、どれが何の料理か全然わかんねぇんだけど……」
困惑しながらそう言うと、綾乃はくすっと笑った。
「あぁ……やっぱり読めませんでしたか。」
「そりゃ読めねぇよ!異世界の魔導書を解読してる気分だぞ!」
俺が少しオーバーに肩をすくめると、綾乃は楽しそうにメニューを覗き込みながら、指で料理名をなぞった。
「じゃあ、私がオススメを教えてあげますね。ポルトガルの伝統的な料理がいいですか?それともブラジルの郷土料理?」
綾乃がメニューを指でなぞりながら、優しく問いかけてくる。
俺は一瞬考えた後、せっかくブラジルに来てるんだし――と決めた。
「じゃあ、ブラジルの郷土料理で頼む!」
「わかりました。じゃあ……Feijoada(フェイジョアーダ)がいいかもしれません。」
「フェイジョアーダ?」
「はい。黒豆と豚肉、牛肉を煮込んだブラジルの伝統的な料理で、すごくコクがあって美味しいんですよ。日本でいうと、お味噌汁やカレーみたいな国民食ですね。」
「ほう……ブラジルのカレーみたいなもんか、それはうまそうだな!」
俺はワクワクしながら頷く。
綾乃の説明は分かりやすくて、しかも聞いてるだけで食欲が刺激される。
「じゃあ、それにするか!」
「はい。それと、一緒にPão de queijo(ポン・デ・ケイジョ)も頼むといいですよ。チーズ風味のもちもちしたパンで、すごく美味しいです。」
「おおっ、それもいいな!じゃあそれも追加で!」
綾乃がスラスラと料理を選んでいく様子を見て、俺は感心せずにはいられなかった。
流れるような動作でメニューを指し、すらすらとポルトガル語を読み上げるその姿――。
「いやぁ、マジで助かったわ!綾乃、本当に頼りになるな!」
俺は素直に感謝の気持ちを伝えた。
「ふふっ、そんな大げさですよ。」
綾乃は照れくさそうに微笑みながら、そっと髪を耳にかけた。
その仕草がやけに可愛くて、俺は思わず目を奪われる。
「いやいや、大げさじゃねぇって!バイリンガルってやっぱすげぇわ。綾乃がいなかったら、俺いまだにメニューとにらめっこしてたぞ。」
「それは……確かに、飯田さんのことですからね。」
綾乃がくすっと笑いながら、小さく肩をすくめる。
「おい、なんで俺のこと分かってるみたいな言い方すんだよ!」
「ふふ、だって本当にそんな感じがしますから。」
綾乃の笑顔に、俺はちょっと悔しい気持ちになりつつも、どこか嬉しくなった。
……なんだろうな、この心地よさ。
「まぁ、とにかく助かった!よし、注文しようぜ!」
俺はメニューを閉じ、店員を呼ぶために手を挙げた。
すると綾乃が自然な動作で店員に流暢なポルトガル語でオーダーを伝え始める。
それを見ながら、俺は改めて思った。
――こいつ、本当にすげぇな。
テーブルに次々と運ばれてくる料理。
漂う香ばしい香りに、俺の食欲は一気に引き上げられる。
「お待たせしました、Feijoada(フェイジョアーダ)です。」
店員が大きな黒い土鍋をテーブルに置くと、湯気とともに濃厚な香りが立ち上る。
黒豆と豚肉、牛肉がとろとろに煮込まれたその姿は、まさに“ブラジルの魂”といった感じだ。
「おぉ……これはうまそうだな!」
隣では、綾乃が満足そうに微笑んでいる。
「飯田さん、まずは少しずつ味わってみてくださいね。」
「おう、じゃあさっそく――」
俺はスプーンを手に取り、まずはフェイジョアーダのスープ部分をすくい、口へと運んだ。
――コクがすげぇ。
口の中に広がる濃厚な旨味。
黒豆の自然な甘みと、長時間煮込まれた肉の風味が絶妙に絡み合い、どっしりとした満足感を与えてくる。
「……っくぅ~~、これ、最高だな!」
思わず唸る俺を見て、綾乃がクスクスと笑う。
「ふふ、気に入ってもらえたみたいでよかったです。」
「いや、これはヤバいぞ。俺、もうブラジルの飯にハマりそうだわ。」
「よかったです。フェイジョアーダは、お米と一緒に食べるとさらに美味しいですよ。」
「なるほどな!」
言われるがままに、添えられていた白ごはんにフェイジョアーダをかけてみる。
スプーンですくって――パクリ。
「……っ!!!」
白米と黒豆の相性が想像以上にいい。
フェイジョアーダの濃厚なスープが米に絡み、よりまろやかに味が広がる。
「うまっ……!!」
俺が感動していると、さらにもう一品、Pão de queijo(ポン・デ・ケイジョ)が運ばれてきた。
小さくて丸いパンが籠に山盛りになっている。
「これがポン・デ・ケイジョ。チーズ風味のもちもちパンですよ。」
綾乃が勧めるままに、一つ取って口へ運ぶ。
「おっ……!? これ、めちゃくちゃモチモチじゃねぇか!!」
外はほんのりサクッと、中は驚くほど柔らかくてモチモチ。
噛むたびにチーズの香ばしい風味が口いっぱいに広がる。
「うおお……これ、止まんねぇな。」
「ふふっ、そうでしょう?ブラジルではおやつ感覚で食べられてるんですよ。」
「いや、これでおやつって贅沢すぎるだろ……!」
俺は夢中になってポン・デ・ケイジョを頬張る。フェイジョアーダと交互に食べると、ちょうどいい味のバランスになって、いくらでもいけそうだ。
「綾乃、ブラジルの飯、マジで最高だわ!!」
「ふふ、気に入ってもらえて嬉しいです。」
綾乃は俺の食べっぷりを満足そうに眺めながら、ゆっくりと紅茶を口に運んだ。
俺はそんな彼女の微笑みをちらっと見つつ、改めてブラジル料理の魅力にどっぷり浸っていた。
――――――――――
リオの老舗カフェ「Confeitaria Colombo」。食後の満足感に包まれながら、俺は紅茶を飲みながらふと綾乃を見つめた。
「なぁ、俺のハーレムメンバーたちに会ってみないか?」
紅茶のカップを持っていた綾乃の手が、ピタリと止まる。
「え?」
その大きな瞳が驚きに揺れ、俺をじっと見つめている。
「ビデオ通話でさ。ちょっと話してみない?」
俺がスマホを取り出しながら提案すると、綾乃の表情はますます戸惑いを帯びていく。
「……えっと……どういうことですか?」
困惑した様子の彼女に、俺は肩をすくめながらニヤリと笑った。
「いや、綾乃、お前さ……俺のこと、結構好きだろ?」
「~~っ!? な、何を突然……!!」
綾乃の顔が一瞬にして赤くなり、視線が泳ぐ。
耳まで真っ赤に染まるその様子に、俺はますます確信を深めた。
「でも、今ひとつ気持ちが決まらないのは、俺がハーレムを作ってるからだろ?」
「っ……!!」
俺の指摘に、綾乃は言葉を詰まらせる。
焦ったように目を逸らし、落ち着こうとするようにゆっくりとカップを口に運ぶ。
俺は静かに頷いた。やっぱりな、俺の読みは当たってた。
「ハーレムに入ったあとの世間体とか、実際の生活がどうなるのか分からなくて、それがネックになってるんじゃねぇか?」
綾乃の指が、カップの縁をなぞるように動く。
微妙に表情が揺れているのを見て、俺は確信した。
「そ、そんなこと……」
「いや、いいんだ。それが普通の反応だよ。」
俺は落ち着いた口調で言いながら、テーブルに肘をつく。
「実はな、これ、麗華の教えなんだよ。」
「麗華さんの……?」
綾乃の表情が、少し変わる。
「麗華とは沖縄旅行中に、俺のハーレム観についてじっくり話したんだ。その時、彼女は納得して俺のことを安心して好きになってくれた。」
「……」
綾乃は、少し考えるように視線を落とした。
「それで、俺は学んだんだ。ハーレムの実態を知れば、不安がなくなるんじゃねぇかってな。」
そう言いながら、俺はスマホを手に取り、綾乃に見せた。
「だから、ハーレムメンバーたちと話してみろよ。みんなには事前にお前のことは話してある。俺がどれだけ世話になってるかもな。」
綾乃は、静かに俺の言葉を噛み締めるように聞いていた。
「……なんですか、それ。まるで会社に入社する前に、先輩社員たちの話を聞いて職場の雰囲気を確認しよう、みたいな企画じゃないですか……」
思わず吹き出しそうになる俺。確かに、言われてみればそうかもしれない。
「まぁ、似たようなもんだろ?」
ケラケラと笑うと、綾乃は呆れたようにため息をつく。
しかし――
「……本当にもう……飯田さんって、ずるいですね。」
そう言いながら、微かに微笑んでいた。
まるで、すでに答えは決まっているかのように。
よし、なら――
「じゃあ繋げるぜ?」
「え!ちょ、ちょっと待ってください!」
綾乃は慌てて手を振る。紅茶のカップを置き、軽く息を整えながら、緊張の色を隠せない様子で言った。
「わ、私にとってはハーレムメンバーのみなさんって……なんというか、芸能人みたいな存在で……。いきなり話すなんて、ちょっと緊張します……」
「大丈夫大丈夫。気楽にな?」
俺は余裕の笑みを浮かべながらスマホを操作した。
「ごめん、もう繋げたわ。」
「え!? ま、待って、飯田さん!!」
綾乃が慌てて肩をすくめるが、時すでに遅し。スマホの画面にパッと映し出されたのは、俺の“ハーレムメンバー”たちだった。
麗華、雪華、焔華、貴音、そして静香さん。全員がそれぞれの場所からビデオ通話に参加してくれていた。
「よう、お前ら! 早速だけど俺が今どこにいるか、クイズだ!」
俺はドヤ顔で紅茶を口にしながら、スマホのカメラをくるりと後ろに向ける。映し出されたのは、重厚なアンティーク調の内装と巨大な鏡、歴史の重みを感じさせる大理石の床。
「おぉ!雷丸、何やら煌びやかな場所におるのう!」
焔華が画面の向こうで豪快に笑いながら、手を振る。
「雷丸様、お疲れ様です~!なんだか素敵な場所にいますね!」
雪華は柔らかく微笑みながら、上品に小さく会釈をする。相変わらずのお淑やかさだ。
「お兄ちゃーん!そこどこにいるの!? 美味しいもの食べたんでしょ!?」
貴音はテンション高めに画面にぐいっと顔を近づけ、興味津々といった様子。スマホの画面越しでも、その好奇心の強さが伝わってくる。
その中で、一人静かに麗華が目を細め、すっと唇を開いた。
「……ひょっとして、そこ『Confeitaria Colombo』?」
「……!」
ピタリと言い当てた麗華に、俺は思わず「おぉ」と感嘆の声を漏らした。さすが麗華、こういう歴史的なスポットには詳しい。
さらに――
「えぇ、麗華の言う通りよ。」
静香さんが、優雅に微笑みながら口を開く。
「『Confeitaria Colombo』はリオデジャネイロを代表する老舗のカフェ。19世紀末に創業され、ブラジル帝国時代の文化人たちが集った場所でもあるわ。壁一面の鏡と、クラシカルな内装が特徴的なのよ。」
「おぉ……さすが麗華に静香さん! 博識すぎる!!」
俺は思わず拍手してしまった。画面の向こうでも、みんなが拍手と歓声を上げていた。
「さっすが麗華に静香! いつもながらに知識がすごいのじゃ!」
焔華が画面の向こうで豪快に笑いながら手を叩く。その姿はまるで宴の主のように賑やかで、場を一気に明るくする。
「でも本当にすごいです……!お姫様みたいな気持ちになれそうです。私も一度行ってみたいなぁ……」
雪華はうっとりとした表情で、スマホ越しに見えるカフェの背景をじっと見つめていた。豪華な装飾と歴史を感じさせる空間に、完全に心を奪われている様子だ。
「お兄ちゃん、今度私も連れて行ってよ! 美味しいスイーツ食べたい!!」
貴音は目を輝かせながら、無邪気に画面の向こうの俺に向かって可愛くおねだりしてくる。相変わらずの人懐っこさで、まっすぐな気持ちが伝わってくる。
そのやりとりを見ていた綾乃は、少し困惑したように小さく息を吐いていた。だが、その頬はほんのり赤く染まり、目元には微かに笑みが浮かんでいる。
俺は綾乃の様子を見て、静かに笑った。よし、そろそろ仕掛けるか。
「さて、みんな。」
俺はスマホを少し持ち直し、少しだけ声を低める。
「実は今日は、スペシャルゲストを用意してるぜ。」
その一言に、画面の向こうがざわつく。焔華が大げさに驚いたふりをして、豪快に声を上げた。
「スペシャルゲスト? 誰なんじゃ?」
「そう!俺がブラジル行きの飛行機からお世話になってて、ハーレムの勧誘をしてる女の子がいるって話は、ブラジルについてから毎晩ビデオ通話でしてただろ?」
そう言うと、画面の向こうのみんなが「あー!」「なるほど!」と納得の声を上げ、焔華が「おぉ、いよいよお披露目か!」と手を叩いて盛り上げる。雪華は「わぁ……!」と目を輝かせ、貴音は「どんな人だろ!」と興味津々だ。
そして、俺がニヤリと笑いながら続ける。
「なんと、今日はその子がビデオ通話に応じてくれた!」
すると、画面の向こうではみんなが「おぉ~!」と歓声を上げ、パチパチと拍手が沸き起こった。
だが、その横で――
「っ!? わ、私はまだっ……!!その……!」
綾乃が慌てたように手を振り、頬を真っ赤に染めていた。さっきまで余裕そうだったのに、まさかの展開に完全に動揺している。
「ふふ、まぁまぁ。せっかくだから紹介してくれない?」
静香さんが優雅に微笑みながら、軽くカップを置いて促した。その余裕のある大人の態度に、綾乃はさらにドキリとしたようだった。
俺はニヤリと笑いながら、スマホを持ち直して綾乃に向き直る。
「ほら、綾乃。自己紹介してみ?」
「え、えぇ……?」
綾乃は一瞬、俺の顔を見上げて戸惑った。けれど、スマホの画面に映るみんなの優しい表情を見て、少しだけ安心したのか――
緊張した面持ちで、ゆっくりと口を開いた。
「は、初めまして……綾乃といいます。こ、今回、ブラジルで飯田さんと……いえ、雷丸さんと偶然ご一緒することになりまして……」
途中、言葉に詰まりながらも、懸命に言葉を繋ぐ。その姿が初々しくて、どこか守ってやりたくなるような雰囲気だった。
「えっと……皆さんとお話するのは初めてで……す、すごく緊張してますけど……よろしくお願いします……!」
最後は少し小さな声になったものの、しっかりとお辞儀をしてみせた。
その瞬間――
「おぉ~!かわいいじゃないか!」
焔華が豪快に笑いながら称賛する。
「すごく礼儀正しい方ですね。よろしくお願いします!」
雪華は柔らかな微笑みで優しく応える。
「お姉ちゃん候補!?わぁ、楽しみだ~!」
貴音は目を輝かせながら、無邪気に笑った。
麗華は少し微笑みながらも静かに「よろしく」と呟き、静香さんは微笑を崩さずに優雅に頷いた。
「ふふ、緊張しなくて大丈夫よ。雷丸君と仲良くしてくれてるなら、私たちともきっと仲良くなれるわ。」
その優しい言葉に、綾乃の表情が少し和らいだ。
「ありがとうございます……よろしくお願いします。」
彼女の表情に浮かんだのは、ほんの少しの安心と、微かな期待。
その空気を破ったのは、貴音だった。
「ねぇねぇ、綾乃さんってキャビンアテンダントさんなんでしょ!?」
キラキラと輝く目で、スマホの画面にぐいっと顔を近づけながら尋ねる。まるで憧れのヒーローを見つめる少女のような純粋な眼差しだった。
「え……あ、はい。そう……ですけど……」
綾乃は突然の質問に戸惑いながらも、少しだけ頬を赤らめて素直に答えた。
「わぁぁぁ!すごい!!やっぱりキャビンアテンダントさんって憧れちゃう!」
貴音は両手を胸の前で組み、目を輝かせながら言葉を続けた。
「制服もカッコいいし、海外にもいっぱい行けるんでしょ?お兄ちゃんと一緒に飛行機乗ったんだよね?お兄ちゃんの隣で“お飲み物いかがですか?”ってやったの!?すごーい!!」
一気にまくし立てるような勢いで言葉を重ねる貴音。その無邪気さに、綾乃は少しだけ目を見開いたが、次第に緊張がほぐれたのか、柔らかな微笑みを浮かべた。
「い、いえ、そんなにすごい仕事じゃないですよ。お客様に快適に過ごしていただけるようにするのが、私たちの役目ですから……」
「えー、でもかっこいい!お兄ちゃん、羨ましいなぁ~!キャビンアテンダントさんと旅できるなんて!」
貴音は羨ましそうに俺の方をちらりと見てくる。その純粋な瞳に、俺は思わず笑みをこぼしながら、綾乃の方に視線を向けた。
「おう、キャビンアテンダントさんってすごいんだぜ? 俺が空港内で『メニュー全部ください!』って無茶なこと言っても、にこやかに対応してくれたし。しかも、ブラジルのこともめっちゃ詳しいんだよ。」
画面の向こうから麗華が小さくため息をついた。
「そんな無茶なお願いをキャビンアテンダントさんにお願いしたのね……飯田君は本当に、どこまで自由なのかしら。」
その呆れたような言葉に、俺は肩をすくめて笑う。
「だって、人生楽しんだもん勝ちだろ?それに、綾乃の対応は本当にプロだったぜ。さすがだよ。」
「ふふ、ありがとうございます。でも、あの時は本当に驚きましたよ?」
綾乃は少し照れたように微笑んだ。
「ブラジルのことは、飛行機で来る方が安心して旅ができるように、色々勉強していたので……それで少しはお役に立てたのなら、嬉しいです。」
「いや、めちゃくちゃ助かったぞ。観光のプランもすっげぇ参考になったしな。」
俺がそう言うと、画面の向こうで雪華が感心したように微笑んだ。
「やっぱり綾乃さん、素敵です……!私もそんな風に誰かの役に立てるようになりたいです。」
焔華も豪快に頷きながら、「そうじゃ!綾乃、お主は立派じゃのう!」と手を叩く。
貴音も無邪気に「私も、綾乃さんと一緒に旅行したいなぁ!」と笑いながら言葉を重ねる。
「ふふ、雷丸君、また素敵なご縁を見つけたみたいね。」
静香さんは落ち着いた口調で微笑んだ。
「……みなさん、優しいですね。」
綾乃が控えめにそう呟くと、画面の向こうのみんなはどこか楽しそうに微笑んでいた。
「まぁ、ハーレム入りはゆっくり考えればいいわ。私たちはいつでも歓迎するわよ。雷丸君が選んだ女の子ならね。」
静香さんの言葉に、綾乃は少し驚いたように目を見開いた。
「……え?」
「そうですよ!もし綾乃さんが雷丸様と一緒にいることを選ぶなら、私たちは大歓迎です!」
雪華が優しく微笑む。
「うむ!ハーレムファミリーは多いほど楽しいからな!」
焔華が豪快に笑う。
「お姉ちゃん増えるの、嬉しい!」
貴音が無邪気に笑う。
「……皆さん……。」
綾乃は、ほんの一瞬だけ言葉を失ったあと、ふっと小さく微笑んだ。
「……ありがとうございます。」
その小さな言葉に、画面の向こうのみんなが優しく頷いた。
俺はそんな彼女たちの様子を見ながら、心の中で確信した。
――これ、案外すんなりいくんじゃねぇか?
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