異世界帰りのハーレム王

ぬんまる兄貴

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第155話 ワールドカップ50

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「ついにこの日がやってきましたぁぁぁ!! ワールドカップ決勝!! 世界の頂点を懸けた、夢の一戦です!!」

 

 実況の絶叫が、スタジアム全体に響き渡る。

 世界中の視線が集まるこのピッチに、今――22人の戦士が立っている。

 

「南米の王者――ブラジル代表!!」

 

 陽光を纏うような“金色のユニフォーム”が鮮やかに輝く。
 そのプレーはしなやかで華やか、そして獰猛。まさに“王者のフットボール”。

 

「そして、その中心に立つのは――この男!」

 

 カメラが捉えるのは、10番・アントニオ・ソルダード。

 まるで舞台の主演俳優のように、優雅でありながら圧倒的な存在感を放ち、ピッチ中央に佇んでいた。

 

「“太陽の王子”!! “ミスターサッカー”!! “サッカーの神”!!
 世界最高の称号を欲しいままにする、サッカー界の象徴が、ここに降臨!!」

 

 一方――
 
 

「迎え撃つは、アジアの誇り・日本代表!!」

 

 青のユニフォームがピッチを駆ける。
 その最前線を走るのは、10番・飯田雷丸。

 

「日本の大黒柱!! 奇跡の連続を現実に変えた男!!」
「圧倒的な突破力、反則級のシュート力!!“雷丸”が世界の頂へと駆け上がる!!」

 

 ピッチが震える。観客席が揺れる。

 

 「ニッポン!!」「ブラジル!!」



 両国の名前が、地鳴りのように交差する。

 

 選手たちはその声援を背負いながら、ただひとつ――目の前の“頂”だけを見ていた。

 

〈ピィィィィィィィッ!!〉

 

 ホイッスルが響く。

 

「さあ、ワールドカップ決勝戦、キックオフです!!」

 

 ――世界の頂点へ。
 ――歴史に名を刻む最終決戦。

 

 今、すべてを懸けた90分が幕を開けた――!!




 
 ――――――――――



 

 ホイッスルと共に、ブラジルボールで試合が始まる。

 

 そして、当然のようにボールは――アントニオ・ソルダードの足元へと渡った。

 

 俺は即座にマッチアップ。最初から勝負を仕掛けるつもりだった。

 

 だが。

 

 アントニオは俺の視線を受けながら、まるで挨拶のようにニコッと微笑むと、スッ――とボールを転がし始めた。
 

 優雅に、軽やかに、ボールをくるくると操る。
 ターンのような動きから一瞬で角度を変え、次のステップへ。

 

(……なに!?)

 

 一つの動作の中に、フェイントが幾層にも仕込まれている。
 身体の揺れ、視線の向き、足の角度――どれもが本物に見える。

 

 アントニオがスルリと抜けた。
 奴の動きを瞬間的に見誤った。身体が一歩、遅れた。

 

 ――かに見えた、その時。

 
 
〈ズンッ――!!〉

 

 俺の脚が地を蹴る。雷速ステップ。
 身体をねじ伏せるような加速で、抜かれたはずのその一瞬を“帳消し”にする。

 

 追いついた。ピタリと、アントニオの横に並ぶ。

 

「――アントニオ、どこ行くんだよ?」

 

 俺は肩越しにそう言い放った。

 

 アントニオがわずかに目を見開く。


 そして、ニッと笑う。

 

「…………相変わらず、凄い脚力だね。」


 

 次の瞬間――再びアントニオが動く。

 

 一拍の溜めもなく、身体をひねるようにスピン。
 俺の視界から一瞬消えるように背後へ回り込み、まるで絹のように滑らかなボールタッチでボールを転がした。

 

「――っ!」

 

 俺もすぐに反応。脚が反射的に地を蹴る。
 だがもう、視界の端にアントニオの背中がある。

 

(追いつけ――!)

 

 腕を広げ、軌道を塞ぐ。
 そして――スッ、と差し込んだ右腕でアントニオの進路をぎりぎりのラインで止める。

 

 身体を寄せる。
 ぶつかる一歩手前の距離感で、アントニオの体勢を崩す。

 

「おっと……」

 

 アントニオがバランスを取りながらボールをキープしようとするが、その隙を見逃さず足元を詰めにいく。

 

 ボールが二人の足元で激しく跳ねる――攻防一瞬の緊張。

 

 スタジアムが、それに呼応するように爆発した。

 

「アントニオォォォォ!!」

「負けるなー雷丸!!頼むぞー!!」

 

ブラジルと日本、両国のサポーターが魂の叫びをぶつけ合う。

 その熱狂の中心で、俺とアントニオは一瞬の攻防を繰り広げていた。

 

 ――だが、その時だった。

 

「雷丸、任せろ!!」

 

 村岡が駆けつけてきた。

 心強いヘルプ。
 その瞬間、俺の脳裏には「これで一気に挟める!」という戦術が閃いた――が。

 

 アントニオの口元が、静かに歪む。

 

「ありがとう――“壁”くん」

 

 そう言いながら――アントニオがヒラリと、体を回す。

 

 ターン。

 

 完璧なバランスでボールを転がし、村岡の横を抜ける。

 

「なっ――!?」

 

 村岡が動いた瞬間、アントニオはすでに背後へ抜け出していた。

 

 俺はすぐに反応して追おうとする――が、

 

「くっ……!」

 

 進行方向に、村岡の身体がある。

 その一瞬の位置ズレ。
 わずかに避けるように進路を変える――たったそれだけのロス。

 

 それが致命的だった。

 

 振り返った時にはもう遅い。
 視界の端で揺らめいたと思ったら、次の瞬間には俺の追いつけない距離に抜け出していた。

 

 そのまま、ブラジルの連携が光る。

 アントニオがワンツーで抜け出し、ゴール前に切り込んでいく。

 

 ――ヤバい!!

 

 心より先に体が動いた。考える余裕なんてない。
 
 アントニオの右足が振り抜かれる――その一瞬前。

 

「させるかよ!!」

 

 俺は渾身の加速から、スライディング気味に滑り込んだ。

 

 バシュッ!

 

 ボールが、俺の足に直撃して逸れる。
 ゴールには届かず、勢いを殺されたボールはサイドへと流れていった。

 

 スタジアムが大きくどよめく。

 ブラジル側は「惜しい!」と叫び、日本側は「ナイスカット!!」と歓声をあげた。

 

 アントニオがピタリと足を止め、信じられないものを見るように俺を見た。

 

「……戻るの、早すぎでしょ。」

 

 ぜぇ、ぜぇと息を切らしながらも、俺は笑った。

 

「悪いな、足が速いのが売りなんだよ。ちなみに小学生の時は、そのおかげでモテモテだったぜ?」

 

 アントニオの口元が、ぷっと緩む。

 

「……そんな情報、いらないよ。」

 

 笑いながらも、彼の瞳には確かに、俺を“認めた”光が宿っていた。
 


 ボールはサイドへと転がり出る。
 そこへ誰よりも早く反応したのは、キャプテン――長谷川だった。

 

 彼は一瞬で全体を見渡し、鋭く叫ぶ。

 

「繋げ!!いけるぞ!!」

 

 その声に、日本代表が一斉に動き出す。

 ピッチ上の空気が変わる――
 ボールが走る。選手たちも走る。
 短く、的確なパスが次々と繋がれ、鮮やかなリズムが生まれる。

 

 実況が叫ぶ。

 

「これはチャンスだぁぁぁ!! 日本の高速連携!!完全にブラジルを押し込んでいる!!」
 
 

(よし、ここで俺がフィニッシャーだ――!)

 

 だが――

 

 ガッ!

 

 鋭い衝撃が肩に走った。


 
 ――あっぶな。


 
 わずかに角度がズレていなければ、確実にファウルだった。
 
 

 振り返らずとも分かる。
 ぴたりと、俺の背後に張り付く存在――アントニオ・ソルダード。

 

 まるで影のように、俺の動きを“読む”でも“予測する”でもなく、“感じ取って”いる。

 

 右に流れれば、すぐに肩が擦れる。
 裏を取ろうとすれば、もうそこに立っている。

 

(……っ! これ、俺がトーレスにやった完封マーク……)

 

 そう、今俺が――やられている側だ。

 

 アントニオのマークは、荒っぽくも強引でもない。
 むしろ静かで美しい。完璧な配置と密着。
 “圧”ではなく、“掌握”によって、すべてを封じている。

 

「見えているよ、雷丸君。君が、どこへ向かおうとしているのか――」

 

 耳元に届いたその囁きに、身体がゾッとする。

 

 まるで俺の心の奥まで、読み取られているような――そんな錯覚。

 

(くそっ……!動けねぇ……!)

 

 

 ボールは回る。
 仲間たちは動く。
 しかし、俺に出されるはずだった“ラストパス”は、目の前で握り潰される。

 

 味方の焦りが伝わる。

 

(雷丸……!?)

 

 その動揺が波紋のようにピッチに広がる。

 

 だが、時間は待ってくれない。

 

 ボールはついに、ペナルティエリア外へ――!

 

「撃てぇッ!!」

 

 誰かの叫びと同時に放たれたミドルシュート!

 

 だが――ブラジル守備陣は、冷静だった。

 

 DFが素早く射線を切り、ゴールキーパーは完璧なポジショニング。

 

〈バシィィンッ〉

 

 キーパーのグローブが重く空気を裂き、シュートは無情にも両手に吸い込まれた。


 
 
「止めたァァァァ!! ブラジル、鉄壁の守備!!! 日本の猛攻を完全に封じたァァ!!」

 

 そして、ボールはすぐさまブラジル代表の足元へ――

 

 ピッチの空気が一変する。

 

「アントニオにボールを持たせるな!!」

 

 日本ディフェンス陣が即座に反応。
 3人がかりで、鉄壁のようにアントニオの前に立ちふさがる。

 

 1人がマンマーク、1人が進路封鎖、そして最後の1人がカット狙い――
 まさに“止めるための布陣”だった。

 

 アントニオは一度、スピードを緩める。

 

(よし……止まった……!)

 

 そう思った、ほんの――一瞬。

 

 アントニオの視線が、ふっと斜め後ろへ向く。

 

 それに呼応するように、ブラジル代表の味方がパスモーションへと入った。

 

 日本DFたちの視線が、一斉にボールへと流れる。

 

 その瞬間だった。

 

 アントニオが――“消えた”。

 

 いや、そう錯覚するほど、あまりにも自然で、あまりにも滑らかな裏抜けだった。

 

 次に彼の背番号10が見えた時には、すでに最終ラインの裏。
 完全にディフェンスを抜けた空間に、“静かに”現れていた。

 

 そこへぴたりと通される、グラウンダーパス。

 足元に吸い付くような、まるで“待っていたかのような精度”。

 

 視線を誘導し、タイミングを盗み、意識そのものをズラす。

 アントニオの動きは、まるで魔術のようにディフェンスを欺いていた。

 

 ――そして、実況が炸裂する。

 

「アントニオ抜けたァァァァァ!!!」
「なんという動きだ!!まるで忍者のごとき裏抜け!!!」
「日本ディフェンス、完全に視線を外されたァァァァ!!」

 

 その騒がしさの中心で――

 

 アントニオが、くるりと身体をひねりながら振り返り、俺にだけわかるように微笑んだ。

 

「――雷丸くん。ディフェンスの抜け出しっていうのは、こうやるんだよ」

 

 涼しげな表情。
 あまりにも美しく、あまりにも的確な一手。

 

 その瞬間、俺の中に雷が走った。

 

 奥歯を噛み締める――が、心の奥底で自分に言い聞かせる。

 

(……くそっ、見惚れてる場合じゃねぇ!!)

 

 わかってた。わかってたはずだ――アントニオの、この“視野の広さ”は――!

 

 ――思考が走馬灯のように遡る。



 

 ***


 

 前日――

 ミーティングルーム。
 モニターに映るのは、アルゼンチンvsブラジルの準決勝映像。

 

「……嘘だろ……エンリケが……完全に止められてる……」

 

 村岡が思わず息を呑んだ声を漏らす。
 俺たちは、ただ黙って画面を凝視していた。

 

 その中心には――アントニオ・ソルダード。

 相手の動きを「読む」でも「予測する」でもない。
 まるで“最初から知っていた”かのような位置取り。
 後方からのパス、サイドの揺さぶり、すべてを“先に見ている”かのようなプレー。

 

 あれは――まるで、フィールド全体を俯瞰しているかのような視野。

 

「後ろに目玉でもついてるのかよ……」

 

 思わず誰かが呟いたその言葉に、藤堂監督が応える。

 

「……いや、本当にそうかもしれんな」

 

 静かに立ち上がった監督は、映像を一時停止し、アントニオが視線を一切動かさずにパスを通しているシーンを指差した。

 

「アントニオを“ワールドクラス”に押し上げた要素はいくつもある。圧倒的なテクニック、柔らかなボールタッチ、高いサッカーIQ――だが、もっとも特筆すべきは……あの眼だ」

「眼、ですか……?」

 

 誰かが聞き返すと、監督は頷いた。

 

「ああ。あいつは、“フィールド全体”を見ている。人とボールの動きだけじゃない。“流れ”そのものを読んでいるんだ。」

 

 そういえば――

 

(テロリストのリーダー、ヴァルターも……言ってたな)

 

《「アントニオ・ソルダード。君のことは調べさせてもらった。リオのスラム街出身、そして――“特殊な目”を持つ男。反応ではない、予知でもない――“視えている”」》

 

 “眼”が違う。
 視る世界の“次元”が違う。

 

 ――アントニオ・ソルダード。
 こいつは、ただの天才じゃない。

 

 “戦場そのものを俯瞰する視点”を持った男――それが、アントニオの正体だ。





 ――――――――――――






 なんとか日本がブラジルの猛攻を耐え抜き、ボールは再び俺たちの手に戻ってきた。

 

 そして俺は――叫ぶ。

 

「例え俯瞰してようが……これならどうだよ、アントニオ!!」

 

 キャプテンに合図を送る。

 

「空中にパスを出せ!!」

 

 ボールが高く、斜め前方へ放たれる。

 

 俺は迷わず助走をつけ、――跳んだ。

 

「雷丸が跳んだァァァ!!!」
 
「これは……これはまさか――!!」

 

 空を蹴るように、空間を駆け上がる。

 

 ――スカイウォーク。

 

 だが今回は今までのとは違う。

 これまでドリブルに使っていた“空中の一歩”を――パスの“受け”に転用したのだ!!

 

「空中でパスを受け取ったァァァ!!」
「スカイウォークを“展開の起点”に使ってきたァァ!!!」
「空中からの切り込み!!まさに異次元プレーだぁぁぁ!!」

 

 俺はそのまま空中でボールを受け、地面に着地するや否や切り込む。

 

 シュート体勢。

 右足を引き――振り抜く!

 

 ――だが、その刹那。

 

「……っ!?」

 

 視界に滑り込んできたのは、金色のユニフォーム。

 

 アントニオ・ソルダード。

 

 その足が俺のシュートコースに滑り込み、まるで吸い寄せるように――完璧なタイミングで、ブロック。

 

 ゴッ、と鈍い音が響き、ボールが弾かれる。

 

 だが――次の瞬間には、そのボールがアントニオの足元に収まっていた。

 

 信じられないほど柔らかい、優しいタッチ。
 まるで絹のようにボールが足元に吸い付いている。

 

(……エンリケクラスのタッチだ、こいつ……!)

 

「雷丸君、なかなかいい策だったけどね――」

 

 軽く笑みを浮かべながら、アントニオが続けた。

 

「次はもうちょっと、“太陽”に届くようにしてくれるかな?」

 

 ――煽りや皮肉ではない。

 ただ、純粋な“遊び心”と“挑発”を乗せた、陽だまりのような微笑みだった。

 

「……っざけんなよ……!!」

 

 怒声とともに、俺は地面を蹴りつける。

 全身のバネを最大限に使ったスライディングで、アントニオの足元へと――一直線に突っ込む!

 

 だが。

 

 その瞬間、アントニオの身体がふわりと浮かぶ。

 

 まるで燕。
 風を味方につけた鳥のように、優雅に、そして無駄のないフォームで、俺のスライディングを軽やかに跳び越える。

 

 空中――。

 なんと、片足でボールをピタリと“受け止めた”。

 跳躍の最中、宙に浮いた足に、まるで吸い寄せられるようにボールが乗る。

 

(なっ……!?なんだその体幹とバランス……!!)

 

 そしてそのまま、スッ――と静かに着地。

 音すら聞こえないほどの、完璧な動作。

 

(……アクション映画かよ……!?)

 

 だが、俺も――

 

 即座に上体をひねり、地面を蹴って跳ね起きる。

 その瞬間、俺の身体はもはや“反射”ではなく、“直感”で動いていた。

 

 アントニオがボールを小さくタッチする。
 ならば――俺はそのボールの“落ちる角度”に合わせて横から回り込む。

 

 彼がアウトサイドでボールを流す。
 俺はインサイドで滑り込むようにブロック。

 

 俯瞰なんて意味を成さない。
 これはもう――“拳と拳の距離”だ。

 

 至近距離での、アクションの取り合い。

 

 ボールを軸に、アントニオと俺の身体が交差する。
 足が、膝が、肩が、腰が、ぶつかる寸前で止まり、切り返し、跳ね、躱す。

 

 ジャッ、ジャッ、タッ――!

 スパイクが芝を裂く音が、まるで刀と刀の鍔迫り合いのように鋭く響く。

 

 ピッチ中央が“戦場”に変わる。

 

「うおおおおお……すっげぇ……!!」
「なんだよこの二人!?」
「まるで――ハリウッド映画のクライマックスだ!!」

 

 観客の歓声が爆発する。

 でも俺たちは、もう何も聞こえていなかった。

 

 目の前の男――アントニオ。

 そしてその前に立ち塞がる俺。

 

 どちらも、一歩も退かない。
 お互いが“芸術”のようなプレーを、“戦闘”としてぶつけ合う。

 

 汗が飛ぶ。
 スパイクが食い込む。
 体が跳ねる。

 

 この時、ピッチの上にあったのは――ただ一つ。

 

 “世界の頂点”を懸けた、純粋すぎる一対一だった。

 観客席の視線が、全員、俺たちに釘付けだった。

 

 気がつけば、スタジアムは総立ち。

 

 観客の誰もが立ち上がり、拍手を送っていた。
 足を鳴らし、手を叩き、まるでロックフェスにでも来たかのような熱狂。
 口笛すら飛び交うこの空間は、もはやサッカーの試合というより“ショー”だ。

 

 ふと、視線を横にやると――

 解説者たちまでもがスーツ姿のまま立ち上がり、口を開けたまま拍手していた。

 

 スタジアムが、雷鳴のように揺れる。

 

 その熱狂の中心で――俺とアントニオは、ニヤリと笑い合った。

 

「アントニオ、試合終わったらサイン会でも開くか?」

 

 軽口を叩く俺に、アントニオは肩をすくめながら返す。

 

「悪くないね……ただし、“勝者”の方から、先にサインすることにしようか?」

 

 視線が交錯する。

 

 火花と、笑み。
 互いに真剣で、互いに挑発的で――

 けれど、どこまでも“最高の舞台”を楽しんでいた。





 ――――――そう、俺は“思っていた”。



 
 観客の大歓声に包まれる中、アントニオが涼しい顔で、まるで昼休みを終わらせるかのように、ふと口を開いた。



 
「ねぇ、そろそろウォーミングアップは終えない?」
 
 


 
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