異世界帰りのハーレム王

ぬんまる兄貴

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第160話 ワールドカップ55

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【ワールドカップパーティー会場】
 

 煌びやかなシャンデリアが照らす大広間。豪華なビュッフェ、世界中から集った選手たち、流れる音楽と湧き上がる歓声――

 ここは、世界最高のフットボーラーたちの“打ち上げ”会場。だけどその実態は、世界中のバカたちが一堂に会した“戦場”だった。

 

 まず騒がしかったのは――フランス代表。

 

「アルレ・ブルー!!」


 
 会場のフロア中央――煌びやかなシャンデリアの真下で、フランス代表がまるでミュージカルのような熱狂を繰り広げていた。

 
 ジャケットを次々に脱ぎ捨て、肩を組み、ぐるぐると回転ダンス。気づけば選手たちは輪になってステップを踏みながら「シャンパン!!」と叫び、まるで舞踏会と祭りのハイブリッド。

 

 そして――その中心にいたのが、キャプテン・ルイ・バルテルミー。

 
 完璧すぎるオールバックに、スーツのシャツは第三ボタンまで開け、左手には黄金の泡が踊るグラス、右手は天に掲げたまま。

 

 キリッとした横顔で、バシッとポーズを決めたかと思えば――

 

「僕の愛しのハーレム王に、乾杯ぃぃぃ!!」

 

 ――ゾクッッ!!

 

 背中に氷水をぶっかけられたような戦慄が走った。

 

 い、今……俺のこと、言ったよな!?

 

 シャンパンを高らかに掲げ、満面の笑みでこちらを指差すルイ・バルテルミー。

 

 その瞳はまるで獲物をロックオンしたタカのようにギラついていて、周囲のフランス代表たちが一斉に「オーウ!」と盛り上がる。

 

「まさか……お、お前、俺のこと狙って……いやいやいや待て待てフランス語で“親愛”ってだけだよな!?だよな!?」

 

 自問自答しながら後ずさり。

 けれど、ルイはにこやかにシャンパングラスをくいっと傾け、まるで恋文を読み上げるように――

 

「愛は国境を越える。今夜だけでも、ね……?」


 
 ヒュウゥゥゥ――。

 

 まるで時間が止まったかのような空気。

 

 その直後、後ろからドッと湧き上がる日本代表の茶々入れ。


 

「うわ、雷丸、口説かれてんぞー!」
 
「いいぞ雷丸!男までハーレム入りだ!」


 
 俺は魂ごと全力で逃げ出した。
 サッカーよりよっぽどヤバい“接触プレー”が始まりそうだったからだ。
 
 

 一方その頃――パーティー会場の片隅に、異様な緊張感が漂っていた。

 

 ベルギー代表のテーブル。

 

 全員が無言で肩を組み、ニヤリと笑いながら、「カチカチ……」と歯を鳴らして威嚇中。

 その様子はもはや宴というより“獣の巣”。

 

 通りかかった他国の選手たちは、一瞬で空気を察してそっと視線を逸らし、ベルギーゾーンを不自然なくらい大回りして通過していく。

 

 まるで野生動物に遭遇した一般人のムーブだ。

 

「……おい、ちょっと牙、しまっとけよ」

 

 思わず俺が声をかけると――

 

 ベルギー代表のキャプテン、“狂犬”ジャック・ドゥルヴァーニュがゆっくり顔を上げた。

 

 鋭い目、獲物を見つけた時のような薄ら笑い。

 

「……ほぉ。怖いのか?」

 

 その声は低く、獣の唸りのようだった。

 

 ベルギーゾーン、もはや牙のジャングル。

 
 ――怖ぇよ!!完全に狂犬軍団、パーティーでも誰にも止められねぇ!!

 

 続いてスペイン代表。

 

 あの“無敵の闘牛”カルロス・トーレスが、ビールジョッキを豪快に煽る姿はまさに圧巻。

 

「勝っても飲む、負けても飲む、それが俺の流儀だ!!」

 

 このセリフに会場は大歓声。「サルー!」の乾杯が飛び交い、トーレスは両手にビールを持たされて「飲み牛」モード突入。


 

 そして肉の山を征くのは、イタリアの“石壁の巨神”ヴォルカーノ。

 

 特大ステーキ、大盛りミートボール、骨付き肉――彼の前に並ぶ肉のフルコースはまさに“火山地帯”。

 

 「イタリアの山々にも劣らぬ高みだな……」
 そう呟いて豪快にがぶり!

 

 肉汁がしたたり、周囲は拍手喝采。

 

「これぞヴォルカーノ流!」
「噛んだだけで火山が噴火しそうだ!!」

 

 まさに“肉食う壁”。

 

 さらに注目を集めていたのは、ブラジル代表アントニオ・ソルダード。

 

 彼の周囲には、どこから湧いたのか美女たちがずらり!ドレス姿の美少女ファンに囲まれ、アントニオはジェントルマンの極み。

 

「アントニオ、あなたのシュート、まるで夢みたい……」
「ありがとう、君の瞳の輝きには敵わないよ」

 

 ――キラッキラしすぎだろ、太陽の王子。
 オーラがまぶしくて、目が潰れそうだわ!!

 

 ……そして、壁の片隅。

 

 誰にも気づかれず、静かにワイングラスを傾けている影。

 

 ――エンリケ・マルティネス。

 

 ワインを一口。何を考えてるかまったく読めない。相変わらず“無言の天才”っぷりに拍車がかかってる。

 

 俺は思わず、近くの日本代表に声をかける。

 

 「ちょっと、俺……あいつと話してくるわ」

 

 仲間たちが「おう、行ってこいハーレム王!」と笑いながら背中を押してくる。

 

 静と動が交錯するパーティー。
 今夜、また“何か”が始まりそうな――そんな予感に、胸が少しだけ高鳴った。


 

 俺はにやりと笑って、片手を軽く上げながら声をかけた。

 

「よっ!エンリケ!」
 
「――雷丸」

 

 その名前を口にする声音は、ほんの少し、いや確実に――嬉しそうだった。

 

 手にしていたワイングラスを胸元に下ろし、ふわりと微笑む。

 

「決勝戦、ちゃんと見てたぜ」

 

 その一言には、言葉以上の熱がこもっていた。

 

 戦っていたのは自分じゃない。けれど、そのプレーに心を揺さぶられた――そんな雰囲気がエンリケの表情から伝わってくる。

 

「そうかよ」と俺が照れ隠しのように肩をすくめると、エンリケは少しだけ、頷いた。

 

「お前らしい勝ち方だった。奇想天外、自由奔放、そして……最高に楽しかった」

 

 言葉は静かだが、そこに込められた感情は確かだった。

 まるで俺のプレーに“創作欲”を刺激された画家のように、彼の瞳がほんの少しだけ熱を帯びていた。



「お前のお陰だよ、エンリケ」

 

 ふと漏れたその言葉に、エンリケの目がわずかに揺れる。

 

「……俺が?」

「あぁ」

 

 俺はエンリケの横顔を見つめながら、静かに続ける。

 

「お前とのあの一戦。まるで芸術みたいなサッカーを見せつけられて――正直、ぶん殴られた気分だったよ」

 

 脳裏に蘇るのは、あの試合。

 

 “流れるようなトラップ”、
 “リズムを壊してくるドリブル”、
 “思考の外を行く即興の魔法”――

 

 エンリケ・マルティネス。あの天才に翻弄され、追いつけなくて、それでも食らいついて、最後にギリギリで追いついた。

 

 エンリケは黙ったまま、じっと俺を見ていた。

 

「お前との試合のあと、俺の中で何かが変わった。戦術でも、体力でもなく……“可能性”が爆発した。
 "飯田雷丸"を、どこまでプレーに乗せられるか――そればっか考えるようになった」

 

 そして、あの決勝。

 アントニオの“未来視”に対抗できたのは、技術でも根性でもなく――“予測不能な可能性”。

 

「だからさ。お前がくれたんだよ、この“マルチビジョン・ハーレム・シミュレーション”って発想を」

 

 俺が言うと、エンリケは静かに目を細めた。

 

「……それは嬉しいな。俺がお前の中に、“創作の種”を植え付けたって事か。」

 

エンリケの唇に、わずかに戻った微笑。
 その笑みは、言葉にできないほど繊細で、ほんの少し――安堵すら含んでいた。

 

 俺は、グラスを持つ指を軽く揺らしながら口を開いた。

 

「なぁ、エンリケ。俺さ……昔から、変わってるってよく言われてたんだよ。
 空気も読めねぇし、突拍子もないことばっかやって、笑われたり、呆れられたりさ」

 

 どこか遠くを見るように、軽く笑う。

 

「でもな――お前を見たとき、思ったんだ。俺と似てる部分、あるかもしれねぇって」

 

 その言葉に、エンリケはゆっくりと視線をこちらに戻した。

 

「俺もだ。“変わってる”って、よく言われるぜ。感情が分かりづらいって、いつも思われてる。でも……雷丸、お前だけは違った」

 

 その目は真っ直ぐだった。

 

「お前は最初から、俺の“奇抜さ”を笑わなかった。
 “変わってる”じゃなく、“面白い”って目で見てくれた」

 

 エンリケは、静かに微笑む。

 

「……俺は、雷丸。お前が俺を理解してくれていたこと――本当に嬉しかったぜ。」

 

 その言葉は、まるで胸の奥にじんわりと灯る焚き火みたいだった。

 

「そっか……なら、もう友達ってことでいいよな」

 

 俺が軽く拳を差し出すと、エンリケは少しだけ驚いたように目を丸くし――次の瞬間、照れたように笑いながら、その拳をコツンと合わせてきた。
 


 俺とエンリケが拳を合わせた、ちょうどその瞬間だった。

 

「……ちょっと?」

 

 背後から聞こえてきた軽やかな声に振り返ると――
 そこには完璧な笑顔と完璧な立ち姿、そして完璧に“拗ねたオーラ”を纏った男がいた。

 

 アントニオ・ソルダード。

 

 手にはシャンパングラス、けれどその目は完全に俺たちの拳にロックオンされている。

 

「ねぇ、二人で何盛り上がってるのさ?僕も混ぜてよ?」



 ふくれっ面とは言わないが、限りなく“拗ねた太陽の王子”がそこにいた。

 

「いや、別にそんな……」と俺が笑いながら言い訳しようとすると、

 

「雷丸君の“親友枠”は――僕だよ?」

「え?いや、いやいや、親友枠って何だよ!?今、エンリケとちょっといい雰囲気だったんだけど!?」

 

「ふむ、親友枠……?」とエンリケも首をかしげながら、やや興味深そうに俺を見る。

 

「雷丸君。僕と君は、あの決勝の“魂のぶつかり合い”で絆を深めた仲だよね?僕の方が深いって思わない?」


 
 軽やかな微笑みと共に、まるで当然のように言い切ってくるその自信っぷりに、俺は思わず叫んだ。

 

「いやでもお前、あの時“こんなものか”って冷めた顔しただろ!? あの瞬間、俺めっちゃ傷ついたんだからな!!」

 
 

 するとアントニオは――バツの悪そうに一瞬だけ目を伏せ、

 

「ごめんごめん。あれはちょっと……期待しすぎちゃってさ」

 

 ――と、すぐにけろりとした表情に戻り、キラッとした笑顔を浮かべる。

 

「でも今は違うでしょ? もう“こんなものか”なんて、絶対言わない。……君は僕の期待を軽々と超えてくれたからね」

 

 そう言いながら、彼は高々とグラスを掲げた。

 

 その仕草がまた、絵に描いたようにキラキラしてて腹が立つのに――
 どこか憎めねぇんだよ、コイツは。

 

「チッ……ほんと、太陽のくせにズルい男だぜ」

 

 俺は肩をすくめながらも、思わず笑い返してしまっていた。

 
 エンリケは肩をすくめて、
「親友枠が何人いても、面白いだろ?」と呟きながら、再びワイングラスを傾ける。

 

「じゃあ……」と俺は大きく腕を広げながら叫ぶ。

 

「ハーレム王の親友枠、今ここに二人認定――ってことでいいか!?」

 

 アントニオとエンリケは顔を見合わせて、ふっと笑い、
 次の瞬間、三人で拳をコツンとぶつけ合った。

 

 その瞬間――

 

「おいおいおい!ちょっと待てぇぇぇぇぇ!!!」

 

 会場が一斉に振り向く。

 耳をつんざくような野獣の雄叫びとともに、筋肉の塊が突撃してくる。

 

「雷丸の友人代表といえば!!俺だぁぁぁぁ!!」

 

 全身の筋肉をバッコンバッコン震わせながら、グラス片手に猛スピードで突進してくる――無敵の闘牛、カルロス・トーレス!!

 

「雷丸!!!会いたかったぞおおお!!」


 

 周囲の選手やスタッフが慌てて道を開ける中、俺はとっさに叫んだ。

 

「おっと、持ち上げるのはなしな!?な!?約束だぞトーレス!!」

 

 衝突寸前、横からヌゥッと現れた影がトーレスを片手でガシィッと制止した。

 

 その巨体、圧倒的な存在感――まるで岩壁が割って入ったような迫力。

 

「……俺を忘れて貰っては困るな。雷丸の“宿敵”と言えば――俺だろう」

 

 低く響く声とともに立ちはだかったのは、“石壁の巨神”ヴォルカーノ。

 

 ステーキの皿片手に、まるで守護神のように雷丸の前に立ちふさがる。

 

「な、なんだこの怪獣バトルみたいな絵面は……」と俺が小声で漏らす中、

 

 止められたトーレスがグッと睨みを利かせて叫ぶ。

 

「ヴォルカーノォォ!!なんで俺を止める!?」

 

 ビール片手に怒鳴る筋肉の闘牛!

 

 対する石壁の巨神は、悠然と構えながら静かに言い返す。

 

「落ち着け、トーレス。これは“突進”する場ではない。“語る”場だ」

「俺の感情は“語る”より先に“ぶつかる”タイプなんだ!!」

「知っている。だから止めている」

 

 
 手にはステーキフォーク、前には壮大すぎる肉のピラミッド。そして堂々たる一言。

 

「雷丸。お前も、食うか?」

 

 ゴンッと目の前に置かれたのは、辞書並みの厚さのステーキ。

 

「お、おぅ……じゃあ、みんなで……食おうぜ?」

 

 俺が戸惑いながら笑うと、周囲がざわめき始めた。

 

 気づけば――

 

 アントニオ、エンリケ、トーレス、ヴォルカーノ。


 
 ワールドクラスの化け物どもが、なぜか全員、俺の周りに集結。
 

 その異様な光景に、近くのテーブルの選手たちがざわざわし始める。

 

「え、あのテーブル、やばくね……?」
「全員チートキャラじゃん」
「雷丸、囲まれてるっていうか、なんか“世界の中心”じゃね……?」

 

 俺が「いや、改めてすげぇメンツに囲まれてんな……」と呟くと、

 

 アントニオが肩をすくめながら、ニヤリと笑う。

 

「まぁ、こうして集まったのも――何かの縁さ」

 

 その瞬間、会場全体の視線が一斉にこっちへ向けられた。

 

 スタッフがバタバタと駆け寄ってきて、口々に叫ぶ。


 
「ちょっ、写真撮っていいですか!?ていうか撮らせてください!これは伝説です!!!」


 
 カメラのフラッシュが次々に焚かれる中――

 
 “世界を魅せた猛者たち”が、なぜか一つのテーブルに集うという奇跡。
 

 ワールドカップ後夜祭は、この異様すぎる“中心”を舞台に、さらに盛り上がりを加速させていった。



 

 ――――――――――




 

 俺はテーブルをバンッと叩いて、笑いながら言った。

 

「なぁ、せっかくこうしてみんなで集まったんだし、今さらだけど――お前らのプレイスタイルについて聞かせろよ!気になってたんだ、ずっと!」



 その場の空気が一気に盛り上がる。


 
「まずは……トーレス!!」


 
 無敵の闘牛、スペインの猛牛男に俺は指を突きつけた。


 
「お前さ――“トーレスボール”って、結局なんなんだよ!!?」


 
 会場のテーブルがドッと笑いに包まれる。周囲の選手たちも「あ、それ僕も聞きたかった!」「マジ意味不明だったよな!」と口々にツッコミを入れる。

 トーレス本人はというと――グラス片手にケラケラ笑っている。


 
「はっはっは!やっと聞いてくれたか、雷丸!!」


 
 どこか誇らしげに胸を張ると、空気を震わせるような大声で言い放った。


 
「“トーレスボール”とは……俺自身だ!!!」

「出たーーー!!!」



 
 周囲が爆笑し、誰かが「それ説明になってねぇからな!?」と即ツッコミ。

 それでもトーレスはまったく気にせず、さらに語る。



「“俺自身がボールになる”――それはつまり、“己の全存在をサッカーに賭ける”ってことだ!!」


 
 トーレスはグラスを高々と掲げ、満面の笑みで堂々と叫ぶ。


 
「スピード?パワー?テクニック? ――全部ひっくるめて、最強の“球体”になる!!それが俺のロマンだ!!」

「ロマンで突っ込んでくんなよ!!!」



 俺の全力ツッコミが炸裂し、再びテーブルが爆笑の渦に包まれる。

 だがトーレスはどこ吹く風、筋肉を誇示するように腕を組み、誇らしげに語り続ける。


 
「俺はな……“ゴールに向かう意思”そのものになりたかったんだ。相手をかわす技術?違う。吹き飛ばすんだ、全部!!」

「それで俺、上空に飛ばされたんだけど!?お前の“意思”で!!!」


 
 ツッコミと笑いの応酬に、テーブルの他のワールドクラスたちも笑いをこらえきれない。

 エンリケがワインをくるくる回しながら、クスリと笑って言った。


 
「ふふ……芸術の極致だな。自分が作品になる”という意味では、俺もトーレスに少し共感するぜ。」

「え、そこ共感すんの!?」


 

 そこにアントニオがグラスを片手にスッと割り込んできた。


 
「でも正直……僕がスペインと当たってたら――負けてたよ。」

「え?」



 雷丸も思わず真顔になる。

 アントニオは肩をすくめながら、驚くほど真剣な顔で続けた。


 
「だってさ、いくら未来が見えたって――“止める手段がない”んだよ、あれ」


 
 沈黙。

 そして。


 
「僕、テレビで“転がる闘牛”初めて見た時、本気で震えたもん。『あぁ……違うブロックでよかった……』って、心の底から安心した」


 
 その瞬間、テーブル中が爆笑に包まれた!

 

「未来視が敗北を認めた!!」
「世界の頂点が本気でビビってた!!」
「やっぱトーレス、ある意味最強!!」


 
 アントニオは冗談でも誇張でもなく、本気で言ってるのがまたおかしい。

 トーレスはといえば、笑いながら豪快に肩を組みにいき、「そりゃそうだろう!」とドヤ顔全開。

 

「“転がる闘牛”は進化する!次は火を吹くかもな!」

「やめろ!国際問題になる!!」



 再び笑いが爆発する中、俺はにやりと笑って続けた。


 
「よし、じゃあ次は――アントニオ!お前の“神視の未来”って、具体的にどこまで見えてんだ?」


 
 俺の問いかけに、場の空気が少しだけピリッと引き締まる。周囲の会話が自然と止まり、全員の視線がアントニオに集まった。

 

 その“太陽の王子”は、一瞬だけ視線を伏せ、グラスの中で揺れる水面をじっと見つめていた。やがて、少しだけためらいがちに口を開く。

 

「…………話してもいいけど……引かないでね?」

 

 その声は、いつもの余裕たっぷりな彼とはまるで別人のように、慎重で静かだった。

 

「空間支配は……まぁ、コート全域を“視える”って感じ。動線、位置取り、戦術パターン、選手の選択肢――全部同時に脳内でシミュレーションできる」
 

「ふむふむ、そこまではわかる。問題は感情共鳴の方だな?」

 

 俺が身を乗り出して聞くと、アントニオは少し苦笑しながら頷いた。

 

「ぶっちゃけると……“全部わかる”よ」

「全部?」

 

「考えてること、無意識の本音……好きな人、嫌いな人、誰を信用してないか、何に怯えてるか――ぜんぶ」

 

 俺は思わず椅子をガタンと引いてのけぞった。

「こっわ!!!」

 

 隣にいたエンリケもグラス片手に、「……それは創作よりも怖い世界だな」と苦笑する。

 

 アントニオは肩をすくめ、冗談めかして続けた。

 

「だから基本的には“空間支配”だけにしてるんだ。ポジションや戦術なら、まだ楽しく見ていられる。……でも“感情共鳴”は違う。人の心って、良いことばかりじゃないからさ」

 

 その言葉に、場の空気が一瞬だけ静まりかけた――

 

 と、そこにエンリケがふっと笑って言った。

 

「おい雷丸、さっきから“トイレ行きたいけどタイミング逃してる”って思ってるのもバレてるぞ?」

 

「いやそこまで読むなぁぁぁ!!!」

 

 俺が全力でツッコミを入れると、テーブル中に笑いが弾けた。どっと笑い声が上がり、重くなりかけていた空気が一気に和らぐ。

 

 でも俺は、アントニオの話を聞いて――なんとなく分かった気がした。

 天才ってやつは、孤独だ。

 異常な能力を持つ者は、時に理解されず、奇人扱いされる。けど、それでも俺たちは“ワールドクラス”っていう異端者たちの集まりだ。

 だからこそ――同じテーブルで、同じグラスを掲げられるんだ。

 

 アントニオは、そんな仲間たちを見つめながら――少しだけ、いや確かに、心から救われたような笑みを浮かべた。

 

 その時、ヴォルカーノがゆっくりと立ち上がる。

 あの巨体からは想像もできないほど静かに、しかし堂々とグラスを高く掲げた。

 

「――じゃあ、これからもお前の未来、かき乱してやるよ。俺たちらしくな」

 

 その言葉に、アントニオがふっと微笑み、短く、けれど力強く頷いた。

 

「……うん」 

 

 その一言に、全員がグラスを掲げ、テーブルの上に祝杯の音がカチリと響いた。

 その余韻を切り裂くように、俺は勢いよく声を上げた。

 

「――じゃあ次はヴォルカーノ!!」

 

 ピクリと動く巨神の眉。

 

「お前は野球選手に転向しろ!!なんでサッカー選手なのに160キロ超えの速球投げられるんだよ!」

 

 場が一瞬沈黙したあと――

 

「ブハハハハハハ!!!」
「言えてる!!」
「確かにあの肩は野球向きだな」

 

 会場が爆笑に包まれた。

 

 ヴォルカーノは分厚い胸板を揺らしながらも、ゆっくりと顎を上げて、どこか遠い目で呟いた。

 

「……少年時代、山の岩を遠投していたら、いつの間にかこうなっていた」

 

「いや育成環境どうなってんだよ!?」
「岩って何!?重さの単位じゃなくて石そのもの!?」
「トレーニングがスケール違いすぎる!!」

 

 ツッコミが止まらない中、ヴォルカーノは静かに付け加える。

 

「確かに、野球の才能もあるのかもしれん……だが、才能と“やりたいこと”は別だ。俺は――サッカーを愛している」

 

 その真っ直ぐな言葉に、一瞬だけ皆が感心する。

 

 ――が。

 

「ただ……バットではなく、“骨付き肉”を振るうのならば、話は別だ」

 

 真顔で放たれたその一言に――

 

「おいおい、どこの原始人リーグだよ!!」
「ひよっとして、試合前に“焼くかどうか”から始まるのか?」
「さすがヴォルカーノ!筋肉で文明退化してる!」



 爆笑再来。完全にツッコミが追いつかないカオス状態。

 

 そこへエンリケが、ワイングラスをくるくる回しながらぽつりと呟く。

 

「ヴォルカーノ、メジャーリーグに行って“巨神ボンバー”って名乗ってくれ」

 

 それにヴォルカーノが、ごく自然なテンションで頷きながら返す。

 

「……その名、気に入った。サッカーを引退したら検討しよう」

 

「いや……やる気あんのかよ!!」

 

 全員がずっこける中、ヴォルカーノだけはいたって真剣だった。

 

 そして――俺は次の矛先を向ける。

 

「よし、次!――エンリケ!お前の“異次元ボールタッチ”、あれマジでなんなんだ!? お前の頭の中、どうなってんの!?」

 

 周囲の視線が一斉にエンリケ・マルティネスに集まる。

 

 当の本人はというと、ワイングラスを静かに傾けながら、いつものクールな微笑を浮かべていた。

 

「ボールタッチについては……感覚に近い。俺にとってボールは“道具”じゃない。――“身体の一部”さ」

 

 その静かな一言に、全員が一瞬「お、おう……」と圧される。

 

「イメージがあれば、触れた瞬間に“こう動け”って伝わる。踵でも、背中でも、肘でも……皮膚が言葉の代わりになる」

 

 そう言いながら、指先をくるりと宙に舞わせるように回す。その所作すら芸術的に見えた。

 

「あと、頭の中……プレーは“即興”じゃない。“計算”に近いよ」

「は? 計算してやってんのか!?」

 

 俺が素っ頓狂な声を上げると、エンリケは小さく頷く。

 

「リズムを作るのも、相手の重心をズラすのも、全部“出鱈目”に見えて、実は順序と理屈がある。ランダムじゃない、想像の再現だよ」

 

 アントニオが感心したように呟く。

 

「なるほど……センスだけじゃない。論理と感性の融合ってわけか。君の脳内、少しだけ覗いてみたくなるよ」

 

 「やめとけ、お前の未来視でもバグるわ!」と誰かが茶々を入れると、場がまた笑いに包まれる。

 

 俺も両手を挙げてギブアップ。

 

「いや~~~天才の頭の中って、ほんとに怖ぇな!!!」



 その一言で、会場は再び大笑い。


 
「でもさ……」とエンリケは、ほんの少し視線を落としてから、ふと笑って続けた。

 

「“楽しそうにやってる”雷丸のプレーを見て、ちょっと羨ましいなって思ったよ」

 

 その言葉に、少し驚く。

 

「俺のは完成度を追う“芸術”だけど……君のは、“遊び”の延長にある“創造”だろ? それって……最強じゃないか?」

 

 グラスを掲げるエンリケ。

 

「だから――今度は俺も、“楽しむ”ってやつに挑戦してみようと思う」

 

 その宣言に、俺は笑ってグラスをぶつけ返した。

 

「じゃあ決まりだな。次の試合、全員“バカになって”サッカーやろうぜ」

 

 その言葉に、「賛成!」「それが一番だな」「ハーレム王らしいぜ!」と笑いが弾け、テーブルが一気に盛り上がる。

 

 トーレスも腕を組みながらニヤリと笑い、

 

「じゃあ俺も、“闘牛ステップ”って技を作るかな」とポツリ。

 

 すかさずエンリケが、「トーレスがやれば、それもう“破壊魔法”だろ」とツッコミ。

 

 すると今度は、ヴォルカーノが真剣な顔で提案してくる。

 

「では……“石壁の肉砲”というのは、どうだ?」

 

 俺はすかさず叫んだ。

 

「いやもう意味わかんねぇよ!お前それ、壁なの?砲なの?肉なの!?」

 

 爆笑が巻き起こり、もはやテーブルは完全に宴会モードに突入していた。

 

 “世界の中心”で繰り広げられる、ワールドクラスのバカ話。

 

 それは、ただのギャグじゃなく――笑いと絆を深めていく最高の時間だった。

 

 各国のスター選手たちも、気づけばサッカーという言語を越えて、“仲間”としてひとつになっていた。

 

 俺もまた、その真っ只中に溶け込んでいく。

 

 そうだ――

 

 世界には、こんな面白い奴らがいる。

 こんなふざけたヤツらが、世界を熱くしてる。

 

 サッカーって……やっぱ、すげぇスポーツだな。


 

 ――――――――――――――――



 

 パーティーも終盤に差しかかり、会場の片隅で、俺たちはそれぞれスマホを取り出し始めていた。

 

「またいつか、みんなで会おうぜ!」

 

 そんな自然な一言がきっかけで、ワールドクラスの猛者たちと連絡先を交換する流れに。スマホを差し出し合ってLINEを開く様子は、どう見てもただの「友達づくり」。だけど――そのメンツがやばすぎるってのが、笑えるポイントだった。

 

 世界の頂点に立つエースたちが、真剣な顔で「ID検索」してるとか、誰が想像したよ。

 

 その中でもひときわ目立ってたのが、ヴォルカーノ。

 

 ゴツすぎる指でスマホを必死にタップするも、画面が揺れるたびに、周囲から爆笑が起きる。

 

「石壁でもスマホは無理か?」とか言われながら、機械に苦戦する巨神。

 

 結局、俺が代わりに打ち込んでやることになった。

 

「……ありがとうな」

 

 そう言って、ヴォルカーノが満足げに笑うと、他の連中も「友情の証だな!」「お前らいいコンビすぎるだろ!」とツッコミが飛び交う。

 

 一方、トーレスは俺の手をガッシリと握って、

 

「じゃあ次は、俺の地元で“闘牛大会”な」

 

 と超笑顔で宣言。何そのノリ。

 

 でも、「行く行く!」「やるなら“玉乗り部門”も用意しろ!」なんて言いながら、みんなで爆笑する。

 

 エンリケも「じゃあ俺はその様子を油絵にして展示する」とか言い出すし、アントニオは「その未来、今から見たいわ」ってキラキラ笑ってるし、もう全員ノリが最高潮だった。

 

 最後は全員でガッツポーズ。

 

「また会おうぜ!!」

 

 ――そう言い合いながら、それぞれの国へと帰っていった。

 

 次に会うのが戦いの場か、またこんな風に笑い合う夜か――どっちでもいい。

 

 俺たちは、世界を全力で走った“仲間”だ。



 
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