異世界帰りのハーレム王

ぬんまる兄貴

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第163話 富士の樹海1

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 成田空港から車を乗り継ぎ、ようやく――俺たちは帰ってきた。

 ここ、伊集院家に。

 

 ワールドカップ優勝という栄冠を引っさげて、ハーレム王・飯田雷丸、凱旋帰宅ッ!!!

 

「……ふぅ~~~~」

 

 豪奢なダイニングルームにどっかりと腰を下ろし、俺はそのまま背もたれに体を預けた。

 

「はぁ~~……やっぱここが一番落ち着くわぁ……」

 

 この椅子、この空間、この空気。全身が“おかえり”って言ってくれてるみてぇだ。

 

「お疲れ様、飯田君。疲れたでしょ? お茶、淹れてあげるわね」

 

 そう言って、テーブルに湯気の立つ湯呑を置いてくれるのは麗華だ。

 気品に満ちた所作で差し出されるその一杯――ありがてぇ、心に染みる……!

 
 その瞬間、後ろから――

 

「お兄ちゃん、お疲れさま~っ!」

 

 貴音がにゅっと背後から現れ、そのまま俺の肩をグリグリと揉み始めた。

 

「へへっ、疲れてるの分かってるもんね!ほぐしてあげる~!」

「おぉぉ……あぁ~~そこそこ、そこだ、貴音……マジで気持ちいい……!」

 

 絶妙な指圧。もしかしてこいつ、プロか?

 

 そんな癒しのコンボが決まっているところに――

 

「羊羹も切りましたよ~」

 

 トコトコとやってきたのは雪華。上品な菓子皿に乗せられた羊羹を、みんなの前にそっと並べてくれる。


 
「ナイスだ雪華!」

 

 さっそく俺は麗華のお茶と一緒に口に運ぶ。

 

 ――んん~~~~!!甘さ控えめ、口どけ上品、最高のマリアージュ!

 

「あー……世界一の男になってよかった……」

 

 と、思わず天を仰ぐ俺の前で――

 

「……改めて、雷丸君」

 

 ふと、ダイニングの空気がふわりと和らいだ。

 静香さんが湯呑をそっと置き、優しい微笑みを浮かべながらこちらを見つめていた。

 

「ワールドカップ優勝、おめでとう。本当にすごかったわね」

 

 その言葉には、ただの労いだけじゃない――心の底からの“誇り”がにじんでいた。

 柔らかな黒髪が陽の光に揺れ、見守るような眼差しがまっすぐに俺を包み込む。

 

 まるで母のように優しくて、でもそれだけじゃない――静香さんにしか出せないあたたかさが、そこにあった。

 

 その眼差しに包まれながら、俺は一瞬だけ言葉を失って――でも、すぐに胸を張って応えた。

 

「……ありがとう。静香さん。俺、やったよ。世界に“飯田雷丸あり”って、叩きつけてきた」

 

 その瞬間――

 

「わしもテレビの前で叫んだぞ! “いけ!雷丸!”っての!まったく、派手にかましてきおったわ!」

 

 焔華が椅子をガタンと引き、乗り出してくる。頬を紅潮させ、まるで我が子を褒めるような勢いで。

 

 俺は肩をすくめ、苦笑しながら言い返す。

 

「おう!かましてきたぜ!ブラジルのピッチで、全力でな!」

 

 その言葉に、焔華は満足そうにうなずき、静香さんはふっと目を細め、湯呑に口をつけた。

 

 茶の香りが鼻を抜ける。心地いい和の空気が、畳の上にゆっくりと広がっていく。

 

 ふと気づけば、周囲には――俺の“家族”がいた。

 焔華、雪華、静香、麗華、貴音。

 みんなが穏やかな笑みを浮かべながら、俺の“帰還”を受け入れてくれていた。

 

「雷丸様、ワールドカップ優勝により、あなたの影響力はもはや国家規模……いえ、国際規模です。今や“伊集院家の切り札”を超えた存在でしょう」

 

 雪華が、落ち着いた声音で言う。

 

「その通りだ、雪華! 俺がツイートすれば世界が動く時代だ。#ハーレム王を守れ――このタグ一つで、地球がひとつになる!」

 

 胸を張って豪語すると、静香さんが思わず吹き出し、穏やかに微笑んだ。

 

「……本当に、あなたの言葉ひとつで世界がざわつくようになったのね。雷丸君。もう、あなたは伊集院家だけの存在じゃないのよ」

 

 その言葉に、俺は小さくうなずく。

 

 と、その横で――

 

「お兄ちゃん、本当にすごい!」

 

 貴音が、きらきらとした目で俺を見上げる。小麦色の頬を赤らめながら、目を輝かせていた。

 

「世界中が、お兄ちゃんを応援してるんだよね? ハーレム王って……すごく、かっこいいことなんだなって……!」

 

 ――やっと分かったか。

 

「これからも俺がハーレム王として、伊集院家も、ハーレムも――ぜーんぶ守ってやる!」

 

 その宣言に、全員が微笑み、力強くうなずいた。

 

 甘く、渋く、そして確かにあたたかいお茶の時間。

 

 茶の香に包まれながら――俺たちの物語は、また次の一歩を踏み出そうとしていた。

 

 和の静けさの中に、確かに息づく熱――

 ハーレム王・飯田雷丸、次なる章へ、準備万端だ。



 

 ――――――――――




「で、日本はどうなってんだ?俺がいない間に何かあったか?」



 俺がのんびりと聞くと、麗華があっさりと答えた。


 
「黒瀬が正式に総理大臣になったわ。」

「……まじか!!」



 驚きで顔が固まる。――けどまぁ、あの冷徹さとカリスマ性からして、いずれそうなるとは思ってたんだよな。しみじみと納得しつつも、一方で頭の中にはとんでもない事実が浮かび上がってくる。

 

 鳥丸天道、『10兆円の大富豪』。

 黒瀬禍月、『日本の総理大臣』。

 そして俺、『最強インフルエンサー』。


 富・政治・ネットの三大勢力でバチバチに張り合うって、もうこれは異世界どころか、どこかの漫画のラスボス集結回みたいじゃねぇか!?


 でも、同時に俺はホッともしてたんだ。伊集院家は妖怪を匿ってるから、黒瀬が総理大臣になった今、すぐにでも圧力をかけてきてもおかしくない。でも、そこには最強のインフルエンサー――この俺がいる。ギリギリで間に合って、伊集院家を守る準備も整ったってわけだ。

 
「ギリギリセーフだぜ……!」と小さくガッツポーズを決める俺に、麗華やみんなが不安そうに見ているが、俺は気にしない。今や日本どころか世界を動かす力を持ってるってわけだしな。

 
「よし、こうなったら全力でSNSを使って世界を味方につけるしかねぇ!」と俺が宣言すると、貴音が「お兄ちゃん、かっこいい!」とキラキラした目で見てくる。

 
「えぇ、私たちも飯田君の背中を押すわ!」と麗華や雪華、焔華もニコニコ応援ムードで見てくれて、なんだか俄然やる気が湧いてきた。


 
「よし!今すぐ『#ハーレム王の決意』でトレンド入りだ!みんな、ついてこいよ!」



 俺が気合を入れて言うと、全員が「もちろん!」と応えてくれた。なんだか胸が熱くなってきたぜ。


 三つ巴だろうが、黒瀬が総理だろうが、鳥丸が大富豪だろうが――俺は俺のハーレムも、仲間も、伊集院家も、絶対に守ってみせる!




 ――――――――――――



 黒瀬禍月は、首相官邸の重厚なデスクに山積みの書類と格闘していた。目の下には隠せない疲れのクマがちらり。ところがその時、彼のスマホが突然、激しい通知音を響かせた。ふと画面に目を向けると――


 
「……なんだと?」



 トレンド1位に輝く文字が彼の視界に飛び込んできた。「#ハーレム王の決意」


 
「ば、バカな……!?私のトレンド『#イケメン過ぎる総理大臣黒瀬禍月』が抜かれただと?」



 普段は冷静な黒瀬も、この状況にスマホを握りしめ、歯を食いしばって悔しがっている。彼の目に飛び込んできたのは、雷丸の堂々たる投稿。


 
「俺のハーレムは絶対に守る!総理大臣だろうと、10兆円の富豪が相手だろうと、絶対にな!!」

「くっ……ハーレム?決意?……何を決意するっていうんだ、飯田雷丸……」



 黒瀬の手が震え、持っていたペンが床に落ちる。



「まさか私よりも注目される存在がいるとは……!」



 焦りと怒りが入り交じる中、彼は何か決意したようにパソコンを打ち始めた。


 
「#ハーレム王 私は日本のイケメン過ぎる総理大臣黒瀬禍月だ。――――宣戦布告か?」



 黒瀬の冷ややかな一手が放たれたその時、一方の鳥丸天道はラグジュアリーなスイートルームでワイン片手に優雅なひと時を過ごしていた。柔らかなジャズが流れる中、彼もまた「#ハーレム王の決意」の通知を見て、ニヤリと笑う。


 
「ふふっ、まるで自分がヒーローだと思っているようだね、雷丸君。」



 鳥丸はスマホを手に、おもむろに動画を撮り始める。画面には豪華なスーツを身にまとった彼が、「#ハーレム王 宣戦布告と受け取った」と表示された画面を前に、お札ばら撒き銃で札束を豪快にばら撒いている。華麗な札束のシャワーを背に、彼は冷ややかに言い放った。


 
「さぁ、雷丸君。君の”決意”とやらに、お札で答えてやろうじゃないか。これが本物の”決意”ってもんさ。」



 彼らの投稿は瞬く間に拡散され、SNS上には「#ハーレム王VS総理大臣VS謎の札束マシンガン」といったタグが次々に誕生。ネットはさらなる盛り上がりを見せ、黒瀬も鳥丸も、「ハーレム王」として注目を集める雷丸に対抗心を燃やし始めたのだった。


 
「まさか……二人がこんなことでムキになるなんてな……」と、SNSのトレンドを見た雷丸はにやりと笑い、画面に向かって一言つぶやいた。


 
「総理も富豪も関係ねぇ。俺はハーレム王だ、決意があるならかかってこい!」


 
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