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第171話 富士の樹海9
しおりを挟む霧羽の回想が終わった瞬間、俺は拳をぎゅっと握りしめていた。その話のあまりの酷さに、胸の奥から感情が沸き上がり、ついに抑えきれず叫ぶ。
「美人にそんなことするなんて、許せねぇ!!」
「そこ!?」
全員が一斉にツッコんでくる。
「雷丸様!お話、ちゃんと聞いていましたか?今の大事なテーマは“人間と妖怪の共存”ですよ!美人の話じゃないです!」
雪華が慌てて指摘するが、俺は胸を張って言い返した。
「聞いてたよ!聞いてたけど、共存とか言う前に、まず美人を大事にするのが基本だろ?」
麗華がため息をつきながら、冷静に口を開いた。
「またそういう方向で怒ってるのね。本当に美人のことしか頭にないのね、飯田君。」
だが俺は全く気にせず、そのまま続けた。
「誰が相手だろうと、美人にはもっとこう、大事にするとか、手厚く扱うとか……そういうのが礼儀ってもんだろ! 美人を雑に扱うなんて、人として……いや、天狗としてどうかしてるぜ!」
「根本からズレてるわね……」と麗華はさらに呆れたように言ったが、俺は堂々と胸を張って答えた。
「当たり前だろ!俺の“美人保護の精神”は世界一だからな!」
俺の堂々とした宣言に麗華がさらに呆れたような顔をするが、そんなこと気にしている場合じゃない。
すると、焔華が腕を組みながら真剣な表情でうなずいた。
「まぁ、確かに美人は大切にせねばならんのぉ。それは天狗界でも同じことじゃ。」
その言葉に、俺は焔華に向かって親指を立てた。
「だろ!?焔華、お前もよくわかってるじゃねぇか!」
「うむ、美人は財産じゃからのぉ。大事にせねばならん!」
焔華の堂々とした発言に、貴音が小さく拍手しながら笑顔で続けた。
「そうだよ!美人さんはみんなの宝物だもんね!」
雪華が「雷丸様、すっかり話が美人の方向に進んでますけど、本当にそれでいいんですか?」と問いかける。
俺は雪華の言葉に真剣な表情を作り、力強く答えた。
「いいんだよ!美人を大事にすることが、共存の第一歩だ!」
俺が自信満々に言い切った瞬間、雪華と麗華は顔を見合わせてから、同時に深いため息をついた。
「本当に救いようがないわね……」と麗華が呟き、雪華は微笑みながら、「雷丸様らしい発想ですね」と半ば諦めた声を漏らす。
その微妙な空気の中、霧羽はぽかんとした表情で俺たちを見つめていた。
「……お前たちは……なんと言うか……」
霧羽が口を開いたが、言葉を探しているように口ごもる。その表情は困惑と戸惑いが混じり合っていて、まるで「こんな奴らに関わって大丈夫なのか?」と考えているかのようだ。
「……奇妙な連中だな。」
最終的にそうぽつりと漏らす霧羽の声には、どこか本音が滲み出ていた。
「奇妙ってなんだよ!俺たちのどこが変だってんだ!?」と俺が抗議すると、麗華が冷静に「すべてよ」と即答してくる。
「俺のどこが変なんだよ!?美人を大事にしようって言ってるだけじゃん!」
「その『美人』がどうとかっていう基準が変なのよ。そもそも共存の話からどうしてそこに飛ぶの?」と麗華が鋭く返してくるが、俺は全く意に介さない。
そのやり取りを見ていた霧羽が小さく吹き出し、くすくすと笑い始めた。
「こんなにも騒がしくて自由な連中と会ったのは初めてだ。……正直、少し驚いている。」
その言葉に、俺は得意げに胸を張る。
「だろ?俺たちはただの集団じゃねぇ!妖怪も人間も関係なく、全員が一つのファミリーなんだよ!」
俺はその言葉に自信を込めながら、意を決して一歩前に踏み出し、まっすぐ霧羽の目を見据えた。
「なぁ霧羽、俺はお前が信じた“共存”の夢を応援するぜ!お前の信念が間違ってるなんて、俺には思えねぇ。それに、俺のハーレムに美人の天狗がいてくれたら、最高に心強いしな!」
俺の言葉に、霧羽は困惑したような表情を浮かべながらも、じっと俺の顔を見つめている。
隣では雪華が小さく拍手しながら、少し感心したように微笑んでいた。
「あ、話はちゃんと聞いてたんですね。雷丸様にしては珍しいです。」
「だろ?俺、聞くときはちゃんと聞く男だからな!」
俺が得意げに答えると、麗華が冷たい視線をこちらに向けてくる。
「なら、もう少しまともな表現で締めくくればいいのに。」
その一言に俺は一瞬むっとしたが、反論する暇もなく、霧羽が少しだけため息をつきながら小さな声で呟いた。
「……いいのか…………?」
その言葉に俺はピクリと反応し、霧羽を見る。彼女はまだ迷いを抱えているのかもしれないが、それでも決意を固めたようにゆっくりと手を差し出してきた。
その手は白く繊細だが、どこか力強さも感じさせる。そして、その瞳には確かな決意が宿っていた。
俺は一瞬その手を見つめた後、ニヤリと笑って力強く答えた。
「当たり前さ!!」
そう言いながら、霧羽の差し出した手をガシッと握りしめる。俺の手に伝わるその温かさが、彼女の信念の重さを物語っているようだった。
「俺たちで、共存する未来を作っていこうぜ!」
俺の言葉に霧羽はわずかに驚いた表情を見せたが、やがて微笑みを浮かべた。その微笑みは、これまでの冷たさや威厳を感じさせるものとは違い、どこか人間らしい温かさを含んでいた。
「……ふふ、変わった人間だな。……宜しく頼む。」
その言葉に、俺たち全員が安堵の表情を浮かべた。
「よっしゃあ!これで俺たちのファミリーに美人天狗が加わったぜ!」
俺が歓喜の声を上げた瞬間、霧羽がじとっとした目でこちらを見ながら冷静に言った。
「いや、その……ハーレム?とやらには入った覚えがないのだが……」
「なにぃ!?」
俺は驚愕の声を上げ、思わず霧羽の方へと詰め寄った。
「じゃあさ!研修生でもいいから!ハーレム研修生!それでどうだ!?」
全力で訴える俺に、霧羽は少し引いたような表情を浮かべながら、一歩後ずさった。
「……研修生、とは一体どういうことだ?」
「簡単なことだよ!俺のハーレムを体験して、気に入ったら正式メンバーになるって感じ!ほら、試用期間ってやつだ!」
自信満々で説明する俺を見て、麗華がため息をつきながら額に手を当てた。
「本当に、飯田君ってどうしてこう……いえ、もはや聞くだけ無駄ね。」
一方で焔華は腕を組んで、「ほほう、ハーレム研修生か。面白い考えじゃのぉ!」と妙に感心している。
霧羽は眉をひそめながら少し考え込み、そして呆れたように言った。
「……よくわからないが、とりあえず様子を見るという意味ならば、それでもいいだろう。」
「よっしゃあ!!研修生ゲットォォォォ!!!」
俺は天に向かって拳を突き上げ、大声で叫んだ。
「お兄ちゃんおめでとう!!」
貴音がにこにこと笑いながら拍手を送ってくれる。その純粋な反応に、俺も思わず得意げな顔になる。
すると、焔華が腕を組みながら霧羽をじっと見つめた後、「よし!研修生というからには、ビシバシ鍛えていくぞ!わしの指導は厳しいぞ、覚悟するんじゃ!」と、突然意気込んで宣言した。
「おい、焔華!そんなことしたら研修生が逃げちまうだろ!」
俺が慌てて焔華にツッコむと、焔華は肩をすくめて笑いながら、「なに、厳しさの中にこそ真の成長があるんじゃ!」とどこか誇らしげに言い返してきた。
「……本当に不思議な集団だな。」
そう呟く彼女の表情には、どこか柔らかな笑みが浮かんでいた。俺は内心、これで完全に心をつかんだなと確信していた――いや、研修生から正規メンバーまでの道のりは近いぞ!
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