171 / 189
第171話 富士の樹海9
しおりを挟む霧羽の回想が終わった瞬間、俺は拳をぎゅっと握りしめていた。その話のあまりの酷さに、胸の奥から感情が沸き上がり、ついに抑えきれず叫ぶ。
「美人にそんなことするなんて、許せねぇ!!」
「そこ!?」
全員が一斉にツッコんでくる。
「雷丸様!お話、ちゃんと聞いていましたか?今の大事なテーマは“人間と妖怪の共存”ですよ!美人の話じゃないです!」
雪華が慌てて指摘するが、俺は胸を張って言い返した。
「聞いてたよ!聞いてたけど、共存とか言う前に、まず美人を大事にするのが基本だろ?」
麗華がため息をつきながら、冷静に口を開いた。
「またそういう方向で怒ってるのね。本当に美人のことしか頭にないのね、飯田君。」
だが俺は全く気にせず、そのまま続けた。
「誰が相手だろうと、美人にはもっとこう、大事にするとか、手厚く扱うとか……そういうのが礼儀ってもんだろ! 美人を雑に扱うなんて、人として……いや、天狗としてどうかしてるぜ!」
「根本からズレてるわね……」と麗華はさらに呆れたように言ったが、俺は堂々と胸を張って答えた。
「当たり前だろ!俺の“美人保護の精神”は世界一だからな!」
俺の堂々とした宣言に麗華がさらに呆れたような顔をするが、そんなこと気にしている場合じゃない。
すると、焔華が腕を組みながら真剣な表情でうなずいた。
「まぁ、確かに美人は大切にせねばならんのぉ。それは天狗界でも同じことじゃ。」
その言葉に、俺は焔華に向かって親指を立てた。
「だろ!?焔華、お前もよくわかってるじゃねぇか!」
「うむ、美人は財産じゃからのぉ。大事にせねばならん!」
焔華の堂々とした発言に、貴音が小さく拍手しながら笑顔で続けた。
「そうだよ!美人さんはみんなの宝物だもんね!」
雪華が「雷丸様、すっかり話が美人の方向に進んでますけど、本当にそれでいいんですか?」と問いかける。
俺は雪華の言葉に真剣な表情を作り、力強く答えた。
「いいんだよ!美人を大事にすることが、共存の第一歩だ!」
俺が自信満々に言い切った瞬間、雪華と麗華は顔を見合わせてから、同時に深いため息をついた。
「本当に救いようがないわね……」と麗華が呟き、雪華は微笑みながら、「雷丸様らしい発想ですね」と半ば諦めた声を漏らす。
その微妙な空気の中、霧羽はぽかんとした表情で俺たちを見つめていた。
「……お前たちは……なんと言うか……」
霧羽が口を開いたが、言葉を探しているように口ごもる。その表情は困惑と戸惑いが混じり合っていて、まるで「こんな奴らに関わって大丈夫なのか?」と考えているかのようだ。
「……奇妙な連中だな。」
最終的にそうぽつりと漏らす霧羽の声には、どこか本音が滲み出ていた。
「奇妙ってなんだよ!俺たちのどこが変だってんだ!?」と俺が抗議すると、麗華が冷静に「すべてよ」と即答してくる。
「俺のどこが変なんだよ!?美人を大事にしようって言ってるだけじゃん!」
「その『美人』がどうとかっていう基準が変なのよ。そもそも共存の話からどうしてそこに飛ぶの?」と麗華が鋭く返してくるが、俺は全く意に介さない。
そのやり取りを見ていた霧羽が小さく吹き出し、くすくすと笑い始めた。
「こんなにも騒がしくて自由な連中と会ったのは初めてだ。……正直、少し驚いている。」
その言葉に、俺は得意げに胸を張る。
「だろ?俺たちはただの集団じゃねぇ!妖怪も人間も関係なく、全員が一つのファミリーなんだよ!」
俺はその言葉に自信を込めながら、意を決して一歩前に踏み出し、まっすぐ霧羽の目を見据えた。
「なぁ霧羽、俺はお前が信じた“共存”の夢を応援するぜ!お前の信念が間違ってるなんて、俺には思えねぇ。それに、俺のハーレムに美人の天狗がいてくれたら、最高に心強いしな!」
俺の言葉に、霧羽は困惑したような表情を浮かべながらも、じっと俺の顔を見つめている。
隣では雪華が小さく拍手しながら、少し感心したように微笑んでいた。
「あ、話はちゃんと聞いてたんですね。雷丸様にしては珍しいです。」
「だろ?俺、聞くときはちゃんと聞く男だからな!」
俺が得意げに答えると、麗華が冷たい視線をこちらに向けてくる。
「なら、もう少しまともな表現で締めくくればいいのに。」
その一言に俺は一瞬むっとしたが、反論する暇もなく、霧羽が少しだけため息をつきながら小さな声で呟いた。
「……いいのか…………?」
その言葉に俺はピクリと反応し、霧羽を見る。彼女はまだ迷いを抱えているのかもしれないが、それでも決意を固めたようにゆっくりと手を差し出してきた。
その手は白く繊細だが、どこか力強さも感じさせる。そして、その瞳には確かな決意が宿っていた。
俺は一瞬その手を見つめた後、ニヤリと笑って力強く答えた。
「当たり前さ!!」
そう言いながら、霧羽の差し出した手をガシッと握りしめる。俺の手に伝わるその温かさが、彼女の信念の重さを物語っているようだった。
「俺たちで、共存する未来を作っていこうぜ!」
俺の言葉に霧羽はわずかに驚いた表情を見せたが、やがて微笑みを浮かべた。その微笑みは、これまでの冷たさや威厳を感じさせるものとは違い、どこか人間らしい温かさを含んでいた。
「……ふふ、変わった人間だな。……宜しく頼む。」
その言葉に、俺たち全員が安堵の表情を浮かべた。
「よっしゃあ!これで俺たちのファミリーに美人天狗が加わったぜ!」
俺が歓喜の声を上げた瞬間、霧羽がじとっとした目でこちらを見ながら冷静に言った。
「いや、その……ハーレム?とやらには入った覚えがないのだが……」
「なにぃ!?」
俺は驚愕の声を上げ、思わず霧羽の方へと詰め寄った。
「じゃあさ!研修生でもいいから!ハーレム研修生!それでどうだ!?」
全力で訴える俺に、霧羽は少し引いたような表情を浮かべながら、一歩後ずさった。
「……研修生、とは一体どういうことだ?」
「簡単なことだよ!俺のハーレムを体験して、気に入ったら正式メンバーになるって感じ!ほら、試用期間ってやつだ!」
自信満々で説明する俺を見て、麗華がため息をつきながら額に手を当てた。
「本当に、飯田君ってどうしてこう……いえ、もはや聞くだけ無駄ね。」
一方で焔華は腕を組んで、「ほほう、ハーレム研修生か。面白い考えじゃのぉ!」と妙に感心している。
霧羽は眉をひそめながら少し考え込み、そして呆れたように言った。
「……よくわからないが、とりあえず様子を見るという意味ならば、それでもいいだろう。」
「よっしゃあ!!研修生ゲットォォォォ!!!」
俺は天に向かって拳を突き上げ、大声で叫んだ。
「お兄ちゃんおめでとう!!」
貴音がにこにこと笑いながら拍手を送ってくれる。その純粋な反応に、俺も思わず得意げな顔になる。
すると、焔華が腕を組みながら霧羽をじっと見つめた後、「よし!研修生というからには、ビシバシ鍛えていくぞ!わしの指導は厳しいぞ、覚悟するんじゃ!」と、突然意気込んで宣言した。
「おい、焔華!そんなことしたら研修生が逃げちまうだろ!」
俺が慌てて焔華にツッコむと、焔華は肩をすくめて笑いながら、「なに、厳しさの中にこそ真の成長があるんじゃ!」とどこか誇らしげに言い返してきた。
「……本当に不思議な集団だな。」
そう呟く彼女の表情には、どこか柔らかな笑みが浮かんでいた。俺は内心、これで完全に心をつかんだなと確信していた――いや、研修生から正規メンバーまでの道のりは近いぞ!
0
あなたにおすすめの小説
最弱無双は【スキルを創るスキル】だった⁈~レベルを犠牲に【スキルクリエイター】起動!!レベルが低くて使えないってどういうこと⁈~
華音 楓
ファンタジー
『ハロ~~~~~~~~!!地球の諸君!!僕は~~~~~~~~~~!!神…………デス!!』
たったこの一言から、すべてが始まった。
ある日突然、自称神の手によって世界に配られたスキルという名の才能。
そして自称神は、さらにダンジョンという名の迷宮を世界各地に出現させた。
それを期に、世界各国で作物は不作が発生し、地下資源などが枯渇。
ついにはダンジョンから齎される資源に依存せざるを得ない状況となってしまったのだった。
スキルとは祝福か、呪いか……
ダンジョン探索に命を懸ける人々の物語が今始まる!!
主人公【中村 剣斗】はそんな大災害に巻き込まれた一人であった。
ダンジョンはケントが勤めていた会社を飲み込み、その日のうちに無職となってしまう。
ケントは就職を諦め、【探索者】と呼ばれるダンジョンの資源回収を生業とする職業に就くことを決心する。
しかしケントに授けられたスキルは、【スキルクリエイター】という謎のスキル。
一応戦えはするものの、戦闘では役に立たづ、ついには訓練の際に組んだパーティーからも追い出されてしまう。
途方に暮れるケントは一人でも【探索者】としてやっていくことにした。
その後明かされる【スキルクリエイター】の秘密。
そして、世界存亡の危機。
全てがケントへと帰結するとき、物語が動き出した……
※登場する人物・団体・名称はすべて現実世界とは全く関係がありません。この物語はフィクションでありファンタジーです。
【コミカライズ決定】勇者学園の西園寺オスカー~実力を隠して勇者学園を満喫する俺、美人生徒会長に目をつけられたので最強ムーブをかましたい~
エース皇命
ファンタジー
【HOTランキング2位獲得作品】
【第5回一二三書房Web小説大賞コミカライズ賞】
~ポルカコミックスでの漫画化(コミカライズ)決定!~
ゼルトル勇者学園に通う少年、西園寺オスカーはかなり変わっている。
学園で、教師をも上回るほどの実力を持っておきながらも、その実力を隠し、他の生徒と同様の、平均的な目立たない存在として振る舞うのだ。
何か実力を隠す特別な理由があるのか。
いや、彼はただ、「かっこよさそう」だから実力を隠す。
そんな中、隣の席の美少女セレナや、生徒会長のアリア、剣術教師であるレイヴンなどは、「西園寺オスカーは何かを隠している」というような疑念を抱き始めるのだった。
貴族出身の傲慢なクラスメイトに、彼と対峙することを選ぶ生徒会〈ガーディアンズ・オブ・ゼルトル〉、さらには魔王まで、西園寺オスカーの前に立ちはだかる。
オスカーはどうやって最強の力を手にしたのか。授業や試験ではどんなムーブをかますのか。彼の実力を知る者は現れるのか。
世界を揺るがす、最強中二病主人公の爆誕を見逃すな!
※小説家になろう、カクヨム、pixivにも投稿中。
学年一可愛いS級の美少女の令嬢三姉妹が、何故かやたらと俺の部屋に入り浸ってくる件について
沢田美
恋愛
名門・雄幸高校で目立たず生きる一年生、神谷悠真。
クラスでは影が薄く、青春とは無縁の平凡な日々を送っていた。だがある放課後、街で不良に絡まれていた女子生徒を助けたことで、その日常は一変する。救った相手は、学年一の美少女三姉妹として知られる西園寺家の次女・優里だった。さらに家に帰れば、三姉妹の長女・龍華がなぜか当然のように悠真の部屋に入り浸っている。名門令嬢三姉妹に振り回されながら、静かだったはずの悠真の青春は少しずつ騒がしく揺れ始める。
~最弱のスキルコレクター~ スキルを無限に獲得できるようになった元落ちこぼれは、レベル1のまま世界最強まで成り上がる
僧侶A
ファンタジー
沢山のスキルさえあれば、レベルが無くても最強になれる。
スキルは5つしか獲得できないのに、どのスキルも補正値は5%以下。
だからレベルを上げる以外に強くなる方法はない。
それなのにレベルが1から上がらない如月飛鳥は当然のように落ちこぼれた。
色々と試行錯誤をしたものの、強くなれる見込みがないため、探索者になるという目標を諦め一般人として生きる道を歩んでいた。
しかしある日、5つしか獲得できないはずのスキルをいくらでも獲得できることに気づく。
ここで如月飛鳥は考えた。いくらスキルの一つ一つが大したことが無くても、100個、200個と大量に集めたのならレベルを上げるのと同様に強くなれるのではないかと。
一つの光明を見出した主人公は、最強への道を一直線に突き進む。
土曜日以外は毎日投稿してます。
スキル【幸運】無双~そのシーフ、ユニークスキルを信じて微妙ステータス幸運に一点張りする~
榊与一
ファンタジー
幼い頃の鑑定によって、覚醒とユニークスキルが約束された少年——王道光(おうどうひかる)。
彼はその日から探索者――シーカーを目指した。
そして遂に訪れた覚醒の日。
「ユニークスキル【幸運】?聞いた事のないスキルだな?どんな効果だ?」
スキル効果を確認すると、それは幸運ステータスの効果を強化する物だと判明する。
「幸運の強化って……」
幸運ステータスは、シーカーにとって最も微妙と呼ばれているステータスである。
そのため、進んで幸運にステータスポイントを割く者はいなかった。
そんな効果を強化したからと、王道光はあからさまにがっかりする。
だが彼は知らない。
ユニークスキル【幸運】の効果が想像以上である事を。
しかもスキルレベルを上げる事で、更に効果が追加されることを。
これはハズレと思われたユニークスキル【幸運】で、王道光がシーカー界の頂点へと駆け上がる物語。
悪徳貴族の、イメージ改善、慈善事業
ウィリアム・ブロック
ファンタジー
現代日本から死亡したラスティは貴族に転生する。しかしその世界では貴族はあんまり良く思われていなかった。なのでノブリス・オブリージュを徹底させて、貴族のイメージ改善を目指すのだった。
第2の人生は、『男』が希少種の世界で
赤金武蔵
ファンタジー
日本の高校生、久我一颯(くがいぶき)は、気が付くと見知らぬ土地で、女山賊たちから貞操を奪われる危機に直面していた。
あと一歩で襲われかけた、その時。白銀の鎧を纏った女騎士・ミューレンに救われる。
ミューレンの話から、この世界は地球ではなく、別の世界だということを知る。
しかも──『男』という存在が、超希少な世界だった。
ダンジョン冒険者にラブコメはいらない(多分)~正体を隠して普通の生活を送る男子高生、実は最近注目の高ランク冒険者だった~
エース皇命
ファンタジー
学校では正体を隠し、普通の男子高校生を演じている黒瀬才斗。実は仕事でダンジョンに潜っている、最近話題のAランク冒険者だった。
そんな黒瀬の通う高校に突如転校してきた白桃楓香。初対面なのにも関わらず、なぜかいきなり黒瀬に抱きつくという奇行に出る。
「才斗くん、これからよろしくお願いしますねっ」
なんと白桃は黒瀬の直属の部下として派遣された冒険者であり、以後、同じ家で生活を共にし、ダンジョンでの仕事も一緒にすることになるという。
これは、上級冒険者の黒瀬と、美少女転校生の純愛ラブコメディ――ではなく、ちゃんとしたダンジョン・ファンタジー(多分)。
※小説家になろう、カクヨムでも連載しています。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる