異世界帰りのハーレム王

ぬんまる兄貴

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第173話 富士の樹海11

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 湯けむりがもくもくと立ち上る温泉に、俺は勢いよく飛び込んだ。


 
「うぉぉぉぉ!最高じゃねぇかぁぁぁ!!」



 思わずテンションが振り切れる。熱い湯が体を包み込む感覚に、旅の疲れが一瞬で吹き飛んでいく。周りに誰もいないのをいいことに、俺は湯の中で両手をバシャバシャと動かし、存分に楽しんでいた。


 
「はーっ、これぞ温泉王!今日はハーレム王改め温泉王だな!」



 頬が湯気でほんのり赤く染まり、俺は湯の中でのんびりし放題。湯船に身を委ね、何度も「ふぅ~」と息を漏らす。


 
「これ、温泉ハーレムができたら絶対最強だよな…!」



 自分の発言にひとりニヤニヤしながら、湯船の中で足をピョコピョコ動かす。いやぁ、温泉ってもしかして俺のためにあるんじゃないか? そんな気分になるほど、ここでの贅沢は格別だ。もう、これはハーレム王どころか温泉王、いや、世界王にさえなれる気がしてきたぜ。


 湯船の中で、まるで王様のように手足を広げ、足を「ぷか~」と浮かべてみる。肩までしっかり湯に浸かり、湯の贅沢を完全に独り占めだ。


 湯船の波を手でつくり、小さな波が縁に届いては戻るその様子を眺めると、自分が温泉の王宮にいるような気分になった。


 
「ふはぁ~、温泉王ってのも悪くねぇな。いつかハーレム温泉ツアーとか開催しちゃおっかな…」



 そんなことを呟きながら、湯の熱がじんわりと体に染み渡っていく。腕を組み、未来の計画でも練るようにニヤニヤと笑いが止まらない。両手で湯をすくい、顔にバシャッとかけるたびに「く~、これぞ天然水!」とひとりごちては満足してみせる。


 やがて湯の心地よさに体が完全に緩み、瞼が重くなってきた。「お、いかんいかん、ここで寝たらもったいねぇ…」と自分に言い聞かせたものの、湯に包まれる幸福感には抗えなかった。


 
「このままずーっと温泉に浸かっていたいぜ…」



 そう呟いた瞬間、温泉の暖かさに負けた俺は、幸せに包まれたまま目を閉じ、夢の中へと沈んでいった。




 

 ――――――――――――





 鎖が重く腕に食い込み、俺は必死にもがくが、どうにも抜け出せない。


 
 
「――――おい、外せ。」


 
 目の前の女は、静かに俺を見つめている。その美しさは異様で、どこか恐ろしくさえ感じる。この世のものとは思えない冷たい美貌と、何もかもを見透かすような澄んだ瞳を持つ女だ。

 

 ――――今から君の記憶に封印をかける。

 

 目の前の女がそう静かに告げると、俺の中に怒りが燃え上がった。

 

「あ゙ぁ?余計なことすんじやねぇよ!!!???」



 全力で叫んだが、彼女は微動だにしない。むしろ、その表情はどこか慈悲深いようにも見えた。

 

 ――――だって君。このままにしておいたら死ぬでしょ?


 
 その声は冷静で穏やかだった。俺の心の奥底を見抜いたかのように、まるで自分が俺の全てを理解しているかのように、女は俺を見つめていた。

 

「――――うるせぇよ」

 

 女は目を伏せ、軽くため息をついた。
 

 
 ――――――たまには、目を背けることも大事だよ。生きていれば、また何かを見つけるかもしれない。でも、死んだらそれまでだからね。


 彼女の手がゆっくりと俺の額に触れた。その手は冷たく、けれど、不思議な温もりを感じた。俺は抗うように顔をそらそうとしたが、体が動かない。


 
「おい、やめろ!!!」


 叫び声が虚しく響く中、女は低く囁くように告げた。


 
 ――――では、良い夢を。

 

 その瞬間、視界が暗転し、重たい闇に包まれた。



 

 温泉の中でぼんやりと目を覚ました俺は、体がまだ温かい湯に包まれていることを感じながら、重い気分を引きずっていた。

 

「……なんだ、今の夢……」

 

 さっきの夢が妙に生々しい。腕に食い込む冷たい鎖の感触、目の前の美しい女の姿、彼女の冷たい言葉と、額に触れた時の冷たさと温もりが、まだ体に残っているような気がする。俺はなんとも言えない虚しさを抱えたまま湯船からぼんやりと起き上がった。

 
 胸の奥に、どこか重たいものが残っている。何か大切なものを忘れてしまったような、そんな気がしてならない。けれど、いくら考えようとしても、そこにはただ虚無が広がっているだけだ。何も浮かばないのに、なぜか心だけが妙にざわついて、深い穴に引きずり込まれるような感覚がする。


 
「……気のせいだよな、こんなわけのわからない夢。どうせ温泉で寝てたからだろ」



 自分にそう言い聞かせながら、俺はため息をついた。温泉の暖かさは確かに俺の体を包んでいるのに、その温もりがまるで薄っぺらく感じる。胸の奥に抱えたこの違和感が、いつまでも消えない気がして、俺は気がつかないうちに手を強く握りしめていた。



 
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