異世界帰りのハーレム王

ぬんまる兄貴

文字の大きさ
180 / 189

第180話 富士の樹海18

しおりを挟む



 俺の拳が鋼牙の斧を正面から受け止めた。


 
〈――――――ドンッ!!!!〉



 衝撃が全身に響き渡る。鋼牙の斧の重さが俺の腕を押しつぶすようで、歯を食いしばる俺の顔に冷や汗が伝う。鋼牙は一瞬驚いた表情を見せるが、すぐに目を輝かせ、不敵に笑った。


 
「おうおう、お前、やっぱりやるなぁ!」



 斧が俺の拳に押し返されると、彼の顔には歓喜に近い笑みが浮かんでいる。こいつ、本当に戦いを楽しんでやがる。俺の腕にはまだ衝撃の余韻が残っているが、そんなこと構ってられねぇ。普通の攻撃じゃ、この怪物には通じない。


 鋼牙がさらに力を込めて斧を振り上げる。その重い一撃を再び叩きつけようとした瞬間、俺は身を翻し、鋼牙の側面に回り込む。そして、電気を帯びた拳を叩き込んだ。


 
「雷撃拳・裏!!」



 拳が鋼牙の鎧に直撃し、雷の閃光が辺りを照らす。轟音が響き渡るが――


 
「……まただ、全然手応えがない。」



 鋼牙はびくともしない。それどころか、満足そうに笑みを浮かべている。

 

「いいぜ、もっと来な!お前、まさかこんなもんじゃねぇだろ?」



 鋼牙は片手で俺の拳を弾き返し、再び巨大な斧を振り上げた。


 
「裂地斬(れっちざん)!!!」



 呪力を斧に込め、一振りで地面を裂く攻撃。その斧が俺の頭上に振り下ろされる寸前、俺は電光石火で横に跳んでかわした。


 しかし、斧が地面に突き刺さり、そこから衝撃波が周囲に走る。俺の足元が揺らぎ、鋼牙はその隙を見逃さず、さらに追撃を仕掛けてくる。


 
「お前の力、もっと見せてみろや!轟砕突撃(ごうさいとつげき)!!」



 鋼牙の全身が呪力に包まれたかと思うと、猛スピードで突進してくる。


 
「――くそっ!」



 俺は全力で防ごうとするが、圧倒的な力に身体が吹き飛ばされる。そして、空中に投げ出された俺に向かって鋼牙が再び斧を振り上げ、止めを刺そうとする。


 
「ここで終わるわけにはいかねぇんだよ!!」



 咄嗟に、俺は雷の力を手に集中させる。


 
「雷鳴砲!!!」



 ――――雷鳴砲。
 
 手から雷のエネルギーを放出し、広範囲を薙ぎ払う技。今回はその破壊力を限定的に使い、反動で空中での軌道を変えた。俺の身体は雷の力で横に跳ね、鋼牙の斧がギリギリで俺を掠める。


 
「危ねぇ……!」



 地面に激突する寸前で何とか着地を決め、鋼牙から距離を取る。全身が痺れるような疲労感に襲われるが、俺はまだ倒れちゃいねぇ。


 鋼牙は俺の動きに驚いたように目を細めたが、すぐに楽しそうに笑みを浮かべた。


 
「ハハッ!おもしれぇじゃねぇか、ハーレム王!その戦い方、抜群にキレてやがる!幾つもの修羅場を潜ってきた奴の動きだ!呪術師でもねぇお前が、いったいどこでそんな戦闘経験を積んできた!?」



 その言葉に一瞬返答を考えたが、俺は無言で鋼牙を睨むに留めた。過去を語ってる暇なんてない――今は戦いに集中するのみだ。


 
 俺が鋼牙と攻防を繰り広げながら、ふと横目で霧羽の方を見やると、彼女もまた斑鳩相手に激しい戦いを繰り広げていた。

 
 霧羽は黒い翼を大きく広げ、宙に浮きながら日本刀を振るい、鋭い風の刃を次々と斑鳩に向けて放っている。その姿は、嵐の中を疾駆する鷹のように凛々しく、美しい。


 しかし――斑鳩もただの呪術師ではない。



 斑鳩は足元の地面をヒールでトントンと軽く叩いた。
その仕草と共に地面が低く唸りを上げ、次の瞬間――


 
「爆地流(ばくちりゅう)」



 地脈のエネルギーが爆発的に放出され、周囲の地面を揺るがしながら霧羽の風の刃を次々と弾き飛ばす。その攻撃範囲は広く、圧倒的な威力を持っていた。
 

 斑鳩は涼しい顔のまま再びヒールで地面を叩く。


 
「地龍顕現(ちりゅうけんげん)」



 地脈から霊的な地龍が姿を現した。巨大な龍の形をした地脈のエネルギーが轟々と咆哮を上げながら霧羽に迫ってくる。その圧倒的な存在感と威力に、見ている俺ですら息を飲む。
 

 だが――霧羽は動じなかった。

 
 彼女は冷静に空中で大きく翼を広げ、一気に高く舞い上がる。そして、旋回するように空中で一回転すると、日本刀を高く掲げた。


 その瞬間、周囲の風が一斉に彼女の刀へと集まり、鋭く形を変え始める。空気そのものが刃となり、霧羽の力と同調していく。


 
「天風剣閃(てんぷうけんせん)!」



 霧羽の一喝と共に、巨大な風刃が地龍に向かって放たれる。その刃は鋭く、強烈な風圧を伴いながら地面を薙ぎ払い、迫りくる地龍に直撃した。


 
〈ズバァァン!!〉



 衝撃音と共に、地龍の形が風刃によって切り裂かれ、そのエネルギーは粉々に崩れ落ちていく。地面が激しく揺れ、砂埃が舞い上がる中、霧羽は静かに刀を下ろし、冷たい目で斑鳩を睨んだ。



 ――――やるじゃねぇか!霧羽!!



 その光景を横目で確認しながら、俺は安堵と誇らしさが入り混じった気持ちになっていたが――。


 
「よそ見してる暇あんのかよ、ハーレム王?」



 低く響く声が背後から迫りくる。振り返る間もなく、鋼牙の巨大な斧が俺に向かって振り下ろされる。その一撃の風圧だけで肌が切れそうな威圧感だ。


 
「――――チッ!!」



 俺は咄嗟に地面を蹴って横に飛び、ギリギリでその一撃を回避した。斧が地面に食い込むと同時に土砂が吹き飛び、轟音が耳をつんざく。


 
「よそ見?よそ見じゃねぇよ!ガン見だ!」



 着地と同時に鋼牙を睨み返し、俺は叫んだ。


 
「俺はハーレム王だ!自分のハーレムメンバーが最優先なんだよ!霧羽はまだ研修生だけどな!」



 鋼牙はその言葉に一瞬呆気に取られたような顔をし、目を丸くする。そして、次の瞬間、彼は腹の底から大声で笑い出した。全身の鎧がガチャガチャと音を立て、斧を肩に担いだまま肩を揺らし続ける。


 
「ハハハッ!やっぱりお前は面白ぇな!こんな命懸けの戦いの中で、笑いを持ってきやがる!」



 鋼牙の赤く光る瞳が俺を捉え、その顔には満面の笑みが浮かんでいる。



「純粋な戦闘能力も高い上にエンターテイメント力も高いとか……戦いを楽しむ俺にとっちゃ、お前、最高の相手だぜ!」



 俺は鋼牙の言葉に思わずツッコミを入れる。


 
「俺はお前のおもちゃじゃねえよ!!笑いを提供してるわけじゃないんだよ!!」



 鋼牙はさらに笑い声を高めながら、俺を見つめる。その態度にイラつきながらも、俺は冷静さを保つ。



「だけどよ、お前の楽しみ、そろそろ終わりだぜ?」



 その一言に、鋼牙は一瞬だけ眉を上げたが、すぐに興味深そうな笑みを浮かべた。


 
「ほう?終わりだと?どうやって俺の楽しみを奪うつもりだ?」



 俺は冷たく笑い返す。鋼牙の反応を見て、自分の勝ち筋が見えてきた手応えがあった。


 
「お前の攻略法がわかった。」



 鋼牙の笑みが一瞬だけ薄れる。その赤い瞳が鋭く俺を見据え、興味と警戒が入り混じる。


 
「……ほう。面白ぇ。試してみろよ、ハーレム王。」



 鋼牙が構えを整え直すと、俺も同じく全身に雷の力を集めて臨戦態勢を取る。



 
 
 
 
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

最弱無双は【スキルを創るスキル】だった⁈~レベルを犠牲に【スキルクリエイター】起動!!レベルが低くて使えないってどういうこと⁈~

華音 楓
ファンタジー
『ハロ~~~~~~~~!!地球の諸君!!僕は~~~~~~~~~~!!神…………デス!!』 たったこの一言から、すべてが始まった。 ある日突然、自称神の手によって世界に配られたスキルという名の才能。 そして自称神は、さらにダンジョンという名の迷宮を世界各地に出現させた。 それを期に、世界各国で作物は不作が発生し、地下資源などが枯渇。 ついにはダンジョンから齎される資源に依存せざるを得ない状況となってしまったのだった。 スキルとは祝福か、呪いか…… ダンジョン探索に命を懸ける人々の物語が今始まる!! 主人公【中村 剣斗】はそんな大災害に巻き込まれた一人であった。 ダンジョンはケントが勤めていた会社を飲み込み、その日のうちに無職となってしまう。 ケントは就職を諦め、【探索者】と呼ばれるダンジョンの資源回収を生業とする職業に就くことを決心する。 しかしケントに授けられたスキルは、【スキルクリエイター】という謎のスキル。 一応戦えはするものの、戦闘では役に立たづ、ついには訓練の際に組んだパーティーからも追い出されてしまう。 途方に暮れるケントは一人でも【探索者】としてやっていくことにした。 その後明かされる【スキルクリエイター】の秘密。 そして、世界存亡の危機。 全てがケントへと帰結するとき、物語が動き出した…… ※登場する人物・団体・名称はすべて現実世界とは全く関係がありません。この物語はフィクションでありファンタジーです。

【コミカライズ決定】勇者学園の西園寺オスカー~実力を隠して勇者学園を満喫する俺、美人生徒会長に目をつけられたので最強ムーブをかましたい~

エース皇命
ファンタジー
【HOTランキング2位獲得作品】 【第5回一二三書房Web小説大賞コミカライズ賞】 ~ポルカコミックスでの漫画化(コミカライズ)決定!~  ゼルトル勇者学園に通う少年、西園寺オスカーはかなり変わっている。  学園で、教師をも上回るほどの実力を持っておきながらも、その実力を隠し、他の生徒と同様の、平均的な目立たない存在として振る舞うのだ。  何か実力を隠す特別な理由があるのか。  いや、彼はただ、「かっこよさそう」だから実力を隠す。  そんな中、隣の席の美少女セレナや、生徒会長のアリア、剣術教師であるレイヴンなどは、「西園寺オスカーは何かを隠している」というような疑念を抱き始めるのだった。  貴族出身の傲慢なクラスメイトに、彼と対峙することを選ぶ生徒会〈ガーディアンズ・オブ・ゼルトル〉、さらには魔王まで、西園寺オスカーの前に立ちはだかる。  オスカーはどうやって最強の力を手にしたのか。授業や試験ではどんなムーブをかますのか。彼の実力を知る者は現れるのか。    世界を揺るがす、最強中二病主人公の爆誕を見逃すな! ※小説家になろう、カクヨム、pixivにも投稿中。

学年一可愛いS級の美少女の令嬢三姉妹が、何故かやたらと俺の部屋に入り浸ってくる件について

沢田美
恋愛
名門・雄幸高校で目立たず生きる一年生、神谷悠真。 クラスでは影が薄く、青春とは無縁の平凡な日々を送っていた。だがある放課後、街で不良に絡まれていた女子生徒を助けたことで、その日常は一変する。救った相手は、学年一の美少女三姉妹として知られる西園寺家の次女・優里だった。さらに家に帰れば、三姉妹の長女・龍華がなぜか当然のように悠真の部屋に入り浸っている。名門令嬢三姉妹に振り回されながら、静かだったはずの悠真の青春は少しずつ騒がしく揺れ始める。

~最弱のスキルコレクター~ スキルを無限に獲得できるようになった元落ちこぼれは、レベル1のまま世界最強まで成り上がる

僧侶A
ファンタジー
沢山のスキルさえあれば、レベルが無くても最強になれる。 スキルは5つしか獲得できないのに、どのスキルも補正値は5%以下。 だからレベルを上げる以外に強くなる方法はない。 それなのにレベルが1から上がらない如月飛鳥は当然のように落ちこぼれた。 色々と試行錯誤をしたものの、強くなれる見込みがないため、探索者になるという目標を諦め一般人として生きる道を歩んでいた。 しかしある日、5つしか獲得できないはずのスキルをいくらでも獲得できることに気づく。 ここで如月飛鳥は考えた。いくらスキルの一つ一つが大したことが無くても、100個、200個と大量に集めたのならレベルを上げるのと同様に強くなれるのではないかと。 一つの光明を見出した主人公は、最強への道を一直線に突き進む。 土曜日以外は毎日投稿してます。

スキル【幸運】無双~そのシーフ、ユニークスキルを信じて微妙ステータス幸運に一点張りする~

榊与一
ファンタジー
幼い頃の鑑定によって、覚醒とユニークスキルが約束された少年——王道光(おうどうひかる)。 彼はその日から探索者――シーカーを目指した。 そして遂に訪れた覚醒の日。 「ユニークスキル【幸運】?聞いた事のないスキルだな?どんな効果だ?」 スキル効果を確認すると、それは幸運ステータスの効果を強化する物だと判明する。 「幸運の強化って……」 幸運ステータスは、シーカーにとって最も微妙と呼ばれているステータスである。 そのため、進んで幸運にステータスポイントを割く者はいなかった。 そんな効果を強化したからと、王道光はあからさまにがっかりする。 だが彼は知らない。 ユニークスキル【幸運】の効果が想像以上である事を。 しかもスキルレベルを上げる事で、更に効果が追加されることを。 これはハズレと思われたユニークスキル【幸運】で、王道光がシーカー界の頂点へと駆け上がる物語。

悪徳貴族の、イメージ改善、慈善事業

ウィリアム・ブロック
ファンタジー
現代日本から死亡したラスティは貴族に転生する。しかしその世界では貴族はあんまり良く思われていなかった。なのでノブリス・オブリージュを徹底させて、貴族のイメージ改善を目指すのだった。

第2の人生は、『男』が希少種の世界で

赤金武蔵
ファンタジー
 日本の高校生、久我一颯(くがいぶき)は、気が付くと見知らぬ土地で、女山賊たちから貞操を奪われる危機に直面していた。  あと一歩で襲われかけた、その時。白銀の鎧を纏った女騎士・ミューレンに救われる。  ミューレンの話から、この世界は地球ではなく、別の世界だということを知る。  しかも──『男』という存在が、超希少な世界だった。

ダンジョン冒険者にラブコメはいらない(多分)~正体を隠して普通の生活を送る男子高生、実は最近注目の高ランク冒険者だった~

エース皇命
ファンタジー
 学校では正体を隠し、普通の男子高校生を演じている黒瀬才斗。実は仕事でダンジョンに潜っている、最近話題のAランク冒険者だった。  そんな黒瀬の通う高校に突如転校してきた白桃楓香。初対面なのにも関わらず、なぜかいきなり黒瀬に抱きつくという奇行に出る。 「才斗くん、これからよろしくお願いしますねっ」  なんと白桃は黒瀬の直属の部下として派遣された冒険者であり、以後、同じ家で生活を共にし、ダンジョンでの仕事も一緒にすることになるという。  これは、上級冒険者の黒瀬と、美少女転校生の純愛ラブコメディ――ではなく、ちゃんとしたダンジョン・ファンタジー(多分)。 ※小説家になろう、カクヨムでも連載しています。

処理中です...