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第180話 富士の樹海18
しおりを挟む俺の拳が鋼牙の斧を正面から受け止めた。
〈――――――ドンッ!!!!〉
衝撃が全身に響き渡る。鋼牙の斧の重さが俺の腕を押しつぶすようで、歯を食いしばる俺の顔に冷や汗が伝う。鋼牙は一瞬驚いた表情を見せるが、すぐに目を輝かせ、不敵に笑った。
「おうおう、お前、やっぱりやるなぁ!」
斧が俺の拳に押し返されると、彼の顔には歓喜に近い笑みが浮かんでいる。こいつ、本当に戦いを楽しんでやがる。俺の腕にはまだ衝撃の余韻が残っているが、そんなこと構ってられねぇ。普通の攻撃じゃ、この怪物には通じない。
鋼牙がさらに力を込めて斧を振り上げる。その重い一撃を再び叩きつけようとした瞬間、俺は身を翻し、鋼牙の側面に回り込む。そして、電気を帯びた拳を叩き込んだ。
「雷撃拳・裏!!」
拳が鋼牙の鎧に直撃し、雷の閃光が辺りを照らす。轟音が響き渡るが――
「……まただ、全然手応えがない。」
鋼牙はびくともしない。それどころか、満足そうに笑みを浮かべている。
「いいぜ、もっと来な!お前、まさかこんなもんじゃねぇだろ?」
鋼牙は片手で俺の拳を弾き返し、再び巨大な斧を振り上げた。
「裂地斬(れっちざん)!!!」
呪力を斧に込め、一振りで地面を裂く攻撃。その斧が俺の頭上に振り下ろされる寸前、俺は電光石火で横に跳んでかわした。
しかし、斧が地面に突き刺さり、そこから衝撃波が周囲に走る。俺の足元が揺らぎ、鋼牙はその隙を見逃さず、さらに追撃を仕掛けてくる。
「お前の力、もっと見せてみろや!轟砕突撃(ごうさいとつげき)!!」
鋼牙の全身が呪力に包まれたかと思うと、猛スピードで突進してくる。
「――くそっ!」
俺は全力で防ごうとするが、圧倒的な力に身体が吹き飛ばされる。そして、空中に投げ出された俺に向かって鋼牙が再び斧を振り上げ、止めを刺そうとする。
「ここで終わるわけにはいかねぇんだよ!!」
咄嗟に、俺は雷の力を手に集中させる。
「雷鳴砲!!!」
――――雷鳴砲。
手から雷のエネルギーを放出し、広範囲を薙ぎ払う技。今回はその破壊力を限定的に使い、反動で空中での軌道を変えた。俺の身体は雷の力で横に跳ね、鋼牙の斧がギリギリで俺を掠める。
「危ねぇ……!」
地面に激突する寸前で何とか着地を決め、鋼牙から距離を取る。全身が痺れるような疲労感に襲われるが、俺はまだ倒れちゃいねぇ。
鋼牙は俺の動きに驚いたように目を細めたが、すぐに楽しそうに笑みを浮かべた。
「ハハッ!おもしれぇじゃねぇか、ハーレム王!その戦い方、抜群にキレてやがる!幾つもの修羅場を潜ってきた奴の動きだ!呪術師でもねぇお前が、いったいどこでそんな戦闘経験を積んできた!?」
その言葉に一瞬返答を考えたが、俺は無言で鋼牙を睨むに留めた。過去を語ってる暇なんてない――今は戦いに集中するのみだ。
俺が鋼牙と攻防を繰り広げながら、ふと横目で霧羽の方を見やると、彼女もまた斑鳩相手に激しい戦いを繰り広げていた。
霧羽は黒い翼を大きく広げ、宙に浮きながら日本刀を振るい、鋭い風の刃を次々と斑鳩に向けて放っている。その姿は、嵐の中を疾駆する鷹のように凛々しく、美しい。
しかし――斑鳩もただの呪術師ではない。
斑鳩は足元の地面をヒールでトントンと軽く叩いた。
その仕草と共に地面が低く唸りを上げ、次の瞬間――
「爆地流(ばくちりゅう)」
地脈のエネルギーが爆発的に放出され、周囲の地面を揺るがしながら霧羽の風の刃を次々と弾き飛ばす。その攻撃範囲は広く、圧倒的な威力を持っていた。
斑鳩は涼しい顔のまま再びヒールで地面を叩く。
「地龍顕現(ちりゅうけんげん)」
地脈から霊的な地龍が姿を現した。巨大な龍の形をした地脈のエネルギーが轟々と咆哮を上げながら霧羽に迫ってくる。その圧倒的な存在感と威力に、見ている俺ですら息を飲む。
だが――霧羽は動じなかった。
彼女は冷静に空中で大きく翼を広げ、一気に高く舞い上がる。そして、旋回するように空中で一回転すると、日本刀を高く掲げた。
その瞬間、周囲の風が一斉に彼女の刀へと集まり、鋭く形を変え始める。空気そのものが刃となり、霧羽の力と同調していく。
「天風剣閃(てんぷうけんせん)!」
霧羽の一喝と共に、巨大な風刃が地龍に向かって放たれる。その刃は鋭く、強烈な風圧を伴いながら地面を薙ぎ払い、迫りくる地龍に直撃した。
〈ズバァァン!!〉
衝撃音と共に、地龍の形が風刃によって切り裂かれ、そのエネルギーは粉々に崩れ落ちていく。地面が激しく揺れ、砂埃が舞い上がる中、霧羽は静かに刀を下ろし、冷たい目で斑鳩を睨んだ。
――――やるじゃねぇか!霧羽!!
その光景を横目で確認しながら、俺は安堵と誇らしさが入り混じった気持ちになっていたが――。
「よそ見してる暇あんのかよ、ハーレム王?」
低く響く声が背後から迫りくる。振り返る間もなく、鋼牙の巨大な斧が俺に向かって振り下ろされる。その一撃の風圧だけで肌が切れそうな威圧感だ。
「――――チッ!!」
俺は咄嗟に地面を蹴って横に飛び、ギリギリでその一撃を回避した。斧が地面に食い込むと同時に土砂が吹き飛び、轟音が耳をつんざく。
「よそ見?よそ見じゃねぇよ!ガン見だ!」
着地と同時に鋼牙を睨み返し、俺は叫んだ。
「俺はハーレム王だ!自分のハーレムメンバーが最優先なんだよ!霧羽はまだ研修生だけどな!」
鋼牙はその言葉に一瞬呆気に取られたような顔をし、目を丸くする。そして、次の瞬間、彼は腹の底から大声で笑い出した。全身の鎧がガチャガチャと音を立て、斧を肩に担いだまま肩を揺らし続ける。
「ハハハッ!やっぱりお前は面白ぇな!こんな命懸けの戦いの中で、笑いを持ってきやがる!」
鋼牙の赤く光る瞳が俺を捉え、その顔には満面の笑みが浮かんでいる。
「純粋な戦闘能力も高い上にエンターテイメント力も高いとか……戦いを楽しむ俺にとっちゃ、お前、最高の相手だぜ!」
俺は鋼牙の言葉に思わずツッコミを入れる。
「俺はお前のおもちゃじゃねえよ!!笑いを提供してるわけじゃないんだよ!!」
鋼牙はさらに笑い声を高めながら、俺を見つめる。その態度にイラつきながらも、俺は冷静さを保つ。
「だけどよ、お前の楽しみ、そろそろ終わりだぜ?」
その一言に、鋼牙は一瞬だけ眉を上げたが、すぐに興味深そうな笑みを浮かべた。
「ほう?終わりだと?どうやって俺の楽しみを奪うつもりだ?」
俺は冷たく笑い返す。鋼牙の反応を見て、自分の勝ち筋が見えてきた手応えがあった。
「お前の攻略法がわかった。」
鋼牙の笑みが一瞬だけ薄れる。その赤い瞳が鋭く俺を見据え、興味と警戒が入り混じる。
「……ほう。面白ぇ。試してみろよ、ハーレム王。」
鋼牙が構えを整え直すと、俺も同じく全身に雷の力を集めて臨戦態勢を取る。
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