異世界帰りのハーレム王

ぬんまる兄貴

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第185話 富士の樹海23

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 俺と霧羽は山道をひたすら歩き続け、ついに見えてきた山小屋の姿。暖かい灯りが小窓から漏れているのを見て、俺たちは思わず顔を見合わせ、そして同時にホッと息をついた。



 やっと、合流地点だ…!


 

「はぁ、ようやく着いたな」


 
 
 と俺が呟くと、霧羽も微かに笑みを浮かべて頷く。


 
 とはいえ、心の奥には少し不安も残っている。崇拝派の襲撃で離ればなれになっちまった雪華、貴音、麗華、焔華の4人は、本当に無事でここに来られたんだろうか。

 

 不安と期待の入り混じった気持ちで、小屋の扉をゆっくりと開ける。


 
 
 〈ギィィィィ……〉

 

 錆びた蝶番が小さく悲鳴を上げるような音を立てる。そして扉の隙間から漏れ出した暖かな光の中に――

 

 四人の姿があった。

 

 俺は一瞬言葉を失い、次に込み上げる感情を抑えられず、声を上げた。

 

 「お、お前ら……!!」

 

 その声に、室内にいた四人が一斉に振り返った。

 

 まず目に飛び込んできたのは雪華だ。相変わらずの穏やかな笑顔を浮かべて、両手を胸の前で軽く合わせている。

 

「雷丸様!霧羽さん!お待ちしておりました。」

 

 俺はその声を聞いただけで胸が熱くなる。次に貴音が椅子から飛び上がるように立ち上がり、目を輝かせながら駆け寄ってきた。
 

 
「お兄ちゃん、霧羽!!無事でよかった!」

 

 俺の腕にしがみつきながら泣きそうな顔で笑う貴音を見て、俺も思わず「よかった」と呟いた。

 
 その後ろで腕を組み、少し拗ねたような表情を見せる麗華がため息をつきながら口を開く。

 

「遅いわよ、飯田君。霧羽。……でも無事でよかったわ。」



 その言葉の最後は小さな声で、聞き取れるかどうかギリギリだったが、俺には十分伝わった。

 
 その内心は丸見えで、どう見ても「飯田君が戻ってきてホッとしてます」って顔してやがる。
 


 
 最後に、椅子にどっしりと座り、片手に湯気の立つカップを持った焔華が、のんびりと顔を上げた。


 
「ふむ、二人ともやっと来たか。待ちくたびれたぞ。」



 俺はその様子を見て、思わず突っ込まずにはいられなかった。



「おいおい!お前、なんでそんな完全リラックスモードなんだよ!?サバイバル感ゼロじゃねぇか!」

 

 俺がそう突っ込むと、隣で霧羽が肩を小さく揺らしながら、淡々と呟いた。


 
「まるで……ここが焔華の家であるかのようだな。」




 焔華は嬉しそうに微笑み、「そうじゃろ!」と得意げだ。いや、誇らしげな顔してる場合じゃねぇよ!



 
「わしにとっては自分の家みたいなもんじゃ!こういう場所では、いかにくつろぐかが勝負の分かれ目ってものだからのぅ!」

「いや、誰と何を勝負してんだよ!他の奴らは緊張感を持ってるのに、お前だけ完全にアウトドアカフェ気分じゃねぇか!」




 俺の勢いあるツッコミに、今度は貴音が「ぷっ」と吹き出し、くすくす笑い始める。雪華は小さく手で口元を覆いながら優しく微笑み、麗華は腕を組んで呆れたようにため息をつきながらも、目元はどこか柔らかかった。


 俺はその光景を見て、胸の奥からじんわりとした暖かさが込み上げてくるのを感じた。ここにいる全員が無事だったことが、本当に嬉しかったからだ。


 
 
「でも……本当に、みんなが無事でよかったよ。」


 

 俺がそう呟くと、雪華が優しく微笑みながら、焚き火のそばを指差した。


 
「とにかく、入って座ってください。二人とも、お疲れでしょうし。」

「そうだな、ありがとな――」



 ほっと息をついたところで、麗華が目を細めながら口を開く。


 
「それに、これまで何があったのか、ちゃんと話してもらわないとね。どうせあなたのことだから、きっと何か余計なことをしてきたんでしょうけど。」



 その辛辣な一言に、俺は顔をしかめた。


 
「おい、余計なことってなんだよ!俺はいつも真面目にやってるっての!」

「その“真面目”が問題なのよ。」



 麗華の冷静な返しに、焔華が豪快に笑いながら肩をすくめた。

 

「まぁまぁ、雷丸はそういうやつじゃからな。だが、それがないと場が盛り上がらんじゃろ?お前は突っ込まれるために生きとるんじゃ!」



 全員の和やかなやり取りに、霧羽もつい口元をほころばせた。こうして仲間たちと再会できた喜びが、焚き火の暖かさと共に心を包んでいく。


 
「よし、わかったよ。じゃあ全部話してやる――俺たちがどうやってここまで来たか、な!」



 そう言って俺は焚き火のそばに腰を下ろし、霧羽と肩を並べて、これまでの冒険を話し始めた。



 
 




 ――――――――
 


 

 俺はみんなの前で大げさに肩をすくめ、焚き火の明かりに照らされながら、まるで戦場から戻った英雄のように話を始めた。



「まず、崇拝派の奴らからなんとか逃げたと思ったらよ、次に出くわしたのが殲滅派だ!そんで、その場に現れたのが、斑鳩って名前の美女と、でっかい斧を持った鋼牙って男だったな。」



 俺がそう言い終わると、麗華がピクッと反応し、目を鋭く細めた。


 
「斑鳩まで来ているのね……。殲滅派も随分と大物を投入してきたわね。」

「大物?」

 

 俺が首をかしげると、麗華は冷静な表情のまま説明を始めた。


 
「斑鳩は殲滅派のNo.2よ。非常に優秀な人材として知られているわ。」

「へぇ、No.2か。なんかエリート感漂ってたけど、そこまでだったのかよ。」



 俺が感心したように言うと、麗華はさらに言葉を重ねる。


 
「彼女は東京大学を主席で卒業した後、27歳の若さで国会議事堂で公設秘書として働いているわ。その上、殲滅派の任務をこなしながらだから、相当な才覚と努力の持ち主よ。」



 その話に、貴音が驚きの声を上げる。



「えっ!?東大主席!?それってすごすぎるよ!」


 
 彼女は椅子から少し前のめりになり、その大きな瞳を輝かせて俺たちを見回す。その様子はまるで初めて魔法を見た子供のようで、無邪気な反応に場の空気が少し和らいだ。


 
「お兄ちゃん、東大って、あの日本で一番頭がいい人が行く学校でしょ!?しかも主席って、一番だよね!?すごいすごい!そんな人と戦ったの!?」



 興奮した貴音の言葉に、俺は苦笑しながら頷く。


 
「まぁ、そうらしいな。でも、そのすごさを肌で感じる余裕なんてなかったぜ。戦場じゃ学歴とか考えてる暇ねぇからな。」


 
 俺も内心、驚きを隠せなかった。確かに斑鳩の冷静さや立ち振る舞いには尋常じゃないものを感じていたが、そこまでの経歴を持ってるとは。


 霧羽も少し眉をひそめながら呟いた。



「なるほど……確かにあの動きや呪術の巧みさ、ただの一兵とは思えなかった。冷静で狡猾……地脈を自在に操り、遠距離、中距離、そして近接戦までこなす相手だ。」



 彼女は言葉を切り、思い出すように目を細める。


 
「近接戦では、何やら棒のようなものを作り出して……」

「あぁ、警棒な。」



 俺が口を挟むと、霧羽は小さく頷きながら続けた。


 
「あれは警棒と言うのか。……警棒を持った斑鳩は、動きに無駄がなく、驚くほどの精度で私の攻撃をいなしてきた。あれほどの精密さ……長年鍛錬を積んできた戦士でなければできない芸当だ。」



 すると麗華が考え込むように口を開く。

 

「確か、彼女の父親は警察官だったはずよ。彼女自身、警棒を使った訓練も受けているのかもしれない。」



 その言葉に、霧羽が「なるほどな」と小さく呟く。俺も思い出すように斑鳩の動きを頭の中で再生してみたが、あれは確かにやっかいすぎる相手だった。


 
「けど、斑鳩だけじゃないぜ。」



 俺はそう切り出し、言葉を続けた。


 
「鋼牙も厄介だった。あいつの斧の破壊力は半端じゃねぇ。並の防御なんて、あいつにかかれば紙切れみたいにぶち破られるんだよ。それにさ――」



 俺は肩を軽く回しながら、苦笑いを浮かべた。


 
「あのゴツい斧と俺の拳がぶつかった時なんて、肩が10センチくらい沈んだんじゃないかって思ったぜ。」



 その言葉に、雪華が驚いたように「えっ?」と声を漏らし、すぐに立ち上がった。彼女は静かに俺の側へ寄り、心配そうな表情で俺の肩に手を伸ばしてきた。


 
「雷丸様、それ、大丈夫なんですか?」



 冷静な彼女の手が、そっと俺の肩に触れる。その動きはまるで壊れたものを扱うかのように慎重で、思わず俺は苦笑するしかなかった。


 
「いや、ほら、今こうして動いてるだろ?だから大丈夫だって。」



 そう言って軽く肩を回してみせるが、雪華は納得していない様子でじっと肩を見つめたままだった。


 
「動くから大丈夫とは限りませんよ。内部に損傷がある可能性もありますし、放置すれば悪化することだって――」

「いやいや、そんな深刻な話じゃないから!」



 俺が慌てて言い訳をすると、雪華は少し眉をひそめながら言った。


 
「今度から、無茶は控えてくださいね。雷丸様が倒れたら、私たちが困るんですから。」



 そう言いながら、雪華の手は俺の肩をそっとさすってくれていた。その冷たい指先が妙に気持ちよくて、俺は少しだけ安心感を覚えた。


 その様子を見ていた麗華が、腕を組みながら冷たい声を浴びせる。


 
「雪華、そんなに心配しなくても、飯田君は案外しぶといわよ。これまで散々無茶して生き延びてるんだから。」

「おい、それフォローになってないぞ!」



 俺が反論すると、焔華が大笑いしながら茶化してくる。


 
「雷丸の肩が沈んだって話、面白すぎるのぅ!次はどこまで沈むか試してみたいもんじゃ!」

「お前はもう黙っとけ!」

 
 
 霧羽が小さく眉をひそめた。




「確かに、奴の力は異常だ。単なる力だけではなかったようにも見えたが……。」

「あぁ、それだけじゃねぇんだよ。あいつは『呪力鎧装(じゅりょくがいそう)』ってのを使いやがる。呪力を鎧に纏わせて防御力を大幅に強化するんだ。そうなると単発の攻撃がほとんど通らなくなる。」

 

 その言葉に、麗華が静かに口を開いた。


 
「……じゃあ、鋼牙には読まれないような連続攻撃を用意するべきってことね。」


 
 俺はその冷静な指摘に、思わず苦笑しながら頷いた。


 
「流石だな、麗華。その通りだよ。」



 麗華がドヤ顔で「当然よ」と返す横で、俺はさらに話を続けた。


 
「でもな!問題はそいつらだけじゃないんだ。」



 俺は大げさに腕を広げ、焚き火の明かりを受けながら語り始めた。


 
「次に現れたのは天狗たちだ!俺と霧羽が鋼牙と斑鳩と戦ってる真っ最中に、空から颯爽と現れやがったんだよ!」



 俺は焚き火の光を背に受けながら、天狗たちの姿を思い出した。

 

「あいつら、俺たち人間を完全にゴミ扱いしてやがった。そして極めつけは、天狗の夜嵐だ!あの冷え冷えとした目で、まるでこう言ってるみたいだった――」



 俺は目を細め、低い声で夜嵐のクールな雰囲気を真似する。


 
「『お前ら、俺の靴底になりたいのか?』ってな!」



 俺は夜嵐を真似してクールな顔を作ってみせた



 真剣に再現してみせた俺は、どうだと言わんばかりの顔でみんなを見た――が、その瞬間。


 
「ぶはっ!」



 最初に吹き出したのは焔華だった。腹を抱えて椅子から転げ落ちそうになりながら、大声で笑い出す。


 
「ははははっ!なんじゃその顔!お主の真似、全然クールじゃなくてただの変顔じゃぞ!」

「変顔じゃねぇ!あれは夜嵐のクールさを忠実に再現したんだ!」



 俺がムキになると、今度は貴音が目をキラキラさせながら声を上げた。


 
「お兄ちゃん、すごく面白い顔してたよ!もう一回やってみて!」

「面白い顔って言うな!お前も笑いすぎだろ!」



 さらに、雪華が口元を手で覆いながら、静かに微笑んだ。

 
 
「雷丸様……どちらかというと、それは靴底ではなく、滑って転ぶ直前の顔に近かったかもしれませんね。」

「おい!滑って転ぶ直前ってどういう例えだよ!?」


 
 とどめは麗華だ。冷静な表情を崩さないものの、肩を震わせながら鼻で笑って一言。

 

「……まぁ、頑張ったのは分かるわ。でも、夜嵐がその顔を見たら、真っ先に貴方を靴底にするでしょうね。」

「それだけは勘弁してくれ!」



 全員が大爆笑する中、俺は「何がどうおかしいんだよ!」と声を張り上げるが、誰も聞いてくれやしない。


 みんなが爆笑する中、霧羽がじっと俺を見つめていた。なんだ、この緊張感。俺の完璧な夜嵐の再現に、もしかして圧倒されたのか?


 
「……雷丸、お前のその姿勢、見事だ。」



 
「あ、そうだろ!?やっぱ俺、夜嵐の威圧感をバッチリ再現できたよな!」と俺が得意気に胸を張ると、霧羽は一瞬だけ首を傾け、真剣な目で続けた。


 
「いや、再現度ではなく……その眉間のシワの深さだ。あれほど不自然に深い皺を作れるのは、相当な才能だ。」

「えぇ!?そこかよ!?なんで眉間のシワだけピンポイントで褒めるんだよ!」



 俺が驚きの声を上げると、霧羽は頷きながらさらに真剣な顔で分析を始める。


 
「特に、あのシワが作る影だな。焚き火の光を受けて、まるで山脈のような立体感を演出していた。あれは一種の芸術だ。」

「芸術って……俺、そこまで意識してねぇよ!普通に威圧感を再現しただけなんだぞ!?」



 俺が必死で説明するが、霧羽は完全に俺の話をスルーして、自分の考察をさらに深めていた。


 
「夜嵐も、あのようなシワを作れるのだろうか……いや、むしろ雷丸、お前の方がシワに関しては一枚上手かもしれない。」

「シワの話やめろ!俺は夜嵐の雰囲気を真似したんだ!シワを競い合うつもりなんて微塵もないからな!」



 俺が声を荒げると、霧羽はふっと真顔に戻り、冷静なトーンで続けた。


 
「そうか……ならば、お前は無意識にその才能を開花させているのだな。素晴らしい。」

「いや、褒めてんのか!?それとも俺をバカにしてんのか!?どっちなんだよ!」



 俺が混乱していると、横で焔華が腹を抱えて大笑いしながら肩を叩いてきた。

 

「ははは!霧羽、お前もなかなかズレとるのう!まさか眉間のシワを褒めるとは、わしも予想外じゃ!」



 貴音も「お兄ちゃん、そんな才能があったなんて知らなかったよ!今度からもっと眉間のシワ見てみるね!」と、よくわからないフォローをしてくる。


 雪華に至っては、「これは新たな雷丸様の特技として記録しておきますね。」とメモを取り始めた。おい、みんな!そこじゃねぇだろ!


 そんな騒ぎの中、麗華が静かにため息をつきながら腕を組んで呟く。


 
「……本当に全員ズレてるわね。というか、飯田君、あなたも少し落ち着きなさい。」

「俺が悪いみたいな言い方やめろ!悪いのは絶対霧羽だろ!」



 霧羽は最後に小さく微笑み、「その姿勢、悪くない。」とだけ言って、話を締めた。


 俺は完全に釈然としないまま、焚き火の前で肩を落としたのだった。

 
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