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20.帰城

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馬車には玲奈が1人だけ乗車した。
てっきりジェイクも同乗をして、その間に話が出来るものと思っていたのに。
結局、長い長い王都への道のりで馬に乗ったジェイクと話をする機会はなかった。

「さあ着いたよ。今日は湯に浸かりゆっくりするといい。明日会おう。」

「あ、あの、ジェイク、私ね」

話しかけようとしたら手で制された。

「また明日ね。」

ジェイクはそう言うと行ってしまった。
聞きたい事は一つも聞けず彼も何も話そうとしない。あきらかによそよそしい彼の態度に不安を覚えた。

(私が逃げ出したんだもん、怒らないわけないわ。それにルナはどうしてるんだろう?)

*****

翌日、約束通りジェイクの執務室で会う事が出来た。

「さて、玲奈。城の自室にいたはずが森に居た経緯を教えてくれ。」

リュウキの使いのコウキが現れて一緒にコウライ国へ向かっていた事、ルナの事を話した。

その間、ジェイクは一言も話さなかった。

「黙ってコウライ国へ行こうとした事は悪かったわ。ルナの事は本当に不本意だったの。まさかコウキが斬りつけるなんて、、ルナは大丈夫なの?」

「君はこの国を出たかったんだね?」

「私は私の世界に帰りたかっただけよ。コウライ国の「貴人の鳥居」に行けば帰れると思ったけど、国を出るのを許してくれなかったわ。だからよ。だからコウキに付いてったのよ。」

「玲奈が向かっていたのは別の隣国だ。カラダン王国との国境だったんだ。コウライ国から客人が来ていたので、そう言えば付いて行くだろうとエサにされたんだろうな。」

「えっ?!騙されたって事?」

「そうだ。山を越えれば隣国カラダン王国に入っていた。そうなると追跡は難しかった。そんなにこの国が俺の側は嫌なのか?」

ジェイクはいつになく真剣な顔で聞いてきた。玲奈は深いため息をついた。

「ジェイクやこの国が嫌いだ好きだじゃ無い。何度も言ってるわ。私は帰りたい。帰してくれないのはジェイクでしょ?」

堪らず涙が溢れてきた。

「そうだな。元は俺のヘマでピンチになったのをレナが道を開いて助けを、、玲奈を呼んだった。」

「そうよ!もうジェイクは助かったわ。それから毎日、私は貴族の見せ物よ。もう耐えられない。私を帰して。お願い。」

キツく握られていた拳を机に叩きつけた。

「玲奈が城から居なくなった事で反省したんだ。俺が王子で王命とはいえ国の為に玲奈を縛り付けてしまった。正直、一年程、滞在してくれたら国が潤うと思っていた。もう誤魔化さない。
これから紫陽花の所へ連れて行くよ。」

「そんな、、誤魔化していたなんて。見損なったわ。ジェイクのバカ!」

「すまなかった。」

再び謝罪を述べると玲奈を外へ誘った。

「今から外へ出よう。」
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