異世界の赤髪騎士殿は、じゃじゃ馬な妻を追いかける

牡丹

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貴方の帰りを側で待つ(前半)

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「ケイコ、もう一度言ってくれ。」

俺は、聞き間違いでないか?と思った。
今日は、ケイコが"元の世界"へ一年に一度の里帰りの日だ。
元夫君との約束でケイコの子供達と会う為に何年も続けている。

「だからね、そろそろ止めようと思うの。2人とも結婚をして子供も産まれたのよ。あの子達を側で見守ってくれる人がいるからもう安心だわ。」

「だからと言って、お前も楽しみしているのにか?」

彼女は首を振り、ため息をつく。

「私は失踪をした事になっているでしょ?孫は大きくなり来年には私達の事を誰かに話す事が出来るわ。そうなるとおかしな事になるでしょ?」

なる程な。
一体誰と会ってたんだ?と怪しまれる。

「それに家族に秘密を持ち続けるのは心苦しいはずよ。」

「お前が納得するなら良いが子供達の気持ちも大事にしろよ。」

俺はいつでもお前の側にいるからな。と
彼女の手を強く握った。
軽く頷いた彼女は、遠くを見つめて微笑んでいた。


*****

「危ない!」

キャー!

ケイコの子供達と公園で会い、俺は丁度、冷たい飲み物を買って戻った時だった。
ケイコの長女のサエの息子ミノルが猫を見つけて階段を走ってしまい頭から落ちかけた。とっさにケイコがかばって転落をした。

「お母さん!!」

子供の泣く声と母親に呼びかけるサエの大声。
救急車が呼ばれ病院へ運ばれた。

幸いミノルはかすり傷だったがケイコの意識が戻らない。
頭を打った時の影響だそうだ。
右手の骨折と右足の打撲もあり集中治療室にいる。

サエと息子のユタカと一緒に集中治療室に入る。短時間の面会が許された。
こんな事になるなんて。途方にくれてしまう。

「眠ったままだったわね、
マーベリック、一旦ホテルへ戻って。私達も帰るから。意識が戻ったら連絡が入るから直ぐに知らせるわ。」

「しかし、」

「約束するから。ここに居ても仕方がないんだって。」

サエは首を振り自分にも言い聞かせた。

ホテルに戻っても大きな不安で寝付けない。
ケイコが永遠に意識が戻らなかったら?俺はどうする?
良からぬ事を考えてしまう。

*****

翌日、サエから意識が戻り個室病室へ移ったと連絡が入った。
急ぎ病院へ会いに行く。

コンコンコン

「はい。」

サエが一旦廊下に出てと言う。
泣いた目をしているが何があったのだ?

「マーベリック、何があっても落ち着いて対応してね。どうぞ会ってあげて。」

容態が急変したのか?!と思い急いで入るとケイコの長男ユタカと目が合うが涙で濡れていた。
彼女の側に座り手を握る。
ベッドに横たわる彼女が驚いてビクリとした。

「どちら様?」

そう言うと握った手をひっこめてしまった。
俺は一瞬、理解ができなかった。
サエがポツリと言う。

「記憶障害なの。一時的なのかずっとかわからないって。私達の事もわからないの。」

そう言うと瞳から涙がこぼれ落ちた。

何て事だ、、、
混乱するなか恐る恐る彼女に話しかけてみる。

「ケイコ、大丈夫か?痛い所はないか?」

ケイコは、頷きハッキリした声で答えた。

「手と全身あちこち痛むわ。頭もズキズキする。貴方はどなた?」

俺がわからない。。。
思わずサエの顔を見る。きっと俺もこんな顔になっているんだろうな、、、
言葉に詰まっていると、

「お母さんの旦那さん。マーベリックよ。」

サエがゆっくりと説明をした。

「貴方が夫なの?外国人なの?!」

ケイコは、ワントーン高い声で驚きの声をあげた。
目を大きく開いたまま信じられないと言う目でジロジロと視線を送ってくる。

「本当に?外国人と?」

信じられない。と隣にいるサエに再確認をしている。
俺としては複雑だ。
俺が彼女に一瞬で心を奪われた時のようにはならなかったようだな。

「手を握って良いか?」

「えっ!手を?えっと、、あっ!」

戸惑う彼女の返事を待たずに握りしめる。温かく柔らかい。いつもの手だ。

すると、スッーと彼女が俺の頬に手を添えた。
彼女が俺に甘えたりおねだりをする時の癖だ。
思っても見なかったので目を見開いてしまった。

「あら!やだわ。私たら。」

どうやら無意識だったようで、バッと手を引っ込め戸惑った顔で自分での手を見つめている。

「ケイコ、触れて良いぞ。」

「何?何?えっ!えっ~!」

恥ずかしがる彼女の手を俺の頬に触れさせてみる。
頬を染めて首を振り振りして手を引っ込められてしまった。
それから何か質問をしても自分の名前と歳位しかわからないようで、考えるように眉間に手を当てている。

コンコンコン

看護師がやって来て、当分は短時間の面会でと言われた。

「じゃー帰るわね。また明日来るから。」

子供達に続き俺も別れの挨拶をする。
いつものように彼女の頬に手を添えて口づけをする。

「何を、、突然するの!もう知らない。」

照れて真っ赤になり両手で俺を押し剥がし背中を向けられてしまった。
いつもの挨拶だったが今の彼女には通じない。

見えない壁が出来たようだ。
これからどうしたら良いのだろう?
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