異世界の赤髪騎士殿は、じゃじゃ馬な妻を追いかける

牡丹

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アルフレッド家会議

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王立騎士団総団長アルフレッド・マーベリックの家は侯爵で王族と並んで歴史の古い名家。
3つの代表貴族のうちの一つでもあり、王国の東一帯が領地である。


*****

「ケイコ、来月は一族会議だ。本邸へ帰るぞ。集まるのはアルフレッド家の義務だからお前も一緒だ。」

伝統あるアルフレッド家では、代々、3年に1度、一族代表が本邸に集まり一族会議が行われるのだ。

えっ!本邸?!出来れば行きたくないわ。
だって、マーベリックの長男モォーズイがいるから気まずい。だけど、、、

「ユイーナに一言お詫びをする機会ができたわね。」

ユイーナはマーベリックの長女で私達の結婚のせいで許嫁から破談にされてしまった。
長男のモォーズイは、縁談が破談になりかけの時、回避する為にマーベリックと別れてくれと頼んで来た。マーベリックから勝手な事をしたと謹慎をくらったのだった。

「ユイーナの事は気にしなくても大丈夫だが、お前の気が済むなら詫びよう。その時は一緒だぞ。」

そう言いながらケイコの髪に手を添える。

「ええ。ありがとう。」

私はニッコリと微笑みマーベリックの気遣いに感謝した。

「お前は俺の隣に座っているだけでいいぞ。社交もしなくていい。
ただ、一族会議に向けてクッキーを出来るだけ沢山焼いてくれ。お茶席用と土産用だ。
お前の得意な事でアピールしろ。」

悪戯っ子のようニヤリと笑った。


*****

本邸に着くと管理を任されているモォーズイが召使達を従えホールに出迎えた。

「父上、お帰りなさいませ。長旅でお疲れでしょう。会議の段取りは全て整っています。それまでごゆっくりなさって下さい。」

マーベリックがジーと無言でモォーズイを見つめている。

「お前、ケイコへの挨拶は無いのか?」

モォーズイは、一瞬、動きが止まったが直ぐに明らかな完璧な作り笑いで挨拶をする。

「ご無沙汰しております。ご健勝そうで何よりです。」

「ええ。貴方も。滞在中はお世話になりますね。」

本来なら、「母上」と頭に告げるのにやはり私の事は義母ははとは呼ばないのね。

私達は、それ以上話を繋げなかった。
マーベリックは、私達の空気にため息を吐きながら辺りを見回している。

「ユイーナは?どこだ?」

「サロンで最終チェックをしています。」

「ケイコ、逢いに行くぞ。こっちだ。」

マーベリックがグイッと私の手を握りしめ引いて行く。

サロンの扉は開いていて、一目で目を引く清楚な美人!赤毛ロングヘアーの少女が床に置かれた大きな花瓶の位置を指示していた。

コンコンコン

「ユイーナ、帰ったぞ。」

「お父様!」

笑顔で駆け寄り胸に手を置き頭を下げる貴族の挨拶をする。

「お帰りなさいませ。出迎えが出来ず申し訳ありません。
お元気そうですね。そちらが?」

と、私に視線を送り紹介を促す。

「そうだ。ケイコだ。
ケイコ、ユイーナだ。美しいだろう?
でも、見た目に騙されるなよ。弓の名手だ。」

ワハッハッと笑いユイーナがあーあと言う顔をする。

「初対面で言うなんて。お父様の意地悪!」

マーベリックはニヤニヤして彼女の頭を撫ぜる。

「良いでは無いか。皆んなお前の大人しい見た目に騙されるからな。家族にはちゃんと知らせておかないとな。」

たしかに。刺繍と読書がお似合いの少女にしか見えない。
マーベリックがジッーとユイーナを見つめ話を切り出す。

「ユイーナ、アイツと破談になった事、すまなかったな。まだあの家に未練があるのか?」

私も慌ててユイーナにお詫びを告げた。

「私達の結婚で破談になってしまって。
申し訳ありませんでした。」

「そうね。身分と不動産的には惜しいわ。」

何故かあっけらかんとして値踏みをしている。
ニヤリとして勝ち誇った顔でマーベリックに詰め寄る。

「お父様。破談にされた不名誉を被ったのです。今度のお相手は私が選びます。違存はありませんよね?」

マーベリックの片眉が上がったが、ふぅーとため息を一つ付き、

「わかった。許可する。
ただし!生活力のない奴は論外だ。」

「お父様ありがとう!」

満面の笑顔で抱きついてくる。
私がキョトンとしていると、ユイーナが私の手を取り微笑んでいる。

「貴族の義務では無く、私の好きな人と結婚するわ!フフフッ
貴方、凄いわね。この父が異世界まで追いかけたのでしょ?」

「俺はチャンスは逃さないさ。」

マーベリックは、娘相手にウインクをしてシレッと言う。

「流石はお父様。私も負けないわよ。」

そう言うと上機嫌で鼻歌を歌いながら花瓶の指示に戻っていった。
私の世界の親子では中々ない会話だわ。
私は貴方のせいでと罵られる覚悟だったのに。
婚約破棄されたばかりなのにこの明るさに戸惑っていると、マーベリックが耳元でささやく。

「だから言っただろ。ユイーナは大丈夫だと。これの夫になる奴は苦労するぞ。」

なる程、本当に私の心配し過ぎだったと妙に納得してしまった。


*****

本邸の一族会議は、分家の夫妻が揃って参加をする。
何せ3年ぶりだ。話し合う事が多い。
領地内の事から分家同士の揉め事まで、あらゆる事が家長マーベリックの下、ポンポンと判断され話が進められる。
アルフレッド家は、歴史がある一族なのに型にはまらない一風変わった家風が特徴だ。
だから家長の許しが出れば好きな仕事や身分違いの結婚も希望がかなう。

今回も分家の令息が2人やって来て家長へ直々に訴えた。熱弁を奮い、家具職人と宝石デザイナーになる事が許された。

そしてやはり家長の嫁取りについて批判や中傷の声があがる。
この国の人間は、この国の者以外と結婚はしない。だから異世界人の嫁なんてありえない。
家長マーベリックは、ぶっ飛んだ婚姻を結んだ。

「いくら自分が家長とはいえ、やり過ぎではないか?まだ隣国の町人を娶る方がマシなのでは?」

「家長の再婚のせいで長女のユイーナ嬢の縁談が破談になったと聞いたわ。我が家の年頃の子供達の婚姻に影響が出たらどうするの?」

「そうよ。何も持たない身分の者などご遠慮して欲しいわ。」

夫人が扇をパチンと鳴らすと、それを合図にあちこちから批判の声が聞こえてくる。
そんな声達にマーベリックは、

「つまらん。だからなんだ。
後継問題が出る訳でもないし。他の家から文句を言われる筋合いは無い。
次の議題!」

と全く相手にしない。
メンタルが強いわ。
私はここに座っていて既に心が折れそうで、とうとう下を向いてしまった。
そんな私を見てマーベリックが指示する。

「一息入れよう。お茶の用意を。」

飲み物と菓子が振る舞われる。

「これは?初めて見るな。」

「どれどれ。おい、サクサクしてこれは美味いぞ!」

「ちょっと!もしかして、、これって"クッキー"じゃない?」

流行に詳しい夫人が叫び声をあげる。

「えっ?あの噂の王都でも手に入りにくいと言う菓子?それがこんなに沢山!」

ソレが何なのかわると皆が夢中だ。
満を期してマーベリックが発言する。

「そうだ。これはクッキーだ。
ケイコの国のお菓子で彼女が作った物だ。」

マーベリックはニヤリとする。
その瞬間、先程からケイコを批判していた夫人達がバツの悪い顔で擦り寄ってくる。

「コホン。コホン。先程は失礼しました。
ホホホッ、こちらに来てお話しをしましょうよ!」

「貴方!良く言うわね。さぁ、こちらにいらして。
ねぇ、クッキーのお店は王都で一流ですってね。貴方が経営されているの?」

下心が見え見えだわ。
皆んな何とかクッキーのツテを作ろうと必死なのね。

イエ、私が先よ!私がと、揉め合いになる。

「えっ!ちょ、ちょっと待って。
貴方、胸元のピンは?
もしかして男爵のピンでは?」

この様な集まりには、身分を示すピンを身につけるのが慣しだ。
先程、私の事を何も持たない者と罵っていたご婦人が目ざとく見つけて青ざめている。

マーベリックが話しに割り込んできた。

「そうだ、男爵だ。国への貢献により陛下から賜った。言ってた無かったな。」

再び意地悪くニヤリとする。

「陛下からケイコは我が国にとって貴重な人材だから他国から絶対に守れ、手放すなと御言葉も頂いている。
自慢の嫁だ。離す事は無いぞ。
皆、よーく覚えておけ。」

「まぁ!そ、それは、、失礼しました。」

先程、散々、批判していた夫人達がお詫びの言葉をのべてくる。
貴族社会は身分が大事なのだ。
男爵のお陰で何とか認めてもらえたのかしら。

ドンドン!机を叩く音がする。

「ご婦人方!座ってくれ。会議を再開する!」

マーベリックが満足気に皆を着席させた。

会議は後半もサッサとテンポ良く決裁がおり議題は滞りなく終了をした。
後は夫婦で部屋の出口で見送りお土産のクッキーを渡すだけだ。

「本日はお疲れ様でございました。」

私はニッコリ微笑んでお土産のクッキーを1組づつに渡す。

「まぁ!まぁ!お土産もクッキーなの?ゴーシャスよ。ねぇ~もう一つ貰えるかしら?」

夫人達の目がギラついている。
すっかりさっきの批判は無かった事にしてずうずうしい。

男性陣からは、ねぎらいの言葉がかかる。

「いや~、流石はマーベリックだ。
今回も無事に終わったな。それに良い嫁を娶った。」

「陛下直々に御言葉を頂くとは、流石は本邸の嫁だ。」

先程、私の事をけなしていた夫人達の夫はフォローに必死だ。マーベリックに睨まれれば次回の会議で辛口の判断をされてはかなわない。

(本当に男も女も変わり身が早い!)

「ケイコ、良かったじゃないか。皆んなに頂いて。男爵殿。」

マーベリックがニヤリと笑っている。
アルフレッド家の人達が食べ物に弱い事がよーくわかった1日だった。

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