12 / 59
来訪者
しおりを挟む
近江貴嶺(おうえたかみね)
僕たちよりはずっと年上、お母さんたちよりはやや年下に見えるその男はそう名乗った。
何もない日曜日。親は早く起きて朝食を食べ、各々ゴルフの素振りや読書やら、趣味を楽しんでいたらしい。僕たち二人はまだ夢の中。小学校から中学校に上がって、まだ慣れない生活の疲れをとるべく、朝寝坊を楽しんでいた。
そんな幸せなまどろみの中、起こしに来た母の顔はいつもと別人のように重苦しい、暗い雰囲気を漂わせていた。僕らも交えて話さなきゃならないらしい。初めましてな親戚と。
僕らは親戚という存在を知らなかった。
叔父さん、叔母さん、いとこって何?よく晴空の友達が話していた「従兄弟と遊んだ」「従兄弟が泊まりにきた」
なんでも、親同士が兄弟姉妹な所の子供同士をそう呼ぶらしいが、そんな存在は生まれてこのかた会ったことなかったし、いると聞いた事もなかった。
「お正月は毎年おじぃちゃんちに行くんだ」
おじぃちゃん?おばぁちゃん?僕たちにそんな存在がいるなんて考えた事もなかった。
世の中にはそんな存在、血縁がいるということを知っても、別に、お母さんがいてお父さんがいて、そして晴空がいれば十分だった。じっくり話しあったわけでもないけど、晴空もそう思ってたみたいだった。
そんな僕たちの前に突然現れた、近江貴嶺という従兄弟。何しに来たんだろう。お母さんの感じからして、良い知らせではない予感しかしなかった。
家族と貴嶺さんの5人で和室のローテーブルの周りに座る。僕はなるべく晴空に近づいて座った。いつでも触れるくらい近く。なんとなく、守らなきゃって気がしたから。
「さて。役者は揃ったようだから話始めさせてもらうな。単刀直入に訊く。どっちが視える方だ?」
「貴嶺さん、私たちは実家とは縁を切って静かに暮らしてるのでその話は……」
「劣性は黙っときな。縁を切った?切ったと思ってるのは自分たちだけだろ。逃げ出しただけなんだから。劣性の従兄弟同士でさ」
「貴嶺さん!」
「子どもたちは知らないわけ?お父さんとお母さんは元々従兄妹同士なんですよ、従兄妹同士で島から逃げ出して子供拵えたんですよって」
お父さんとお母さんが従兄妹…。初めて聞く話だった。
「従兄妹だから何だって言うんだ?結婚できるから結婚したんだろ?」
晴空はすぐ適応したらしい。僕は…僕は、自分がどう感じたのか分からない。
「問題はそこじゃなくてさ、劣性同士の間に出来た双子の子ども。どちらか逸材だろ?どっちだ?どっちが視えてる?」
「いつざい?そんな言葉は聞いた事はない。俺と凪はただの一卵性の双子だ」
「お前ら本当に親から何にも聞いてないんだな。なんで親戚がいないのかって疑問にも思わなかったのかよ」
「それは…考えたことはあったけど、一度聞いた時にお母さんが困った顔をしてたから、これは聞かなくて良い事なんだって思ってた」
「はっ。親思いなんだな」
貴嶺はバカにするかのように一瞬だけ嗤った。
「じゃぁ、もう一度聞き方を変える。どちらが、人以外の何かが視える方だ?」
「貴嶺さん!うちの子達は、劣性の私達から産まれたせいか二人とも何も見えたことがないんです。親に隠してる様子もありませんし、小さい頃も…」
「嘘だな。この家にそこそこの力をもつ者がいるって、あのばぁさんが言ったんだ。近江家は力を持ったものも持たないものも、家からは逃れられないんだよ。あのばぁさんには分かっちまうんだからな」
「力を持っていたとしても、その力は表面に出てないようです!お願いですから、私達家族の事は放っておいて下さい。あそこから離れて静かに暮らしているだけなんです」
「だからさ。それが気にいらねんだよ。誰も本家からは逃れられないのに、自分たちだけトンズラこいたってのがよ。いいぜ、逸材だけこっちに渡せば。残りの劣性三人は家族仲良くここで今まで通り暮らしなよ」
「本当に力はないんです。お願いですから1人も連れていかないで下さい、静かに平和に、邪魔はしませんから、お願いですから」
お父さんとお母さんが必死で今の生活を守りたいのが伝わってきた。
お父さんは仕事で忙しく会えるのは日曜くらい、平日は僕たちよりも早く起きて仕事に行き、帰りも僕たちが寝た後が多い。疲れた顔をしてても、都合が良い時にはキャッチボールをしてくれた。誕生日はどうにかみんなで夕飯を食べようと、早く帰ってきてくれた。
お父さんもお母さんも大好きだった。その二人が実家の事を持ち出され困っている。家族には困らないで笑っていてほしい。あいつが邪魔なんだ。
「…めてよ……もう!やめて!」
白く温かいものに包まれた感じがした後、貴嶺さんは勢いよく後ろの壁に叩きつけられていた。
「いって~、覚醒してるし力強いじゃんかよ。一先ず今日は引く。双子の大人しい方、凪だったな。また来るからな」
何が起こったのか起こしたのか分からないままに、僕は気を失った。
僕たちよりはずっと年上、お母さんたちよりはやや年下に見えるその男はそう名乗った。
何もない日曜日。親は早く起きて朝食を食べ、各々ゴルフの素振りや読書やら、趣味を楽しんでいたらしい。僕たち二人はまだ夢の中。小学校から中学校に上がって、まだ慣れない生活の疲れをとるべく、朝寝坊を楽しんでいた。
そんな幸せなまどろみの中、起こしに来た母の顔はいつもと別人のように重苦しい、暗い雰囲気を漂わせていた。僕らも交えて話さなきゃならないらしい。初めましてな親戚と。
僕らは親戚という存在を知らなかった。
叔父さん、叔母さん、いとこって何?よく晴空の友達が話していた「従兄弟と遊んだ」「従兄弟が泊まりにきた」
なんでも、親同士が兄弟姉妹な所の子供同士をそう呼ぶらしいが、そんな存在は生まれてこのかた会ったことなかったし、いると聞いた事もなかった。
「お正月は毎年おじぃちゃんちに行くんだ」
おじぃちゃん?おばぁちゃん?僕たちにそんな存在がいるなんて考えた事もなかった。
世の中にはそんな存在、血縁がいるということを知っても、別に、お母さんがいてお父さんがいて、そして晴空がいれば十分だった。じっくり話しあったわけでもないけど、晴空もそう思ってたみたいだった。
そんな僕たちの前に突然現れた、近江貴嶺という従兄弟。何しに来たんだろう。お母さんの感じからして、良い知らせではない予感しかしなかった。
家族と貴嶺さんの5人で和室のローテーブルの周りに座る。僕はなるべく晴空に近づいて座った。いつでも触れるくらい近く。なんとなく、守らなきゃって気がしたから。
「さて。役者は揃ったようだから話始めさせてもらうな。単刀直入に訊く。どっちが視える方だ?」
「貴嶺さん、私たちは実家とは縁を切って静かに暮らしてるのでその話は……」
「劣性は黙っときな。縁を切った?切ったと思ってるのは自分たちだけだろ。逃げ出しただけなんだから。劣性の従兄弟同士でさ」
「貴嶺さん!」
「子どもたちは知らないわけ?お父さんとお母さんは元々従兄妹同士なんですよ、従兄妹同士で島から逃げ出して子供拵えたんですよって」
お父さんとお母さんが従兄妹…。初めて聞く話だった。
「従兄妹だから何だって言うんだ?結婚できるから結婚したんだろ?」
晴空はすぐ適応したらしい。僕は…僕は、自分がどう感じたのか分からない。
「問題はそこじゃなくてさ、劣性同士の間に出来た双子の子ども。どちらか逸材だろ?どっちだ?どっちが視えてる?」
「いつざい?そんな言葉は聞いた事はない。俺と凪はただの一卵性の双子だ」
「お前ら本当に親から何にも聞いてないんだな。なんで親戚がいないのかって疑問にも思わなかったのかよ」
「それは…考えたことはあったけど、一度聞いた時にお母さんが困った顔をしてたから、これは聞かなくて良い事なんだって思ってた」
「はっ。親思いなんだな」
貴嶺はバカにするかのように一瞬だけ嗤った。
「じゃぁ、もう一度聞き方を変える。どちらが、人以外の何かが視える方だ?」
「貴嶺さん!うちの子達は、劣性の私達から産まれたせいか二人とも何も見えたことがないんです。親に隠してる様子もありませんし、小さい頃も…」
「嘘だな。この家にそこそこの力をもつ者がいるって、あのばぁさんが言ったんだ。近江家は力を持ったものも持たないものも、家からは逃れられないんだよ。あのばぁさんには分かっちまうんだからな」
「力を持っていたとしても、その力は表面に出てないようです!お願いですから、私達家族の事は放っておいて下さい。あそこから離れて静かに暮らしているだけなんです」
「だからさ。それが気にいらねんだよ。誰も本家からは逃れられないのに、自分たちだけトンズラこいたってのがよ。いいぜ、逸材だけこっちに渡せば。残りの劣性三人は家族仲良くここで今まで通り暮らしなよ」
「本当に力はないんです。お願いですから1人も連れていかないで下さい、静かに平和に、邪魔はしませんから、お願いですから」
お父さんとお母さんが必死で今の生活を守りたいのが伝わってきた。
お父さんは仕事で忙しく会えるのは日曜くらい、平日は僕たちよりも早く起きて仕事に行き、帰りも僕たちが寝た後が多い。疲れた顔をしてても、都合が良い時にはキャッチボールをしてくれた。誕生日はどうにかみんなで夕飯を食べようと、早く帰ってきてくれた。
お父さんもお母さんも大好きだった。その二人が実家の事を持ち出され困っている。家族には困らないで笑っていてほしい。あいつが邪魔なんだ。
「…めてよ……もう!やめて!」
白く温かいものに包まれた感じがした後、貴嶺さんは勢いよく後ろの壁に叩きつけられていた。
「いって~、覚醒してるし力強いじゃんかよ。一先ず今日は引く。双子の大人しい方、凪だったな。また来るからな」
何が起こったのか起こしたのか分からないままに、僕は気を失った。
0
あなたにおすすめの小説
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
愛してやまなかった婚約者は俺に興味がない
了承
BL
卒業パーティー。
皇子は婚約者に破棄を告げ、左腕には新しい恋人を抱いていた。
青年はただ微笑み、一枚の紙を手渡す。
皇子が目を向けた、その瞬間——。
「この瞬間だと思った。」
すべてを愛で終わらせた、沈黙の恋の物語。
IFストーリーあり
誤字あれば報告お願いします!
人族は一人で生きられないらしい――獣人公爵に拾われ、溺愛されて家族になりました
よっちゃん
BL
人族がほとんど存在しない世界に、
前世の記憶を持ったまま転生した少年・レオン。
獣人が支配する貴族社会。
魔力こそが価値とされ、
「弱い人族」は守られるべき存在として扱われる世界で、
レオンは常識の違いに戸惑いながらも必死に生きようとする。
そんな彼を拾ったのは、
辺境を治める獣人公爵アルト。
寡黙で冷静、しかし一度守ると決めたものは決して手放さない男だった。
溺愛され、守られ、育てられる日々。
だが、レオンはただ守られるだけの存在で終わることを選ばない。
学院での出会い。
貴族社会に潜む差別と陰謀。
そして「番」という、深く重い絆。
レオンは学び、考え、
自分にしかできない魔法理論を武器に、
少しずつ“並び立つ覚悟”を身につけていく。
獣人と人族。
価値観も、立場も、すべてが違う二人が、
それでも選び合い、家族になるまでの物語。
溺愛×成長×異世界BL。
読後に残るのは、
「ここに居場所があっていい」と思える、あたたかな幸福。
上司、快楽に沈むまで
赤林檎
BL
完璧な男――それが、営業部課長・**榊(さかき)**の社内での評判だった。
冷静沈着、部下にも厳しい。私生活の噂すら立たないほどの隙のなさ。
だが、その“完璧”が崩れる日がくるとは、誰も想像していなかった。
入社三年目の篠原は、榊の直属の部下。
真面目だが強気で、どこか挑発的な笑みを浮かべる青年。
ある夜、取引先とのトラブル対応で二人だけが残ったオフィスで、
篠原は上司に向かって、いつもの穏やかな口調を崩した。「……そんな顔、部下には見せないんですね」
疲労で僅かに緩んだ榊の表情。
その弱さを見逃さず、篠原はデスク越しに距離を詰める。
「強がらなくていいですよ。俺の前では、もう」
指先が榊のネクタイを掴む。
引き寄せられた瞬間、榊の理性は音を立てて崩れた。
拒むことも、許すこともできないまま、
彼は“部下”の手によって、ひとつずつ乱されていく。
言葉で支配され、触れられるたびに、自分の知らなかった感情と快楽を知る。それは、上司としての誇りを壊すほどに甘く、逃れられないほどに深い。
だが、篠原の視線の奥に宿るのは、ただの欲望ではなかった。
そこには、ずっと榊だけを見つめ続けてきた、静かな執着がある。
「俺、前から思ってたんです。
あなたが誰かに“支配される”ところ、きっと綺麗だろうなって」
支配する側だったはずの男が、
支配されることで初めて“生きている”と感じてしまう――。
上司と部下、立場も理性も、すべてが絡み合うオフィスの夜。
秘密の扉を開けた榊は、もう戻れない。
快楽に溺れるその瞬間まで、彼を待つのは破滅か、それとも救いか。
――これは、ひとりの上司が“愛”という名の支配に沈んでいく物語。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる