近江一族物語1『融合』

七々虹海

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 凪は全く立ち直る様子はなかった。当たり前と言えば当たり前だ。あいつの心の支えは、また晴空と会う事、晴空の元に帰る事の一択だった。どうしたら立ち直れるのか。

 忘れる必要はないんだ。時間が解決してくれるって解決法もあるにはある。
 とりあえず実家ではなく俺の所有するマンションに住まわせるのは良い選択だったと思ってた。
 俺の所有するなんて言っても、用意してくれたのは俺の上客だったとある議員さんの秘書なんだけどな。あのおっさんはシた後すぐ寝る癖があったから秘書と話す時間が多く持てたのはラッキーだった。

 智恵さんがしょっちゅう来てくれるのはあまり良いとは思えなかったが、確かに凪は自分から食べようとしなかったから母親が心配して来るのは当然といえば当然。助かっていると言えば助かってるが、晴空を思い出すような物とか人はあまり接触してほしくなかった。


 全く、力が無くなったはずのばぁさんが急に『視えた』とか言い出して智恵さんとこの双子のどっちか力があるとか言い出すからこんな厄介なややこしい事になったんだ。当時、もうじき俺が島から一人で逃げ出して本土に住む手筈は整っていたのに。
 視えたとか言って、新たに俺の物語に登場人物増やすからこんな厄介なことになった。     

 あの爆発の中、ばぁさん達は生きてるんだろうか。火の回りはそんなに速くなかった気がするから逃げただろう。しぶとそうだからな、ばぁさんも美智さんも。願わくばもう二度と関わりたくねーな。

 こっちに来て俺はやっと自由の身なんだ。まぁな、この力を使って探偵業しようってのは、完全に一族から逃れたことにはならなそうだけど。その上凪もいる。

 凪……か。まさかこんな年下の子供に自分が振り回されるなんて、一番気になる存在になるなんて思ってもいなかった。
 気になるのはあいつが頼りないからだ。放っとけないって言葉が合ってる。そう、それだ。あいつには死んだとはいえ晴空がいる。いやいや、その前に子供だ子供。母性本能とか保護しなきゃならないって感情、そうに決まってる。

 考えを半ば強引にまとめ、ちょうどエレベーターが住んでる階にとまった。今日は少し早く帰れた。凪に報告と提案があるんだ。
 玄関を開けて「ただいま」と声をかけても、いつも通りの静けさだった。
 寝落ちしてるんだろうかと、足音をたてずにリビングに進むと、静けさの中に荒い息づかいが聞こえた。凪が、、ソファーでお尻を弄っていた。
「な、ぎ?」
「…あっ………」
びっくりしたものの、自分の部屋に駆けていくような体力は未だにないらしい。
「お帰り…なさい。ごめんなさいまだだと思って…あのさ、週の半分くらい貴峰さんに弄られてたお尻が疼くんだ…僕って最低だよね……」
 泣きそうになりながら、途切れ途切れの言葉で訴えてこられた。確かにそのくらいの頻度で弄ってた。最悪の場合を考えて。 
      
 凪の所に来そうな客は全部自分の方に回していた。一族の中でそのくらいの事が出来る位置にはいたからな。
 予約が全くなくて、凪が客の前に出なくても良い日にだけ本土に渡ってた。頼んどいた奴に晴空の様子も聞きたかったし、本土に住むようになった際の所謂コネ作りだ。
 その時急な客が入ってしまったら凪が出るようかもしれない。そんな万が一の為に備えてお尻の準備は怠らなかった。
 断じて、俺が凪に触りたかったわけじゃない。キスもしてない事を証拠にしてもいい。
 こんな年下の子供、血縁の子供、髪を長めにして周りを見たくない子供、俺にだけ少しは慣れた口調で話すようになった子供、好きなわけがない。


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