偏屈恋愛奇譚

橋本健太

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第1章 17歳 〜思春期少年少女と狂気の社会人〜

第5話 神戸旅情

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 古い西洋建築が建ち並ぶ異人館街。明治時代、日本が西洋に倣って文明開化した頃、神戸の街にも外国人の住む居住地が出来た。この異人館街もそうである。
「当時のロマン感じる。」
ロマンチシズムを感じるゆかり。湯月は持参したカメラで、風景を撮っていた。
「一つ一つが絵になる。」
しばらく異人館街を廻り、シティーループバスで南京町へと下りる。

 昼間になり、三宮は多くの人で賑わう。緑色のバスは、南京町に到着。南京町は、神戸市中央区にあるエリアで、横浜中華街・長崎新地中華街と並ぶ日本三大中華街である。赤い門をくぐれば、そこは中華世界のシャングリラ。店頭の路上で点心などの食べ歩きが楽しめる。
「ここが南京町やね。」
ヨーロッパの雰囲気のある北野異人館街と、阪急神戸三宮駅・阪神JR三ノ宮駅から南下した所にある旧居留地と対照的な、こじんまりとした中華世界。それが1つの絵となり、調和していることに、ゆかりは感銘を受ける。中へ進むと、両側から点心の美味しそうな香りがしてくる。
「楽しい所ね。ここでお昼やね?」
リーダーの美香が、予定を確認する。南京町で昼食となっており、各自の予算の範囲内で食べ歩きを楽しむ。文学好きのゆかりにとって、この南京町は1つの寸劇が書けそうな雰囲気がある。
「この路地裏、何か物語が書けそう。」
「ゆかりさん、ジャッキー・チェンの映画みたいなことは起こらへんよ。」
そんな話をしていると、同じクラスの男子の班と出会った。ボサボサ頭のひょうきんな感じの男子 彼の名は河本潤二。次長課長の河本準一と名前が僅かに似ており、お笑い好きであるコミカルなお調子者。他の男子達は、お土産売り場で、ヌンチャクやカンフースーツなどを見ている。
「おぉ!!笹川!!桂木!!楽しんでる?」
水の入ったペットボトル片手に、酔拳のような動きをする。
「酔拳のマネ?言っとくけど、格闘技を中途半端にやると怪我するで。」
ピシャリと締める美香。お調子者の潤二は、次長課長 河本が披露したモノマネをする。

ジャッキー・チェン映画「酔拳」(1978 香港)にて、師匠がピンチになり、やっと酒が間に合った時の師匠の一言。

「ハイッ、ハッ!!アイヤッ!!」
友人にペットボトルを渡してもらう。
「って、こりゃ水じゃあ!!!」

噴き出すゆかりに対し、美香が突っ込む。
「ホンマに酔ってたら、戦われへんからね。」
「ガビーン!!!!」
美香にフラれ、膝から崩れる。

 彼を後にし、ゆかり達は南京町の点心に舌鼓を打つ。
「ここは老舗のようね。」
南京町広場に着くと、目の前に行列の出来る饅頭屋があった。ここは、元祖豚饅頭のお店
老祥記である。このお店が開業したのは、1915年(大正4年)。初代店主 曹が神戸に店を開いたことが始まり。中国・天津の名物「天津包子(ティエンチン パオズー)を日本人に馴染むように考え「豚饅頭」として生み出した。ゆかり達は列に並び、豚饅頭を買う。6個入りを買い、広場のベンチに座っていただく。ゆかりは、出来たての熱々豚饅頭を一口齧る。ほんのり甘みのあるモチモチの皮と、ジューシーな餡の風味が広がる。
「うふ、美味しい…。」
官能的な声が、思わず出る。この店は、1915年(大正4年)創業なので、今年で創業110年を迎えることになる。
「115年も続いてるなんて、すごいわ。」
「そうね。大正時代からやね?ある意味ロマンチックな時代から。感慨深いわ。」
美香も、このロマンチシズムを感じていた。他にも、飲茶で小籠包・春巻き・餃子などもいただいた。
「割れ目から、お汁がジュワって…。」
「ゆかりさん、下ネタ言わないの。」
腹を満たした一行は、南京町を後にして、atoaに向かった。

 南京町から南下し、atoaに着いた。atoa(アトア)は、2021年10月29日にオープンした劇場型アクアリウムである。アクアリウム×アートと言うコンセプトで、ゾーンごとにテーマがあり、それらを形象するシンボリックな水槽が配置してある。
「幻想的ね。こういう所が出来たんや。」
美しさに息を呑む美香。ゆかりは、海遊館とはまた別の都市型アクアリウムの美しさに酔いしれる。

2階 はじまりの洞窟・生命のゆらぎ・精霊の森
まるで、海の中に入ったかのような幻想的な光景に、一同心を奪われる。夏美・里帆も楽しむ。
「エイがぐるぐる回ってる!!」
はしゃぐ夏美。ゆかりは冷静に生き物を観察する。
「カサゴ、タツノオトシゴ、ピラニア、みんな食べてしまいたい…。」
ここでは、魚以外の生き物もおり、このフロアにはワラビー・ハダカデバネズミ・ゾウガメがいた。
「亀もおるんやね。すごい。」
「ハダカデバネズミ、皮剥がされたのかしら?」

3階 探究の室・和と灯の間・奇跡の惑星・探求の回廊
探求の室には、カピバラがいた。
「カピバラや!!」
「可愛い~。」
夏美・里帆・湯月は、カピバラにメロメロになる。ゆかりは、カピバラを見つめて呟く。
「アイツ、食べたら美味いの?」
和と灯の間の足元には、錦鯉が泳いでおり、風光明媚な和の世界が広がる。
「金魚もおる。ゆかり、夏なったら、浴衣でここ行きたいな。」
「浴衣、ええよ。湯月、浴衣の下って、どないなってると思う?」
「どないなってるの?」
「ノーブラで、ふ・ん・ど・し🖤」

4階 空辺の庭
水と緑の開放的な広場、ここにはコツメカワウソ・フンボルトペンギン・カピバラがいる。ペンギンの歩く所を見て癒やされる。

 神戸を満喫し、集合時間にハーバーランドに集まる。現地解散し、ゆかりはのんびり帰路に着く。
「神戸、異国情緒と新旧入り交じる都市。南京町の町中華、ごちそうさま🖤」
阪急電鉄 神戸三宮から大阪梅田まで特急で向かい、梅田で乗り換えて、家に帰る。夕食後、部屋で和服姿で日記を書く。
「門をくぐれば、中華世界のシャングリラ。大正時代からの老舗 老祥記、豚饅頭は美味。」
ため息をつき、鉛筆の先を煙管のように吸う。
「私も、ロマンチックな恋、してみたいわ…。」
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