Strawberry Film

橋本健太

文字の大きさ
26 / 89

第26話 グラビアDVD

しおりを挟む
   2002年1月、世間は17th2002FIFAW杯日韓大会まで、半年を切り、熱狂ムードに包まれていた。21世紀の幕開けとなった2001年は、イメージビデオを撮影し、グラビアカメラマンとしての成長を感じた。
「日韓W杯楽しみや。」
仕事が始まってからは、雑誌の撮影やW杯への準備などで忙しい日々が続いた。仕事終わりに、薫は所長の奢りでいつもの店で、おでんを食べながら、喜美子と所長と共にW杯のグループステージの展望を語り合った。
「W杯は長丁場になるからな。韓国に移動しても、向こうの飯はしっかり食うことや。」
「はい。」
「今回の組み合わせやけど、面白そうなカードやな。」
「僕も、ちょっと展望が気になるんですよ。」

グループA
フランスは前回王者ではあるが、連覇は難しそう。デンマークに勢いがある。ウルグアイは南米予選で苦しんだ。初出場のセネガルが、初戦でフランスを倒せば、勢いに乗りそう。

グループB
スペインは盤石の状態。グループステージは行けそう。初出場のスロベニアは、初戦の結果次第。パラグアイはGKチラベルトが南米予選からの出場停止処分で、2試合出れない。南アフリカはどう戦うか。

グループC
南米予選で苦しんだブラジルは、比較的容易なグループに入れた。ここで調子を上げていけるか。半世紀ぶりにW杯に返り咲いたトルコ、総合力で挑む。成長著しいコスタリカは、1990以来の決勝トーナメント進出を目指す。初出場の中国は、初戦で勝ち点を取れなければ、ほぼジ・エンド…。

グループD
開催国として挑む韓国。ホームアドバンテージを活かし、まずは悲願の初勝利を目指す。新興勢力のポーランドとアメリカは、どこまでいけるか。ルイコスタ・フィーゴを擁するポルトガル。初優勝なるか。

「ここまでが、韓国で行われます。」
話し終えた薫は、コンニャク・ごぼう天・玉子を食べ、烏龍茶をグイっと飲み干した。
「初出場のチームが集中しとるな。中国は、大丈夫かいな?ブラジルやろ、相手は。」
「中国には、ボラ・ミルティノビッチという経験豊富な監督がおるけん。まぁ、初戦で勝てなきゃ、ブラジルに粉砕されて、あっという間に終わりやけん。」
「次が、日本で行われます。」

グループE
ヨーロッパ予選で苦しんだドイツ。守護神オリバー・カーンの活躍に期待。オランダを退け、粘り強さを見せたアイルランドは、その強さを発揮出来るか。ソング・エムボマ・エトォを擁し、アフリカ最強チームとなったカメルーン。ベスト4進出を目指す。アジアの雄 サウジアラビアだが、苦戦が予想される…。

グループF
死のグループとなった。バティストゥータ・ベロンなどを擁するアルゼンチンが、頭一つ抜けるか。ベッカム・オーウェン・ランパードらを擁するイングランド、ラーション・イブラヒモヴィッチらのスウェーデン、スーパーイーグルス ナイジェリアと激戦必至。

グループG
デルピエロ・ピルロ・ブッフォン擁するイタリアが、首位で突破しそう。前回3位に躍進したクロアチアは、過渡期にいる。メキシコはいけるか。初出場のエクアドルは、堅守速攻を武器に初勝利を目指す。

グループH
開催国として臨む日本。選手層は厚みを増し、悲願の初勝利を目指す。過渡期のベルギー、サイド攻撃が武器のロシア、カルタゴの鷹 チュニジアと不足は無い。決勝トーナメントへ行けるか。

「日本には行って欲しか。前回より強くなっとるけん。」
「それはある。前回よりは増してる筈…。」
薫と喜美子は、互いに食べている牛すじの串の先を合わせた。
「決定力!」
「点取れたら、勝てると!」
日韓W杯、一体どうなることやら…。

 3月になり、倉橋優子がグラビアアイドルを卒業することになり、最後のイメージビデオを撮影することになった。撮影場所は、まだ寒さが残る東北地方の最北端、青森県で行う。
「寒い~!」
「まだ雪が残っとる。」
青森県にある神聖な霊場 恐山。日本三大霊場の1つで、古くからこの地方では、死者の魂は恐山に行くと言われている。ここには、イタコと呼ばれる口寄せを行う巫女がいる。撮影前に、神聖な場所である恐山を参拝。北風が吹き、風車がクルクルと回っている。火山ガスで草木の生えないゴツゴツとした岩場が、また一層不思議な雰囲気を感じさせる。
「「「シャーマンキング」」のアンナの口寄せとかも、こういう感じやな。」
「何か、めっちゃ硫黄の臭いする…。」
ここで、神聖な意味として、優子は赤い着物を着て撮影。霊的な場所であるため、ここにあるものは持ち帰らず、写真集として収める写真だけに留めた。撮影した写真の一部に、オーブと呼ばれる謎の球体が写り込んだり、賽の河原で小さい子どものような影が写っていた。
「これ、心霊写真やな…。」
心霊写真は供養してもらい、お祓いを受けたら、何も起きなかった。

 最後のイメージビデオは、神戸で撮影。プールで競泳水着に身を包んだ優子、初めて会った時は、あどけない思春期の少女だった彼女。今は、身体も成長し、乳房は大きく育ち、桃尻は熟した桃のようであった。プールで楽しそうに泳ぐ優子。薫は余すところなく撮影し、彼女のグラビアとして最後の映像を収めた。
「今までありがとう、優子ちゃん。」
「薫さんも、カメラマンとして頑張ってください。」
こうして、倉橋優子のグラビアアイドルとして、最後の撮影が終了した。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

借金した女(SМ小説です)

浅野浩二
現代文学
ヤミ金融に借金した女のSМ小説です。

わたしの下着 母の私をBBA~と呼ぶことのある息子がまさか...

MisakiNonagase
青春
39才の母・真知子は息子が私の下着を持ち出していることに気づいた。 ネットで同様の事象がないか調べると、案外多いようだ。 さて、真知子は息子を問い詰める? それとも気づかないふりを続けてあげるか? そのほかに外伝も綴りました。

(完)百合短編集 

南條 綾
恋愛
ジャンルは沢山の百合小説の短編集を沢山入れました。

母の下着 タンスと洗濯籠の秘密

MisakiNonagase
青春
この物語は、思春期という複雑で繊細な時期を生きる少年の内面と、彼を取り巻く家族の静かなる絆を描いた作品です。 颯真(そうま)という一人の高校生の、ある「秘密」を通して、私たちは成長の過程で誰もが抱くかもしれない戸惑い、罪悪感、そしてそれらを包み込む家族の無言の理解に触れます。 物語は、現在の颯真と恋人・彩花との関係から、中学時代にさかのぼる形で展開されます。そこで明らかになるのは、彼がかつて母親の下着に対して抱いた抑えがたい好奇心と、それに伴う一連の行為です。それは彼自身が「歪んだ」と感じる過去の断片であり、深い恥ずかしさと自己嫌悪を伴う記憶です。 しかし、この物語の核心は、単なる過去の告白にはありません。むしろ、その行為に「気づいていたはず」の母親が、なぜ一言も問い詰めず、誰にも告げず、ただ静かに見守り続けたのか——という問いにこそあります。そこには、親子という関係を超えた、深い人間理解と、言葉にされない優しさが横たわっています。 センシティブな題材を、露骨な描写や扇情的な表現に頼ることなく、あくまで颯真の内省的な視点から丁寧に紡ぎ出しています。読者は、主人公の痛みと恥ずかしさを共有しながら、同時に、彼を破綻から救った「沈黙の救済」の重みと温かさを感じ取ることでしょう。 これは、一つの過ちと、その赦しについての物語です。また、成長とは時に恥ずかしい過去を背負いながら、他者の無償の寛容さによって初めて前を向けるようになる過程であること、そして家族の愛が最も深く現れるのは、時に何も言わない瞬間であることを、静かにしかし確かに伝える物語です。 どうか、登場人物たちの静かなる心の襞に寄り添いながら、ページをめくってください。

JKメイドはご主人様のオモチャ 命令ひとつで脱がされて、触られて、好きにされて――

のぞみ
恋愛
「今日から、お前は俺のメイドだ。ベッドの上でもな」 高校二年生の蒼井ひなたは、借金に追われた家族の代わりに、ある大富豪の家で住み込みメイドとして働くことに。 そこは、まるでおとぎ話に出てきそうな大きな洋館。 でも、そこで待っていたのは、同じ高校に通うちょっと有名な男の子――完璧だけど性格が超ドSな御曹司、天城 蓮だった。 昼間は生徒会長、夜は…ご主人様? しかも、彼の命令はちょっと普通じゃない。 「掃除だけじゃダメだろ? ご主人様の癒しも、メイドの大事な仕事だろ?」 手を握られるたび、耳元で囁かれるたび、心臓がバクバクする。 なのに、ひなたの体はどんどん反応してしまって…。 怒ったり照れたりしながらも、次第に蓮に惹かれていくひなた。 だけど、彼にはまだ知られていない秘密があって―― 「…ほんとは、ずっと前から、私…」 ただのメイドなんかじゃ終わりたくない。 恋と欲望が交差する、ちょっぴり危険な主従ラブストーリー。

吊るされた少年は惨めな絶頂を繰り返す

五月雨時雨
BL
ブログに掲載した短編です。

セーラー服美人女子高生 ライバル同士の一騎討ち

ヒロワークス
ライト文芸
女子高の2年生まで校内一の美女でスポーツも万能だった立花美帆。しかし、3年生になってすぐ、同じ学年に、美帆と並ぶほどの美女でスポーツも万能な逢沢真凛が転校してきた。 クラスは、隣りだったが、春のスポーツ大会と夏の水泳大会でライバル関係が芽生える。 それに加えて、美帆と真凛は、隣りの男子校の俊介に恋をし、どちらが俊介と付き合えるかを競う恋敵でもあった。 そして、秋の体育祭では、美帆と真凛が走り高跳びや100メートル走、騎馬戦で対決! その結果、放課後の体育館で一騎討ちをすることに。

父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

四季
恋愛
父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

処理中です...