Strawberry Film

橋本健太

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第27話 アジアの熱狂

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   17th2002FIFAW杯日韓大会まで、あと3週間を切った頃。薫達は、「W杯の中の日常」というテーマで、開催期間中の日本と韓国を往き来しながら、撮影を行う。班の代表者から、班の振り分けが発表された。

班長 片山康志・木下洋子
班員 浅野裕太・小山亜里沙・中山洋介
         伴場保・松本博子
ルート グループステージ 韓国
             決勝トーナメント 日本

班長 大野義昭・中塚美穂子
班員 河村太郎・香塚薫・島谷麻衣子
         棟方喜美子・輪島久実
ルート グループステージ 日本
             決勝トーナメント 韓国

日本と韓国は時差が無いので、時差ボケの影響は無い。今回はW杯史上初の共同開催&アジアでの開催である。グループステージはグループA~Dを韓国、グループE~Hを日本で開催、決勝トーナメントも半々で行う。打ち合わせを行い、撮影機材と着替えを用意。泊まり込みでの、ロングラン撮影。薫は期待と不安が入り雑じる。
(ドキドキするわ…。)
5月28日、関西国際空港にて、韓国へ向かうメンバーを見送り、国内組のメンバーは振り分けを行い、それぞれのエリアへ行く。
「私達は、グループGとHね。」
班長 中塚美穂子が率い、薫は喜美子・久実と一緒になり、このメンバーでW杯を最後まで追いかける。
「楽しみやけんね!」
「日本は、中々の難敵ちゃうか?ベルギー・ロシア・チュニジアって。」
交通費・宿泊費は会社が全額負担してくれているので、問題は無いが、移動距離が心配である。

グループG
イタリア
エクアドル
クロアチア
メキシコ
開催地 札幌・宮城・茨城・横浜・新潟・大分

グループH
日本
ベルギー
ロシア
チュニジア
開催地 埼玉・横浜・静岡・大阪・神戸・大分

日程 2002年6月3日 クロアチアVSメキシコ
                                    イタリアVSエクアドル
                      6月4日 日本VSベルギー
                      6月5日 ロシアVSチュニジア
                      6月8日 イタリアVSクロアチア
                      6月9日 メキシコVSエクアドル
                                    日本VSロシア
                      6月10日 チュニジアVSベルギー
                      6月13日 メキシコVSイタリア
                                      エクアドルVSクロアチア
                      6月14日 チュニジアVS日本
                                      ベルギーVSロシア

日程が被る場合は、じゃんけんで決める。5月30日 本社を出発した一同は、最初の目的地である札幌と新潟に、別れて行った。
「次は、6月4日。埼玉で会いましょう。」
白いハットを被った美穂子と共に、喜美子は新潟へ向かった。薫と久実は、札幌へ向かう。薫は、初めての北海道となる。
「僕、札幌初めてやねんけど…。」
「大丈夫、私は札幌行ったことあるから。」
久実は、薫より年上でしっかり者。相性は良さそうだ。

    初夏の札幌は涼しくて過ごしやすかった。宿泊先を確保し、打ち合わせをする。翌日、韓国で日韓W杯開会式が行われ、開幕戦のフランス対セネガルが行われた。現地入りしたサポーターで賑わう札幌の繁華街 すすきのに立ち寄った2人は、札幌ラーメンに舌鼓を打ちながら、テレビで観ていた。
「始まったんや。」
「セネガル、未知数やな。」
怪我人が多く、調子が出ないフランス相手に、ガンガン攻めるセネガル。30分に一瞬の隙を突き、セネガルが先制点を奪い、そのまま守りきって勝利した。
「セネガル強い…。」
「まさかの、フランス敗北?」

    番狂わせで幕を開けた日韓W杯。W杯の中の日常というテーマで、2人は札幌で撮影し続けた。W杯という世界的イベントで、多くの外国人が訪れていた。6月1日、札幌でグループEのドイツVSサウジアラビアが行われる。白いベールのような服を着た人達に、薫は話しかけた。
「Where are you from?Im Japanese photographer.」
彼らは、サウジアラビアのサポーターで、イスラム教徒である。サウジアラビアには、黒蜘蛛と呼ばれるGK モハメド・アル・デアイエを擁しており、強力なドイツの攻撃陣を封じれば、勝機アリだと考えていた。結果は8-0でドイツが圧勝。6月3日 イタリアVSエクアドルで、札幌ドームで撮影を行う。
(スゲェ…。迫力がちゃう!!)
ワールドクラスのタレントを擁するイタリアは、初出場のエクアドルを2-0と軽々と倒した。薫の中での、W杯が幕を開けた。翌日、8時に起床した2人は、チェックアウトを済ませ、飛行機で札幌から東京を経由して、埼玉に向かった。この日は平日だが、夜の開催なので、結構混雑していた。
「わー、デカいなー。」
「W杯のために作ったんやね。埼玉スタジアム2002って言うぐらいやから。」
日本代表の試合を一目見ようと、学校や会社帰りの人達も多く駆けつけた。
「市民達にとってのW杯、という感じやな。」
熱心に写真を撮る薫。しばらくして美穂子達と合流し、埼玉スタジアム2002に入った。

2002年6月4日 第1戦 VSベルギー
初の勝ち点を狙う日本、序盤はベルギーの猛攻に耐えて、前半は0-0で折り返した。
「0-0、まずまずね。」
熱気を帯びる日本サポーターのスタンド。サポーターの様子を余すところなく撮影。
後半、ベルギーのヴィルモッツに先制されたが、日本もすぐさま反撃。ロングボールに飛び出した鈴木隆行が、つま先でチョンと押したシュートが入り、同点に追い付くと、稲本潤一のゴールで逆転に成功。埼玉スタジアム2002は、大いに湧いた。
「スゲー!!!」
「このまま勝てそうね。」
最後に追い付かれたが、試合は2-2で引き分け、日本はW杯初の勝ち点を手に入れた。

    今後の日程では、6月5日と8日にグループステージがあり、薫と久実は8日の試合に向かう。9日の日本VSロシアで横浜に移動。10日のチュニジアVSベルギーで全員が大分に集合。13日は横浜、14日は大阪に移動。14日の試合が終わり次第、14連泊は終了。1度帰宅して、準備をしてから、15日に関西国際空港で韓国へ向かう。服はコインランドリーで洗濯しており、試合のない日は、OFFで現地を観光して、オンとオフを切り替えている。薫と久実は、茨城に移動。8日のイタリアVSクロアチアを観戦。イタリアは0-1で敗れ、落胆するサポーター達の様子を撮影した。
「イタリア、優勝難しいやろな。」

     9日の朝に茨城を出て、横浜に移動。横浜中華街やみなとみらい21などを観光しながら、他国のサポーターの様子を撮影。中華街で飲茶を楽しみに、夕方に横浜国際総合競技場へ向かう。
「サポーター、ようけおるわね。」
「日本のW杯初勝利の瞬間に、立ち会いたいな。」

2002年6月9日 第2戦 VSロシア
W杯初勝利を狙う日本は、宮本恒靖をスタメンにして臨んだ。ロシアのサイド攻撃を徹底的に封じて、チャンスを作った。前半は0-0で折り返した。
「イケそう、薫君?」
「0-0やから、後半の立ち上がりに勝負仕掛けて、点取ったら勝てる。」
その言葉通り、53分に稲本潤一のゴールで先制。スタジアムは大歓声が湧いた。日本サポーターの様子を撮影し、薫と久実も熱狂する。その後、ロシアの反撃をしのぎ、1-0で日本はW杯初勝利を挙げた。W杯初勝利に湧く日本サポーターの熱狂ぶりを、カメラに収め、余韻覚めやらぬまま、2人はホテルに戻った。
「やったわね。W杯初勝利の瞬間に立ち会えたのは、ホンマにラッキーよ。」
「フランスW杯は、全敗やったからな。確実に日本は強くなってる。」
10日の朝に、大分に移動し、チュニジアVSベルギーを観戦。日本の決勝トーナメント進出は、最終戦に委ねられた。薫と久実は、この後の日程で、大分に残り、大阪に移動。14日の日本VSチュニジアが終わり次第、社宅に帰宅。15日に韓国に移動というハードスケジュールである。

    グループステージは、大詰めを迎え、最終戦は白熱の戦いが繰り広げられた。13日のメキシコVSイタリアは引き分け、両者共に決勝トーナメント進出。
「さて、日本はどうなるかやな。」

2002年6月14日 第3戦 VSチュニジア
14日に大阪に戻り、日本VSチュニジアを観戦。日本は、森島寛晃と中田英寿のゴールで2-0と快勝。見事、2勝1分 勝ち点7 5得点2失点で1位通過を果たした。
「よっしゃー!!!!」

決勝トーナメントのカードは、こうなった。

韓国開催(3位決定戦も込み)
ドイツVSパラグアイ
メキシコVSアメリカ
スペインVSアイルランド
韓国VSイタリア

日本開催(決勝も込み)
ブラジルVSベルギー
イングランドVSデンマーク
セネガルVSスウェーデン
日本VSトルコ

グループステージで撮影した写真は、全て現像して、社宅にて無くさないように保管。社宅にて、束の間の休息。
「はぁ~。風呂上がりのイチゴミルクが美味い~。」
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