Strawberry Film

橋本健太

文字の大きさ
34 / 89

第34話 2004ハード

しおりを挟む
    グラビアとアジアカップの撮影を並行しながら、真夏の中国と香港を駆け回った。日中関係が悪くなっていた頃で、日本はグループステージでは、中国人達から大ブーイングを浴びせられていた。それでも、グループDで2勝1分 勝ち点7 5得点1失点と首位通過を果たした。流石に薫の顔にも、疲労の色が見えてきた。翌日の朝食の際、ウトウトしていた薫は、そのままマカロニスープに顔を突っ伏してしまった。
「熱ちぃ!!!」
「大丈夫ですか、薫さん…。」
「顔が土気色ですよ…。」
疲労が溜まってきた薫に、紗良と里沙も心配を寄せた。香港名物のミルクティーと珈琲を半々で混ぜた鴛鴦茶(インヨンティー)をグイッと飲んで、カフェインで目覚めた。
「よし!!行くか!!」
撮影では、香港島の郊外 リパルス・ベイというビーチに赴いた。ビル群や都会の喧騒から離れ、真夏の青い海と空に薫の心も晴れる。
「香港にこんなビーチあったん?!」
「レパレス・ベイを知らないのかい?」
リパルス・ベイは、香港島南区にある海湾で、海水浴場として有名である。チェリーとファンは、九龍半島出身で、香港島のリパルス・ベイにもよく行っている。水着に着替えた一同に、薫はジャッキー・チェン並みにコミカルなリアクションを取った。
「ワーオ!チェリーとファン、セクシーだ~!」
純白のビキニに身を包み、髪を団子状に結い、ムッチリとした乳房と尻が際立つ。
「興奮してます?薫さん?」
「もしかして、チンチ○大きくなってます?」
照れる薫をからかう2人。レパレス・ベイの撮影は上手く行った。

 翌日、アジアカップ決勝トーナメントが行われる重慶に赴いた。日本の相手は、初出場のヨルダン。グループステージでは、韓国・アラブ首長国連邦・クウェート相手に1勝2分と健闘した。

2004年7月31日 準々決勝 VSヨルダン
 日本は、初出場のヨルダンの堅守に苦しみ、11分にモハメド・シェルバイエに先制された。14分に鈴木隆行のゴールで同点に追いつくも、ヨルダンに苦戦。未知の新興勢力の前に、延長戦でも決着つかず、勝負はPK戦へ。ヨルダンは2人連続で決めたが、ヨルダンは2人連続で決めたが、日本は中村俊輔・三都主アレサンドロが立て続けに外した。すると、日本のキャプテン 宮本恒靖が審判に抗議し、エンドを変えさせた。すると日本は3人目で決め、ヨルダンの3人目を川口能活がセーブ。ここから川口能活がファインセーブを連発し、最後は宮本恒靖が決め、1-1 PK4-3でヨルダンを退けた。
「この劇的な展開。スゴい…。」
「川口、神がかっていた。」

 8月になり、広州・香港での撮影は、ハイテンションで撮りまくった。チャイナドレスでの撮影や水着などを収めた。香港では、ネオン看板ひしめくネイザンロードをバスで爆走しながら撮影。
「うわー。すごい!」
「薫さん、看板来てます!」
「おわー。危な、痛ぇ!!」
納得のいく写真も撮れ、刺激的な日々は充実した。8月3日は、アジアカップで済南に赴いた。中国東方の、黄河の下流に位置する山東省へ移動。山東省では、青島市に並ぶ主要都市・済南市も蒸し暑く、かつて日中戦争で日本が侵攻したこともあり、相変わらずの大ブーイングにさらされた。

2004年8月3日 準決勝 VSバーレーン
 準決勝では、新興勢力のバーレーンと対戦。カウンターを武器に躍進したバーレーンの勢いに押され、6分にアル・フバイルのゴールで先制され、前半は0-1で折り返した。
「バーレーン強い…。」
「後半や、後半で勝負や。」
薫達は、祈る思いで後半に懸けた。後半早々、中田浩二のゴールで追いつき、玉田圭司のゴールで逆転した。しかし、遠藤保仁が退場し、1人少なくなったところを突かれ、71分にアル・フバイル、85分にナーセルに決められ、逆転を許す。厳しい状況の中、日本は諦めなかった。90分に中澤佑二のゴールで追いつき、93分に玉田圭司のゴールで逆転し、4-3で勝利。2大会連続で決勝進出。
「やったー!!!」
手に汗握る展開に、薫は鳥肌が立っていた。
(これはスゴいぞ。)

 残る上海での撮影は、日中交流ということで、浴衣とチャイナドレスで撮影。これにて、中国&香港でのグラビア撮影は、無事に終了した。
「大家、謝謝!!」(みんな、ありがとう!!)
編集を終わらせ、写真集に使う写真がまとまった。8月7日、いよいよ決勝戦。中国の首都 北京に乗り込んだ。万里の長城・紫禁城が聳え立ち、天安門広場には、建国の父 毛沢東の肖像画が見つめる。
「とうとう来ましたね。」
「大冒険も、ここで終わり。」
北京にある北京工人体育場の周りは、多くの中国人サポーター達が集まっていた。決勝の相手は、開催国 中国。初戦からここまで北京で大声援を受けて悠々と勝ち進んだ中国と、重慶と済南で大ブーイングされながらも逆境を跳ね除けてきた日本と、対照的な両者の一戦。

2004年8月7日 決勝 VS中国
「中国、加油!!!」(中国、頑張れ!!!)
「小日本罵!!!!」(小日本、バーカ!!!!)
中国人サポーターの中国への大声援と、日本への大ブーイングが響く北京の真夏の夜、中国との決勝が始まった。日本は22分に、福西崇史のゴールで先制。しかし、33分に李明のゴールで同点に追いつかれ、前半は1-1で折り返した。後半、日本は65分に中田浩二のゴールで勝ち越し、91分に玉田圭司のゴールで突き放した。3-1で勝利。逆境を跳ね除け、国内組が意地を見せた日本。アジアカップ連覇を成し遂げた。
「やったー!!!!」
「してやったぜー!!!」
厳戒態勢の中、悠々と北京を後にした。翌日、上海のホテルをチェックアウトし、午後の飛行機で日本へ帰国。22連泊を終え、そこからは6日間のOFFに入った。

 8月下旬に写真集を出し、中国&香港での撮影は大成功に終わった。グラビア撮影をし続け、薫はある夢を抱いた。
「グラビア写真集を出すぜ!!」
それは、グラビアアイドル5人を異なる場所で撮影し、イメージビデオを1人ずつ作成する。
「題して、『Strawberry Film』。」
壮大な計画が、動き出した。2004年は、病と怪我を克服し、海外でのグラビア撮影を果たし、薫は大きく成長した。カメラマンとして1人前になった薫。夢が大きく膨らんだ。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

借金した女(SМ小説です)

浅野浩二
現代文学
ヤミ金融に借金した女のSМ小説です。

わたしの下着 母の私をBBA~と呼ぶことのある息子がまさか...

MisakiNonagase
青春
39才の母・真知子は息子が私の下着を持ち出していることに気づいた。 ネットで同様の事象がないか調べると、案外多いようだ。 さて、真知子は息子を問い詰める? それとも気づかないふりを続けてあげるか? そのほかに外伝も綴りました。

(完)百合短編集 

南條 綾
恋愛
ジャンルは沢山の百合小説の短編集を沢山入れました。

母の下着 タンスと洗濯籠の秘密

MisakiNonagase
青春
この物語は、思春期という複雑で繊細な時期を生きる少年の内面と、彼を取り巻く家族の静かなる絆を描いた作品です。 颯真(そうま)という一人の高校生の、ある「秘密」を通して、私たちは成長の過程で誰もが抱くかもしれない戸惑い、罪悪感、そしてそれらを包み込む家族の無言の理解に触れます。 物語は、現在の颯真と恋人・彩花との関係から、中学時代にさかのぼる形で展開されます。そこで明らかになるのは、彼がかつて母親の下着に対して抱いた抑えがたい好奇心と、それに伴う一連の行為です。それは彼自身が「歪んだ」と感じる過去の断片であり、深い恥ずかしさと自己嫌悪を伴う記憶です。 しかし、この物語の核心は、単なる過去の告白にはありません。むしろ、その行為に「気づいていたはず」の母親が、なぜ一言も問い詰めず、誰にも告げず、ただ静かに見守り続けたのか——という問いにこそあります。そこには、親子という関係を超えた、深い人間理解と、言葉にされない優しさが横たわっています。 センシティブな題材を、露骨な描写や扇情的な表現に頼ることなく、あくまで颯真の内省的な視点から丁寧に紡ぎ出しています。読者は、主人公の痛みと恥ずかしさを共有しながら、同時に、彼を破綻から救った「沈黙の救済」の重みと温かさを感じ取ることでしょう。 これは、一つの過ちと、その赦しについての物語です。また、成長とは時に恥ずかしい過去を背負いながら、他者の無償の寛容さによって初めて前を向けるようになる過程であること、そして家族の愛が最も深く現れるのは、時に何も言わない瞬間であることを、静かにしかし確かに伝える物語です。 どうか、登場人物たちの静かなる心の襞に寄り添いながら、ページをめくってください。

JKメイドはご主人様のオモチャ 命令ひとつで脱がされて、触られて、好きにされて――

のぞみ
恋愛
「今日から、お前は俺のメイドだ。ベッドの上でもな」 高校二年生の蒼井ひなたは、借金に追われた家族の代わりに、ある大富豪の家で住み込みメイドとして働くことに。 そこは、まるでおとぎ話に出てきそうな大きな洋館。 でも、そこで待っていたのは、同じ高校に通うちょっと有名な男の子――完璧だけど性格が超ドSな御曹司、天城 蓮だった。 昼間は生徒会長、夜は…ご主人様? しかも、彼の命令はちょっと普通じゃない。 「掃除だけじゃダメだろ? ご主人様の癒しも、メイドの大事な仕事だろ?」 手を握られるたび、耳元で囁かれるたび、心臓がバクバクする。 なのに、ひなたの体はどんどん反応してしまって…。 怒ったり照れたりしながらも、次第に蓮に惹かれていくひなた。 だけど、彼にはまだ知られていない秘密があって―― 「…ほんとは、ずっと前から、私…」 ただのメイドなんかじゃ終わりたくない。 恋と欲望が交差する、ちょっぴり危険な主従ラブストーリー。

吊るされた少年は惨めな絶頂を繰り返す

五月雨時雨
BL
ブログに掲載した短編です。

セーラー服美人女子高生 ライバル同士の一騎討ち

ヒロワークス
ライト文芸
女子高の2年生まで校内一の美女でスポーツも万能だった立花美帆。しかし、3年生になってすぐ、同じ学年に、美帆と並ぶほどの美女でスポーツも万能な逢沢真凛が転校してきた。 クラスは、隣りだったが、春のスポーツ大会と夏の水泳大会でライバル関係が芽生える。 それに加えて、美帆と真凛は、隣りの男子校の俊介に恋をし、どちらが俊介と付き合えるかを競う恋敵でもあった。 そして、秋の体育祭では、美帆と真凛が走り高跳びや100メートル走、騎馬戦で対決! その結果、放課後の体育館で一騎討ちをすることに。

父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

四季
恋愛
父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

処理中です...