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第83話 ラストW杯
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6月になり、梅雨のジメジメした日々が続く。そんな中、薫は博信からオファーを受け、21th2018FIFAW杯ロシア大会にカメラマンとして、博信達に同行する。今大会の開催期間は、2018年6月14日から7月15日までである。世界一の面積を誇るロシア連邦、開催都市は11都市。
カリーニングラード・カザン・モスクワ・ニジニーノヴゴロド・サンクトペテルブルク
サマーラ・サランスク・ソチ・ウォルゴグラード・ロストフ・エカテリンブルグ
全てヨーロッパ側に位置するが、面積が広いため、移動距離は長くなる。薫は、ロシアは初めてであり、かつて世界初の社会主義国家のソヴィエト社会主義連邦だった頃の印象が強く、あまりよく思っていない。
「スターリンとか、ゴルバチョフの印象が強いわ…。ロシアって、美味いモンあったっけ?」
「ピロシキとかボルシチはあるで。」
「ピロシキ?パンみたいなヤツか。」
博信から、航空券とチケットを受け取り、準備を進める。6月12日、薫は家族と社員達に見送られながら、ロシアへ飛び立った。
「じゃあ、皆行ってくるから。今回が最後のW杯の仕事になる。私がいない間、皆頼んだよ。」
モスクワの空港に着き、博信達と合流する薫。社会主義国家の面影のある建物や雰囲気に、薫はたじろぐ。大会スケジュールを確認し、日本代表の試合が無い日は、W杯の中の日常と言うテーマで撮影を行なう。6月14日、モスクワにて、開幕戦 ロシアVSサウジアラビアが行われた。7万人以上の観客が見守る中行われ、12分に先制したロシアは、前半を2-0で折り返す。70分以降、一気に畳み掛けて、終わってみれば5-0で圧勝した。
「ロシア強いな。日本は、コロンビア・セネガル・ポーランドか。初戦が大事やな。」
試合が無い日は、他国のサポーターの熱狂ぶりを撮影し、ロシア料理に舌鼓を打つ。
「ピロシキ美味いな。」
「ここまで、アジア勢は1勝3敗か。日本やな、頑張れ。」
6月19日、日本の試合が始まる。前日にサランスクに移動。サランスクはロシア西部にあり、モルドヴィア共和国の首都。閑静な都市である。
「いい雰囲気やな。」
2018年6月19日 第1戦 VSコロンビア
前回W杯で敗れたコロンビアとの、リベンジマッチとなる。日本は立ち上がりに速攻を仕掛け、開始3分に香川真司のシュートを手でブロックし、ハンド+決定的得点機会の阻止で、コロンビアDF カルロス・サンチェス・モレノが一発退場となった。
「おぉ!!いきなり大チャンスや!!」
「蹴るのは、香川真司か。頼むで。」
固唾を呑んで見守る薫と博信。キッカーは香川真司。これを落ち着いて決め、6分に日本が先制する。1人少なくなり、有利になったかと思われたが、地力ではコロンビアが上。徐々に押し込まれ、39分にフリーキックを与えてしまい、これをキンテーロに決められ、同点に追いつかれる。前半は1‐1で折り返した日本、後半、攻撃の選手を投入し、勝ち越しを狙う。73分に、日本はコーナーキックを獲得。蹴るのは、本田圭佑。ゴール前にクロスを上げ、これを大迫勇也が頭で合わせ、日本が勝ち越しゴールを挙げた。そのまま逃げ切り、2-1で勝利。W杯史上初のアジア勢が南米勢に勝利した試合となった。
「やったー!!!!」
日本の勝利を喜ぶ薫と博信。次戦はセネガル。17th2002FIFAW杯日韓大会で、初出場ながら前回王者のフランスを破り、ベスト8まで躍進した。16年ぶりのW杯、監督はその当時キャプテンだったシセ。
「次は、セネガルやな。2002の時はスゴかったで。」
「懐かしいな。日韓W杯か。久美と喜美子と一緒に冒険したな。」
グループステージ第1戦終了。前回王者ドイツが敗れ、アルゼンチンが初出場のアイスランドに引き分ける波乱があった。
薫は、第2戦の会場があるエカテリンブルクに行って撮影する。ロシア連邦中央部のスヴェルドロフスク州の州都で、町の名はピョートル1世の妻 エカチェリーナ1世に因む。大都市であり、高層ビルが並ぶ。
「エカチェリーナ1世か。ピョートル1世は聞いたことあるな。清の康煕帝とネルチンスク条約結んだんやな。」
裏街で、麻薬取引の光景を目撃した。
「こんな闇もあるんやな。」
2018年6月24日 第2戦 VSセネガル
共に初戦で勝利し、決勝トーナメント進出に大きく近づくことになる両者の一戦。アフリカの雄 セネガルと対戦。パワーに押され、11分にサディオ・マネに決められ、先制を許す。それでも、34分に乾貴士がサイドからの切り込みでシュートを放ち、同点に追いつく。前半は1-1で折り返す。71分にムサ・ワゲに勝ち越しゴールを決められるが、諦めずに攻め続け、78分に本田圭佑が決めて、同点に追いつく。そのまま2-2で引き分け、勝ち点で並ぶが、フェアプレーポイントの関係で日本が首位に立った。
「よし、ナイスゲーム!!」
グループステージ最終戦が行われるヴォルゴグラードで撮影。かつて、スターリングラードと呼ばれ、第二次世界大戦の激戦区となり、21世紀にはテロ攻撃に見舞われるなど、何かと物騒な都市である。
「スターリン、社会主義の人やな。」
2018年6月28日 第3戦 VSポーランド
勝てば進出が決まる日本。ポーランドは2連敗で敗退決定。前半は0-0で折り返す。59分にペドナレクに決められ、先制される。もう一方のコロンビアVSセネガルは、1-0でコロンビアがリード。日本は、コロンビア勝利でフェアプレーポイントでセネガルを上回るという作戦で、負けている状況の中、反撃せずパス回しをする。
「何してるんや?」
「これは何かの作戦やろな。他力本願という形やけど。」
サッカー経験者の博信は、監督の意図を汲み取った。日本の消極的な姿勢にブーイングが浴びせられる中、試合は0-1で終了。コロンビアが勝利し、1勝1分1敗 勝ち点4 4得点4失点でセネガルと並び、フェアプレーポイントで上回る日本が決勝トーナメント進出。
「見事や。」
「試合に負けて、勝負に勝った。」
決勝トーナメント
ウルグアイVSポルトガル
フランスVSアルゼンチン
ブラジルVSメキシコ
ベルギーVS日本
スペインVSロシア
クロアチアVSデンマーク
スウェーデンVSスイス
コロンビアVSイングランド
ヨーロッパ10チーム、南米4チーム、アジア、北中米1チームずつと言う組み合わせになった。モスクワに戻り、博信とロシア料理に舌鼓を打つ。
・ビーフストロガノフ
・ガルブツィー(ロールキャベツ)
・ピロシキ
ホロホロに煮込まれた牛肉は美味で、サクサクのピロシキとも相性が良い。
「美味いな、このピロシキ。」
「せやろ?薫と一緒に海外で飯食うのも何年ぶりやろか。」
話は、W杯のことになる。日本が初出場した1998フランスW杯から、博信はずっとスポーツカメラマンとして、W杯の開催国へ行き、リアルタイムで試合を追いかけ続けた。薫はグラビアカメラマンなので、グラビアと並行する形で、2002日韓W杯と2014ブラジルW杯を現地で撮影した。薫は、2016年に京都にStrawberry Milkと言う芸能事務所を立ち上げ、これから発展させていくという段階である。その後を考えて、薫は今回を最後に、サッカー関係の撮影は終了にする。
「そうか。まぁ、社長になったんやもんな。そっちはしっかりやれよ。」
「あぁ。せやから、今回は楽しんでいくで。日本代表と共に冒険するで。」
2人は、しばらく談笑した。
2018年7月2日 Round of 16 VSベルギー
ロストフ・ナ・ドヌに移動。日本の相手は、FIFAランキングトップ3に入る強豪ベルギー。日韓W杯以来の対戦、日本は前半は0-0で折り返した。後半に入ると、日本が猛攻を仕掛ける。48分に原口元気のシュートで先制すると、52分に乾貴士のゴールで2-0とリードを広げた。
「おぉ!!!」
「これはイケるんちゃうか?」
決勝トーナメントで、初めて得点を奪った日本。リードを守れるかと思ったが、徐々に反撃され、69分にヴェルトンゲンのゴールで1点返されると、74分に途中出場のフェライニに同点ゴールを奪われる。日本は勝ち越しを狙い、本田圭佑のコーナーキックをキャッチされ、そこからカウンターを食らい、90+4分にシャドリに決められ、万事休す。2-3と敗れ、あと一歩で準々決勝進出を逃した。
この結果に2人は呆然。しばらく言葉が出なかった。ホテルに戻り、帰国準備をする。
「俺は20年間W杯追いかけてさ、今回ここまで来たんや。あと一歩までな。ドーハの悲劇から、25年か。急成長して来たんや。」
「せやな。俺も、冒険出来て楽しかったで。ありがとうな。」
7月3日、ロシアでの大冒険を終えて、日本へ帰国した。
カリーニングラード・カザン・モスクワ・ニジニーノヴゴロド・サンクトペテルブルク
サマーラ・サランスク・ソチ・ウォルゴグラード・ロストフ・エカテリンブルグ
全てヨーロッパ側に位置するが、面積が広いため、移動距離は長くなる。薫は、ロシアは初めてであり、かつて世界初の社会主義国家のソヴィエト社会主義連邦だった頃の印象が強く、あまりよく思っていない。
「スターリンとか、ゴルバチョフの印象が強いわ…。ロシアって、美味いモンあったっけ?」
「ピロシキとかボルシチはあるで。」
「ピロシキ?パンみたいなヤツか。」
博信から、航空券とチケットを受け取り、準備を進める。6月12日、薫は家族と社員達に見送られながら、ロシアへ飛び立った。
「じゃあ、皆行ってくるから。今回が最後のW杯の仕事になる。私がいない間、皆頼んだよ。」
モスクワの空港に着き、博信達と合流する薫。社会主義国家の面影のある建物や雰囲気に、薫はたじろぐ。大会スケジュールを確認し、日本代表の試合が無い日は、W杯の中の日常と言うテーマで撮影を行なう。6月14日、モスクワにて、開幕戦 ロシアVSサウジアラビアが行われた。7万人以上の観客が見守る中行われ、12分に先制したロシアは、前半を2-0で折り返す。70分以降、一気に畳み掛けて、終わってみれば5-0で圧勝した。
「ロシア強いな。日本は、コロンビア・セネガル・ポーランドか。初戦が大事やな。」
試合が無い日は、他国のサポーターの熱狂ぶりを撮影し、ロシア料理に舌鼓を打つ。
「ピロシキ美味いな。」
「ここまで、アジア勢は1勝3敗か。日本やな、頑張れ。」
6月19日、日本の試合が始まる。前日にサランスクに移動。サランスクはロシア西部にあり、モルドヴィア共和国の首都。閑静な都市である。
「いい雰囲気やな。」
2018年6月19日 第1戦 VSコロンビア
前回W杯で敗れたコロンビアとの、リベンジマッチとなる。日本は立ち上がりに速攻を仕掛け、開始3分に香川真司のシュートを手でブロックし、ハンド+決定的得点機会の阻止で、コロンビアDF カルロス・サンチェス・モレノが一発退場となった。
「おぉ!!いきなり大チャンスや!!」
「蹴るのは、香川真司か。頼むで。」
固唾を呑んで見守る薫と博信。キッカーは香川真司。これを落ち着いて決め、6分に日本が先制する。1人少なくなり、有利になったかと思われたが、地力ではコロンビアが上。徐々に押し込まれ、39分にフリーキックを与えてしまい、これをキンテーロに決められ、同点に追いつかれる。前半は1‐1で折り返した日本、後半、攻撃の選手を投入し、勝ち越しを狙う。73分に、日本はコーナーキックを獲得。蹴るのは、本田圭佑。ゴール前にクロスを上げ、これを大迫勇也が頭で合わせ、日本が勝ち越しゴールを挙げた。そのまま逃げ切り、2-1で勝利。W杯史上初のアジア勢が南米勢に勝利した試合となった。
「やったー!!!!」
日本の勝利を喜ぶ薫と博信。次戦はセネガル。17th2002FIFAW杯日韓大会で、初出場ながら前回王者のフランスを破り、ベスト8まで躍進した。16年ぶりのW杯、監督はその当時キャプテンだったシセ。
「次は、セネガルやな。2002の時はスゴかったで。」
「懐かしいな。日韓W杯か。久美と喜美子と一緒に冒険したな。」
グループステージ第1戦終了。前回王者ドイツが敗れ、アルゼンチンが初出場のアイスランドに引き分ける波乱があった。
薫は、第2戦の会場があるエカテリンブルクに行って撮影する。ロシア連邦中央部のスヴェルドロフスク州の州都で、町の名はピョートル1世の妻 エカチェリーナ1世に因む。大都市であり、高層ビルが並ぶ。
「エカチェリーナ1世か。ピョートル1世は聞いたことあるな。清の康煕帝とネルチンスク条約結んだんやな。」
裏街で、麻薬取引の光景を目撃した。
「こんな闇もあるんやな。」
2018年6月24日 第2戦 VSセネガル
共に初戦で勝利し、決勝トーナメント進出に大きく近づくことになる両者の一戦。アフリカの雄 セネガルと対戦。パワーに押され、11分にサディオ・マネに決められ、先制を許す。それでも、34分に乾貴士がサイドからの切り込みでシュートを放ち、同点に追いつく。前半は1-1で折り返す。71分にムサ・ワゲに勝ち越しゴールを決められるが、諦めずに攻め続け、78分に本田圭佑が決めて、同点に追いつく。そのまま2-2で引き分け、勝ち点で並ぶが、フェアプレーポイントの関係で日本が首位に立った。
「よし、ナイスゲーム!!」
グループステージ最終戦が行われるヴォルゴグラードで撮影。かつて、スターリングラードと呼ばれ、第二次世界大戦の激戦区となり、21世紀にはテロ攻撃に見舞われるなど、何かと物騒な都市である。
「スターリン、社会主義の人やな。」
2018年6月28日 第3戦 VSポーランド
勝てば進出が決まる日本。ポーランドは2連敗で敗退決定。前半は0-0で折り返す。59分にペドナレクに決められ、先制される。もう一方のコロンビアVSセネガルは、1-0でコロンビアがリード。日本は、コロンビア勝利でフェアプレーポイントでセネガルを上回るという作戦で、負けている状況の中、反撃せずパス回しをする。
「何してるんや?」
「これは何かの作戦やろな。他力本願という形やけど。」
サッカー経験者の博信は、監督の意図を汲み取った。日本の消極的な姿勢にブーイングが浴びせられる中、試合は0-1で終了。コロンビアが勝利し、1勝1分1敗 勝ち点4 4得点4失点でセネガルと並び、フェアプレーポイントで上回る日本が決勝トーナメント進出。
「見事や。」
「試合に負けて、勝負に勝った。」
決勝トーナメント
ウルグアイVSポルトガル
フランスVSアルゼンチン
ブラジルVSメキシコ
ベルギーVS日本
スペインVSロシア
クロアチアVSデンマーク
スウェーデンVSスイス
コロンビアVSイングランド
ヨーロッパ10チーム、南米4チーム、アジア、北中米1チームずつと言う組み合わせになった。モスクワに戻り、博信とロシア料理に舌鼓を打つ。
・ビーフストロガノフ
・ガルブツィー(ロールキャベツ)
・ピロシキ
ホロホロに煮込まれた牛肉は美味で、サクサクのピロシキとも相性が良い。
「美味いな、このピロシキ。」
「せやろ?薫と一緒に海外で飯食うのも何年ぶりやろか。」
話は、W杯のことになる。日本が初出場した1998フランスW杯から、博信はずっとスポーツカメラマンとして、W杯の開催国へ行き、リアルタイムで試合を追いかけ続けた。薫はグラビアカメラマンなので、グラビアと並行する形で、2002日韓W杯と2014ブラジルW杯を現地で撮影した。薫は、2016年に京都にStrawberry Milkと言う芸能事務所を立ち上げ、これから発展させていくという段階である。その後を考えて、薫は今回を最後に、サッカー関係の撮影は終了にする。
「そうか。まぁ、社長になったんやもんな。そっちはしっかりやれよ。」
「あぁ。せやから、今回は楽しんでいくで。日本代表と共に冒険するで。」
2人は、しばらく談笑した。
2018年7月2日 Round of 16 VSベルギー
ロストフ・ナ・ドヌに移動。日本の相手は、FIFAランキングトップ3に入る強豪ベルギー。日韓W杯以来の対戦、日本は前半は0-0で折り返した。後半に入ると、日本が猛攻を仕掛ける。48分に原口元気のシュートで先制すると、52分に乾貴士のゴールで2-0とリードを広げた。
「おぉ!!!」
「これはイケるんちゃうか?」
決勝トーナメントで、初めて得点を奪った日本。リードを守れるかと思ったが、徐々に反撃され、69分にヴェルトンゲンのゴールで1点返されると、74分に途中出場のフェライニに同点ゴールを奪われる。日本は勝ち越しを狙い、本田圭佑のコーナーキックをキャッチされ、そこからカウンターを食らい、90+4分にシャドリに決められ、万事休す。2-3と敗れ、あと一歩で準々決勝進出を逃した。
この結果に2人は呆然。しばらく言葉が出なかった。ホテルに戻り、帰国準備をする。
「俺は20年間W杯追いかけてさ、今回ここまで来たんや。あと一歩までな。ドーハの悲劇から、25年か。急成長して来たんや。」
「せやな。俺も、冒険出来て楽しかったで。ありがとうな。」
7月3日、ロシアでの大冒険を終えて、日本へ帰国した。
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