Strawberry Film

橋本健太

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第86話 ラストアジア

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 3月22日、那覇空港に到着した一同。春の陽気に包まれた沖縄。一同を乗せたバスは、那覇市から北上していく。薫がマイクで話す。
「Strawberry Milkグラビアアイドルオーディション2019、サバイバル合宿スタートでこざいます!!皆さん、よくぞここまで辿り着きました!!」
女子達の苦労を労い、今後の予定を説明。腹ごしらえで恩納村の琉球村に行き、沖縄グルメのソーキそばに舌鼓を打つ。宿泊地は、恩納村に当たるコテージ。1日目は一般常識を見ると言うことで、一般教養レベルの筆記試験を行なう。試験終了後、コテージにあるプールで一人一人の水着撮影。
「ルックスレベルは高いですね。」
「せやな、高い倍率の競争でここまで来たんやからな。」
1日目はここで終了。翌日、朝一番に結果発表。最下位は脱落。

福井菜帆(18) 兵庫県

菜帆はトボトボと帰路に着く。上位3人をシードし、残り6人を振り分けて、1対1で戦わせ、勝者が最終日に残る。シード組は京子と柚希が担当し、バトルは薫とスタッフが担当する。

坂本夏美VS田村美國
松本さくらVS大野香織
倉田美穂子VS河村梓

バトル1 坂本夏美VS田村美國
夏美は、制服コスプレで勝負。それに対して美國は豹柄ビキニで攻める。
「男の子食べちゃうぞ🖤」
ワイルドなスタイルの美國が勝利。

バトル2 松本さくらVS大野香織
制服コスプレで対決。黒い円縁眼鏡のさくら。儚さと色気の両立。谷間を見せてアピール。
「私を、不真面目にさせて🖤」
イケない雰囲気のさくらが勝利。

バトル3 倉田美穂子VS河村梓
制服コスプレで勝負。セクシーさを見せつける梓が勝利。
「目、そらさないで。」

最終日、那覇市で行なう。観客兼審査員500人の前で水着姿を披露し、投票してもらう。それぞれ色とりどりの水着でアピール。生投票で順位を決める。その結果、この3人が合格した。

1 笹倉由美
2 松本さくら
3 河村梓

引っ越しのことなどもあり、3人の活動開始時期は5月からとなる。薫達はグラビア撮影に勤しむ。サッカーの仕事からは退いた薫だが、ジャーナリストとしての海外撮影のオファーは来るだろう、と感じている。
「俺は、これまで海外でも撮影してるから。今年、アジアで動乱が起こりそうな気がするんよ。」
副社長の那月と、終業時間後に少し雑談をする。外は桜が咲き、夕陽が差す。那月は紅茶を飲みながら、話を聞く。
「動乱ですか…。」
これまで薫は、ジャーナリストとしてはカンボジアの地雷原、ミャンマーの反政府クーデター、香港の雨傘運動などを撮影した。今年、アジアで何かが起こる気がしていた。
「来年、東京オリンピックが開催される。まぁ、これは良しとしよう。今年で、中華人民共和国建国70周年(1949年建国)迎える。中国では、建国以降の9のつく年に何かが起きてるんよ。」

中華人民共和国 建国後 9のつく年
1949年 中華人民共和国建国。
1959年 大躍進政策失敗、2000万人の餓死者が出る。チベット動乱。
1969年 文化大革命。新宝島領土問題でソ連と衝突。
1979年 中越戦争。
1989年 天安門事件。
1999年 マカオ返還。
2009年 ウイグル騒乱。

「何かが起こるのね。」
「5年前に、香港で雨傘運動って、あったやん。その時に重慶大厦で会った占い師のオジサンが、5年後に俺がまた香港に来て、動乱を追いかける、って言ったんや。それが今年。今年、香港で何かが起こるかもしれん。そして、そこが俺の最期を迎える場所になる、って予言してた。」
信じがたい話に、那月は一笑に付す。
「まさか…。そんなことありますか?」
「まさか、やったらエエねんけどな。ノストラダムスの大予言みたいに、盛大に外れて『ビビらすなや。』って、笑って終わったらエエんやけどな。」
あの時の占い師の一言が引っかかる薫。カメラマンになってから、海外で数々の撮影をしてきた。大学の卒業旅行で初めて訪れた香港を皮切りに、これまで15ヶ国を廻った。人生最初の海外が香港と言うことは、人生最期の海外も香港になる、そんな予感はした。
(あのブルース・リーも、32歳と言う若さで全盛期のまま亡くなった。もしかしたら、俺も同じように…。)

 2019年4月30日を以て、1989年1月8日から30年続いた平成時代が幕を閉じ、2019年5月1日から令和時代が幕を開けた。世間が新時代の幕開けで湧く中、ジャーナリストとしてオファーが来た薫は、「平成の総括」というテーマの撮影に奔走していた。オーディション合格の新メンバーが加入し、落ち着いてきた所で、デビューグラビアを撮影し、雑誌に掲載した。5月下旬、メンバーの親睦を深める為の企画を考案・実行する。

Strawberry Milk グラビアアイドル修学旅行
期間 2019年5月23~25日
行き先 韓国・台湾
グループ分け 韓国 撮影 香塚薫
          アイドル 高本麻衣
               松本さくら
               河村梓

          台湾 撮影 多々良柚希
             アイドル 奥村ゆかり
               緒方真紀子
               李月
               笹倉由美

5月23日、午前8時。関西国際空港に集合した一同。それぞれのルートに別れて出発した。6年ぶりに韓国を訪れた薫。修学旅行と言う設定なので、彼女達は制服コスプレ。グレーを基調とした制服の麻衣は、落ち着いた印象。青いカッターシャツと紺色のスカートのさくら、胸元を開けており、セクシーな優等生という感じ。梓は、白いカッターシャツに紺色スカートと王道な感じ。自然体を撮影する、と言うことで修学旅行さながらの雰囲気で行う。ソウルにある国立中央博物館で、歴史について学ぶ。
「この特徴的な帽子の人、この人なんなんですか?」
歴史に疎い梓に、優等生のさくらが答える。
「両班(ヤンバン)って言う、朝鮮王朝の貴族。」
展示品は41万点あり、地上6階地下1階と大規模である。撮影許可をいただき、館内で撮影する。昼食は、ソウル市の繁華街 明洞でいただく。
「ヤンニョムチキンや!!」
「Instagramとかで、見るものがいっぱいある~!!」
韓国料理に舌鼓を打つ一同。薫は辛いものが苦手なので、キムパやサムギョプサルを食べる。夜は、梨泰院や江南などで撮影した。

 2日目は済州島に移動。リゾート地であり、砂浜で水着撮影。水泳経験者の麻衣は、黒ビキニを着て撮影。
「ええやん、セクシーやで。」
さくらは、青い競泳水着を着て、眼鏡をかけた状態で撮る。小道具に水鉄砲。
「海の平和は私が守る!スク水ポリス!」
「夏だけに現れる、伝説のヒロイン?!」
梓は、豹柄ビキニでワイルドに決める。
「SKE48の『美しい稲妻』みたいや。」
「決まってます?」
ソウルに戻り、現地の女子高生に声をかけて、同意してくれた子達と一緒に撮影。BLACKPINKやBTSの話で盛り上がる。撮影に応じてくれたお礼に、10ウォンパンをプレゼント。乗ってくれる子達はいるが、中には元気のない子達もいた。
「毎日毎日、受験勉強ばっかりで…。学歴無いと未来無い。」
「仕事がいっぱい選べる日本や、自由な感じの台湾が羨ましい。」
韓国の過剰な競争社会と学歴偏重、財閥が牛耳る経済、それらの要素と閉塞感で「ヘル朝鮮」と揶揄されている現状を知った。
「何とも言えへんな。」

 こうして、韓国での撮影は終わり、写真を編集して雑誌を刊行した。グラビアアイドル達は楽しんでくれていたが、薫にとってはこれが最期の、アジアでの観光旅行になってしまったのである…。
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