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二年生 前期
3 浮気男ざまあみろ計画
しおりを挟む私は新しい人生を楽しみつつ、アイツに浮気男め羨ましいだろざまあみろ!と言ってやるべく、この世界の歴史に名を残す方法を模索した。
私が生まれたメネティス王国は、魔族が建国した国なので魔力の多い人が多く、他国より抜きん出て魔法文化や研究が進んでいる。
私は闇と風、ふたつの属性の魔法を持っている。
この世界の歴史に名を残すなら魔法関係にしようと決めた。
なぜならアイツがめっちゃ羨ましがりそうだから。
それで魔法について調べ始めた。
田舎の小さな男爵領にはあまり魔法の資料は無かったけど、それでも手に入るありったけの資料を集めて、無我夢中で勉強した。
歴史に名を残し、アイツにざまあみろと言うために、前世の記憶と知識を使って、まだこの世界にはない新しい魔法の技を編み出すべく研究を重ねた。
ひょんなことから、新しい魔術を思い付き、実際に試すことは出来なかったものの、理論上はかなり良い状態まで仕上げることが出来た。
あとは王都にある魔法学園に入学して、さらに知識と経験を得て研究を進めようと意気込んでいたら、
私の魔法学園入学一年前、つまり今からニ年前に、兄と姉が結婚することになったのだ。
うん。おめでとう!
嬉しいよ!本当に!
ただ問題は、我が男爵家はそんなに裕福ではないということだった。
しかもこの時は、兄と姉の学費の支払いがやっと終わったばかりのところで、さらに特産品のシードルを作るための林檎が不作になり、男爵家の懐事情はカツカツのピーピーだった。
なんでわざわざこの時期にふたり揃って結婚するのかな~?
魔法学園は他の学校とくらべて学費が高い。
他の学費の安い学校に行く選択肢もあったけど、それだと魔法の勉強が出来ない。
魔法学園への入学を諦められなかった私は、奨学金制度を利用することにした。
成績上位をキープしなくてはいけないけど、そのかわり入学金が免除になって、学費と寮費は卒業後に分割で返済出来るようになる。
教科書と制服が支給されるのもありがたい。
せめてこれくらいはと、寮費は家から出しもらえることになった。
本当は、学費と寮費も免除になる特待生を狙っていんだけど、どんなに成績が良くて特化した才能があっても、女性は特待生になれないと言われた。
特待生は卒業後十年間、国の機関で働くことが義務付けられているけど、女性は学園を卒業したら結婚して家に入るのが常識で、働くことはないから義務が果たせないという理由だった。
この世界では、女性は弱く守るべきものとされていて、それは体力的な意味だけではなく、意思や意見も、女性に関する決定権は本人ではなく権威のある誰かになっている。
所謂、子供の時は父や兄に従い、結婚したら夫に従い、老いたら子に従えというやつだ。
この世界の女性は、やりたいことや夢があっても、父親や夫の許しがなくては出来ないし、働くなんて世間体が悪いと許してもらえない人が殆どだろう。
働く女性は、離婚したり夫と死別して、婚家にも実家にも頼れないなどの事情がある人。
未婚の女性が花嫁修行として高位貴族に仕えることはあるけど、ある程度の年齢になると結婚して辞めるのがほとんどだ。
前世でも男尊女卑はとても根強く残っていた。
違う世界に生まれ変わったけど、女性が社会で生きて行くのは大変なんだと悲しく思った。
ふと、私にも出来ることがあるんじゃないかと思った。
アイツのせいで、男性とのお付き合いとか結婚なんて全く考えられない。
どうせ結婚しないなら、私が自立した働く女性になることで前例を作れば、この世界で生きる女性達に夢や希望を与えることが出来るんじゃないだろうか?
これまで漠然と、新しい魔法で歴史に名を残す!だった目標が、自分の中でしっかりと形作られた瞬間だった。
魔法学園卒業後、女性初の王国魔術師団員になり、前世の知識と発想で魔法の新たな可能性を広げ、
この世界の歴史に名を刻む!
完璧じゃない?
あとはこの目標に向けて計画を立てる。
・魔法学園に入学して、新しい魔術の研究を進めて結果を出し、王国魔術師団の入団試験に推薦してもらう。
・将来魔術師団に入るためにも奨学金を受け続けるためにも、勉強は手を抜かず成績上位をキープする。
・学園生活にかかる細々したお金や今後の返済を考えて、バイトをしてお金を貯めておく。
その名も、浮気男ざまあみろ計画!
アイツをギャフンと言わせつつ、この世界の役にも立てるかもしれない。
最後のひとつはやけに堅実的になったけど、夢や希望だけで食っていけるほど現実が甘くないのは、前世の世界で嫌というほど知っている。
まるで夢の世界のような異世界に転生したとはいえ、ここで生きる私には現実の世界だ。
計画が失敗した時のためにも、手堅くお金を貯めておくにこしたことはない。
そして私は、決意表明として日本語で目標と計画を書いた。
この世界に生まれて十ニ年、使うことのなかった日本語は、なんだかとても懐かしかった。
これが魔法学園入学一年前のこと。
そうして私は念願の魔法学園に入学し、成績一位をキープしながら、研究とバイトに明け暮れ、二年生に進級したのだ。
つまり、
正直言って、
王女様の暇つぶしに、お付き合いしている時間はありません!
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