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無言
しおりを挟むあの後私たちはリョウの家に行く事にした。手を繋いで、いつもより身近に感じる。
並んで歩きながら、他愛のない話をあれこれと話し合う。
「ねぇ新、こないだ俺山田にちょっかいかけんなって文句言っちゃった。勝手にごめん」
唐突に、リョウが山田くんの話を出してきたので突然すぎて私は固まってしまう。
「えっ」
リョウの方を見ると、頭から湯気の立ちそうな険しい顔をしていた。
「俺あの時寝たふりしてたんだ。ボケーっと目をつぶって時間つぶしてたらアレだったし」
「あ、そ、そう」
私は真っ青になる。あの状況全部見てた(?)のか。
「新は人が良すぎる」
「そ、そんな事ないけど……」
握られた手がもっと強く握りしめられ、リョウの感情が伝わってくるみたいだ。少しだけ痛い。
「ともかく、もう手は出さないって言ってたから。なんかあったら俺に言って」
「う、うん。わかった」
キッと普段見せないような目で前を見ている。何かやりとりを思い出しているのだろうか……?
などとやってる間にリョウの家に着いてしまう。
「あがって」
「あ、うん。お邪魔します」
玄関で靴を揃えてスリッパを借りる。白いフカフカしたものだ。クッションがしっかりしててはきやすい。前回来た時はスリッパを借りなかった、そういえば。
「新に似合うと思って買っといたんだ」
「えっ?!」
スリッパを指さす。
私は固まってしまう。わざわざ? 私がいつ来るかわからないのに?
何となく、リョウの気持ちが先走ってる気がするんだけど。
「あ、ありがとう」
なんだかちょっと不安になってくる。私は気持ちがまだそこまで追いつけてない。リョウに申し訳ないような気持ちと、ちょっと逃げたくなるようなざらっとした気持ちとで揺れる。
リョウはスタスタと2階に上がっていく。私もパタパタとスリッパの音を立てながら後を追った。
今日のリョウの部屋も普通に綺麗だ。やっぱり普段から綺麗にしてるみたい。あんまり綺麗すぎて、なんだか緊張する。
「紅茶でいい? 持ってくるね」
「あっ、うん」
そう言うと、トトトと階段を降りていった。
少しするとリョウが戻ってくる。手にこの前と同じマグカップを持ってニコニコしている。
リョウがテーブルにそれを置くと、私はいただきますと言って紅茶をフーフーと軽く冷めさせる。
お砂糖が欲しいけど、なんとなく頼みづらいのでそのままコクリと飲んだ。
リョウは私のすぐ隣に座って、コーヒーを飲んでいる。ぶつかった二の腕が少し熱を持っている気がした。
ブラックのコーヒーは紅茶の香りを消すくらい強く香っていて、私がカップをテーブルに置くとリョウもコーヒーをテーブルに置く。
……無言。
「あ、と……」
私が何か話そうと言葉を発した瞬間、リョウが私の身体を抱きしめてくる。
ふわっとコーヒーの香りにリョウの香りが混ざる。トクトクと心臓がはやく鳴りだす。
「あらた」
ドキドキしすぎて声が出ない。居場所のない腕をそっと背中に回すと、リョウは私の唇に力強くキスしてきた。綺麗か顔がアップで、私は慌てて目をつむる。角度を変え唇を何度も吸ったり食んだりしてくる。
次第に舌が私の歯列をなぞり、歯を退けて入り込んでくる。
「ん……」
声を漏らすと、クチュクチュと音を立てるように撫でたり絡めたりと激しくなってくる。
今日はもう、リョウを止めることができない。
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