異世界から来た女は魅力的なので

らいらい

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庭園


 婚約式が終わり数日後、最近ユーリの浮かない顔が見えるようになってきた。何か思う所のあるような……

「あの、アリオス様。最近私、夢で元の世界に戻る夢をよく見るんです」

 ユーリは応接室のソファに腰を深くかけたまま切り出してきた。異世界から来たのなら、何かのきっかけで戻る可能性もあるのだろうが、最近になってそういった夢を見出しているらしい。

「私、多分もとの世界では死んでいるんです。記憶が間違いないのなら、車にはねられて……もし突然元の世界に引き戻されたなら、どんな風になるのだろうと」
「元の世界に戻る? そんな事はさせない」
「でも、いきなり消えたりしたら……」

 眠りが浅く、不安が増しているのか考えても仕方のない事に囚われているように見える。

「もしもお前が元の世界に戻るなら、その時は俺も行く」

 え? と、目を瞬かせてユーリはガタリと立ち上がる。

「お前がこちらの世界に馴染んだように、俺が今度はそちらの世界とやらに馴染めばいいではないか」

 俺はフッと下を向いたまま笑みを浮かべる。

「簡単な事だ。消えてしまったならどこにいても探し出す。死ぬまでな。もし俺も行けるのなら俺も行く。ここにいられるならずっとここにいればいい。それだけだ。お前ももし消えたのなら、ここにくる道を死ぬまで探したらいい。他に愛する人ができたならそれはそれで構わない」

 今は考えても仕方ない、と伝わっただろうか?
 ユーリは俺に近づいてきて、小さな両手のひらで俺の手を握りしめる。

「そうですね。少し、考えすぎてました」

 ホッとした笑顔をユーリは見せた。

 俺はツカツカと応接室をうろつくと、窓の近くで立つ。外は天気も良く、部屋に籠るのが勿体ないくらいだ。

「ちょっと席外す」
「あ、はい」

 ユーリは微笑んで、ソファに座った。



「すまないユーザ、また休みもらうぜ」

 執務室に入った途端、ユーザの顔も見ずに発する。
 えぇ! と、大概にして欲しいと言わんばかりに不満げにこちらを見る。俺は気にもとめず、頼む頼むと笑いながら頭を下げた。
 もうッ、とため息をつきながら、書類をさっきよりも早く手を入れるのだった。




     †††



 馬車を出し、この街から東の庭園に向かう。馬車から流れる景色はとても清々しい。
 庭園の入り口に差し掛かると、御者に待つよう伝える。
 日差しは柔らかく、暖かい。ゆっくりと庭園をユーリに楽しんでもらうよう、訪れた。

「ここは父の作った庭園なんだが、自然も多く綺麗な花など色々とユーリが興味持てるんではないかと思う」

 庭園に入ると、まずは道の脇に赤い花が咲き乱れ、鮮やかに道を作っている。

「わぁ……」

 ユーリは目をキラキラさせて、庭園を見物している。

「あの花、この国では珍しい薔薇ですね!」
「他国の行商人から苗を買い取ってこの庭園に植えたそうだ」

 周辺を眺めながら歩いて行くと池が造られており、その中央には人をかたどった像が水と戯れるように飾らせている。

「カメラがあったら記念に写したい……っ」

 と、自分のいた世界の事をポロリとこぼす。

「カメラ?」
「あ、はい。似顔絵や風景画がありますよね? あれが一瞬で切り取ったようにそのままの映像で保存出来るんです」
「へぇ、便利なものもあるんだな」

 懐かしいのか、嬉々として説明をするユーリが可愛らしい。口元に笑みが溢れてしまう。

「俺もその世界、見てみたいな」
「……そうですね。そんな時があったら」

 少し困り顔で微笑むユーリ。
 この世界からいなくなったら、ユーザにもリュナにも関わってきたみんなと会えなくなる。ユーリはその経験をしているのだ。

 俺はユーリの手を繋ぐと、脇の細い道から休憩場所へといざなった。
 そこは石のベンチでできており、雨や日差し避けに屋根が作られている。

俺はユーリをそこに座らせると、向かい合い身をかがめ、唇は吸い付くようにユーリを求めていた。


 一生これから先一緒だ。
 その気持ちを込めて。


 ベンチに座っていると、ヒュルリと風が頬を撫でていく。


「あ……アリオス様」

 突然ユーリの不安そうな顔がこちらを覗く。
 風がだんだん強くなり、吹き付けるようになってくる。俺はユーリを風下に抱き、風から身を守る。

「アリオス様!!」
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