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4 お茶は焦らず、ゆっくり、丁寧に。
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きゃ~。まさかのお茶好きっ・・・!
紬は内心テンション上がりまくりで小躍りしたい気分だったが、ぐっとこらえ何気ない風を装い二人に四人用の応接テーブルへと着いてもらうと、お茶を入れに奥の簡易給湯室へと向かった。
気を抜くとへらっと緩みそうになる頬を両手で押さえつけてから、湯飲み、茶葉、急須を用意した。毎朝ヤカンで五分間沸騰お湯をポットへと入れている。このお湯を使えばそんなに時間はかからない。ミネラルウォーターの軟水が適しているが会社でそこまで予算は掛けられない。沸騰させたお湯でも十分美味しい。
美味しいお茶、飲んで欲しいからねっ!
ほっとしてもらえるような一杯を目指したい。紬は心を落ち着けて作業に入った。
まず人数分の湯飲みに七分目ほどのお湯を入れる。(一杯60ccくらい)そうすることでお湯の温度は下がり、適温と言われる70度~80度にすることが出来る。(目安は横ゆれして湯気が上がる程度)
次に急須に茶葉を入れる。(茶葉の量は、1人当り小さじ約2g)
あらかじめついでおいた湯のみのお湯をゆっくり急須に注ぎ、その後約1分程お茶の葉が開くまで静かに待つこと。(普通煎茶だと30秒程)急須を揺すると、お茶の中の苦みの成分が出てしまうからここで焦らない。ゆっくりとね。
お茶の葉が開いたら、急須から湯のみに均等につぎ分ける。 つぎ始めは薄く、後になるほど濃くなるから、お茶の濃さが平均するように注ぎまわすのがポイント。
注ぐときには急須に残らないように、必ず最後の一滴までしぼるように注ぐこと。これで一膳目のお茶の出来上がり。
ん。いい感じ。
濃い緑色が綺麗に出たお茶を前に、紬は満足げに一人笑みを浮かべた。
ちなみに一煎目を入れ終わったら急須の蓋を取っておくと、お茶の葉が蒸れすぎる事が無く、二煎目、三煎目も美味しく飲むことが出来ますよ。二煎目は、お湯が茶の葉にしみこんでいるので、熱湯を入れて、浸出時間も3分の1で十分です。
あ、夏は冷茶もいいですよ!冷水ポットとお茶パックに茶葉を入れて前日から作ると楽ちんで美味しいですよー♪お勧めです!
「どうぞ」
入れたばかりのお茶と一緒に練り切りも用意した。こちらもお茶同様に貰いもので、正月らしく紅白で作られた梅の花と、福寿草の黄緑色をした丸い形をした練り切り。日持ちもしないことだし、美味しいと評判のお店のもの。是非お茶と一緒に味わって欲しい。
お盆に乗せ、傾けないよう慎重に運び、湯飲みをテーブル上にそれぞれ置いた。動きに合わせてゆるりと湯気が躍った。
「おっ、菓子付きか。うまそー。有難う」
「有難うございます。頂きます」
お礼を言い並んで座って飲み始めた斎藤さんと、伊倉さん。お茶を出し終えたのだから下がった方がいいのだろうとは思ったが、紬は二人の傍で最初の感想を聞くためにドキドキしながらお盆を胸に抱えたまま立っていた。
「今日も美味いっ。さっすが大野さん。安定の美味さやねー」
にかっと笑って誉め言葉を言ってくれたのは斎藤さん。毎回、美味しい、美味しいと褒めてくれる。お茶で喉を潤した後、練り切りを大胆にも一口で食べている。
喉に詰まらせたりしないだろうかと、少しひやっとしたがまだお茶が湯飲みに残っているのが見えたから大丈夫だろうと思った。
伊倉さんが甘党かどうかは分からなかったが、出された練りきりを前にして眉を寄せるどころか、表情がふっと柔らかくなったっていうか、相当嬉しそう?
出して良かった~。
きっと甘いものは大丈夫な人なんだろうと簡単に予想が付いた。ずっと固い表情をしたままだったから、ずっとそれが標準なんだろうかと思ったけど、そうでもないらしい。
うーん、甘いものもイケる口なんて、さらにテンション上がっちゃう~。
お茶も好きなのに、甘いものも好きだなんて、モロ好みのタイプ。でも、見惚れる程のイケメンがまさかのお茶好きと聞いたからと言って、これは運命だわっ!なーんて紬は勘違いはしない。けど心の中で少しくらいきゅんとすることくらいは許して欲しい。
大体、こんなイケメンには彼女がいて当たり前だろうし、と思う。いない方がおかしいだろう。
もしかすると結婚をしているのかも知れない可能性だってゼロではない。指輪をしているのかどうかまで見れなかったけれど、もし結婚しているのであれば単身赴任で北陸に来ているのか、連れだって来ているのか。
どちらにせよ、ここに来た時に密かな目の保養としてこっそり眺める分くらいは許されるだろう。彼氏になんて高望みはしない。分不相応はわきまえてる。見た目も能力も、平凡、平均に埋没する自分は眺めて憧れているのがお似合いだ。
「これは・・・本当に美味しいですね」
ゆっくりと一口飲んだ後での感想。
伊倉さんから待ち望んでいた言葉を貰えた!しかも、目元が緩む微笑みつき!
うきゃーっっっっっ!やばいってーっっっっ!
その笑みを見た紬は胸がきゅんどころじゃなくなった。たった今自己分析について考えていたはずなのに、綺麗さっぱりと吹き飛んだ。
無防備だった乙女心は勢いよく打ち抜かれ、完全に恋に落ちた瞬間だった。
紬は内心テンション上がりまくりで小躍りしたい気分だったが、ぐっとこらえ何気ない風を装い二人に四人用の応接テーブルへと着いてもらうと、お茶を入れに奥の簡易給湯室へと向かった。
気を抜くとへらっと緩みそうになる頬を両手で押さえつけてから、湯飲み、茶葉、急須を用意した。毎朝ヤカンで五分間沸騰お湯をポットへと入れている。このお湯を使えばそんなに時間はかからない。ミネラルウォーターの軟水が適しているが会社でそこまで予算は掛けられない。沸騰させたお湯でも十分美味しい。
美味しいお茶、飲んで欲しいからねっ!
ほっとしてもらえるような一杯を目指したい。紬は心を落ち着けて作業に入った。
まず人数分の湯飲みに七分目ほどのお湯を入れる。(一杯60ccくらい)そうすることでお湯の温度は下がり、適温と言われる70度~80度にすることが出来る。(目安は横ゆれして湯気が上がる程度)
次に急須に茶葉を入れる。(茶葉の量は、1人当り小さじ約2g)
あらかじめついでおいた湯のみのお湯をゆっくり急須に注ぎ、その後約1分程お茶の葉が開くまで静かに待つこと。(普通煎茶だと30秒程)急須を揺すると、お茶の中の苦みの成分が出てしまうからここで焦らない。ゆっくりとね。
お茶の葉が開いたら、急須から湯のみに均等につぎ分ける。 つぎ始めは薄く、後になるほど濃くなるから、お茶の濃さが平均するように注ぎまわすのがポイント。
注ぐときには急須に残らないように、必ず最後の一滴までしぼるように注ぐこと。これで一膳目のお茶の出来上がり。
ん。いい感じ。
濃い緑色が綺麗に出たお茶を前に、紬は満足げに一人笑みを浮かべた。
ちなみに一煎目を入れ終わったら急須の蓋を取っておくと、お茶の葉が蒸れすぎる事が無く、二煎目、三煎目も美味しく飲むことが出来ますよ。二煎目は、お湯が茶の葉にしみこんでいるので、熱湯を入れて、浸出時間も3分の1で十分です。
あ、夏は冷茶もいいですよ!冷水ポットとお茶パックに茶葉を入れて前日から作ると楽ちんで美味しいですよー♪お勧めです!
「どうぞ」
入れたばかりのお茶と一緒に練り切りも用意した。こちらもお茶同様に貰いもので、正月らしく紅白で作られた梅の花と、福寿草の黄緑色をした丸い形をした練り切り。日持ちもしないことだし、美味しいと評判のお店のもの。是非お茶と一緒に味わって欲しい。
お盆に乗せ、傾けないよう慎重に運び、湯飲みをテーブル上にそれぞれ置いた。動きに合わせてゆるりと湯気が躍った。
「おっ、菓子付きか。うまそー。有難う」
「有難うございます。頂きます」
お礼を言い並んで座って飲み始めた斎藤さんと、伊倉さん。お茶を出し終えたのだから下がった方がいいのだろうとは思ったが、紬は二人の傍で最初の感想を聞くためにドキドキしながらお盆を胸に抱えたまま立っていた。
「今日も美味いっ。さっすが大野さん。安定の美味さやねー」
にかっと笑って誉め言葉を言ってくれたのは斎藤さん。毎回、美味しい、美味しいと褒めてくれる。お茶で喉を潤した後、練り切りを大胆にも一口で食べている。
喉に詰まらせたりしないだろうかと、少しひやっとしたがまだお茶が湯飲みに残っているのが見えたから大丈夫だろうと思った。
伊倉さんが甘党かどうかは分からなかったが、出された練りきりを前にして眉を寄せるどころか、表情がふっと柔らかくなったっていうか、相当嬉しそう?
出して良かった~。
きっと甘いものは大丈夫な人なんだろうと簡単に予想が付いた。ずっと固い表情をしたままだったから、ずっとそれが標準なんだろうかと思ったけど、そうでもないらしい。
うーん、甘いものもイケる口なんて、さらにテンション上がっちゃう~。
お茶も好きなのに、甘いものも好きだなんて、モロ好みのタイプ。でも、見惚れる程のイケメンがまさかのお茶好きと聞いたからと言って、これは運命だわっ!なーんて紬は勘違いはしない。けど心の中で少しくらいきゅんとすることくらいは許して欲しい。
大体、こんなイケメンには彼女がいて当たり前だろうし、と思う。いない方がおかしいだろう。
もしかすると結婚をしているのかも知れない可能性だってゼロではない。指輪をしているのかどうかまで見れなかったけれど、もし結婚しているのであれば単身赴任で北陸に来ているのか、連れだって来ているのか。
どちらにせよ、ここに来た時に密かな目の保養としてこっそり眺める分くらいは許されるだろう。彼氏になんて高望みはしない。分不相応はわきまえてる。見た目も能力も、平凡、平均に埋没する自分は眺めて憧れているのがお似合いだ。
「これは・・・本当に美味しいですね」
ゆっくりと一口飲んだ後での感想。
伊倉さんから待ち望んでいた言葉を貰えた!しかも、目元が緩む微笑みつき!
うきゃーっっっっっ!やばいってーっっっっ!
その笑みを見た紬は胸がきゅんどころじゃなくなった。たった今自己分析について考えていたはずなのに、綺麗さっぱりと吹き飛んだ。
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